じいちゃんにもう一人弟子がいたら(一発ネタ)   作:白乃兎

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魂の4日連続投稿。
今度こそ連続投稿は途切れます。
一週間くらい空くかな?




友達がいると鬼殺も楽

最終選別を終えて約半年。年齢も十四に上がりました。

 

そんなことより仕事がつらいです。

 

選別を終えて二週間ほど過ぎたあたりで俺の日輪刀が届き、無事雷の呼吸の使い手としては珍しい淡い青色に変色したところで鎹鴉が即座に仕事を告げてくる。

鬼を斬ったらまた鴉が方角を示す。

その繰り返しである。

 

つまり何が言いたいかというと仕事がつらいです(二回目)

 

鬼を斬ること自体はまだ強い鬼に遭遇してないから問題ではないのだ。

移動距離が長い!休憩時間がない!給金されても使う時間がない!そもそも帰る家もない!家があったとしても帰る時間もない!

 

「ふざけんな!」

 

おっと、つい気持ちが高ぶって叫んでしまった。

でもそれも仕方ないことだ。だってつらいもん。精神的に。

 

この半年で三十数体の鬼を斬った。

わかる?つまりたった半年で仕事が三十件以上舞い込んでくるわけ。

 

おかげで階級も爆上がりですわ。もう乙だよ。いつしかの隊士さんと同じ上から二番目だよ!

出世コースに乗っているのはわかるしありがたいがこんなつらいなんて聞いてない。

俺が基本無傷で任務を終えるのが悪いの?

もっと鬼と接戦を演じることができれば問題ないの?

 

唯一の癒しが藤の花の家紋の家、通称藤の家の食事とお風呂なんですけど。

おばあちゃんたちに癒されてるんですけど。もっとどうにかならないんですか。

俺の交友関係、爺さんばあさんばっかりなんだけど。

 

「どうしましたか」

 

「あ、大丈夫です。ちょっと心が耐えられなくなっただけですから」

 

ほら、藤の家のおばあちゃんたち気遣い上手だし優しいんだよ。

容赦ない上司とは違うんだよこの人たちは。

さすが好意で鬼殺隊の手助けやってくれてる家は違うわ。

 

「夜中なのだからあまり騒ぐものじゃないぞ!」

 

お前も十分声でけーよ。

 

「杏寿郎は仕事ないときとかどうしてる?」

 

「そうだな、基本的には鍛錬をしている。たまに休みを作って歌舞伎を見に行ったりもするな」

 

いいなぁ、趣味があって。

そもそも休みがあっていいなぁ。

 

「杏寿郎は継子なのだから待遇もいいよなぁ」

 

煉獄杏寿郎なる男は由緒正しい煉獄家の跡継ぎで、現炎柱様の継子なのである。

そのせいか、爺さんに太鼓判を押された実力の俺とほぼ同等の力を持っている。

そのせいか少し前から一緒に任務に就くことがままあった。

 

「そんなに待遇の良さを感じたことはないぞ。父上は厳しいしな」

 

「はぁー、そんなもんか。大変なんだなお前も」

 

「そうだな。将来煉獄家を継ぐにあたって怠けてはいられないしな!しかし纏楽の帰る家がないというのは少し悲しいな」

 

「親のいない俺やほかの隊士からすると、家族が存命な杏寿郎はうらやましいよ」

 

俺にも爺さんという家族同然の存在はいる。

でも弟子としてはまだ何も成し遂げていないのに師匠の下に帰るなんて嫌なのだ。

帰る場所はほしいが師匠の下にはまだ帰りたくないという矛盾。

 

新たに帰る場所が欲しいという話なのだ。

 

「家が欲しいというなら柱に任命されれば屋敷をもらえるぞ。それまでがんばれ纏楽」

 

「……広い屋敷に一人で住むっていうのも嫌だな」

 

正直いろいろ足りないものが多い。

でもいつ死ぬかもわからない鬼殺隊だ。生きているうちに幸せというか、満足に過ごしたいというのはぜいたくなのだろうか。

 

「ならば婚約者でも作って同居するか、柱になって継子をつくり一緒に住むかすればいいではないか」

 

「なるほど、その手があったか。柱にもなれば女性も継子も選り取り見取りか」

 

また柱を目指す理由ができてしまった。

なかなか邪な考えだが、復讐心に駆られているわけではない俺は鬼殺のモチベーションを維持する必要があるのだ。

 

「以前言っていた女神とやらに接近してみるのもいいのではないか?」

 

「……カナエは最終選別以来あってないし、どこにいるかもわからん。そういう杏寿郎は婚約者とかいないのか?煉獄家なら婚約者の一人や二人はいそうなものだけどな」

 

