ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】 作:ぬくぬく布団
深月「溜めに溜めた話ですね」
布団「順番をどうしようか迷いながら執筆していたのです」
深月「ではごゆるりとどうぞ」
~皐月side~
皐月は、お手製の超高画質ビデオカメラアーティファクトを手に持ってステルスアーティファクトを起動させて早朝から家の中を探検―――ではなく、普段働いている使用人達の動向を追っている
(普段見ている様で見ていない部分を確認するのは必要な事よね!)
皐月が心の中で呟きながら手に持つスマホに視線を向けると沢山の文字が流れている。そう、これは動画配信サイトで生中継をしているのだ。使用人のプライバシーを無視している事には文句を言いたいが、皐月パパに直接確認(おねだり)をすると二つ返事で了承を得ている
(さぁ~て、着替えは見せる事は出来ないから仕事風景を写さないと~♪)
頭部にはリング状の冠が乗せられており、皐月の思念を読み取り配信で解説する様に映し出す事が出来る優れ物だ。勿論これもアーティファクトである
【しゅんご~い!リアル使用人ってこんななんだ】
【着替えを!メイドの着替えを所望する!!】
【皐月様!どうか我等に着替えの様子を!!】
【ちょっと男子~、配信がBANされちゃうじゃない】
【そうよそうよ!】
【執事ならわんちゃん?】
【それだ!】
(どれも却下!旦那以外の男の裸を進んで見たくもないわ)
コメントは阿鼻叫喚で沢山だが、皐月は気にせず次の場所へと移動する
(現在調理室~、朝ごはんな何かな~?)
厨房へ侵入したが、朝が早過ぎたせいか下拵え中の段階だった。このまま静かに居座るというのも一つの手だが、飯テロとなるだけなので洗濯をしているであろう使用人達の方へと移動する
【まぁ、飯テロは需要あるとしてもこの時間帯だとね・・・】
【見るからに庶民的な内容だとしても素材の値段が違うな】
【料理実習生なんだけど、これ見ると専門学校で教えられているレベルが低すぎる】
【実習生だろ?何事も基礎が出来ていなきゃ意味ねぇだろ】
(何事も基礎が重要よね。いきなり応用をしても不出来が殆どで、稀に一度見ただけで全てをその通りに実行できる人ならちょっとだけ足りない事になるわよ。こんな実用性が殆どない装備を作るのにどれだけの試作を重ねたか・・・)
【お嬢様の苦労が半端ねぇ】
【その努力がこの高画質と解説だ】
【魔法使えたら~と思ったけど、そんなうまくはいかないか】
【なろう系では定番だが、お嬢様曰く魔力が枯渇しても総量は増えないとの事だ】
【魔物を倒してもほんの少しレベルが上がる程度と言われたしな】
【ただし、筋トレや武術関連は反映されてレベルが上がりやすくなる模様】
トータスで学んだ事を軽く説明したが、皆が想像しているよりも現実は残酷である事を述べた事で粗方のリスナー達は黙る
【そんな事言ってtueeeを独占したいんじゃない?】
だが、やっかみが完全に消える事は無い。しかし、それ等は全てが古参リスナー達によって黙らせれる
【情弱乙w】
【出た出たw初心者は最初のライブ配信を見てどうぞw】
【やっちゃってくだせぇお嬢様!】
【いつものネタでだんまりさせて!】
いつもなら義手と義眼を外して過去の扱き映像を見せて黙らすのだが、如何せん今はスネーク中である。バレる訳にはいかない
(いや・・・今は無理よ。外したら義手だけが物扱いになってステルスの対象外になっちゃうの)
【はい、言い訳ぇw】
【クソうぜぇアンチだな】
【まぁ、こういう輩は一定数出るしもうそろそろだと思う】
