じいちゃんにもう一人弟子がいたら(一発ネタ)   作:白乃兎

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はい、また投稿遅れてしまいました。

原作の時期と今作の時期のずれはもう合わせるのは無理だと思うので、私の作品と原作とがズレがあっても見逃してください!
根本的な設定のミスなどはご指摘いただけると嬉しいです


生きて帰るぞ

柱の鬼殺は、基本的に決められた範囲の鬼を殲滅すること。

その中でも被害が甚大なところから順に鴉が誘導してくれる。

爺さんのところから自分の担当範囲への帰りにそのまま鬼殺のお仕事である。

 

「オラぁ!」

 

「実弥、冷静に!」

 

その中にはもちろん若手の隊士たちが奮闘している戦場もあるわけで。俺も若手だけどね。

今回俺が鴉に誘導された現場は下弦の壱。

相対するは数名の隊士たち。その中でも一段と輝きを見せている隊士が二人ほど。

 

「こわぁ」

 

あまりでしゃばって階級の低い隊士隊の手柄を横取りしても申し訳ないし、隊士たちが育たないので少し離れたところから戦況の行く末を見守っている。

そしてこの勝負の行方を左右し得る隊士が目に入る。

その隊士なのだが……顔が怖い。

 

年齢的にはきっと俺とそんなに変わらないのだろうけれど、その眼付きと顔の傷、言葉遣いがすげー怖い。

風の呼吸の使い手でその技一つ一つは非常に質が高く柱にも届きうるものだ。

少し前に五味の剣技を見てやった時にはこれほどの風の呼吸は見られなかった。

 

「ふざ、ふざけるなぁ!」

 

下弦の壱が血鬼術を行使し始めたことによってまた戦況が揺らぐ。

数名の隊士たちがそれによって血を流すが、致命傷には至っていない。

隊士たちが今だ戦えているのはきっともう一人体の動きが違う頬に傷跡のある黒髪の隊士の力によるものだろう。

下弦の壱の血鬼術は殺傷力の高い斬撃を無数に飛ばすもの。

 

「ぐぅっ」

 

「匡近ぁっ!」

 

腐っても下弦最強の鬼。

その殺傷力の高い血鬼術は確実に隊士たちを蝕んでいく。

 

……人死にがでても嫌だし、そろそろ介入しようかな。

 

雷の呼吸 壱ノ型霹靂一閃

 

血鬼術による斬撃をより鋭い俺の抜刀術によって打ち消す。

そして羽織を翻し背後にいる隊士たちの方を振り向き一言。

 

「俺が来るまでよくこらえた」

 

……決まった。

隊士たちは柱の俺が到着したことで安堵の表情を浮かべている。

ただ、例外が一人。

 

「風の呼吸の君、援護はしてあげるから決めな」

 

「柱様は遅れておいて頭が高ぇなぁ」

 

だから怖いよ!

ごめんね、鳴柱のくせに到着遅くて!

柱最速を謳っていておいて情けないよね!でも若手が育つことも大事だから。

少なくとも俺が到着して見守っている間に死者は出なかったから許してくれよ。

 

「全集中・風の呼吸 壱ノ型塵旋風・削ぎ」

 

荒々しく地面を削りながら下弦の壱に向かって突き進んでいく。

若手にありがちな無謀に見える強者への突撃。

下弦の壱は当然風の刃が自らの頸に届かないように斬撃を、異形の鞭を飛ばして遮ろうとする。

 

「雷の呼吸 弐ノ型稲魂」

 

風の呼吸の彼を襲う攻撃一つ一つを打ち落としていく。

すべての攻撃が無力化され風の刃が自らの頸に届くことを悟った下弦の壱は鬼の脚力で全力で逃走を図る。

 

「おまけだ、足も封じといてやる」

 

——霹靂一閃

 

逃げ出す下弦の壱を切り落とし、下弦の壱の体は足を失って宙に投げ出される。

迫った風の刃が下弦の壱の肩から上をえぐり取った。

 

「お疲れさん」

 

「足は持ってかなくても俺一人でやれた」

 

何でこいつはこんなに態度が悪いのだろうか。

というか何でこいつの隊服は白で、背に描かれた文字が「滅」ではなく「殺」なのはどういうことなのだろうか。

みんなと違うことをしたいお年頃なのだろうか。

 

「なら、お前も柱にすぐなれるよ」

 

こういう不良君には張り合うだけ不毛な気がするので、やんわりと流して隠の人たちを鴉で呼びつける。

 

「救援、助かりました」

 