「俺はまだ未熟者だからな、そういう話は父上が突っぱねている。俺に縁談が来るとしても柱になってからだろうな」

 

「まぁどちらにせよまだ十四、十五の俺らには早い話か」

 

「そういうことだろうな。孤独に耐えきれなくなったら煉獄家を訪ねるといい。さて、明日は十二鬼月かもしれないのだ。速く寝て明日に備えよう」

 

俺と杏寿郎が二人で挑む任務の先にいる鬼は人間を多く喰らった鬼がいる。

今回は十二鬼月である可能性が高いそうだ。

 

そのレベルの鬼ならばきっと血鬼術も強力なものなのだろう。

俺と杏寿郎の二人だけということはおそらくは下弦の鬼なのだろうが、警戒するに越したことはないだろう。

 

 

 

 

 

「近くの村の人の情報によるとこの家に入った者が帰ってこなくなったらしい」

 

「敵陣に乗り込むのは危険だが出てくるのを待って被害者が増えるのは避けたいところだな!」

 

例え罠で分断されたとしても俺も杏寿郎も、お互いが合流できるまで時間を稼げるだけの実力を持っているから、二人がかりならば下弦相手だとしても問題ないからこそ、こうして大胆な行動に出ることができる。

 

家の中に入る。

比較的普通の家だ。灯も灯っている。

俺も杏寿郎もすぐに刀を振るうことができるように警戒しながら長い廊下を進む。

 

「部屋を片っ端から開いていくか?」

 

「そうだな。こうしていても埒があかないだろう!」

 

よし、一番手近にあった襖を開け、中に踏み込む。

 

ぽぉん。

 

特に何もない。部屋も荒れた様子がない。

 

「杏寿郎、次の部屋に——」

 

は?いない?

 

「部屋が、変わった?」

 

やられた。これが敵の血鬼術。

屋敷内の空間を操るタイプの能力。

 

「どいつもこいつも、小生の屋敷に土足で踏み込んできおって…」

 

襖が開く。

こいつがこの屋敷の主人。

身体中から生えた鼓。両肩と腹、背中に生えた鼓。恐らくは全部違う能力があると見ていい。

そして何より、左目の下陸の二文字。

事前の情報通り十二鬼月。

 

シィィィィ

 

先手必勝!

雷の呼吸 壱ノ型——

 

ポン

 

鼓の音と同時に部屋が回転する。俺の足が床から離れ、霹靂一閃が中断させられる。

厄介な能力だな、ふざけやがって。

 

ポンと鬼が鼓を鳴らす。

 

ザンッ!

 

何かくるっ!

転がれっ!

 

今まで俺がいたところに斬撃の跡が迸る。

なるほどね。部屋の回転、部屋の入れ替えに斬撃。

つまりこれらを組み合わせると―――

 

ポポォン

 

「ぐっ」

 

部屋が回転する、平衡感覚も方向も分からなくなる。

どっちから斬撃が飛んできている?

 

全力で、壁を蹴って逃げ——ポポォン。

あっぶねえええ!!!掠った!頰裂けた!

 

斬撃を飛ばされた直後に部屋を回転させられると躱すのも相当難しい。

だが、回転の隙間を縫って踏み込めばっ!

 

「霹靂一閃っ!」

 

よし、殺った!

下弦の陸の首を刎ね——ポン

 

くっそ、上下逆転させて太刀筋をズラされた!

俺の刀は頸より少し上を斬り裂くに終わった。

顔の上半分を斬ってやったがすぐに再生される。

 

俺の霹靂一閃が目で捉えられたわけではなく、俺の構えから何かを察知して鼓を叩いたのか。

手強い。戦闘能力はそこまで高くない。だが、この空間は面倒だ。

 

雷の呼吸に欠かせない踏み込みをことごとく封じてくるこの血鬼術。

隙間を見つけて踏み込んでもやはり甘くなって速度が落ちる。すると鼓の効果が発動する。

 

立ち回りを考えていると突如、俺からでも鬼からでもないスパァン!という襖を開く音が響く。

 

「もう始めていたのか、すまん!遅れた!」

 

「鬼を斬れば許す」

 

なんとも頼もしい味方の登場である。

しかし、杏寿郎といえどこの鬼に刃を届かせるのは苦労することだろう。

 

「杏寿郎、鼓は部屋の上下左右に回転。斬撃の効果がある。回転すると攻撃される方向が分かりづらい、気をつけろ」

 

「情報感謝する。纏楽がかすり傷とはいえ怪我をしたのだ、油断はできない相手だな」

 

回転するだけで距離が離れるわけではない。

近づくことは可能である。

なんとか慣れればいけるか?

