じいちゃんにもう一人弟子がいたら(一発ネタ)   作:白乃兎

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近頃リアルが多忙で投稿できてませんでした。
そしてこの後も一月中は投稿厳しいです。
すんません。


説教ばっかだと血管切れるよ爺さん

「纏楽!お前は柱になっても逃げだしておるのだろう!」

 

たまには爺さんのところに顔を出そうなんてことを考えたのが運の尽き。

二人の弟弟子の前で正座させられすげえ恥ずかしい感じになってしまっている。

 

獪岳と善逸という可愛い弟弟子。

そんな弟たちにかっこいい姿でも見せられたらなんて軽い気持ちで来たら真っ先にお説教をくらいました。

あれじゃん、まずは頑張った孫(弟子)をねぎらうところじゃん。

俺鳴柱になったんだよ?爺さん以来途絶えていた鳴柱になったんだよ?

まずは褒めるところからじゃん。よくやったって言うところじゃん。

 

獪岳も善逸も現役の柱に説教できる爺さんすげぇみたいな視線を送ってるじゃん。

俺よりも爺さんのことを尊敬してるじゃん。

まぁ爺さんが俺よりも尊敬されるのはわかるけれども、俺だって結構なところまで上り詰めたんだから尊敬されたいじゃん。

 

「爺さん、もうお説教飽きた」

 

「全く反省しとらんな!?」

 

正直反省などこれっぽっちもしていない。

だって楽をして生きていきたいから。

カナエとしのぶや蝶屋敷の子たちと一緒に平和に過ごしていたい。

柱になろうが引退しようがその考えは変わらない。

 

「ところで爺さん」

 

「なんじゃ!反省するまで正座はやめさせんぞ」

 

「恋人が二人ほどできたんだけど」

 

「「はあぁ!?」」

 

「おおう、善逸までどうしたんだよ」

 

爺さんだけでなく善逸まで過剰な反応を示した。目をこれでもかと見開いて発狂するその様はそんじょそこらの鬼よりも怖い。

一方で獪岳は完全に俺たちの話は聞いていない。

うん、それが賢いと思うよ。だってこの謎の言い争いからは何も得ることはないから。

 

「人様に迷惑だけはかけてはならんといったのにお前というやつは!」

 

「なにそれなにそれ!柱になれば嫁さんたくさんもらえるの!?俺なんて女の人に貢がされた挙句に捨てられたのに!?」

 

師匠と弟弟子二人に詰め寄られて大声で色々と言われているが正直二人同時に叫ばれても何が何だか分からない。

俺はかの有名な聖徳太子ではないので。

 

「そのうち爺さんにも紹介するからそんな発狂しないでよ」

 

「お前は何をそんな呑気なことを言っておるのだ!」

 

「なんで騒いでるの?」

 

とりあえずぎゃいぎゃい騒いでいる善逸は無視して爺さんの説教を抜け出すことを考える。

もしや俺が悪いことをして女をひっかけたとでも思っているのだろうか。まったくもって心外である。

 

「お前ら弟子のしでかした不始末は儂の責任でもあるだろう!今すぐにその娘さんたちに頭を下げに行かなければ——」

 

「迷惑なんてかけてない……とも言えないかも」

 

よくよく考えれば迷惑はかけているかもしれない。

俺の無駄にでかいだけの屋敷の掃除をしてくれているのはしのぶだし、夜中に蝶屋敷に行ったときにお茶や軽食を作ってくれるのもしのぶ。俺が洗濯物をためているのを何とかしてくれるのもしのぶ。

……カナエもちょいちょい俺のお世話をしてくれるけれどやはり柱という地位にある以上あまり暇がないのである。

 

「でも、ちゃんと愛し合ってるから大丈夫だよ」

 

また善逸の声が響き渡るけれどそれも無視。

 

「……本当だな?」

 

なんでそんなに信用がないのだろうか。

ここまで私生活以外はしっかりとしてきたのに。

 

「今度二人を連れてくるよ。そしたらわかるって」

 

「ねぇねぇ聞いてるの纏楽さぁん!」

 

抱き着いて俺の髪の毛を引っ張り始める善逸。

鬱陶しいことこの上ない。

こいつには稽古を厳しめにしてやることにしよう。

 

 

 

 

 

シィィィィィィ

 

 

三人が呼吸を整えて、高速の剣戟を繰り出しあう。

 