【震えてまってなw】
【完全無敵の超メイド:〇〇県〇〇市〇〇町〇〇〇〇番地にお住いの小学生さん。後程貴方のご両親に対して不適切発言を理由としてお電話をさせて頂きます。お説教を受けて下さいね?】
【ヒェッ!!】
【あ~あ~小学生か】
【メイドさんの良心として住所は〇で伏せられてるがこれは・・・】
【やれるもんならやってみなよw雑魚ww】
【小学生だよな?こんな朝早くに起きるなら大人しくしておきなさい】
【所詮ネット上でしかイキる事が出来ない可哀相な子供だな】
調理場から離れて外に出て広い芝生の庭に出ると、ポチに追い回されている執事長の姿があった。ポチは「遊んで~」とじゃれているのだが、巨体かつ見た目も相まってかなり怖い。そして、執事長は過去に深月によってポチによる悪戯でトラウマを植え付けられているのでそりゃあもう大変の一言である
(執事長は日課のじゃれあいをしているわね。何も問題は無かった)
【じゃれあい?】
【執事長さんがんばw】
【走るの速いな】
【いや・・・逃げてるんじゃ?】
【あの巨体に追いかけ回されるってトラウマになりそうじゃね?】
(執事長は仕方がないのよ。私の深月に色々と無茶振りしたり変な事を教えたりしてたからその罰も含めてね)
リスナー達の反応が一斉に【把握】という文字の弾幕となり画面が埋まりかける。執事長とポチの戯れから書庫へと移動する。扉は開いており、中では書籍一つ一つを取り出して埃を拭き取り元の場所に戻すというとても地味な作業が行われていた
【これはこれは・・・】
【ファンタジー!】
【書庫があるんですか!?本読み放題!】
【全部で何冊あるんだ?】
【ってか本が宙に浮いてる!?】
しかし、その作業内容は地味であるが深月が整理しているのでかなりファンタジーな絵面となっている。複数の魔力糸で本のジャンル別に置き、埃取りする為の魔力糸モップで拭いている。更に、本を取り出して空いた場所には水拭きと乾拭きの為のタオルが魔力糸で動かしてと一人で複数人分の働きをしている
【図書館に欲しい人材です】
【書店にバイトとして欲しいです】
【何この・・・精密機械みたいなファンタジー光景】
【あれ?メイドさんってついさっき電話するって言ってなかった?】
【速攻で終わったんじゃね?】
【まぁ、超メイドさんだしな】
【超メイドさんだからな】
【超メイドだから】
【何この一体感?】
【過去の生放送や動画のアーカイブ見れば分かるよ】
【アンチコメを書いたユーザーに直接電話するのを見ていたらね・・・】
【個人情報が駄々洩れ何ですがそれは?】
【知らないのか?アンチユーザーは事前に調べ尽くされ住所氏名年齢を把握されているのだ】
【電話番号もな!】
皐月は後半のコメントを見て色々と諦めていた。当初、帰還者についての罵詈雑言やら妬み等々のオンパレードに対し法的措置を行おうとしたが国すらもアンチ側についていた。これではどうする事も出来ないと思っていたが、深月が概念魔法を創ってそれで各国の主要人物達の不正やら何やらを映像や音声付きで入手し、それを録画して薫に提出。其処からはあっという間に国が此方側に掌ドリルでご機嫌取りに回った
(やり過ぎはよくないと抑えてはいるのだけど・・・色んな所から圧力や脅しもあるので仕方なくという反面もあるから強く言えないのが現状なのよねぇ)
【おいたわしやお嬢様・・・】
【苦労しているお嬢様にスパチャ投げたい】
【賄賂みたいに思われるから出来ないのがな】
【でもこういう配信をしてくれるの嬉しい】
