じいちゃんにもう一人弟子がいたら(一発ネタ)   作:白乃兎

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……ちょーっとシリアスかなぁ。
ごめんな、シリアスなんてなかったってタグあるのに。
でも、鬼滅の刃世界だからしょうがないよね!

あと、いつもより多めに遅刻してすまぬ。


柱になってから鬼を斬ってないってマジ?

ようやく体の調子が戻ってきた今日この頃。

杏寿郎や義勇が三面六臂の活躍をしているという話をよく聞く。

 

一方で俺は柱に就任してから鬼を一体たりとも狩っていない。上弦の壱は逃してしまったし。

これはまずい。あの若い鳴柱、鬼と戦ってなくない?なんて噂が流れ始めるのも時間の問題かも知れないのだ。それは全くもって不本意なので、実践の勘を取り戻すためにも鬼を切りに行くことにしようそうしよう。

 

柱は担当地域を巡回して鬼を狩るのが主な任務なので、鴉が鳴くのを待つ必要はない。

俺はカナエとしのぶに一言告げると蝶屋敷を飛び出した。

……まだ昼であることも忘れて。

 

「……流石に昼は鬼も出ないしなぁ」

 

近くに村はあるけれど、こんなお日様カンカンでは鬼が出没するわけもなく、担当区域を練り歩くだけの時間を過ごしている。

 

一回蝶屋敷に帰って夜に出直した方がいいかなぁ。

ぽけーっと空を眺めながら一人寂しくてくてくと歩く。

 

「そこのにいちゃん!」

 

「……おん?」

 

小さな子供、とは言ってもしのぶくらいの年齢だから俺とはそこまで年齢は離れていないだろう。

そんな少年がなんで俺なんかを?

 

「たすけてっ、たすけ」

 

ごほっごほっと咳き込む少年。

よく見れば額には尋常じゃない汗が浮かんでいる。よっぽど急いで走ってきたのか。

服は泥だらけで服はボロボロ。

 

懐から水筒を取り出して少年に飲ませ、手ぬぐいで玉のような汗を拭き取って落ち着かせる。

 

だが、鬼の出ないこの昼に助けを?

何かあったのだろうか。

 

「それ、木刀とか、竹刀なんだろ!強い人なんだろ!?俺の村を助けてくれ!」

 

「……事情を聞いていいか?」

 

鬼である可能性を捨てきれない以上、鬼殺隊としては見逃すわけにはいかない!

というか一体でもいいから多く鬼を切りたい!

 

「この前っ、へんな男が村に来てっ、生贄を出せって!」

 

「生贄を?どういうことだ?」

 

「わかんないけどっ!若い女を差し出せって!そしたら、もう帰ってこなくて!」

 

生贄なんて前時代的なものを求めているのではなく、食料を求める鬼の仕業だろうなぁ。

 

「でも、村の人たちだって反対するだろ?」

 

「その男が変な煙を吸わせてるんだよ!吸った人たちはみんな変な感じになってっ『次が欲しかったら生贄を出せ』って言うんだ!みんなその言うことを聞いちゃうんだ!」

 

……変な、煙?

人を操る血鬼術?

 

だが、昼に太陽の下を歩いていれば血鬼術は弱まり消滅するのでは?

それなら、永続的に続く洗脳系ではなくまた別のものである可能性があるな。

 

「……阿片、麻薬に近しい血鬼術か」

 

中毒性の高い煙、次が欲しければ生贄を出すしかない。

そうしなければ中毒で頭がおかしくなる。

 

「少年、よく逃げ出してこれたな」

 

「俺は、煙を吸わないように隠れたりしてたしっ!村の抜け道から逃げだせたからっ」

 

「見張りがいるのか?」

 

「うん、村の奴が逃げないように村に人に命令して見張りを立ててるんだ」

 

人が減っていくことを外部に漏らさないための措置。

村を食い尽くしたらまた次の村へ行く、そう言う手口か。

強くはないが狡猾で非常に厄介な鬼なんだろうなぁ。

 

「少年、名前は?」

 

「勘之助!」

 

「よし勘之助、お前の村に案内してくれ!俺が助けてやる」

 

勘之助の顔がぱあっと明るくなる。

でもすぐに不安そうな顔に戻る。

 

「俺が言うのも何なんだけど、もっと大人とか……」

 

なるほど、俺の実力がわからなくて本当に助けられるかを心配しているわけだな。

こういう時に十四歳という年齢が弊害になってくるなぁ。

でもこのくらいの子供なら——

 

「安心しろ、俺、結構強いんだぜ」

 

刀袋からちらりと刀をのぞかせる。

人差し指を立てて内緒な、という仕草をするとコクコクと首を元気よく振ってくれる勘之助。

 

