じいちゃんにもう一人弟子がいたら(一発ネタ)   作:白乃兎

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久々の連続投稿。
でももう次の話には亀更新になっている予定なので期待はしないでください。

そして無理やりな展開も目を瞑ってくれると嬉しいんだぜ!


とっととくたばれ糞野郎

シィィィィィィ

 

フゥゥゥゥゥゥ

 

二種類の呼吸音、氷がパキパキと鳴る。

 

空気をこれでもかと肺に取り込み体温を上げる。

珠世さんの血鬼止めのおかげで肺が凍り付く心配がなくなった、と思いたい。

 

「おー、怖い怖い。二人とも目つきが悪いなぁ」

 

霹靂一閃の踏み込みで接近、弐ノ型稲魂で氷像二体を破壊、三体目は氷の扇子で止められる。

間髪入れずに突っ込んできたカナエが俺の逃した氷像を壊しにかかる。

カナエの花の呼吸は流れるように三体目を斬り飛ばし、優雅に舞うように戦う。

 

「それっ」

 

気の抜けるような上弦の弐の掛け声とともに飛来するは氷の蔓と冷気。

 

「ふっ」

 

カナエの花の呼吸の連撃で冷気を払う。

俺は蔓を斬り払うが、さらに俺たちの状況は悪くなる。

頭上からは氷柱、背後からは二体の氷像。本体は蓮を生み出し俺たちは息つく暇すらない。

 

痛む脇腹を、集中することで強引に黙らせ氷を斬り裂く。

不幸中の幸いなのは氷像は頸を斬らずとも破壊が可能な点、胴体さえ真っ二つにしてしまえば動くことはなくなる。

しかし、本体を倒さない限りは無限に氷像も生み出される。

 

俺の体にも傷は増え続け、カナエの体からも血が多く流れている。

早々に決着をつけなければ敗北は必至。

だが、圧倒的物量の前に本体に刃を届けることができない。

 

トンッとカナエと背を合わせた状態になりお互いの死角を補い合う。

氷像の動きも上弦の弐と同等で、頸を斬られないように立ち回る必要がないために非常に強力だ。

 

雷の呼吸 陸ノ型電轟雷轟

 

俺の背後ではカナエも俺と同じく手数の多い型を行使することで数を減らす。

技を放ち終わると同時にカナエと俺は上弦の弐に向けて走る。

 

シィィィィィィ

 

「そこからじゃ届かないでしょ」

 

距離がまだある状態で刀を振りかぶる俺の姿を見てそんなことをほざく上弦の弐を無視。

体を地面スレスレまでかがめて型を使う。

 

雷の呼吸 肆ノ型遠雷

 

「へ?」

 

届かないと思える刃は届き上弦の弐の足を持っていく。首は鉄扇に隠れていて狙えなかったが、俺が斬らなければならないというわけでもない。

当然上弦の弐の再生速度は凄まじいが、間髪入れずにカナエが頸を狙う。

しかしカナエの刀は上弦の弐の肩から胴体を斬り裂くに終わった。

足もすでにほぼ再生を終えている。

カナエは続けざまに頸を狙い刀を振るう。

 

「くっ」

 

ここで初めて上弦の弐から余裕が消える。

多かった口数が減り、苦しそうな声が漏れた。

 

ここだ、決めるならここしかない。

俺もカナエに追随する形で、戦いを終わらせるためにさらに距離を詰める。

 

雷の呼吸 玖ノ型雷煌

 

ザクッ

 

「くそっ」

 

またしても俺の刀は氷像に阻まれた。

今度は上弦の弐を模した氷像ではなく、巨大な氷の仏像に。

氷の仏像からは今までとは比較にならないほどの冷気が放たれる。

 

「纏楽く「行けっ!」」

 

カナエは俺を助けに入ろうとするがそれはダメだ。

今は俺の安否よりも勝利することを考えるべき。

カナエもそれをすぐに理解したようで仏像の横を通り抜ける。

決めるならここしか——

 

ズガァン

 

氷の仏像がその圧倒的質量を武器に腕を振るい、カナエと俺を吹き飛ばす。

やばい、俺もカナエもモロに食らった。間違いなく骨の数本は持っていかれる一撃。

俺に至っては仏像の冷気のせいで体が冷たくて、凍りついて動かない。珠世さんの血鬼止めも凍った体をすぐに解凍するほどの効力は持たない。

 

「危なかった、危うく頸を斬られるところだったよ」

 

余裕を取り戻した上弦の弐の声が聞こえる。

やばい、体を起こせ。

 

「さて、要求通り君は倒したし、カナエちゃんに手を出しちゃうよ」

 

「はぁ、はぁ、私はタダではやられないわ。たとえ死んでも必ずあなたの頸を一緒にもっていく」

 

——そうしないと纏楽くんが死んでしまう。

 

やばい、早く、早く溶けろ。

カナエは俺を守るために無理やりにでも相打ちにもっていくつもりだぞ。

カナエが死ぬ、急げ、動けよ!