皐月の配信は何だかんだで需要があるのだ。お金持ちの私生活についてのドキュメンタリー映像は見た事はあるが、リアルタイム事情は殆どないのでそれだけでも見る価値があるのだ。そして、コメントで良い提案があれば採用からの実行という流れを作るこれもまた面白かったりするのだ
【それにしても私生活見てみたいというコメントを取り上げて実行してくれるのはめっちゃありがたい】
【どんな朝食が出るとか分からなかったもんな】
【メイドさん達のお仕事も言葉だけじゃわからないもんな】
言葉よりも現場の映像をお届けした方が視聴者も理解度が高くなり、皐月が計画している使用人育成学校の勉強内容に反映させたりする事が出来るというメリットがある
(さて、午前の配信も少しだけ早めに終わりにするわ)
【ヤメテ!】
【もっと見たいの!!】
【お優雅にお酒が飲めませんわ!】
【午後のお仕事内容も求む!】
まぁ、お決まりの如く配信止めないでという懇願が多い。しかし、次に皐月がぶち込む配信は今までの内容がお遊戯とも言える内容となる
(そんな事言わないの。以前からDMで質問内容が多かった異世界についての話題になるから、その情報の精査についてようやく切りがよくなったのよ)
コメント欄は一瞬だけ沈黙し、皐月の言葉が終わると同時に滝の様に一気に流れる
【お嬢様マジ!?】
【異世界異世界♪】
【世界初っていうよりもお嬢様だけが出来うる事か!】
【全裸待機します】
【どんな内容を発表するのですか!?】
【総理大臣:待って、聞いてない。そんなの聞いてない】
【情報の大洪水よ!!】
【ってか総理見てるんかいw】
【これって本当に流していい情報?】
視聴者の疑問も分かる。易々と異世界の情報を垂れ流しても良いのか?という意見だが、これは前々から発信する内容として決めていた。しかし、内容を決める事に時間が掛かったのだ。ライブ配信をするにしても、グロシーンを映さない様にしたりモザイクを入れたりと様々な処理が必要となってくる
(さて、今回のスニーキング配信は終了。今日の午後一時からライブで配信するから良い子にして待ってなさい!)
【お菓子買いに行くか】
【失礼ですが何時間掛かりますか?】
【やべ、ニュース速報に取り上げられてる!?】
【これは視聴者が増えますわよ!】
【総理大臣:ワア・・・アァ・・・】
【総理が泣いちゃってるじゃんか!】
【事前に連絡しなかったんだな】
(だって、帰還した当初圧力掛けて来たりマスコミにクラスメイトの個人情報を売ったりと色々とやらかしたでしょ?だったら、最初からそんな事したら駄目よ。マスゴ・・・マスコミがしつこかったし、要らない被害が出ようとしたからやり返しただけ。世界各国のお偉い様からの質問はしっかりと処理してね♡)
【総理大臣:ウワ・・・アァ・・・】
【要らない情報までぶっちゃけられたw】
【マスゴミ今こそ仕事する時だぞ】
【周辺住民や関係ない人達に被害が出たらマスゴミのせいだな】
(上映時間は五時間を予定しているわ。一週間後に上映内容の振り返り配信を行うから、その時は旦那と一緒に補足説明をするつもりよ)
【旦那:えっ?俺何も聞いてない・・・】
【草ぁ】
【wwww】
【早速尻に敷かれてるな】
【結婚したらちゃんと発表しろよ】
【結婚祝いは何処に発送したら宜しいでしょうか?】
【完全無敵の超メイド:後程情報を公式アカウントにて追記しておきます】
【仕事早い!】
【超メイドさんお疲れ様です!】
【メイドさんの映像出るのかな?出るよね?出ると言って!?】
(ネタバレはしない主義なのでお楽しみにね!では、一旦お疲れ様~)