 

シィィィィ

 

ポン

 

「炎の呼吸 壱ノ型不知火」

 

グルンと部屋が回転する。

しかし杏寿郎は驚異的なバランス能力で即座に対応し踏み込むと、霹靂一閃には劣るものの鋭く接近して刀を振るう。

 

ポポポポポォン

 

グルングルンと視界が回る。

複数方向から杏寿郎に斬撃が迫る。

 

ポポポポ

 

鬼の鼓を打つ手は止まらない。

次々に不規則に部屋は回転する。

重力によって杏寿郎の体と刀は揺らぎ、鬼に刀は届かない。

 

斬撃をかわすために俺のところまで下がってきた。

鬼は回転の鼓をうつのをやめ斬撃の鼓をうつ。

 

「なるほど、厄介だ」

 

「杏寿郎、踏み込めれば雷の呼吸の速さで太刀筋がぶれる前に頸をとる。踏み込む為の時間をくれ」

 

小声で杏寿郎に耳打ちをする。

 

たとえ部屋が回転したとしても、霹靂一閃 神速の速さをもってすれば重量によって太刀筋が曲がる前に殺れる。

ただ、部屋の回転が、神速を生み出すだけの踏み込みを許さない。

 

「ふむ。わかった。が、あまり遅いと俺が終わらせてしまうぞ」

 

再び鬼に接近した杏寿郎。

地面と接する時間を短くする事が部屋の回転にも振り回されずに接近可能にしているのか。

 

あの足捌きは俺も見習わなければ。

 

「炎の呼吸 肆ノ型」

 

再び鼓の連打による部屋の不規則な回転が始まる。

斬撃が俺と杏寿郎二人に絶え間なく襲いかかる。

しかし、杏寿郎にとってそれは驚異にならない。

 

「盛炎のうねり」

 

斬撃をいなしながら下弦の陸に接近。

杏寿郎が接近するのに比例して斬撃が減り回転の度合いが増える。

 

正直もう気分悪い。

早く終わらせたい。

 

「ふむ、頸は届かないが、腕を貰っていくぞ」

 

わ、マジか。すごいな杏寿郎。

こんな不安定な空間でよくもまあそんなにバランス保てるな。

 

下弦の陸の腕が切り離される。

それは鼓をうつ手が減るということ。

それならば……

 

ポォン。

 

部屋がどちらに回転するか分かりやすいっ!

 

雷の呼吸 壱ノ型

 

「杏寿郎ー!」

 

俺の意図を把握しすぐさま屈んでくれる。

お前、最高だよ。

 

霹靂一閃 神速

 

ポォン。

 

上下が反転する。しかし俺の体は既に加速し、重力ではもう止められない、曲がらない!

 

屋敷の中に、青い雷が迸った。

 

 

 

 

 

「俺は一度屋敷へ帰る。纏楽はすぐ次の任務なのだろう?」

 

「そうなんだよ。差別じゃない?杏寿郎には仕事来ないのに俺には来るの?」

 

下弦の陸を斬ってすぐ、俺の鎹鴉は方角を告げた。

杏寿郎の鴉は鳴かなかったのに。

 

「気をつけろよ。纏楽は俺より強いと思っていたが、意外にも相性が悪い敵はいる事が分かったからな」

 

「ああ、一人で敵陣には踏み込まないことにするよ。正直まだ気持ち悪い」

 

互いに健闘を称えあって俺らは別れた。

雷の呼吸が封じられた時、俺は殆ど何もできなかった。

足が封じられた時、何もできなかった。

 

「ちょっと新しい型考えてみるかー」

 

最弱とはいえ十二鬼月を討伐してしまったのだ。

これからおそらくもっと強い鬼との戦闘を強いられるのだろう。

ていうか、もしかしてもう少しで柱就任とかあります?

十二鬼月倒しちゃったんだけど。

 

早々に目標が達成できそうな喜びと仕事が増えてしまいそうな絶望を孕んだなんとも微妙な表情で俺は次の任務先に向かった。

 

途中、杏寿郎がやってた踏み込みの際にあまり地面に触れない足運びを試した。

転んで鼻血出た。

 

 

 

 

 




響凱さんの能力って相当厄介だと思うの。
特に動きが直線的で足に重点を置いてる雷の呼吸には天敵だと思うの。

煉獄さん登場回でした。
次は誰にしようかなぁ。

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日刊ランキング上位入って感想たくさんもらえた私ウハウハです。今日投稿しないつもりだったのに。

第二回需要調査(どんな話が読みたいの?)

  • 胡蝶姉妹とイチャイチャ
  • その他原作キャラとイチャイチャ
  • 鬼とイチャイチャ(血みどろ)
  • 師匠と弟子といちゃいちゃ
  • さっさと原作突入しろ

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