 

フゥゥゥゥゥ

 

カナエの呼吸音が聞こえる。

ダメだ、逃げろ。一人じゃ勝てない。

逃げてくれよ!俺なんか置いて!

 

声が出ない。いや、声が出たとしてもきっとカナエは俺を置いて逃げたりしない。

カナエを生かすには俺がこんなところで寝っ転がってるわけにはいかないんだよ!

 

ヒュンヒュン、バキン。

 

戦闘音が聞こえる。

カナエの刀が空をきり、氷を砕く音。

でも、肉を斬ったような音は聞こえない。

 

「ほらほら、頑張れ。そんなんじゃ俺の頸は取れないぞ」

 

集中しろ、少しでも多く息を吸え。

珠世さんの血鬼止めは確かに効いている。でも上弦の弐の血鬼術は強力だから効果が発揮されるのが追い付いていないだけなんだ。

なら、薬の力に俺の力も加わればもっと早く氷が解け体は動くはずなのだ。

 

体温を上げろ、体の氷を解かせ。

もっと、もっと、もっと。

 

シィィィィィィ

 

「うん?全く、あきらめが悪いなぁ。やっぱり先に君にとどめを刺しておくよ」

 

早く、早く。俺は死ねない。カナエも死なせない。

諦めるな、カナエを守るん————

 

ドスッ

 

嫌な音が耳に届いた。

倒れて血に伏せっている俺の視界に血が流れているのが映り込んだ。

 

痛くない、俺が血を流しているわけではない。

じゃあ誰の?

 

上弦の弐の?カナエがやったのか?

 

「あぁ、カナエちゃんは後にしようと思ったのに」

 

どさりと人が倒れる音が聞こえた。

 

嘘だ、嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ————

 

「纏、らく……くん」

 

カナエの声が聞こえる。

いつもの優しくそれでいて力強い声ではない。

今にも消えてしまいそうなくらい弱弱しい声で、俺の名前を呼んだのだ。

 

「まぁいいか。やっちゃったことは仕方ないし。他の柱が来ても面倒だしいただいちゃおう」

 

————殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すーー!!!

 

今までのような憎しみを持たない感情ではない。

今明確に俺は鬼に対して怒りと憎しみという感情を抱いた。

 

ピシャアァッ

 

すぐ俺の耳元で雷が鳴った、そんな気がした。

 

————体が動く

 

痛みを訴える体を呼吸と荒ぶる感情で黙らせる。

今は痛みなんてものを気にしている場合ではない。

 

「カナエは、やらせない」

 

上弦の弐の顔に、驚愕の色が浮かぶ。

はッ、いい気味だ。

このクソ野郎をもっと絶望の淵に叩き落さなければ俺の気が収まらない。

 

フゥゥ……

 

カナエはまだ生きてる。

弱弱しくはあるが全集中の呼吸を使えているということはまだ大丈夫ということ。

それなら、早く終わらせればいい。

 

「君、そんな痣なかったよね?」

 

何の話だか知らないが、やけに火傷痕が疼く。

善逸とともに雷に打たれたときにできた火傷痕を中心に体に熱が広がっている。

でもどうでもいい。体が熱い、でも動く。調子がとてもいい。

 

上弦の弐が透けて見える。

杏寿郎や天元、カナエといった柱たちとの稽古で至った、本当に調子がいい時に一瞬だけ入ることができた透き通る世界。常人は踏み入ることが許されない世界。

それが今は明確に資格を持った状態でその世界に踏み入れたのだろう。

最高だ、これなら——

 

「ぐぅっ」

 

「お前を殺せそうだ」

 

霹靂一閃を使っていないただの踏み込みからの袈裟斬り。

すんでのところで反応されたが、俺の刀は上弦の弐の体を大きく斬り裂いた。

 

パキパキパキ

 

上弦の弐を模した氷像が六体生成される。

そのすべてが俺に向かって襲い掛かってくる。

本体も蔓、蓮、巫女の氷像、巨大な仏像を俺に向かわせている。

 

圧倒的な力で俺をねじ伏せようとしてくる。

 

——だがすべて見えている。

 

氷の扇を半歩身を引くことで回避、体勢が崩れた一体目の氷像を斬る。

返す刀で一体目の後ろから俺に迫っていた二体目も斬る。

 

四方向から向かってくる残りの氷像をいなす。

刀で受け流し、体さばきで回避し、刀で斬り裂く。

人間の体の動き的に回避不可能なものは最小限の怪我で抑え、氷を斬り裂いていく。

 

氷の仏像がその大きな拳を振り下ろしてくるがそれも手首から斬り落とす。

そんな圧倒的質量をもった氷像なんてもはやデカいだけのただの的。

強いて言うならば壁になる程度だろうか。

今の俺には先ほどとは違ってすべてが見える、そんな気すらする。

 