皐月は配信を切り、早速上映準備に取り掛かる。映像はトータス転移直後の記憶を映像化しても良かったのだが、そうしたらヘイトが凄まじい事になって要らぬ誹謗中傷が飛びかねないので止めた。何を放送するのが一番なのかを考え、異世界に行きたいという欲をへし折る為に迷宮の魔物の動画を撮影する事にした。しかも、オルクス迷宮の裏の方を
「お嬢様、クラスメイトや教師には事前に告知しておきました」
「なら、後は上映するだけになるわね」
「しかし、迷宮の動画で本当に宜しかったのですか?」
「大丈夫。深月がお世話になった軍人さん達にその映像を見せたら絶対に異世界に行きたくないって言わせたほどだから!」
「なら安全ですね!」
一体何処に突っ込めばいいのやらと頭を抱えそうになるが、度々要求される異世界行きたいという要望をへし折るには充分過ぎる情報でもある。そして、その異世界で生き残ったクラスメイト達に突撃取材をする者も多少は減るだろう
――――数時間後
暇が出来たらコツコツと作業を進めていた地下室の一室の上映室に移動する。この地下室はクリスタルキーが無いと入れない皐月専用のプライベート部屋の一室だ。予め用意されている配信機材は勿論の事、大型スクリーンやプロジェクタやスピーカー等も取り揃えている
上映時間は五時間とは言ったが、何度か休憩を挟む為の時間を作る予定なので人をダメにするクッションを改造したソファを設置。つまみはジャンクなポテトとレモン水を用意しているが、足りなくなったら追加で深月が持って来る様にしている
「プロジェクタの映像をスクリーンに映す確認OK。ライブ配信用のカメラ位置Ok。音響設定もハウリングやノイズも無し」
「お嬢様、何か御座いましたらお呼び下さい」
ソファの横に置かれたテーブルの上に呼び出し用のスイッチを置いて地下室から退室して行った
「よし、準備万端。配信スタート!」
配信開始ボタンを押し、リスナー達に挨拶。それはもう普通であり、何の捻りもない真面目なものだ
【配信ハジマタ!】
【コンビニに人が沢山居てビックリ仰天だったわ】
【考える事みんな同じ】
【しょうがないよね】
【総理大臣:問い合わせ多い・・・ヤダァ・・・】
【そりゃ仕方がないでしょ総理w】
【情報売った者の末路w】
【因果応報ですわよ!】
総理大臣のコメントから察するにクレームの集中砲火を浴びたのだろう。皐月からしたらざまぁと言いたいが、敢えてスルーする
「異世界で何を放送するか迷いに迷ったけど、定番の迷宮攻略動画にしたわ。正直、これを見たら異世界怖いと判断する人が多く出て異世界行きたいというDMを減らすというのが主な目的よ」
切実な願いである。一日万を超える異世界行きたいDMは正直煩わしく、注意しても止まらないのである
【切実過ぎるw】
【でもしょうがないよね】
【異世界行って強くなりたい!】
【天職ほちぃ!】
「正直そういうのは分かるわ。でもね、以前も説明した通り天職を持てる人は限られているし、戦闘職は千人に一人で非戦闘職でも百人に一人。物凄く狭き門でもあるのよ。私含めてクラスメイト全員が天職を持てたのはもの凄く運が良かったのよ」
本当に頭を抱えそうになる確率だった。もし、これで天職が無い人が居たら放逐される可能性があったし、奴隷として働かされる未来もあったかもしれない
「現代社会は色々と便利なのよ?それが奪われて中世ヨーロッパ寄りの生活になるの。そんな世界に耐えられる?正直言って異世界のご飯は美味しいのもあるけれど、数は少なかったわ。日本人だとまず耐えれないし、私達は我慢しなければいけなかったわ」
【現実ツラタンッ!!】
【連れて行って帰るのは?】
【いや、一方通行にするだろ】
【帰還も保証するなんてやらねぇだろ】
【異世界で生きていくにはどうしたらいいですか!】
