じいちゃんにもう一人弟子がいたら(一発ネタ)   作:白乃兎

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どうも、完全に寝込んでいたところから復活いたしました。
土日に更新できず申し訳ありませんでした。

そして申し訳ありませんが連続投稿を維持するのは無理です。ごめんなさい。
一発ネタの弊害かプロットなしに見切り発車したものですからさすがに連続更新はストップさせていただきます。


今後ともこんな拙作をよろしくお願いいたします。



小さな体を抱きしめて

宇随天元、鬼殺隊音柱。

音の呼吸の使い手で、元忍。

そして、三人の嫁を持つ男。そう言った面で俺は天元のことを尊敬してやまない。

 

そんな彼の家に俺は今乗り込んでいた。

 

「で?何しに来たんだ」

 

「いや、暇だったから」

 

「……まぁ、いいんだけどよ」

 

柱業務は超多忙。しかし、継子の育成などの時間も必要なために常に任務に追われているわけではない。

今日はカナエとしのぶといちゃいちゃ……ではなく鍛錬でもしようとしていたのだが、二人は蝶屋敷の運営で忙しくそんな時間はなかった。

ならばと暇つぶしに宇随宅に突如お邪魔した次第である。

 

天元は意外に優しいので急にお邪魔しても怒らない。

天元の三人の嫁さんも優しくにぎやかなので比較的訪れやすい家である。

ちなみに、煉獄家は槇寿郎さんが酒を飲み大荒れしている可能性が高いのであまり近づきたくない。

 

「そーいや、お前中々ド派手にやってるみたいじゃねぇか」

 

「うん?何の話?」

 

そんなたいして派手に行動した覚えはないよ。

最近は杏寿郎と稽古したり、義勇に振り回されたりしかしてない。あとはしのぶの毒がだいぶ形になってきたくらいである。

 

「蝶屋敷の女二人を手籠めにしてるんだろ」

 

「そういえば天元に報告してなかったな。無事カナエと恋人になれたよ」

 

「そんなこたぁ知ってんだよ。その妹ともよろしくやってることまでな」

 

「うん、よろしくやってるよ」

 

この辺は鬼殺隊の中でも有名な話なので天元が知っていても何ら不思議ではない。

天元の嫁三人いることに比べれば派手でもないと思うんだけど。

 

「しかも継子で派生の呼吸、毒の開発までしてるたぁド派手もド派手。よくもまぁそんな派手な女を射止めたもんだな」

 

「俺よりも派手だよなぁ」

 

「十四にして柱に就任してる時点でお前も相当派手だよ」

 

でもたしかに胡蝶姉妹は本当にとんでもない。

二人とも可愛く美人。花の呼吸、蟲の呼吸を会得していて蝶屋敷という治療所の運営を二人と隠の人数名で行っている。

加えてカナエはすでに常中を会得しゆくゆくは柱になるとすら言われる人材で、しのぶは鬼を殺すための毒を開発中。

とんでもない姉妹だなぁ。

 

「で?いつ祝言を挙げるんだよ」

 

「まだ俺十四ぞ?」

 

「俺もまだ十八だ。そんなに変わらんだろう。それに、十五で嫁に行く女もいる。あの姉妹の姉はそれくらいの年齢だろ」

 

「……難しいなぁ」

 

あの二人と結婚することはむしろ望むところである。

でもやっぱり結婚となると子をなすわけで。そういうことをするのは早いと思う。

 

「何が難しいんだよ。屋敷に来て家事してくれるんだろ。ならお前が生涯一緒にいてくれと言うだけじゃねぇか。鬼殺隊に身を置いてんだ、早いほうがいいぞ」

 

「そうなんだよなぁ」

 

まだ早いとは思うけれど、早いほうがいいとも思う。

この複雑な心境を天元はわかってくれないのだろうな。

だって天元は即断即決、悩むよりも行動する人間だから。

 

「男ならしゃんとしな!」

 

「まきをさん、まだ子供ですよ」

 

「この若さでも柱なんだ、立派な男だよ!」

 

「あ、まきをさんに須磨さん」

 