雷の呼吸 参ノ型聚蚊成雷

 

体を入れ替えるように回転させ、上弦の弐の攻撃をかわし、無効化していく。

片足で地を蹴り体を宙に浮かせ空中で刀の遠心力を用いてくるりと回転、背後からの攻撃もすべて対応していく。

 

……やはり、足りない。

 

体の状態は非常にいい。

よく見えるしよく動く。体が熱いおかげで冷気による動きが緩慢になることがない。

だが手数が足りない。俺がどれだけ氷像を壊しても壊しても次から次へと氷像が生み出される。

 

シイアアァァ

 

突如聞こえた俺でもカナエでもない呼吸音。

 

「借りは作らねぇ。即座にのしつけて返してやるよ」

 

「こいつ怖いんだけど!?」

 

増援としてきた隊士はたった二人。それでもこの状況においてはとても頼りになる二人だった。

 

一人は先ほどまで一緒にいた風の呼吸の使い手、不死川実弥。

荒々しい風の呼吸で氷を砕き、無力化した。

 

もう一人は俺が少し面倒を見てやった隊士、ゴミ(五味)である。風の呼吸から派生させた塵の呼吸の使い手。

柱ではないが、隊士の中では上位に位置する実力者である。

 

「さっきの逆だ、さっさと決めやがれ」

 

「花柱様は隠の人が回収したぞ!」

 

本当だ、俺が一人で上弦の弐と対峙している間に回収されたのか。

カナエはまだ呼吸は維持していたからきっと助かる。

 

なら後は、俺が生きて帰るだけだ。

 

「いい加減、鬱陶しいなぁ」

 

「こっちのセリフだ。とっととくたばれ糞野郎」

 

上弦の弐の血鬼術がまた一体を支配する。

増援として駆けつけてくれた二人は血鬼止めを使っていないので一太刀で決めなければならない。

 

「全集中・風の呼吸 肆ノ型上昇砂塵嵐」

 

実弥が下から砂塵を巻き上げるような斬撃を放ち、蔓や蓮を斬り裂いていく。

 

なるほど、俺はただ二人を信じて突っ込めばいいとそういうことか。

 

シィィィィィィ

 

足に残りの力全部つぎ込むつもりで意識を集中させる。

まだだ、待て。絶対に二人が隙を作ってくれる。

 

「全集中・塵の呼吸弐ノ型 浮世の塵」

 

塵の呼吸という名の通り、五味の剣技は対象を塵にするものだ。

つまり、超連撃。たとえ超硬度の氷だったとしても、砕ける。

キラキラと木端微塵にされた氷が空気中に舞う。

 

「風の呼吸 壱ノ型塵旋風・削ぎ」

 

そんな氷の粒すらも暴風が巻き上げ吹き飛ばし、残った氷像も削り砕いていく。

 

「塵の呼吸 玖ノ型一塵法界」

 

五味の剣戟が間合いに入るものを粉々にしていく。

氷の仏像の腹部に大きな穴が開いた。

 

二人の剣戟はここらを支配している氷の世界の一部を砕いた。

そう、俺が上弦の弐に刃を届けるための通り道を作り出してくれたのだ。

 

未だ氷は二人を脅かしている。上弦の弐が生成している。

階級が下の二人がここまでしてくれたのだ、ここで決めなきゃ柱の名折れ。

 

「全集中・雷の呼吸 拾ノ型」

 

シィィィィィ

 

今俺の体にある熱をすべてこの一撃に。

これは、この一撃は戦線を離脱したカナエに、遠い地にいる爺さんや弟弟子たちにまで轟く一撃。

 

 

 

神成

 

 

 

 

 

『カァ、一ノ瀬纏楽、胡蝶カナエ、不死川実弥、五味塵太郎ノ四名、上弦ノ弐討伐ゥ!上弦ノ弐討伐ゥゥ!!重傷者二名、一ノ瀬纏楽、胡蝶カナエェ!』

 

 

 

 

 

 




さーて、胡蝶姉妹最大の敵を排除しました。
痣なしで挑むって言ったけど途中で発現しないとは言ってないからね!
最強格の鬼を倒すために主人公の性能盛りまくったけど、生きるためだからしかたないよね。
これでまた幸せな世界がまた一歩近づいたわけです。

さて、久々の連続投稿を称えるつもりで感想評価をください。
やるやんってほめてください。
私は間違いなく褒められて伸びるタイプなので!

第二回需要調査(どんな話が読みたいの?)

  • 胡蝶姉妹とイチャイチャ
  • その他原作キャラとイチャイチャ
  • 鬼とイチャイチャ(血みどろ)
  • 師匠と弟子といちゃいちゃ
  • さっさと原作突入しろ

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