じいちゃんにもう一人弟子がいたら(一発ネタ)   作:白乃兎

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感想でみんなイチャイチャとか平和な世界を望んでて面白かったです。
原作が悲しいから仕方ないんですけども。


俺が毒殺される日も近いかもしれない

ガキィ。道場に木刀が強く打ち合う音が響く。

 

霹靂一閃を炎の呼吸の不知火で受け止められる。

そのまま流れるように杏寿郎は技を放つ。

俺はそれを雷の呼吸の型の高速移動で身についた動体視力で見極めるとするりするりと躱す。

 

技をすべて躱されたことで発奮したのか杏寿郎の技のキレは少しずつ上がっていく。

こちらとしてももう少し実のある鍛錬をしたかったので負けじと木刀を振るう。

 

そこそこに広い道場をめいっぱい使って打ち合う。

道場の壁を足場にし、より立体的な動きで杏寿郎と木刀を合わせていく。

 

立体機動による霹靂一閃 八連を杏寿郎に叩き込むがしっかりと木刀で受けられる。

うーん、しっかりと死角に回り込んで叩き込んでいるのだが。

こいつも中々に化け物だなぁ。

たった一週間と少し鍛錬ができなかっただけでここまで技のキレが落ちるとは思わなかった。

本来なら最低でも杏寿郎の羽織の袖くらいは斬れたはずなのに。

 

——雷の呼吸 漆ノ型鳴雷神

 

——炎の呼吸 玖ノ型煉獄

 

ガカァン………………カランカラン。

 

「あなたたち馬鹿なんですか!?」

 

蝶屋敷の道場で俺は杏寿郎となまった体を元に戻すための稽古をしていた。

少しずつ体が軽くなっていくと同時に技のキレもよくなることに俺は興奮し、杏寿郎もそれに呼応するように技を放つ。

最終的には奥義まで持ち出して互いの木刀がへし折れるまでの戦いを始めてしまった。

 

これにはカナエも苦笑い。

しのぶも病み上がりの俺がいきなり激しすぎる運動を始めたことに怒っている。

 

「……しのぶ、途中から二人の動き見えた?」

 

「見えなかったわよ。あんなの見えるわけないでしょ。柱もだけど、それに近い人もおかしいのよきっと」

 

「雷の呼吸の速さはともかく煉獄くんの動きも見えないなんて私もまだまだねぇ」

 

胡蝶姉妹が俺たちの打ち合いの感想を言い合っているが正直あまり参考にはしないでほしい。

炎の呼吸や雷の呼吸は花の呼吸とはだいぶ戦い方が異なるのだから。

 

「纏楽!まだ動きが鈍いぞ!もう一本だ!」

 

「おう、カナエ、木刀くれ」

 

「ダメに決まってるでしょ!それで怪我が悪化したらどうするの!」

 

「大丈夫だって、悪化してもカナエとしのぶが治してくれるし」

 

「その考え方は良くないと思うぞ!」

 

杏寿郎からも咎められてしまった。

でもしのぶに怒られたのは半分お前のせいだからね?

 

「そういえば纏楽、現在柱が二人ほど欠けている事は知っているか?」

 

「いや、全く。柱が何人いるかとか何柱とか気にもしてないから」

 

「それはいいのかしら?」

 

まぁ、確かに上官の人数すら把握していない隊士というのはあまりよろしくないけれど、まだ入隊しては半年とちょっとだし仕方ないと思うんだよね。同期のカナエは知ってるっぽいけど気にしない。

 

「纏楽、お前が次の柱に選ばれる可能性が高い」

 

「お、やった」

 

「反応薄くない!?」

 

目標だった柱にこんなに早く近づけるとは思っていなかったので割と嬉しい。

 

「……半年で最高位まで上り詰めるってどういう事なんですか」

 

「本当にねぇ。私と同期なのにこんなに差がついちゃって。悔しいわぁ」

 

しのぶが何やら呆れているが、それも割といつも通りなので特に気にしない。

 

「杏寿郎は?お前も必要条件は満たしてるだろ?」

 

「まだ父上が在任しているからな。俺の就任は遅れるだろう」

 

「でも俺、十二鬼月撃破も鬼五十体撃破も満たしてないぞ」

 

それに、実力的にもまだまだな気がする。鬼殺隊の柱は下弦の鬼ならば瞬殺できる実力があるらしいが、俺は瞬殺できない。

 

「俺とともに討伐しただろう。それに、実力的には纏楽が一番近いという話だ。実際就任するかはお館様が判断なさる」

 

