神々が愛した幻想郷 ~ Fantasia Variants Dreamed.   作:左右手

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仮免許も手に入れて、テンションが上がってまいりました。

少々忙しかっただけです。執筆をサボタージュしていた訳では無いです(白目)


-あらすじ-
帰還したジークを、紅魔館の面々は暖かく迎え入れた。
そして、フランはジークの力で狂気を無くす事が出来た。



U.N.オーエンは彼女なのか?

紅魔館の図書館は、相も変わらず暗闇と静寂に包まれていた。

あれからパチュリーは、左手に紫の薔薇を持ちながらずっと本を読んでいた。

小悪魔は再び本棚の整理に戻り、言葉を発する者は存在しなかった。

 

「今戻ったよ~」

 

「パチェー! 久しぶりー!!」

 

そんな静寂を破る声が二つ、図書館に響く。

本に視線を落としていたパチュリーは、勢いよく顔を上げ、その声がした方向に目を向ける。

 

満面の笑みを浮かべながら勢いよく手を振るフランドール。

その傍らで、微笑を浮かべながら軽く手を振るジーク。

 

二人の吸血鬼が揃って戻ってきた事で、漸く()()が帰って来た。

 

「…おかえりなさい、フラン」

 

子供のように無邪気な笑顔を浮かべるフランドールに対し、穏やかに微笑みかけるパチュリー。

 

「あ…名前、呼んでくれた」

 

パチュリーに自分の名前を呼ばれ、その表情を更に喜色を湛えるフランドール。

 

「でも、どうして? 今までは『妹様』だったのに」

「だって、家族でしょう? 名前で呼んだって、何もおかしなことは無いわ」

「そっかー……えへへ…何か、新鮮かも」

 

フランドールの頭を撫でながら、優しくそう語りかけるパチュリー。

年齢こそフランドールの方が上であったが、その光景はさながら母と子のようにも見えた。

 

「…こらそこ、あんまりニヤニヤしないの」

 

「Tut mir leid(これは失敬)」

 

二人を眺めながら不気味な笑顔を浮かべるジークにそうツッコミを入れるパチュリー。

 

「まあ、それはそうと……そろそろ、来るんじゃないかな?」

 

「何が?」

 

そう零したジークの言葉に対し、要領を得ない様子のパチュリー。

だが、数秒後に駆け付けたレミリア達を見て、その言葉の真意に気付く事となった。

 

「フラン…!」

「えっ!? 妹様!?」

「これは…!?」

 

今の今まで地下に居た筈のフランドールが目の前に居る事に驚愕するレミリア。

レミリアに続いて、その後ろにいた美鈴と咲夜が同様の反応を見せる。

 

突然の出来事に暫く呆けていたフランドールは、次第にその顔を綻ばせていく。

 

「あっ……ぉっ…」

「え?」

「お姉様ぁーーーっ!!」

「うぐぇっ!?」

 

歓喜の声を上げ、弾丸の如き勢いでレミリアの胸に飛び込むフランドール。

吸血鬼の身体能力から繰り出されたタックルをモロに受け、外見年齢10歳そこそこの少女が発するべきではないような声を上げながら吹き飛ぶレミリア。

 

「ちょっ、大丈夫ですか!?」

 

「お嬢様ァー!?」

 

フランドールに圧し掛かられたままのレミリアに駆け寄る美鈴と咲夜。

無邪気にはしゃぐフランドールの下には、白目を剥いて横たわるレミリアがいた。

 

先程まで飄々とした態度を崩さなかったジークも、眼前の惨状に思わず苦笑いする。

 

「アハハ…やれやれ、元気が良いねぇ」

「良すぎるのも困りものだけれど…」

「…まあ、楽しそうならそれで良いさ」

「……」

 

何の気無しに放たれたその言葉を聞き、複雑そうな表情を浮かべるパチュリー。

 

「…外の世界(あっち)じゃ、楽しい事なんて教えられなかったからね。

けど…幻想郷(こっち)には楽しい事や面白い事がたくさんある。

ここならきっと…あの子も、壊す以外の楽しみを知る事が出来る筈だよ」

 

「…そうね。 きっと、変われるわ」

 

長い時間を地下の部屋で過ごしてきたフランドールは、知る事等無かった。

流行の娯楽も、加工された物以外の人間も、人並みの幸せも。

 

だからこそ、彼らは望む。

長い間知る事の無かった、心から楽しめる娯楽を、人との繋がりを、家族の暖かさを知り、幸せになって欲しい、と。

 

狂気という名の枷が外れた今、彼女を縛る物は何も無い。

 

これから彼女に待っているのは、楽しい事ばかりでは無いのかも知れない。

それでも、薄暗い地下に差し込んだ一縷の光は、彼女に光を教えた。

 

今この時より、彼女の物語は始まっていくのだろう。

 

くんずほぐれつの取っ組み合いを始めたフランドールとレミリアと、それを抑えられずに右往左往する美鈴と咲夜。

周囲に被害が出ている事を度外視すれば微笑ましい光景を眺めながら、パチュリーとジークはそんな事を考えていた。

 

 

 

------

 

 

数日後―

 

 

「ごめんくださーい」

 

右手に携えた箒を用いて紅魔館の門扉を叩く者が一人。

白黒の衣装に身を包んだ普通の魔法使い、霧雨魔理沙である。

 

「んぁ…何ですか…って、なんだあんたか」

 