奥から出てきた天元の嫁まきをさん。

須磨さんとの掛け合いは見ていて飽きないものがある。

基本的にこの二人はとても賑やかだ。

 

「粗茶です」

 

「雛鶴さん、ありがとうございます」

 

さらに異様な良妻の気配を漂わせる雛鶴さん。天元の嫁三人は個性的なのだろうか。

 

何が火種になったのか、まきをさんと須磨さんは揉めている。

いつものことなので気にしていない様子の天元と雛鶴さん。

 

「ほれ見ろ。女側からすれば年齢じゃないのさ。頼りがいがあっていかにド派手かどうかだ。お前の気にしていることは見当違いだよ」

 

「気にするだろう。幸せにできるかどうかに関係してくる」

 

実際、若者が考えなしに結婚して後々後悔したなんて話はあると思う。

両者ともに若い俺と胡蝶姉妹なら余計にそうなってしまう可能性がある。

 

「そうじゃないです!確かに裕福かどうかとか、子供がどうかとかそういう問題は——」

 

「好きな人と一緒なら幸せなんですよ!」

 

「須磨ぁ!割り込んでくるんじゃない!」

 

話の外で揉めていた二人が話に入ってきてまた揉めるという傍迷惑。

それをニコニコ笑顔で眺めている雛鶴さんとあきれながらも楽しそうな顔を浮かべる天元。

 

一緒にいるだけで幸せ、か。

それはとても心当たりのある事だった。

カナエやしのぶといるだけで、特に何もしていないのに満たされていく感じがする。

 

いてくれるだけで。あの二人もそう思っていてくれているだろうか。

 

「天元、お前のお嫁さんたち良いこと言うな」

 

「だろ、自慢の嫁だ。ところで話は変わるが煉獄と稽古しているらしいじゃねぇか」

 

そう、あれから俺と杏寿郎はそこそこの頻度で打ち合い稽古を行っている。

杏寿郎も俺も、いい勝負ができるので互いを高めあうことができていると思う。

 

「うん、ほとんどは杏寿郎が屋敷に押しかけてきて強制的にだけど」

 

「それ、俺も混ぜろ」

 

「……いいけど、なんで?」

 

「上弦の壱に手も足もでなかったろ。柱になったからって気を抜いちゃいけねぇよな」

 

曰く、上弦の壱との戦闘の後天元は三人の嫁さんにめちゃめちゃ心配されたらしい。

病室でも騒がしい須磨さんとまきをさんにしのぶが青筋を立てている姿を想像すると苦笑いを浮かべざるを得ない。

 

「いいけど、定期的にやってるわけじゃないからな」

 

「あれだろ、昼間にお前の家か蝶屋敷に押しかければいいんだろ」

 

そうなのだけれども。できればいきなり押しかけてくるのはやめて欲しい。

だって胡蝶姉妹といちゃいちゃしているかもしれないから。

 

しかも俺そんなに稽古が好きなわけでもないんだけど。

強くなるために稽古せざるを得ないとはいえ、そんなに稽古ばっかりもしたくない。

早く引退して、カナエとしのぶの二人とのんびり生活したいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

纏楽くんには蝶屋敷の運営で忙しいという嘘までついて、しのぶを私室に呼び出した。

所謂、女子会というやつなので、申し訳ないが纏楽くんには外に出てもらっている。

話題はもちろん纏楽くん関係のこと。

 

とりあえず、そんなに真剣な話でもないので二人でお茶を飲んで一息つく。

 

「纏楽くんとの接吻はどうだった?」

 

ぶふーっ、ゲホゲホ

 

あらあら、しのぶが口に含んでいたお茶を噴射した。

そんな驚くことかしら?