いやー、個人討伐じゃないとやっぱ納得できないけどなぁ。

しかしそんなポンポン十二鬼月と出会うこともないので仕方ないといえばそれまでなのだけれども。

 

「さて、俺は帰るぞ!すぐに任務だ。纏楽、しっかり治すんだぞ」

 

そう言うと杏寿郎は蝶屋敷を出て行った。

 

いい奴かよ。

お見舞いに来てくれるし、励みになる言葉もかけてくれるし。

 

「……纏楽くん、私と打ち込み稽古やる時はもう少し手加減してね」

 

「流石にアレくらいやるのは杏寿郎が相手の時だけだよ」

 

「そもそもひと月は安静だって言ったのになんでもうあんなに動けてるんですか。なんで一週間そこらでほぼ完治してるんですか」

 

そんなこと言われても治ってしまったのだから仕方ないだろう。俺だってもっと回復を遅らせてずっとこの屋敷に滞在したいよ!

でも蝶屋敷もしっかり機能しているし、カナエにくっつく任務はもう終わっちゃうんだろうなぁ。

 

「治るのはいいことだろ。それに体動かせるから、しのぶの鍛錬にも付き合ってやれるぞ」

 

「……それは、ありがたいですけど」

 

「毒の開発の方は進んでるのか?」

 

しのぶは自分の腕力に見切りをつけ、刀で頸を斬る以外の方法として、毒の開発に励んでいた。

頸を落とさずとも鬼を殺せることができるならどれだけ楽か。

 

「それなりです。実際鬼に使ってみないことにはわかりませんから」

 

「よし、なら後は鬼に毒を打ち込めるだけの剣術を身につけような」

 

「ご指導のほど、よろしくお願いします」

 

礼儀はしっかりしてるし、反応も面白いし、しのぶは良い子だなぁ。

さすがはカナエの妹。今は幼さがあって可愛いしのぶも後数年もすれば美人になることだろう。

 

「……最近しのぶと纒楽くんばっかり仲良くしてて姉さん寂しいなー」

 

そんなこと全くないのだけれど。

確かにしのぶが俺に嫌悪感を抱かなくなったから近く見えるかもしれないけど、全くそんなことないよ。

 

「よーし、じゃあカナエともっと深い仲になっちゃおうかなぁ!」

 

「纏楽さん、すぐそうやってふざけるのやめてください」

 

「しのぶは真面目だなぁ」

 

ガシガシと頭を雑に撫でる。

もうなんかしのぶの頭を撫でるのに抵抗がなくなったなぁ。

 

「姉さんもしのぶを撫でたいなぁ」

 

「おう、撫でろ撫でろ!」

 

「なんで纏楽さんが許可するんですか!」

 

「しのぶは可愛いわねぇ」

 

「可愛いぞしのぶ」

 

「うぅ……なんなの?」

 

少しの間、俺とカナエに頭を撫でられ顔を真っ赤に染めているしのぶ。

カナエが仲間外れだなんて言っていたとふと思い立ってしのぶの頭をなでながら、空いた手でカナエの頭も撫でてみた。少し驚いた顔をしたカナエ、すこし目を鋭くするしのぶ。

しかし何も言われないので引き続き撫でてみる。

すると、カナエも俺の頭に手を伸ばして撫で始めた。

もはや俺たちは何をしているのか意味の分からない状態に陥った。これ、どこで終わればいいんだろう。

 

 

 

 

 

「ふぅぅぅぅぅぅ」

 

いつもより深く呼吸を行う。

もっと体全体の連動を意識して、一つ一つの動きのキレをあげろ。

一挙手一投足に気を配り、強くなれ。

 

カナエとしのぶが俺に向けて容赦なく木刀を振り回してくる。

カナエは花の呼吸の型を織り交ぜてくるし、しのぶは俺の捌ノ型を参考にした素早い動きからの突き技を試している。

 

一方で、俺はそれをただただ躱し続ける。

木刀も持たず、ただただ躱す。体が俺の意識と連動して動けば防ぐ必要もない。

あえて木刀をギリギリまで回避せず待ってから身をひねって回避したり、上半身の動きだけで回避してみたりといろいろ試してみる。

 

しかし実は油断はできない。カナエは全集中・常中を会得し基礎体力は上がっているし、しのぶも何かを掴みかけているのか、動きが非常にいい。

余裕は多少あるが油断はできない。杏寿郎との手合わせも身になったがこれはこれでいい鍛錬になる。

 

「はい、時間だ」

 

