じいちゃんにもう一人弟子がいたら(一発ネタ)   作:白乃兎

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三千文字書いたところでデータが消し飛んで激萎え侍な私でございます。
話を追うごとに投稿速度が遅くなっていって申し訳ねぇ。




愛の力で鬼を狩る

しのぶと手をつないで夕暮れ時の街を練り歩く。

蝶屋敷の備品購入という目的はすでに果たし、ある程度時間ができたので二人で逢瀬の真っ最中である。

 

「重くないですか?」

 

風呂敷を担いでいる俺の心配をしてくれているしのぶだが、正直全集中の呼吸を会得している隊士ならこれくらい余裕であることはしのぶも承知のはず。

つまるところしのぶは荷物を俺にすべて預けているということが不満らしい。

 

「大丈夫だよ。お気遣いどうも」

 

「夫婦なら、荷物はともに背負う物でしょう」

 

「家庭ってのは旦那が支えるもんだろう」

 

結婚しているわけでもないのにこのような会話を淡々と続けるところから俺たちの仲の良さはわかってもらえることだろう。

 

「ふふっ、嫁がか弱いだなんて、胡蝶家には通じませんよ?」

 

そう不敵にほほ笑むしのぶは懐から小さな木箱をのぞかせた。

それには俺も見覚えがある。

 

「なんでそんな物騒な物を持ち歩いてるのさ」

 

ただの買い出しで日が暮れる前には帰るつもりなので俺も日輪刀は置いてきているというのに、しのぶは懐に藤の花の毒を仕込んでいる。

 

「懐に入れていたのを忘れていたんです。うっかりです」

 

「うっかり懐に毒を忍ばせる女、胡蝶しのぶ」

 

「体が小さくて力が弱いからって馬鹿にしないでくださいね」

 

「少なくとも蝶屋敷を利用した隊士がしのぶの事を馬鹿にするわけないだろ」

 

俺は言わずもがなであるが、機能回復訓練をしのぶに見てもらった隊士たちはもれなくボコボコにされているので馬鹿にできようものか。

しのぶを馬鹿にするということは二人の柱を同時に敵に回すということでもあるので、隊士たちは蝶屋敷の女性には手を出さないという共通の認識ができているらしい。

 

「むぅ、最近は小さくて女という理由で私を見下す隊士が少なくなってきてつまらないです」

 

「機能回復訓練でボコボコにしてしのぶが見下すまでが一連の流れだったもんな」

 

最近はしのぶだけでなくアオイやカナヲも機能回復訓練の監督として参加し始めそんじょそこらの隊士よりも鋭い動きをするとして有名である。

 

「私の体はいつになったら大きくなるのでしょうか」

 

「胸は膨らんできてるのにな」

 

「纏楽さんじゃなかったらぶっ飛ばしてます」

 

「俺が俺でよかった」

 

「纏楽さんはだいぶ身長伸びましたよね。うらやましいです」

 

俺も二年でそこそこ身長が伸び、カナエと同じくらいだったところから頭一つ分くらい成長した。

それでも天元や悲鳴嶼さんには全然及ばないわけだけれども。

あの人たちは化け物。何食べたらあんなに大きくなるのか皆目見当もつかない。

 

「しのぶは小さくても可愛いから大丈夫だよ」

 

「女性は可愛いって言われるより美しいって言われるほうが嬉しいんですけどね」

 

「カナエはどっちの言葉も喜んでくれるぞ」

 

「姉さんは単純だから」

 

「ひでぇな」

 

いつもニコニコ笑顔なカナエは俺の言葉いちいちに喜んでくれる。

その笑顔を一層輝かせてくれるのだから俺も調子に乗って愛の言葉を投げかけるのだ。

 

「私は単純な女じゃないので、あの手この手で愛してくださいね」

 

そんな言葉を夕焼けに染まった空の下で口にしたしのぶの顔は空と同じ色をしていた。

そんなしのぶが愛おしくて握った手をもっと強く握りしめる。

 

「それにしても、少し遊びすぎてしまったでしょうか」

 

本来なら夕刻には蝶屋敷に帰る予定だったのだけれども、しのぶと二人で長時間街を楽しんでいたので時間もずれ込み日も沈んでしまいそうである。

 

「今刀持ってないから怖いんだよな」

 

一般人では持ちえない考えだけれど一度鬼という存在を知ってしまうと、夜は鬼という存在を連想させる。

 

「纏楽さんなら刀がなくても鬼を圧倒できるじゃないですか」

 

「……悲鳴嶼さんと一緒にしないでくれ。できるけど」

 

こういう話をしていると運がよくない俺はたいてい鬼と遭遇してしまうのだけれど、さすがにまだ日も落ちてないしそんなことないだろ!