「まぁ、追々説明するけど今は迷宮の魔物との戦闘動画よ。因みに、地上にも魔物は居るから迷宮限定というのは中々ないわ」
【マジか】
【今から出る魔物は地上でも生息しているって事か】
【中々ないって言ってたから可能性としては低いだろうな】
【低確率で遭遇って事か】
【リスクがデカ過ぎる】
「・・・外が安全と思っているなら間違いよ?迷宮の魔物より強い魔物はそこそこ生息しているわよ?」
皐月の言葉にコメントは一旦フリーズした。その隙を見逃さず、皐月は迷宮での動画を再生する
「それでは始まり始まり~♪」
【テンポォ!?】
【待って!?情報の洪水!?】
【えぇい切り抜き班状況を報告せよ!】
【大丈夫だ問題ない】
【それ問題あるやつぅ!?】
再生される動画の冒頭―――
『良い子の皆様、視聴される前のご注意をお伝えします。本動画を視聴の際にはイヤホンやヘッドホン等を付け周囲に音漏れが無いようにして下さい。迷宮内の動画は出血描写にモザイク処理を致しておりますが、魔物の鳴き声等の音量編集は一切行っておりません。画面下に音量注意の帯を所々に表示させておりますので見逃さず注意してご視聴の程をお願いします』
【いや映画かよ】
【動画だから注意が必要ってぇ】
【帯が出たら音量を下げる了解】
【超メイドさんの声だよなこれ?】
【良い声や】
【心がキュンキュンする!】
「うっわきっつい」
気持ち悪いコメントを見た瞬間、つい本音というか思った事が口から出る
【ひでぇけどぶっちゃけるとキモイw】
【女性であろうともきついですw】
【どうせ男だろ?オエッ】
【視聴後お前を運営に通報する】
【後って優しいな】
【酷すぎるぅ!!】
最後のコメントについては正直言って気持ち悪かったのでつい本音が出てしまった。動画は事前の注意を二回繰り返し確認をして本編へと移る
『執事長しっかり撮れていますか?動画とはいえ録画ですので注意して下さい』
『・・・何故私がカメラマンなのでしょう』
『大旦那様からのご命令です。仕方がありませんよね?』
『今までで一番怖いのですが・・・』
『ご安心ください!執事長の方へは一匹たりとも寄せ付けさせませんのでジュースを飲みながらでも大丈夫ですよ?あ、カメラのブレはご遠慮くださいね?』
【執事長w】
【使用人の中でも偉い筈の位置なのにw】
【まぁしょうがないな】
【旦那:御義父さんの命令は絶対だからなしょうがない】
【出たわね旦那!】
【お嬢様を幸せにしなかったら呪うからな?】
【藁人形に五寸釘打ち込むぞ?】
【旦那:お前等はどっちの味方だよ!?】
【そりゃあお嬢様でしょ】
【男の味方になったってねぇ?】
【リア充満喫している男は爆発しろ特に旦那】
何故か知らない所でハジメに対するヘイトが集中しているが、スルーして動画を続けよう
『しかし、この淡く光っている壁ですか?迷宮とは摩訶不思議ですね』
『鉱物鑑定した結果、光り続ける鉱石で、光るには魔力を消費します。迷宮は常に魔力が満ちているので常時点灯している状況ですね。しかし、この鉱石が無い場所は暗いです』
『そうなのですか。・・・おや、何か来たようですね?』
『魔物の名前は憶えておりませんが、二つ尾の狼です。特徴は電気を操る事が出来ます』
深月と執事長は大きな岩陰に隠れて三匹で行動している二つ尾狼にカメラを向けている。すると、狼が来た反対方向の通路から蹴り兎が飛び出して来た
【なんじゃあのウサギ!?】
【キモッ!】
【不気味だなぁ】
【足が異常に発達してるな】
【何か脈動してる感じがする】
真のオルクス迷宮の一層目から登場し、落ちた当初のハジメと皐月を負傷させた原因の魔物だ