「おぉう、君は素直なのな」

 

不良君と戦況を支えていたもう一人の男が俺に向かって敬語でお礼を言ってきた。

きっとこの男の方が俺よりも年上だろうに階級を気にしてしっかりと礼儀正しくしている。

なんという好青年、不良の彼にも見習ってほしいものだ。

 

「なんでこっち見んだぁ!」

 

「いや、君も礼儀という物を学べよという視線」

 

「鬼を殺すのに礼儀なんていらねぇだろうが」

 

「鬼の前とか俺の前では良いけど他の柱の前でそんな態度だと説教待ったなしだぞ」

 

特に天元やカナエは口の悪さをとやかく言うだろう。

うっかりお館様にまで悪い態度をとってしまえば柱全員から稽古という名の体罰が待っている。

 

「なあ、君」

 

「あ、匡近です。こいつは実弥」

 

匡近に実弥か。有望株だから名前と顔を覚えておこう。

礼儀正しく優しい雰囲気の匡近と不良の実弥。

 

「よし匡近、実弥に礼儀を教えてやってくれ」

 

「まかせてください。こいつはきっと柱になります。その時に口が悪いと困るのは実弥ですから」

 

「いらないって言ってんだろうがぁ!」

 

俺と匡近によくわからないおせっかいを焼かれてお冠な実弥。

こいつが柱になった暁には俺がご飯をおごってやることにしよう。

 

「なぁ匡近、実弥の好きな食べ物とか知ってるか?」

 

「実弥はおはぎが好きですよ」

 

「何勝手に言ってんだぁ!」

 

「よし実弥、お前が柱になったらおはぎたくさんおごってやるぞ」

 

「お前とメシなんていかねぇわ!」

 

隊士が死んでいない現場というのは重苦しい空気にならないのでとても嬉しい。

多くの隊士が死んでしまった現場で生き残った隊士にどう声をかけていいのかわからない。

それも友人や恋人が死んでしまったともなれば俺にはどうすることもできないのだ。

そのたびに間に合わなくてごめんと謝るのだが、その行為になんの意味もないのだ。

 

「じゃあ匡近と君たち、実弥はおいてみんなで今からメシ食いに行くぞ。俺のおごりだ!」

 

うぉぉおおお!と隊士たちから歓声が上がる。

敬遠されがちな柱であるが俺はこうしてできるだけ交流をするようにしている。

 

「お前ら、この時間にもやってる店を『カァァ、胡蝶カナエ、上弦ノ弐ト遭遇ゥ!相手ハ上弦ノ弐ィ!』」

 

俺の鴉が報告をし終わる前に俺はズドンという音だけをその場に残して駆け出した。

足が馬鹿になってしまうくらいに全力で回転させて走る。

 

急げ急げ急げ急げ急げ!

カナエが死ぬ、よりにもよって上弦の弐なんていう最強格の鬼と遭遇するなんて。

鴉が方向を教えてくれる。きっと鴉は自分が飛んで案内するよりも俺が全力で走ったほうが速いと判断したのだろう。

俺のことを考えて状況判断をした鴉に感謝してさらに足に力を籠める。

一足一足が地面を揺らし足跡が残る、周りの光景が後方に流れていく。

 

幸いにも俺の見回りの領域とカナエの領域は隣接している。

全力で走れば絶対に間に合う、間に合わせる。

 

 

 

 

——見えた、雷の呼吸 壱ノ型霹靂一閃神速

 

俺の出すことのできる最速でカナエと鬼の間に割り込んだ。

 

 

 

 

 

冷たい空気が俺の体を、筋肉を、脳の働きを鈍くさせる。

だが、そんなことに足を引っ張られていれば命はない。

 

カナエはまだ本格的な戦闘をしていなかったのか無傷。

つまり、二人万全の態勢で上弦の弐に挑むことができるのである。

 

「纏楽くん!呼吸をするときは気を付けて!」

 

先んじて少し交戦していたカナエからの情報は常に頭の片隅に置いておく。

氷の血鬼術、両目の上弦・弐の文字。

並の鬼とは一線を画す強力な鬼であることは確かである。

 

「邪魔をしないでほしいなぁ。せっかくカナエちゃんと仲良くしていたのに」

 

カナエは持ち前の視力によって巧みにこいつの血鬼術を凌いでいたようで、しっかりと戦える状態である。

しかし防戦一方であったようで上弦の弐の体は綺麗なままである。

 

「カナエを殺したきゃ、俺を先に殺すんだな」

 