しのぶはうまく隠しているつもりだったのかもしれないけれど、ここ最近しきりに唇を気にしているのでバレバレだった。

隠せた気でいるしのぶもかわいいわぁ~。

 

「……な、なんのこと?」

 

「やっぱり接吻っていいわよね」

 

「私、まだ経験ないからわからないわ」

 

「隠さなくてもいいのに」

 

「……なんで知ってるの?——まさか纏楽さんが」

 

「しのぶはわかりやすいもの」

 

纏楽くんはそういうことを私に自慢するような人ではない。

しのぶが隠そうとしていることを告げ口したりなんて絶対にしない。

でもしのぶの事だからすぐバレるくらいには思っていたかも。

 

「出会ってそんなに経ってないから恋愛感情はないんじゃなかったの?」

 

「……いじわるする姉さんは嫌いだわ」

 

頬を膨らませてそっぽを向いてしまうしのぶ。

そんな愛らしい妹の姿を見てまた口元が緩んでしまう。

 

「ふふっ、纏楽くんはかっこよくて頼れるもの。好きになっちゃうのは仕方ないわ」

 

纏楽くんを独り占めしようなんて感情はない。

けれど、纏楽くんと私。他に一緒になるとしたら私も纏楽くんも愛している人じゃなければ許さない。

だから、しのぶなら大歓迎だし、姉妹がずっと一緒にいられることはとてもうれしい。

 

「わかったわよ、認めるわよ。好きよ、纏楽さんのこと。あの人がどれだけ私のために時間を割いてくれてると思ってるのよ。そんなにしてくれたら嫌いになんてなれるわけもないでしょ」

 

「ふふふっ、素直なしのぶも可愛いわよ」

 

纏楽くんは鳴柱になる前から多忙。

柱最有力候補であるがゆえに柱就任のため、お館様が優先的に彼に仕事を回していたなんて噂が流れるくらい、纏楽くんは期待されていた。

それなのに、私たちのために纏楽くんは尽くしてくれている。

 

「それで、わざわざ纏楽さんを追い出してまで何の話?」

 

「そんな真剣な話はしないわよ?女子会というやつね。しのぶと二人で纏楽くんについて語り合ってみようかと思って」

 

しのぶは少し警戒した顔つきをしているけれど、私が「纏楽くんに言い寄らないで」なんてしのぶに言うとでも思っていたのだろうか。

私、散々しのぶに「二人で纏楽くんと一緒になろう」って言っていたのだけれど。

 

「纏楽くんのどんなところが好きとか、なんで好きになったかとか?」

 

「嫌よ。はずかしい」

 

「いいじゃない。本人はいないんだから」

 

「姉さんに言うのも恥ずかしいの!」

 

顔を赤くしているしのぶも可愛い。

でも、愛を伝えることをためらっているのはよくないと私は思う。

 

「纏楽くんに好きだって伝えたの?」

 

「……伝えてない」

 

やっぱり。

たぶんだけれど、接吻も傷心の纏楽くんに迫られてのことだと思う。

纏楽くん、楽観的に見えて意外に傷つきやすい守ってあげたくなる面を持っているのだ。

そんな纏楽くんを見ていられなくてしのぶは迫られて自分で癒せるのならとかそういう感じだと予想。

 

「好きなんでしょ?」

 

「……うん」

 

「好きって言わないの?言ったら好きなだけ纏楽くんに甘えられるし、甘えてもらえるのよ?」

 

正直、現状でも纏楽くんとしのぶはいい塩梅にお互い甘えているけれど、なんの理由づけもなく甘えられるというのは恥ずかしがりやなしのぶには重要だと思う。

 

「失ってからじゃ遅いのよ」

 

「……わかってる」

 

両親が鬼に殺されている私たちは、幸せという物がどれだけ壊れやすいものなのかをよく知っている。

そして纏楽くんが上弦の壱との戦闘から重症で戻ってきたときもそれを痛感した。

ならば、私たちは足踏みしている暇はない。

 

早く強くなって纏楽くんの隣で刀を振るっていたい。

戦闘面でも頼りにされたい。

 

早く纏楽くんと結婚して幸せの濃度をより高めたい。

 

早く、早く、早く——

 

望みだしたらきりがない。

それでも私たちはいつ死んでしまうかもわからない。

死ぬ気なんて全くないけれど、それでも最悪の事態は起こりうる。

 

「私はね、私を守ってくれた纏楽くんが好き。ふとした時に弱いところを見せるところも好き。私の夢を笑わないで聞いて、応援してくれる纏楽くんが好き」

 

