神々が愛した幻想郷 ~ Fantasia Variants Dreamed.   作:左右手

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序章
プロローグ


いつからだろうか、人々が“神”の存在を信じなくなったのは。

 

かつて、人々は神々の恩恵を受け、一つの文明を築き上げた。

やがてそれは大きな文明となり、人々の生活は豊かになっていった。

 

文化は繁栄していった。しかし、繁栄と共に信仰の心も薄れて行った。

そうしていつしか人々は、神の存在を架空のものとするようになった。

今まで祟りや奇跡と呼ばれてきた現象が科学的根拠で証明されるようになり、人々は自分自身の力を信じるようになった。

だからこそ、人々はそういった非科学的な、自分の理解を超える存在を恐れるようになったのだ。

 

しかし、それは神だけにはとどまらない。

日本でいえば、幽霊や妖怪、海の向こうに目を向ければ、天使や悪魔、或いは吸血鬼等、人間の考えの及ばぬ域にいる者や、人智を超えた力を持った者達を、人々は幻想だと嗤った。

存在の否定は自らの消滅を意味する。人間の存在無くして妖怪は、神は存在し得ない。

 

存在を否定された彼らは、どこへ行くのだろうか。

幻想となった彼らには、最早その世界で生きる術は無かった。

 

だが、彼らにはたった一つだけ、居場所があった。

忘れ去られた彼らが、幻想となった彼らが、最後に行き着く楽園があった。

 

その楽園の名は、幻想郷。

 

存在を否定された者が辿りつく楽園。

そこは全てを受け入れる世界。とても美しく、そして残酷なる世界。

 

その幻想郷の創始者は、数いる妖怪の中でも特に永き時を生きているであろう妖怪である。

その妖怪の名は八雲紫。この幻想郷を管理する存在である。

彼女は今、その幻想郷の外にある世界を眺めている。

現実と幻想の境界など、彼女にとってはあってないようなものである。彼女が持つ『境界を操る程度の能力』により、彼女は幻想郷と外の世界とを自由に結ぶ事ができるのである。

彼女は今、虚空を裂くように開かれたスキマから、境界の向こう側を眺めている。

 

彼女の目に映るモノ、それは人に近くて、限りなく遠い者達。

見た目には普通の人間だろうが、彼女には理解できる。

彼らが、人智を超えた力を持った存在であるという事を。

彼女はその力に強く興味を持った。そして、自らの世界、幻想の世界に彼らを招き入れようと考える。

 

そして、彼女は一歩、前へと踏み出す。

彼女の眼前に開いた境界の狭間(スキマ)は、いとも容易く世界の隔たりを越えて、彼女をその場所へと導いた。

 

月に照らされたその地に、彼女は舞い降りる。

月下に浮かぶその影達は、ただ静かに来訪者を見据えていた。

 

 

 

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