『あの兎の方が強いですね』
『動きますよ~』
深月の言葉の直ぐに魔物達が動き争いが起きるが、予想通り蹴り兎が空力を活かして三匹の二つ尾狼を蹂躙して終わった。ものの十秒程度の戦闘だったが、視聴者を驚かせるには充分だ
【空中で方向転換したーーー!?】
【捕食者であろう狼があっという間に死んだぞ!】
【あの蹴りってどの位の威力があるんだろう】
『それでは、執事長はここで待機して下さい。私はあの兎を捕まえてきますので』
『え?』
【え?】
【え?】
【え?】
【?】
【何言ってんだ?】
深月は躊躇なく蹴り兎の前に出て、深月を視界に入れた蹴り兎はガクブルと震えだした。狼を余裕で殺した蹴り兎が恐怖しているのだ。まぁ、笑顔で威圧しているから仕方がないだろう
【兎w】
【さっきまでの強い威厳がw】
【震えてて可哀相だw】
【動物?の本能か】
深月が兎の首根っこを掴んで持ち帰り、宝物庫から戦車に使用されている金属板を取り出して蹴り兎に蹴るようにジェスチャーで伝える
【メイドさんw】
【伝わらんでしょw】
【ってか鉄板何処から出した】
【総理大臣:もしかして以前購入された戦車の装甲の一部ですか?】
【えっ!?】
【買ったのかよw】
突っ込みどころが多い中動画は続き、深月の意図を汲み取った蹴り兎が装甲板に蹴りを放つ。装甲板は蹴り兎の攻撃に耐えたものの、深い窪みという生々しい傷を負った
【えっとぉ】
【えっ?まじで?】
【総理大臣:新規開発の装甲がぁぁぁぁ!?】
【戦車だろうと蹴りで壊されるのですね】
【ってか装甲が普通とは違うのかよw】
総理大臣の胃は痛いだろう。しかし、装甲板についての知識が無い視聴者にとってはただの金属板か軽くて丈夫の合金程度だと思っているだろう
『それにしてもこの兎の脚力は尋常ではありませんね』
『対戦車ライフルでも傷を付ける程度のこの装甲版を凹ませる事が出来ました!』
【ふぁ!?】
【対戦車ライフルぅ!?】
【冗談でしょ?冗談だと言ってくれ!?】
実はこの蹴り兎、歴戦の個体であった。本来いる場所の階層から下に潜り強者と戦って強くなり、本来の階層でボスをしている。蹴り兎はもの凄く頑張ったのだろう。しかし、魔物とはいえ生物が持っている生存本能から感じる深月の圧は計り知れなかったという事だ
『この兎は食用ではないので放しますね』
深月は蹴り兎に用が無くなったので地面に降ろすと、物凄い勢いで逃亡して暗闇へと消えた
『では次の階層へと行きましょう』
『・・・もうおなかいっぱい』
『私達が攻略した迷宮ですのでどの様な魔物が出現するかは把握しております。安心して下さい!』
『何処にも安心できる要素がないですよ』
執事長の嘆きを無視して手を強引に引っ張って奥へ奥へと進むと、因縁ある爪熊と再会する。個体は違うとはいえ、皐月の腕を切り飛ばしたので種として絶滅するまで倒し尽くしたかったが制限時間がある為攻撃力の検証をし終えた後に拳のラッシュを眉間に叩き込んでKO勝ちした後に爆散した
【あの離れた場所から飛ばす斬撃ぃ】
【熊さんは強かった】
【だが相手が悪かった】
【お嬢様の腕を切り飛ばした熊に慈悲はない】
【北海道のヒグマ相手に無双出来ないかな?】
【ヒグマが逃げるんじゃね?】
【逃げても追い付けるでしょ】
「北海道で人的被害が出ている地域のヒグマ駆除って案はいいかもしれないわね。後でお父さんと相談しよ」
皐月によるヒグマを標的とした駆除作戦が決定した瞬間だ。熊肉を食べてみたいという欲が一番大きいが、そこから繋がる縁にも少しだけ期待している