初撃は善逸の霹靂一閃。

 

高速の踏み込みから俺に向けて木刀を振るう。

なぜか目が血走っていて殺意満々だけれど気にしない。

だが、ぬるい。

善逸の霹靂一閃は瞬間移動の域に至っていない。確かに他の呼吸の技に比べたら速いけれど、それでも杏寿郎といった柱の面々に比べると全くダメだ。雷の呼吸は最速でないといけない。

この程度の技量ならばどうにでもなる。

斜めに受けて斬撃を逸らし、善逸の後を見計らって斬りかかってくる獪岳の連撃を受ける。

 

背後から再び迫ってくる善逸の気配がする。

なるほど、獪岳との挟撃か。

 

だが足りない。

軸足を残し体を独楽のように回転させ善逸を木刀で殴る。

ちゃんと手加減はしているけど、大丈夫だろうか。善逸がゴロゴロと転がっていくのを横目に確認しながら今の回転斬りを受け切った獪岳の対応に戻る。

 

臆病でまっすぐな善逸とは違い、獪岳の目には俺を出し抜いてやろうという気持ちが前面に出ている。

こういう野心のある奴と稽古するのはこちらも気が抜けないので身になるというものだ。

 

でも、足りない。

獪岳の熱界雷による斬り上げを半歩身を引くことで回避。

今度は逆に俺が一歩踏み出して肘で獪岳の胸を打つ。

 

がぁっ、と口から息が漏れる獪岳。

呼吸を整えるのに時間を要するのならばここで脱落だが——

 

ドンドンドンドン

 

四度の踏み込み音がする。

次の瞬間には肉薄する善逸の姿が目に入る。

だがそれも遅い。霹靂一閃ならば斬られたことにも気が付かせることなく殺れる。

踏み込みの音がした時にはすでに斬っている段階にまで至ってようやく完成の技だから。

 

善逸の刀を振るう腕を掴んで抜刀を止め、そのまま投げる。

ぎゃあああぁぁぁ!?なんて悲鳴が聞こえてくるけれど、木刀で殴らないだけ優しいと思う。

 

俺が善逸の対処をしていた今の一瞬のうちに体勢を立て直したのか、獪岳は稲魂による五連撃。

しかし呼吸が整っていない状況で無理やり放ったからか太刀筋が緩い。

これなら、稲魂を後出しして相殺する必要もない、技も使わず五回木刀を振るうだけで事足りる。

 

獪岳の五撃目を上に弾いて胴体をがら空きの状態にする。そこに比較的優しく蹴りを入れて吹き飛ばす。

 

ドンッ

 

そこに聞こえた一際大きな踏み込みの音。善逸か?

いやっ、違う!

俺の戦闘勘が危険だと警鐘を鳴らす。

 

ガキィッ

 

とっさに感覚を本気用に切り替え、迫りくる斬撃を受け止める。

二人の弟弟子の攻撃とは格が違う重い手ごたえが俺の木刀越しに伝わってくる。

この一撃は杏寿郎の一撃にも劣らない。そんな威力の技を放つことができるのは爺さんくらいである。

 

「おいおい、あんたは見てるだけじゃなかったのかよ」

 

「気が変わった」

 

その小さな体に似合わない獰猛な笑みを浮かべて俺と鍔迫り合う爺さん。

俺が爺さんの下を離れてから二年以上。現役引退してそれ以上の時が流れているにも関わらず衰えないこの爺さんはどういう体のつくりをしているのか。

引退したんだから、弟子が柱に就任したんだからもっと衰えていろよ!

 

一度離れてにらみ合う。

これはもう獪岳や善逸が入ってこれる雰囲気ではない。

爺さんの提案で弟弟子に稽古をつけてくれということになったのに、爺さんのせいで二人が稽古から閉め出された。

 

「現役の鳴柱の本気見せてもらおうかの」

 

はぁ、本気でやらなきゃ納得してくれないんだろうなぁ。

良い感じに打ち合った後に逃げ出したら大目玉だろうなぁ。

 

――雷の呼吸 捌ノ型迅雷万雷

 

爺さんには手紙で教えていても、実際には見せたことのない技。いくらこの爺さんが化け物だったとしても初見。対応は後手に回らざるを得ないはず。

 