 

「あ、日が落ちましたね」

 

やめてくれ。どんどん鬼と遭遇する条件がそろっていく。

ほんとにやめてね。お願いだから。

 

「そういえばしのぶは日輪刀どうするんだ?」

 

頸を斬る力のないしのぶには普通の刀は必要ない。

とはいっても悲鳴嶼さんほど特殊な刀?を発注するのもどうかと思う。

……特殊な事例にいちいち悲鳴嶼さん引き合いに出てくるの何なのだろう。

 

「毒の調合を可能にする仕組みの刀を里の方たちと相談をしています。まぁ、最終選別を終えてからの話なんですけどね」

 

「散々隊士たちをボコボコにしておいてしのぶは隊士じゃないってすごいな」

 

隊士でもない女の子たちにボコボコにされる隊士。隊士の質が落ちているとはやはり本当なのだろう。

しのぶは俺の継子みたいなものだから仕方ないとして、アオイやカナヲに負ける奴らはダメだろ。

 

……ん?

 

視界の端で黒い影が動く。

動きから察するにそこまで人は食っていないな。

 

「……纏楽さん」

 

「はぁ、うん」

 

どうしてこうなってしまうのだろうか。

今刀持ってないって言ってるだろ!

なんなら隊服も着てない。

 

「あぁ、憎たらしい。その幸せ壊してやりたいな!」

 

俺たちの正面に躍り出た鬼はそんなことを宣う。

俺たちのことが夫婦かなんかに見えているからだろうか。

中々見る目があるじゃないか。街の商人には「兄妹かい?」なんて言われたから俺たち恋人に見えないのだろうかと傷ついていた。

 

「……泣き叫んで逃げろよ!ほら、異形の存在が——」

 

ドパンッ

 

壱ノ型の踏み込みから急接近。蹴りを顔面にぶち込むと、赤い花が弾けて鬼の体が吹き飛んでいく。

 

「しのぶ、毒の用意しといて」

 

「はい」

 

日輪刀を持っていない俺は鬼にとどめをさすことができない。

うっかり毒を所持してたしのぶに任せるしかないが、その毒も未完成のもの。

さて、どうするか。

 

「近くの隊士から刀奪ってこい!」

 

俺の上空を旋回している鴉に端的に用件を伝える。

多分その必要はないけど、保険は大事。

 

「お前ら、鬼狩りかぁ!聞いてないぞ、くそくそくそ」

 

あぁ、隊服着てないからなめられてたのか。

加えて刀は持ってない。本来なら絶体絶命の危機なのだけれど。

 

「まぁ、何とかなるだろ」

 

「頼もしいですね」

 

俺の壱ノ型(蹴り)に反応できない時点でこの鬼の実力に脅威は感じない。

俺もしのぶも余裕の笑みを崩さない。信頼関係が構築されているからこその余裕。

注意すべきは血鬼術だが——

 

「そんなに愛し合ってるなら、望みをかなえてやるよぉ!」

 

「「へ?」」

 

俺としのぶの体が引きあい、くっついた。とはいっても手がくっついてはなれなくなった程度だけれども。

離れようにも離れない。

ぐぐぐぐ。とれない。

 

うん。正直微妙な能力。

いや、確かに強力だけど互いの手が取れなくなるって……

うん、わかるよ?能力が強くなってないんでしょ。人をあまり食べてないから。

 

「とれませんね」

 

「とれないな」

 

「これでぇさっきみたいな速さは無理だろぉう!」

 

うーん、他の隊士だったら無理だったかもしれないけど、俺としのぶに限ってはそんなことないのだ。

なぜなら俺は蟲の呼吸の成立に助力している。足さばきを重要視するという点では雷の呼吸と同じ。

つまり、俺としのぶはたとえ手をつないでいたとしても関係ない。

 

「蟲の呼吸 壱ノ型」

 

しのぶの呼吸にあわせて俺も息をする。

練習など不必要、俺としのぶなら自然と息は合う。

 