そんなこんなで深月と執事長のドキドキ迷宮探索は下層に降りていく事で戦闘力の高い魔物達の紹介映像となり、遂に最下層のボスのヒュドラとの戦いになるのが迷宮攻略者である深月が居る事でヒュドラは出てこないのだ。こればかりは仕方がない
【迷宮攻略完了か~】
【短い様で長かった】
【興奮して気付いたらあっという間だね】
【最後の大広間みたいな所ってボス部屋だよね?】
【ボスは?ボスはどうなんですか!!】
「ボスは攻略者があの場に居るから出ないだけよ。属性攻撃に加えて精神攻撃や防御や回復等々と面倒極まりない存在だったのよ。しかも、首を全て倒したらお代わり再生で一つに纏まるの」
【なにその無理ゲー】
【チートじゃねぇか】
【いや待つんだ!】
【メイドさんが攻略しているならお嬢様も攻略しているという筈だ!】
【迷宮にお嬢様を連れて行くのはどうかと思う】
「当時は力が無かったから強制徴収で迷宮での訓練をさせられたのよ。それから事故で戻れなくなった私を追って深月と旦那と一緒に攻略したというわけよ。あの最初に出て来た爪熊に旦那と私は腕を切られて食べられちゃったから深月が二人を背負って上るという事も危険だったの」
【えっ?】
【待って?】
【食べられた?】
【もしかしなくても食べてる所を見た?】
「そりゃあ見たから説明出来るのよ。さっきも言った通り、当時は旦那と二人で弱かったから必死に逃げる事しか出来なかったの。目の前に死を突き付けられて潔く死を受け入れるなんて嫌よ。どんな状況下でも生きる事を諦めずにいたからこそ、転職の錬成師で壁に穴を開けて避難する事が出来たの」
【お嬢様の覚悟すげぇ】
【天職が戦闘職だったら死んでた可能性があるって事か】
【でも戦闘職じゃなかったら戦いすら出来ないわけでして】
【無理ゲーですわ】
【でもどうやって生き残れたの?】
【補給物資は何も無いよね?】
「壁を開けた先にあった回復薬がゲームで言う所のエリクサーでね?失血死を免れる事が出来たの」
【ふぁ!?】
【エリクサー!?】
【在庫はないんですか!?】
皐月も神水が残っていれば交渉材料として提示出来たかもしれないが、如何せん幻の存在として情報が書かれていただけで実在しても量があるかどうかは不明なのだ
「まぁ・・・ほんっとうに運が良かっただけなの。人生の中で二番目に運が良かったわ」
【おいおいおいマジかよ】
【エリクサーで二番目てぇ】
【一番は?】
【天職ありだったこと?】
「人生の中で一番運が良かった事は深月と出会えた事よ!いや本当に深月が居なかったらと思うとゾッとするわ」
深月の日本食再現という奇跡にも近しい食生活も加えるが、何よりも迷宮内で魔物を食べる時に超不味い物を食べ続ける必要が無いという点が一番だった。他にも色々とあるのだが、食に関してが全てである
「深月のお陰で異世界でも柔らかいパンもそうだけど、醤油や味噌も作れた事が大きいわね」
【醤油!?】
【味噌は出来る可能性が高いかもしれんけど醤油ってw】
【超メイドさんは某青タヌキの道具でも持っているんですかねぇ?】
コメントでは色々な考察がされており、濁流の様に大量のコメントが流れる
「さて、そろそろライブは切り上げるわよ。考察しても良いけど、過度な期待とか憶測を事実として報道したりしたら覚悟しなさいよ?それじゃあ、ばいば~い」
最後の最後に釘を刺し、皐月は終了の挨拶をした後にライブを終了した
布団「常々思います。中世文化の異世界に行きたくはないと!!」
深月「現代社会の生活水準は高いですから」
布団「せめて幸運値を極振りした生活を・・・何卒ッ!!」
深月「妄想するだけなら無料ですよ?」
布団「知ってるよチクショウ!」