動きの緩急と小刻みな踏み込みで錯乱しつつ距離を詰め、容赦なく木刀を振るう。

袈裟斬りを木刀に沿わされ受け流されるが、くるりと持ち替えて斬り上げ。爺さんは大きく距離をとろうと後退するが、逃す気はない。

すかさず距離を詰め爺さんの胴に向けて突き。

 

しかしそれは熱界雷による斬り上げで逸らされ、小さな体を利用して懐に潜り込まれる。

予備動作から弐ノ型を使おうとしていることを見極める。

 

体を爺さんに預けるように寄りかかると、爺さんを軸にしてぐるりと回って爺さんの背後へ。元来の雷の呼吸の使い手ではしないようななめらかで曲線的な動き。これはカナエや義勇の動きを参考にしたものだ。

爺さんの神速五撃が空を斬っている。爺さんの背中を木刀の柄で叩くが、手ごたえは浅い。相変わらず落ち葉のように捉えづらい動きをするな!この人は。

 

「あれが捌ノ型か、儂でもやれそうじゃの」

 

「おいおい、一回見たら使えるようになるとかどんなだよ」

 

シィィィィィィ

 

雷の呼吸 壱ノ型霹靂一閃神速六連

 

互いに呼吸を整えた次の瞬間には全く同時に同じ技を使っていた。

きっと獪岳や善逸の目には捉えられない速さだ。

一度目の交錯、空気を斬り裂く二つの雷がぶつかり、すれ違う。

 

ぱぁん

 

木刀同士の打ち合いとは思えない音が響く。

 

続けざまにドンドンドンドン四度の轟音と木刀を打ち合わせる乾いた音が響く。

しかしそのどれもが俺たちを傷つけることはない。互いの刀は受けられ、流され、弾かれたのだ。

 

最後の踏み込み。

だが、このままでは決着はつかないと判断して型を変える。

 

玖ノ型 雷煌

 

神速の雷が交錯する。

爺さんが木刀を一度振るう間に俺は五度木刀を振るう。

 

「見事」

 

以前とは違って、砕けたのは爺さんの木刀のみ。

ようやく、俺は爺さんを、先代を本当の意味で超えた。

しかし、今回一度勝てたからと腑抜けてはならない。この爺さんはすぐに捌ノ型も玖ノ型も会得して俺をボコボコにするに違いない。

体の動かし方だってまだまだ俺は敵わない。

 

でも、爺さんを負かしたんだから弟弟子にドヤ顔するくらいいいよなぁ!

 

「これが、現役の柱」

 

「じ、じいちゃんが負けたぁぁあ!?そんな相手と稽古させられてたわけ!?そんなん命がいくつあっても足らないよ!まだ体が痛むよぉう!」

 

……なんか思ってた反応と違う。

もっと「すげー!!!」からのちやほやされる感じを想像していたのに、獪岳は冷静に何かぶつぶつ言っているし、善逸は永遠にギャーギャー騒いでいる。

なんか、兄弟子のやりがいがないなぁ。

 

「爺さん、帰っていい?」

 

こんなことなら蝶屋敷の面々とのんびり過ごしていたほうが俺の心の平穏は保たれるのだけれど。

 

「いいわけなかろう!」

 

いや、だって俺は壱ノ型だけ使えない理由も壱ノ型だけ使える理由も分からないし。

お役には立てないと思う。

 

「えー」

 

「ええい、ぐちぐち文句を言うな!」

 

なんて横暴な爺さんなんだ。俺は弟弟子と師匠の様子を見に行くという体でただ仕事から逃げ出したかっただけなのに。

 

「ねぇ爺さん」

 

「なんじゃ」

 

「祝言っていつ挙げればいいんだろうか」

 

「知るか!!!」

 

とりあえず説教から逃れるために話題を逸らしにかかったのだけれど、大失敗。

当然のごとく説教地獄で、ここに滞在している間は弟弟子の稽古を見るように言いつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




獪岳、善逸登場回。
そして悩む獪岳の扱い。

さて、相も変わらず感想評価を求めてます。
皆さんのお声一つ一つが私を元気付ける!
よろしくお願いいたします。

第二回需要調査(どんな話が読みたいの?)

  • 胡蝶姉妹とイチャイチャ
  • その他原作キャラとイチャイチャ
  • 鬼とイチャイチャ(血みどろ)
  • 師匠と弟子といちゃいちゃ
  • さっさと原作突入しろ

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