上弦の壱の時よりも状況は悪い。

ならば、俺が柱二人分以上の戦いを演じなければならないのである。

しかし自由に呼吸をすることはできない。体は冷え、万全の態勢で戦うことはできないかもしれない。

 

「そうだな、じゃあ君から殺すことにしよう」

 

「カナエ、ここは呼吸していいか」

 

「うん、氷の周辺に細かい氷の粒が舞っていてそれは吸わないようにね」

 

空気を肺に取り込め。体温を上げろ。血液を巡らせろ。

集中しろ、相手の動きを注視しろ、俺が負ければカナエは死ぬ。しのぶを泣かせてしまうことになるだろう。

 

いつぞやのようにカナエとしのぶを守りながら戦った鬼とは格が違う。

最強の鬼の一角である上弦の弐相手に柱二人でどうにかなるかと言われればおそらくどうにもならないだろう。

 

きっと俺たちの勝利条件は夜明けまで凌ぎ続けるか、他の柱が応援に駆け付けるまで耐えるか。

しかし、氷を扱い俺たちの体を害する奴の血鬼術はそれを許さない。

 

シィィィィィィ

 

雷の呼吸 壱ノ型霹靂一閃八連

 

ドンッという踏み込みの音のみをその場に残し上弦の弐に肉薄する。

しかし俺の神速の踏み込みを何の苦でもないかのように上弦の弐は目でしっかりととらえている。

 

鉄扇で俺の初撃をいなす。

続けざまの七連撃も同様に傷つけることはできなかった。

 

「ふっ」

 

俺の攻撃直後を狙ってカナエも連撃を叩き込むがすべて鉄扇と氷によって防がれてしまう。

そして、面倒なのが攻撃後は呼吸のために一度上弦の弐の射程から出なければならないことであり、接近されれば俺たちはまともに呼吸ができないということである。

 

切り札は持っているけれど、それも長続きするものではない。

 

結局俺たちが圧倒的に不利な状況に立たされていることには変わりはなかった。

 

「君、速いねぇ。気を抜いていたら頸を持っていかれていたよ」

 

くっそ、余裕ぶっこきやがって。

 

パキパキという音をたてて蓮の花と氷の蔓が形成される。

 

「纏楽くんっ!」

 

俺を殺してからにしろといったからか俺にばかり氷は迫ってくる。

 

シィィィィィィ

 

今まで以上に空気を肺に取り込む。

 

雷の呼吸 陸ノ型電轟雷轟

迫るすべての蔓を切り刻む。続けざまに氷の蓮の花から冷気が流れてくる。

 

冷気が通り過ぎた後の地面はパキパキという音を立てて凍り付いている。

剣戟では冷気をどうにもできないとでも思っているのだろうか。

 

雷の呼吸 伍ノ型熱界雷

 

高速の斬り上げで空気を裂き、冷気は俺を避けるように隣を通り過ぎていく。

 

「まだまだいくよー」

 

俺の頭上に氷柱が形成される。

 

雷の呼吸 壱ノ型霹靂一閃神速

 

氷柱は俺が立っていたところに突き刺さるが、すでに俺はそこにはいない。

一度目よりも速い抜刀術。

 

速さはすでに対策されているようで、上弦の弐の目の前に氷の棘が生成され、そのまま突っ込めば俺は串刺しになることだろう。

 

捌ノ型 迅雷万雷

 

棘に刺される直前に斜めに軌道を変え、横薙ぎ。

 

ギィン

 

鉄扇に防がれる。

 

「おぉ、あの速いのから軌道を変えられるんだ。それっ」

 

氷を纏った鉄扇が振るわれる。上弦の弐の緊張感のない掛け声からは想像もつかないほど高速で鋭く振るわれる。

 

雷の呼吸 弐ノ型稲魂

 

鉄扇とその周辺に舞う氷の粒によって刀の軌道が阻害され、上弦の弐には届かない。

弐ノ型を放ち終わったそのままの勢いで体を宙に浮かせてクルリと回転させる。

 

雷の呼吸 参ノ型聚蚊成雷

 

俺の側頭部めがけて振るわれた鉄扇を弾く、弾く、弾く。

鬼の圧倒的膂力に対して俺は非力な人間。一度の攻撃を弾くために数度の攻撃を必要とする。

 

鉄扇をかいくぐり上弦の弐の頸めがけて刀を振るうも、氷と鉄扇が必ず俺の刀の邪魔をする。

 

「おっと、危ないなぁ。カナエちゃんも後でちゃんと遊んであげるから待っててよ」

 