視界の端に映った時計が定刻を告げている。

この時間から俺は反撃に移る。といっても女の子相手に暴力をふるうわけにもいかないので、頭を撫でることが勝利条件という意味の分からない仕様になっている。

ついさっきまで意味の分からないことをしていてそれに引きずられた。

まずはしのぶから片付ける。

小さな体を活かして低く素早く踏み込んできたしのぶの突きを半身になって躱し、しのぶの腕を掴むと上に投げ上げる、落ちてきたところを片手で受け止め頭をなでる。

 

カナエの攻撃を回避しながらしのぶを少し離れたところに座らせるとカナエに急接近、正面で一度止まり、死角から背後に回って膝カックン。頭の位置が下がったところで頭をぐりぐりと撫でて俺の勝ち。

 

「なんでかすりもしないんですか!二人がかりですよ!?姉さんは全集中・常中も習得したのに、私ももう少しで呼吸が完成しそうなのに!なんでかすりもしないんですかずるいです!」

 

「私も纏楽くんにやられっぱなしで悔しいわ。弱点とかないの?」

 

弱点を本人に聞いている時点であまりいい収穫はないと思うけれど。

 

「……しいて言うなら可愛い女の子を傷つけられないこと」

 

「そういうのじゃないの!」

 

弱点といわれましても。技のキレが爺さんに格段に劣ることとか言っても納得してくれないんだろうな。

俺が躱せない攻撃、俺が攻撃を当てられない状況……

 

「……カナエの抱き着き攻撃とかならかわせないな」

 

「やっぱりあなたは馬鹿です!」

 

「しのぶの抱き着き攻撃も同じく躱せないから安心しろ」

 

「何を安心すればいいんですか!?」

 

何が何でも勝ちたいときはこれを使うといい。

すると俺の動きは完全に停止する。間違いない。

 

「ふふっ、やってみようかしら」

 

「だめよ!この男はすぐ調子に乗るんだから」

 

「じゃあしのぶに抱き着き攻撃~」

 

「姉さん!」

 

よし、ここは先ほどの頭撫でのように俺も参加するしかない。

両手を広げたところでしのぶにめっちゃ睨まれた。

けちー。いいじゃんか減るものじゃないんだから。

 

 

 

 

 

胡蝶姉妹との鍛錬を始めてから四日ほどたった頃、鴉が仕事を告げてきた。

しかし今までとは異なるのは蝶屋敷近辺での仕事なのと、しのぶを同行させろと上からのお達しだ。

夜中のみの行動予定なのでカナエも同行している。

まぁ、詰まるところがしのぶの毒の実験に差し当たって護衛をしろとそういうことなのだろう。

昼も二人を連れ出すためには蝶屋敷の従業員を増やさないといけないのだろうな。

鬼とはなるべく戦いたくないので是非とも俺を雇っていただきたい。

 

「その、足を引っ張らないように頑張ります」

 

「常中もできるようになったし、私に頼ってね纏楽くん」

 

「んー、命令にはしたがってね」

 

先日のような強さの鬼が出てしまった場合にすぐに待機命令や撤退命令を出す。

守り切るつもりではあるが万が一ということもある。

今回はしのぶの実践ではなく実験、しのぶを危険にさらすつもりはこれっぽっちもない。

カナエは常中も習得したし戦えるだろうがそれでも、一定以上の強さの鬼と対峙させるつもりはない。

できることなら俺が全部何とかしてやろうとすら思っている。

 

「お、まずは一匹」

 

明らかに雑魚鬼を少し離れたところに発見した。

しのぶを小脇に抱える。

 

「ちょっ、なんですか!?」

 

しのぶは急に抱えられたことに驚いているのか恥ずかしがっているのか。

ギャーギャー騒ぐ。

 

ドンっ。

 

しのぶを抱えたまま霹靂一閃で鬼に接近。

両足を斬り飛ばす。

 

「へっ?」

 

しのぶと鬼から素っ頓狂な声が漏れる。

俺はそんなこと気に掛けず続いて両腕を斬り飛ばして完全に達磨状態に。

 

「しのぶ」

 

「はっ、はい!」

 

しのぶをおろすと懐から注射器の入った箱を取り出し、鬼に投与。

症状を確認しメモを取った後に再び違う薬を投与。鬼が苦しんだり罵倒の声を投げかけるが完全に無視。

この鬼はカナエのいう仲良くは不可能なことが鬼に付着した人間の血からありありとわかるので慈悲はない。

しかし、それでもカナエは悲しい顔をすると思うのでしのぶだけ抱えてきたのだ。

 

カナエもそれを察したのか一定距離から近づこうとはしない。

 

「どうだ?」

 

「再生は遅らせることが出来てます。体の麻痺も確認っと。うーん、もう少し調合を変えた方が……」

 