「ありがとう!お礼はきっとするから!」

 

「気にすんなよ。あ、俺の名前は一ノ瀬纏楽な」

 

なんて勇気ある少年だろう。

俺がこのくらいの年齢の時は爺さんに拾われる前だから、楽して生きていきたいという十二歳にして意味不明なことをのたまっていた。

いや、今も十四歳にして早く引退して楽に過ごしたいとか言ってますけども。

 

 

 

 

 

勘之助に連れられて村に到着したのはもう日も落ちかけた夕暮れ時。

俺と出会ったところからはかなり距離がひらいていたので勘之助がどれだけ必死になって逃げ、助けを求めて来たかがわかる。

 

村の外周には害獣用なのかぐるりとそこそこの高さがある柵。

その周辺に見張りと思わしき人たちが数人うろうろしている。

 

「これくらいの時間に集会所に人を集めて煙を吸わせるんだ」

 

ふむ。

 

「おーい、しのぶにこれを届けてくれ」

 

鎹鴉を呼びつけその足に手紙を括り付ける。

村の位置、事情を大まかに伝えて鬼を処理した後に村の人達を治療してもらうためである。

 

「一ノ瀬さん、鴉の友達がいるんだ」

 

「ああ、うるさい奴だけどな。……さて、集会の時に勘之助がいないとまずいか?」

 

「あ、うん。そうかも」

 

「よし、なら集会が開かれる建物を教えてくれ。人が集まってからじゃないと奴は出てこないだろ?」

 

「うん、あいつらは昼は絶対居場所を教えてくれないんだ」

 

あいつ、ら?複数なのか?

 

「複数なのか?」

 

「あ、うん。細い奴とでかい奴の二人なんだ。煙を出すのは細いほうの一人だけ」

 

よし、わかった。

それならなんとかなると思う。

犠牲は出さん。それを鳴柱初任務としよう。

 

勘之助を抱え、村の外周の柵を飛び越えると、人気のないところで別れる。

不安そうな顔をしていたが、あいつがいないことがばれて鬼や村人が暴れだしたらそっちのほうが危害が拡大する。

 

傾いていた陽が落ちる。

村で一番大きな建物の中にぞろぞろと人が入っていく。

勘之助もその列の中に並んでいる。

特に人々がざわついていないことから勘之助の脱走はバレなかったとみていい。

 

……行くか。

 

村人が入った建物の正面からではなく、建物の裏側に回り込む。

あんまりやりすぎないように、壁を——斬る!

 

「鬼・即・斬」

 

なんとなくそんなことをつぶやきながら舞台上にいる一匹のほそっこい鬼を視界に入れると、足に力を入れる。

 

「ヒャハハハ、今日の分だぜぇ、ありがたく受けとりな!」

 

手を突き出し、舞台の下にいる村人たちに血鬼術を行使しようとしている。

一方で村人たちはそんな鬼に対して懇願するかのように手を伸ばす。

まるで悪い宗教だな。

 

「ひあっ?」

 

突き出された腕を両断。

返す刀でそのまま頸を——

 

ギィン

 

響き渡る金属音に手に響く鈍い感触。

 

俺の刀を遮ったのは図体のでかい鬼。

刀を受けられた時の感触からして硬化の血鬼術。

こいつは十二鬼月でもない雑魚、ならその程度の硬さで止められると思うなよ?

 

「は、柱ぁっ!?な、なんでこんなところに、ふざ、ふざけるなぁ!おいでかい図体してるんだから、俺のおかげで人間を食えてるんだから俺を守れぇ!」

 

あぁ、ひどく耳障りな声が聞こえてくる。

 

俺の頭ほどもあるその大きな拳を振り上げるその鬼。

だがその拳はしのぶの突きより遅く、杏寿郎の剣戟よりも脅威を感じない。

 

「がぁっ」

 

拳ごと腕を両断。

特に何の抵抗もなく腕を斬ることができた。

 

ひるんだ鬼の頸をそのまま切り落とす。

こいつが戦闘要員ならとんだ拍子抜けだ。

 

「ま、守れ!俺を!」

 

舞台の下にいた村人たちが一斉に舞台へ駆けあがり俺をとらえようとしてくる。

そいつらの目は一か所を見ることなく、ひどくぶれている。これが血鬼術の影響か。

 

あぁ、ひどい。

今までのどんな鬼よりも俺をイラつかせるなぁ

 

するすると人の隙間を抜ける。

服の袖を引っ張られるが、すぐに振り払う。

すると容赦なく拳が飛んできた。なるほど、同じ人間で、俺が助けに来たとかは関係ないってか。

 

勘之助が奥の方で心配そうにこちらを見ている。

あぁ、早く終わらせなければ。

 