俺の連撃に加え、カナエの花の呼吸による攻撃。

柱二人による攻撃の嵐をこいつは危なげなくしのいでいく。

 

刃がこいつの肉体に届いても頸以外なら即座に回復。

一方でこちらは極小の氷の刃によって肌が裂け体温が奪われていく。

かろうじて手足や目といった部分は無事だがその状態もいつまでもつか分からない。

 

「すごい連携だね」

 

毎日のように稽古を二人で積んでいる俺たちはそれこそ阿吽の呼吸。

カナエの次の太刀筋を、足さばきをすべて把握して上弦の弐を追い込もうとしているにも関わらずこいつにはまだ余裕が感じられる。

完璧に連携のとれた柱二人を相手にしてこの強さ、普通ではない。

 

もっと集中しろ、鬼の動きを予測しろ。

次の動きを、筋肉の収縮から眼球の動きから言動から。

 

俺は呼吸のために一度距離をとる。

カナエの方はまだ肺の中の空気には余裕があるようだ。

 

上弦の弐はどこか油断している節がある。

俺たちを殺せるだけの技と速さと力が備わっていながら楽しんでいるようにも見える。

 

「それが命取りだ」

 

雷の呼吸 壱ノ型霹靂一閃神速八連

 

空気を肺に取り込み、血液を体に巡らせ、足に意識を集中させる。

 

俺の最高速度。

地面が陥没する踏み込み、足の筋肉が悲鳴を上げる。またしのぶに怒られてしまいそうだ。

 

上弦の弐の生み出した氷の蓮華をすべてを凍てつかせる冷気を。

蒼い雷が過ぎた後、その場のものはすべて斬り裂かれている。

 

死角に回れ。

上弦の弐といえど人型である以上視界には限界があるはずだ。

音を、気配を置き去りにしてその頸を——

 

ザク

 

頸を斬った感触はない。

眼前には上弦の弐を模した氷像が数体。

 

「なっ」

 

「こいつらは俺と同じだけの力を持ってるんだ。すごいだろ?」

 

俺の刀は目の前の氷像三体を斬り裂き四体目の体を半ばまで斬ったところで止まっていた。

 

「いやー、速い速い。それであと少し威力があれば俺も危なかったかな」

 

氷の蔓が、極小の刃が、冷気が俺に迫る。

まずい一時撤退を——

 

カナエが援護してくれている。

しかし——

 

「隙あり」

 

氷を纏った鉄扇が俺の脇腹を斬り裂いた。

鮮血が舞う、意識が遠のく。

傷口から体温が抜け落ちていく感覚が分かる。

 

「纏楽くんっ!」

 

カナエが俺を抱えて上弦の弐の攻撃範囲から逃げ出す。

カナエの肩が極小の刃によって少し裂かれるが、上弦の弐はそれ以上追わなかった。完全に舐められている。

 

「大丈夫?」

 

「あんま大丈夫じゃない」

 

呼吸で止血はしているが危ないことは確かである。

幸いなのはいまだ俺たちの肺は氷に侵されていないことだ。

 

パキパキという音を立てて上弦の弐を模した氷像が生み出される。

この一体一体が上弦の弐と同様の力を有しているとなると、絶体絶命としか言いようがない。

 

「カナエ、使うぞ」

 

「……わかった」

 

長いことは持たない俺たちの切り札。

懐から取り出して、それを自らの体に投与する。

 

「……?何をしたのかな」

 

「さぁな」

 

さぁ、どうする。

珠世さんからもらったこの血鬼止め、効果時間とかは特に書かれていなかった。

本来はすでに体を侵している血鬼術に対して投与する薬だからだろう。

上弦の弐の肺に干渉する血鬼術にどれだけ効果があるかもわからない。

 

だが、こうでもしなければ勝ち目はない。

 

「生きて帰るぞ、カナエ」

 

「もちろん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、というわけで始まりましたターニングポイントである童磨戦。
上弦の弐に痣なしの二人で挑まなければならないというクソゲーの始まりです。

長くなったので童磨戦は分割です。
……多分強引に倒しにかかるけど許してくれよな!

感想評価をいただきたいです。
くそほど適当なものでいいので感想ください。
非ログインユーザーも書けるので!
モチベーションが下がってきている私に燃料投下をお願いします。

第二回需要調査(どんな話が読みたいの?)

  • 胡蝶姉妹とイチャイチャ
  • その他原作キャラとイチャイチャ
  • 鬼とイチャイチャ(血みどろ)
  • 師匠と弟子といちゃいちゃ
  • さっさと原作突入しろ

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