なにやら結果を見ながらぶつぶつ呟き始めたしのぶ。

正直研究系は頭の悪い俺にはさっぱりなので、この鬼が突如牙を剥かないかだけ警戒しておく。

 

しのぶは俺よりも二つほど年下なのに頭良すぎではなかろうか。算術はもちろんのこと薬学や医学に精通している。

カナエも医学、薬学共に修めているが、しのぶには及ばないらしい。

 

「……纏楽さん、また次の鬼の捕獲をお願いできますか?」

 

ふむ、この毒に冒されまくった鬼は用済みと。可愛い顔して中々鬼畜だなぁ。

鬼の頸を斬ると、また鬼を探すために鴉の先導を頼りに歩きだす。

 

 

 

すると、案外簡単に鬼は見つかった。

扇子を持った女の鬼。ほかに得物を持っていないことから扇子を利用した血鬼術の可能性を頭に入れる。

 

「……下弦の肆」

 

目には下肆の二文字。最近強めの鬼に出会いすぎではなかろうか。

でも、下弦相手に毒が通じればしのぶの毒の有用性が証明される。

 

しかし、しのぶは初めて対峙する十二鬼月に呆然と立ち尽くしているので、下がっているように指示を出す。

 

「あの方の言っていた黄色い羽織の剣士ってアンタのことねぇ?最近鬼を狩りまくってるらしいから目をつけられてるわよ。でもまぁ、アタシがここで殺すけどねぇっ!」

 

「それは無理な相談だなっ!」

 

女の鬼だからといって俺は容赦はしない。

まずは壱ノ型霹靂一閃 四連を――!?

 

俺に向かって飛んでくる半透明な風の刃。

それを防ぐために四連を中断。しかし、霹靂一閃を見極めて途切れさせる事の出来る動体視力と攻撃速度の血鬼術か、また面倒な。

 

「アハハハッ、アンタがどれだけ強くても速くても、アタシの風刃より速いわけないのよねぇっ!」

 

「——花の呼吸 肆ノ型紅花衣」

 

「アンタはお呼びじゃないのよ!」

 

扇子を下から扇ぐとカナエの体は空中に投げ出された。

空中に投げ出されたカナエを更に追撃として風の刃が襲う。

 

「っつ!」

 

空中で花の呼吸 弍ノ型を使い防いだ事を確認するとこれ以上の追撃を許さないために踏み込む。

 

風の刃は斬れ味こそ抜群だが目に見える。

それならば——斬れるっ!

 

シィィィィ

 

雷の呼吸 捌ノ型迅雷万雷

 

「ハッ、古来より風神と雷神の戦いは定番よねぇっ!」

 

風の刃が四方八方から飛来する。

一つ一つの速度が違う、軌道が違う。しかし、問題はないっ!

 

跳んで空中で体を捻り刃と刃の間を抜ける。

刀を横薙ぎに振り抜いた勢いを利用してクルリと回ると二撃三撃を立て続けに放ち風を斬る。

 

この程度の威力と速さなら傷つくこともない。

このまま腕を斬り落としてしのぶの実験台になってもらう。

 

「……なら、風速を上げるわよ」

 

突如、風の質が変わる。

攻撃性のない突風が鬼から放たれると、足が止まる。

更に先ほどまでとは大きさも威力も違う風の刃が飛来する。

 

シィィ……

 

向かい風だからか呼吸がしづらい!

躱すしかないかっ。風で体が煽られるため、回避が異常に難しい。

 

肩が裂ける。

傷は浅いがこのままではよくない。

 

!?鬼の背後からカナエが斬りかかっている。

 

「馬鹿、よせっ!」

 

「見えてんのよっ!」

 

俺に放ったものとはまた違う小さく鋭い無数の刃がカナエを襲う。

カナエも受けに特化した花の呼吸 弍ノ型で防御しているが―――

 

「くうっ」

 

防ぎきれずに風の刃がカナエの頬を、足を、腕を裂く。

カナエの白い肌が赤く染まる。

比較的軽傷だが、問題はそこではない。

 

「殺すっ」

 

シィィィィ

 

女の、カナエの肌を傷つけた罪は重い。

絶対に許さん、しのぶの毒で苦しんで死んでもらう。

 

「雷の呼吸 壱ノ型」

 

「この向かい風の中風刃を抜けられると思わない事ね!」

 

更に強い風が吹き荒れる。

向かい風だけではなく横から体を打ち付けるように風が吹き荒ぶ。

 

風の刃はその中を乱れ飛び、俺を斬り裂かんと迫る。

 