人ごみの中をするすると抜け出す。

数人には申し訳ないがみねうちで眠ってもらった。

 

鬼はすでに逃げ出そうとしているが、逃がすわけもない。

 

「もう死ねよ、おまえ」

 

「く、くそぉっ」

 

鬼の手から煙が放出される。だが、吸い込まなければどうということはない。

すでに空気は肺に入っている。これ以上吸い込む必要もない。

 

頸に向けて一閃。

あまりにもあっけなく、その頸はごろりと地面に転がった。

 

「ぁぁ、なんてことを!」

「俺たちの夢を壊すな!」

「私たちはこれで幸せだったのに!」

「返して、私たちの夢の煙を返してよぉ!」

 

……村の状況をパッと見た感じ、畑はあまり芳しくなかった。

きっと大して収穫もできず、貧困に苦しんでいたところを、快楽に浸らせてくれる鬼が来た。

村人たちにとってはこれがたとえ一時でも幸せだったのだろう。

 

……気分の悪い話だ。

 

勘之助の顔も少し青ざめている。

最近まで普通に過ごしていた村がたった数日でこんなにもひどいありさまだ。

何人かは死に、多くが狂った。

 

 

 

その後、しのぶが到着し、血気術の影響を和らげる薬を調合し、勘之助へと渡していた。

村の人達が正常に戻るのがいつかはわからないけれど、勘之助にはつらいだろうな。

 

それでも勘之助は気丈に振る舞って、俺に元気よくお礼を言ってくれた。

なんで、こんな弱くて小さな子供がこんな目に合わなければいけないのだろうか。

鬼とは醜くて狡猾だ。

 

一方でカナエの言うように悲しみを背負った鬼もいる。

 

「難しい話だよなぁ、しのぶ」

 

「ひどい話でしたね。助けた纏楽さんは罵倒され、村の人達は苦しんでいる」

 

「今俺悲しい気持ちだからしのぶが慰めてくれよ」

 

「せめて帰ってから言ってくださいよ」

 

「帰ってからなら何でも言うことを聞いてくれるって!?」

 

「言ってません!」

 

もー、しのぶは厳しいなぁ。

それっ。問答無用でしのぶの正面から抱き着いた。

 

「……少しだけですよ。今日の纏楽さんは少しかわいそうでしたから」

 

しのぶは俺の心が少し荒れているのを察知したのか、抱き着いても特に何も言わずに、俺の背に回した手で背を撫でてくれた。

優しいなぁ。

 

「……カナエと違って胸はまだないな」

 

「しねっ!」

 

いかんいかん。ついつい思ったことが口から漏れ出てしまった。

いやだってカナエと抱き合ったときはいたるところから柔らかさや温かさが伝わってきたからついつい比べちゃって。

 

「私も姉さんと同じような血が流れてますからすぐに大きくなります!今に見てるといいですよ」

 

「お、しのぶは優しいなぁ。見せてくれるんだ」

 

「そういうことじゃない!」

 

カナエがいなくともこんなにも俺に優しくしてくれるしのぶはいい子だなぁ。

 

「しのぶ」

 

「ちょ、ち、近いんですけど」

 

「しのぶは嫌か?」

 

しのぶと俺の顔の間は指二本分もない。

ちょっとした拍子に唇同士が触れ合ってしまいそうだ。

 

「姉さんには、内緒ですよ」

 

カナエは別に許してるし、しのぶの心の内に気が付いているから意味ないと思うけど。

それに、しのぶは顔や態度に出やすいからすぐばれるよ。

なんてもろもろの言葉すべて飲み込んで、今はただその柔らかな唇をむさぼった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、いい考えだと思ったんだけどなぁ。宗教よりも簡単に手を染めやすくて。やっぱ、教祖が一番簡単かなぁ」

 

鬼が退治されて数日後、勘之助の村に新たな影が訪れた。

それは頭から血をかぶったような見た目をしていて、不気味な笑みを浮かべていた。

 

「どうしたんだいこんなにやせ細って。俺は優しいから放っておけないぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 




さ、最後に出てきた奴は一体何磨ナンダーッ!

……実はちょっとずつネタが切れてきて投稿時間が遅くなってきてるのです。
ネタ提供してくれてもいいのよ?

感想評価をもっとくれてもいいのよ?
いや、もっとください。
投稿速度が落ちている今、皆様の出番なんだー!

第二回需要調査(どんな話が読みたいの?)

  • 胡蝶姉妹とイチャイチャ
  • その他原作キャラとイチャイチャ
  • 鬼とイチャイチャ(血みどろ)
  • 師匠と弟子といちゃいちゃ
  • さっさと原作突入しろ

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