優雅なそれでいて雷の呼吸のように速度を持った蟲の呼吸。

この程度の鬼が相手ならば反撃されることなく——

 

「が、あぁ。なんでなんでなんでぇ」

 

毒を打ち込むことができる。

しのぶのつながれていない手には中身のなくなった注射器が握られていた。

 

「この調合は効果ありっと」

 

背後には苦しみに悶える鬼の姿が。

きっと血鬼術がつかえないとか、再生ができなくなるなんて効果ではなく、命を奪うことのできる代物なのだろう。

 

「毒、完成したのか?」

 

「はい。でも、数種類は作らないと」

 

頸を斬るという確実な方法から外れた毒というものを用いて鬼を殺そうとしているのだから慎重に動いているのだろう。

 

「階級己、五味塵太郎とうちゃく――またアンタか!」

 

俺の鴉が隊士を連れてきたらしい。

こいつとは何かと縁があるなぁ。

でもごめん、もう終わっちゃったんだ。

 

「なんすか、いちゃついてるのを見せびらかしに呼び寄せたんすか。鬼はもう片付いているじゃないですか。手なんかつないじゃって、ほんとふざけんなってマジで」

 

「これは血鬼術で手が離れないんだよ」

 

「そんな血鬼術あるか!あんた俺をからかうのもいい加減にしろよ!」

 

「五味さんこれは本当ですよ」

 

「……胡蝶さんが言うなら……」

 

「おい」

 

なんでしのぶの言うことはすぐに信じるんだよ。

普段の行いか?俺が普段から蝶屋敷で隊士たちを困らせているから俺への対応が悪いのか。

 

「……あれ、二人とも日輪刀持ってない、よな?」

 

「うん」

 

「ど、どうやって倒したん!?」

 

しゃべり方が崩れたぞおい。

いやまあ驚くのも分かるんだけれども。鬼は日輪刀で頸を斬らないと殺すことができない。

にも関わらずそこで鬼が死んでいる。

 

「ふふっ、秘密です」

 

「強いて言うなら愛の力だな」

 

「そうですね。私たちだから倒せたと言えますから、愛の力です」

 

正直この手がくっついてしまう謎の血鬼術、俺たちは全く困ってないし何なら一生このままでもそんなに困らない。

むしろ手がくっついたことを口実に仕事から逃げることは可能ではなかろうか。

 

でも、この血鬼術はもっと熟練度を上げていけばとてつもなく強力な能力になったことだろう。

ここで俺たちを隊服を着ていないからって襲ったことが運の尽きだった。

背後で灰となって散ってゆく様を見てそんなことを思う。

 

「胡蝶姉妹ってあんたと一緒だとおかしくなるよな」

 

「纏楽さんの前だと魅力的な女性でありたいですから」

 

「ありのままのしのぶが一番魅力的だよ」

 

「すんません、帰っていいすか」

 

「あ、隠の人呼んできて」

 

「なんで俺に頼むの?鴉に呼んできてもらえよ!」

 

「おいおい、だれのおかげで階級がそこまで上がったと思ってんだ?」

 

「ちくしょうっ!わかったよ!」

 

この何かと縁がある五味くん。

俺が暇つぶしに稽古をしてやったりしている。

その結果、階級を少しではあるが上げ、怪我をすることも少なくなったとか。

 

「彼が塵の呼吸の使い手ですか」

 

「うん、冗談でやらせたらほんとに形にしちゃったんだよね」

 

 

 

その後、ずっと手を離さない俺たちは「はいはいいつもの」と隠の人たちに見られながら蝶屋敷へと帰還した。

カナエは血鬼術を使われてないのにもう片方の手にくっついて離れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いつもワンパターンないちゃいちゃで申し訳ねぇ。
そろそろ話を動かしていこうと思うので戦闘はもうしばしお待ちを。

感想評価をくれぇ。
モチベーションを皆さんの力であげてくれぇ。
さすれば善逸や童磨も出てくるかも(期待はするな)

第二回需要調査(どんな話が読みたいの?)

  • 胡蝶姉妹とイチャイチャ
  • その他原作キャラとイチャイチャ
  • 鬼とイチャイチャ(血みどろ)
  • 師匠と弟子といちゃいちゃ
  • さっさと原作突入しろ

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