だが——

 

「霹靂一閃神速」

 

全てが遅い。

風ごときじゃあこの速さに届かない。

 

青い雷が轟き風を斬り裂いた。

 

誰の目にも俺の姿は視認できない。見えるのは青い雷が迸った事だけ。

それと同時に下弦の肆の体を両断した。コレが爺さん直伝瞬間移動。

再生速度も下弦だけあって速いが、再生するたびに四肢を斬りとばす。

 

俺は怒っているのだ。

 

「しのぶ」

 

離れたところから戦いの行方を見守っていたしのぶを呼び寄せると、毒の投与を始める。

 

「ガァァァァァァッ!!!???」

 

先ほどから更に調合比率を変えていたのかより強力な毒になっている気がする。再生もできなくなっているので十分な効果は得られていると思うのだが。

……俺もあまり調子に乗りすぎるとお茶に毒を盛られたりするのだろうか。

 

「纏楽さん、もう十分です」

 

一通り情報は得られたらしい。

下弦の肆の頸を落とすと、すぐさまカナエに駆け寄った。

 

懐から水筒と手拭いを取り出し、手拭いを水筒の中の水で濡らす。

 

「だ、大丈夫よ?」

 

「大丈夫なわけないだろ、嫁入り前の女の体が傷ついたんだぞ」

 

お前女の鬼斬ったじゃんとかいう発言は無視します。

血が滴るカナエの肌を手拭いで拭いていく。

 

「しのぶ、傷薬!」

 

「わかってるわよ!」

 

「えぇーっと、本当に大丈夫だから」

 

「「大丈夫じゃない!」」

 

カナエにとってはただの切り傷で軽傷なのかもしれないけれど俺やしのぶからしたら一大事である。

あらあら、とカナエは困り顔だが、俺たちが騒ぐのも当然の事だと理解してほしい。

 

「姉さんの肌を傷つけるとか絶対許されないの!」

 

「そうだそうだ!」

 

「うーん、でも跡は残らないくらいの傷よ?」

 

「どんな傷だろうと跡が残らないように私がなんとかするに決まってるじゃない!」

 

「もっと自分の体の事を大事に考えろ!」

 

カナエは悪くないのにカナエが悪いみたいになってしまっている。

 

「お嫁に行けなくなるかもしれないんだぞ!」

 

「姉さんはお嫁になんて行かないわよ!」

 

妹に嫁に行く事を許されない姉。

カナエの笑顔も凄い引きつっている。

 

「お嫁とかは分からないけれど、なんとかなるわよ」

 

「傷のある女は結婚相手としては避けられがちなんだよ!例えどんなにカナエが美人でも!」

 

「姉さんは傷があっても避けられないわよ!」

 

「お前煩いな!でもその通りかも!」

 

カナエの怪我が原因で謎の小競り合いを始める俺たち。

それでもしのぶは傷薬をカナエに塗り込んでいるし、俺もしのぶから渡された薬をカナエに塗っている。

 

「どんなに傷ついていても、纏楽くんがお嫁にもらってくれる?」

 

「当たり前……へあっ!?」

 

カナエさん俺のところにお嫁に来てくれるんですか。是非来てください。

待ってる。なんなら今から祝言でもいいと思うんだけど。

 

「なら大丈夫よ。そんな慌てなくて。しのぶも落ち着いて」

 

「……」

 

「いた、いたいっ!やめてしのぶ!」

 

しのぶは俺の肩の切り傷にぐりぐりと薬を塗り込んでくる。

さっきカナエにあんなに優しくやってたじゃん!

 

「なんで怒ってんの!あれか、しのぶが仲間はずれだからか。大丈夫、しのぶもカナエと一緒に俺の嫁に——」

 

いったーー!!!???

 

正直、下弦の肆の攻撃よりしのぶの治療の方が痛かったです。

 

 

 

 

 




じいちゃんの霹靂一閃=纏楽の霹靂一閃神速くらいの認識で。

途中のタイミングで話を切り上げることができない私は一話完結みたいなのしかかけません。
その結果一話が長くなったり短くなったりもします。ご了承ください。(今回七千字)

感想評価どしどし頂けるとモチベーションアップしてインスピレーションもアップしてエタって失踪の可能性が下がりますのでどうぞよろしくお願いいたします。

第二回需要調査(どんな話が読みたいの?)

  • 胡蝶姉妹とイチャイチャ
  • その他原作キャラとイチャイチャ
  • 鬼とイチャイチャ(血みどろ)
  • 師匠と弟子といちゃいちゃ
  • さっさと原作突入しろ

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