好きなところなんて探せば探すほど出てくる。

彼への想いなんてあふれ出して止まらない。

それほどまでに一ノ瀬纏楽という人間は魅力的だ。

それはきっとしのぶにとっても同じことだと私にはわかる。

 

だって、私はしのぶの姉さんだから。

 

「私は、纏楽さんに好かれる自信がない。気が強くて、融通利かなくて、可愛げなくて、小さくて非力で。そんな私を纏楽さんが好きになってくれる意味が分からないわ。それこそ、姉さんみたいな人が男の人の理想なのよ。そんな姉さんと恋仲になっておいて、私まで好きになる理由が分からないわ」

 

「そうね、私から見たらしのぶはとっても魅力的。でもそれは私がしのぶに伝えても無意味」

 

その辺のことはきっと纏楽くんが何とかしてくれる。

 

「自分が至らないと思っているなら変わりなさいしのぶ。もっと努力しなさい。纏楽くんに、私はこんなにも魅力的なんだぞって胸張って言えるようになりなさい。自分が至らないのを理由に、纏楽くんの想いから逃げるのをやめなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

宇随宅から帰宅して夕方。

相変わらず寂しい俺の大きな屋敷。

そろそろ担当地域の巡回のために外に出ようとしたとき、しのぶは一人でやってきた。

 

「少し、話があります」

 

「……とりあえず、上がってきな」

 

真剣な顔をするしのぶ。

急にどうしたのだろうか。カナエと喧嘩でもしたのか。

仲良し姉妹が喧嘩というのが想像もつかないし、基本的にはおっとりしているカナエが怒るところなんて想像もできない。

 

客間に案内して、俺としのぶは向かい合って座る。

 

「纏楽さん、私胡蝶しのぶはあなたのことが好きです」

 

本当にどうしたのだろうか。

恥ずかしがり屋で意地っ張りなしのぶがそんなことを言うなんて明日は空から槍でも降ってくるのだろうか。

 

「ありがとうしのぶ。俺もしのぶのこと好きだよ」

 

でもとりあえず、彼女の愛の言葉には正面から応えておく。

 

「纏楽さん、私はもっと努力します。毒も完成させて、蟲の呼吸も磨きます。纏楽さんに自慢の恋人だって言ってもらえるように料理も頑張ります、美容にも気を使います、お淑やかで気建のいい女になります。だから、私を見ていてください。ずっと目を離さないでください」

 

……しのぶは今も頑張っているよとか、今でも魅力的だよとか、変わらなくてもとか、いろいろなことを考えた。

けれど、その言葉はどれもしのぶの決意を蔑ろにするものだ。

ならば、俺にできることは応援すること。しのぶが立ち止まってしまったときにカナエとともに背中を押すこと。

 

「あぁ、わかった」

 

言葉少なくそう言うと、しのぶを抱きしめた。

その小さな体にいろんなものを背負っているしのぶ。

 

たった二年ほど早く生まれただけだけれど、支えてあげられたらと思う。

 

「纏楽さん」

 

俺の着物をきゅっと優しく握って目を瞑り、少し上を向くしのぶ。

こんな風にされたら断れないし、しのぶへの愛が止まらないではないか。

 

その柔らかな唇に口づけ。

ずっと吸い付いていたくなる幸福感が俺の心を満たした。

 

 

 

 

 

「私も混ぜて!」

 

「「いつからそこにいた!?」」

 

 

 

 

 




さぁー、胡蝶姉妹を攻略し終え、次はどうしましょうかね。
数年後パターン、ぐだぐだ日常編をやりながら唐突の鬼狩り。
いろいろ方法はあるけどなぁ。
善逸もまだ原作前すぎてじいちゃんと一緒に登場させるのも早い気がする。

困ったなぁ。

感想評価を頂けるとモチベーションが爆上がりいたしますので、どうぞよろしくお願いします。
一発ネタだからいつエタるかわからんのだ、皆さんの声援でこの作品はまだ生きていられるっ!

第二回需要調査(どんな話が読みたいの?)

  • 胡蝶姉妹とイチャイチャ
  • その他原作キャラとイチャイチャ
  • 鬼とイチャイチャ(血みどろ)
  • 師匠と弟子といちゃいちゃ
  • さっさと原作突入しろ

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