門を叩く音に目を覚まし、目を擦りながら対応する美鈴。

 

「なんだじゃなくて魔理沙だ門番、せっかく遊びに来てやったのに」

「門番じゃなくて美鈴です。 それにしても…『遊びに』ですか…」

「…? なんだよ…」

「いえいえ、別に。 …それより、遊びに来たのでしたね。 ()()()()もきっとお喜びになりますよ。 さあ、中へどうぞ」

「フラン様…? …まあいいか、邪魔するぜ~」

 

美鈴の発言を少々怪しむも、特に何も思わずに館へと向かう魔理沙。

 

その背中が扉の向こう側に消えるのを見送りながら、美鈴は魔理沙を想う。

 

(あーあ…タイミングの悪い時に来ちゃったわね魔理沙も…)

 

今はもう見えなくなったその背中に、美鈴は同情の視線を向けるのであった。

 

 

魔理沙が最初に足を運んだのは、紅魔館内にある図書館であった。

所狭しと敷き詰められた高い本棚に見降ろされながら、魔理沙はゆっくりと歩いていく。

 

「いやしかし、これだけの本をいったい誰が集めたんだろうなぁ」

 

見渡す限りの本、本、本。少なく見積もっても、その蔵書の数は100万を超えるであろう。

魔理沙が一生かかっても読み切れないであろう膨大な量である。

 

「…こんなにあるんなら、少しくらい持っていってm」

 

『もってかないでー』

 

「な、何だ? 本が喋った…?」

 

そんな邪な考えを抱きかけた魔理沙を諌めるように、堆く積まれた本の山から弱々しい声が響く。

 

「ぷはっ」

 

中から出て来たのは、日陰の魔法使いことパチュリーだった。

 

「お前一体何やってたんだよ…」

 

「この本だけど…2~3割かは私が集めた物だから、勝手に持って行かれちゃ困るわ」

 

半分目を見開き、呆れた様子の魔理沙。そんなこと等お構いなしに、パチュリーはそう語る。

 

「これの2~3割って…それでもとんでも無い数だな…。 …って、ちょっとまて、残りは誰が集めたんだ?」

「この館の旦那様よ」

「ここ、旦那様なんて居たのか。 …って、ソイツ一人でか!?」

「そうなんじゃないかしら? 少なくとも、私が覚えている限りではね」

「…とんでもないな、ソイツは」

 

館の主人が一人で大量の本を収集した事に驚愕しつつも、その人物に想いを馳せる魔理沙。

 

「…でも、今彼は忙しいから、用事があるならまた今度にして頂戴」

「ああ、いや…用事は他にもあるんだ」

「…何? まさか、この本が目当てとは言わないわよね?」

 

少々声のトーンを落とし、スペルカードを構えながらそう問うパチュリー。

 

「違うって、そう構えるな。 怖いから」

「そう…まあ、妙な真似はしない事ね。 今日は喘息の調子も良いから」

「喘息? そりゃあ難儀だな、お大事に」

「…ありがと」

 

パチュリーに労りの言葉を投げかけ、魔理沙は図書館の出口へと向かう。

 

「何処に行くのかしら?」

「いや、なに。 せっかくだから吸血鬼のお嬢様にでも挨拶しようかなと」

「そう…でも、今は行かない方が良いわよ」

「?? …なんでだ?」

 

図書館を出ようとした魔理沙を制するパチュリー。

その言葉の真意が掴めず、釈然としない様子の魔理沙。

 

「…まあ、好きにすると良いわ」

 

「はぁ…まあ、好きにさせてもらうわ」

 

そんなやり取りを最後に、魔理沙は図書館を後にした。

 

「…いくら調子が良いとはいえ、流石に()()の相手はしたくないわ」

 

魔理沙が去っていった扉を見つめながら、肩を竦めて小さく溜息を吐くパチュリー。

 

「ご愁傷様ですねー、魔理沙さん」

 

本の整理をしていた小悪魔も、魔理沙を憐れむように肩を竦めてそう呟いた。

 

 

------

 

やれやれ、どいつもこいつも何だってんだ全く…。

私がこの先に行ったら一体何が起こるって言うんだよ。

 

…とはいえ、さっきから妙に嫌な予感はしてるんだよな。

まあ…挨拶しに行くだけなら、別に問題無いだろう。

 

そうこう考えている内に、大きめの部屋に辿りついた。

内装は豪華だが…如何せんどれも真っ赤だ。全く趣味の悪い。

 

恐らく、此処は誰かさんがふんぞり返る部屋なんだろうな。玉座みたいな椅子が置いてあるし。

でも、今は誰も座っていない…。此処に居る筈の吸血鬼は何処に行ったんだ?

 

「とりゃぁああああーーっ!」

 

「ヤッダーバァアァァァァアアアアア!」

 

掛け声のような物と、恐らくは断末魔の叫びでろう物が部屋に響く。

その方向に目を向ければ、白目を剥いて倒れている吸血鬼と、その吸血鬼の横で楽しそうに微笑んでいる…何だろうな、よくわからん生き物がいた。

 

「楽しかった~…あっ!」

 

「んあ?」

 

どうやら此方に気付いたようだ。何だかとてもうれしそうだ。

白い歯を見せてはにかむ少女。牙の形からして、多分彼女も吸血鬼なのだろう。羽の形は、大凡吸血鬼のそれとはかけ離れているが。

 

「貴方だれ? 人間?」

「私は人間の魔法使い、霧雨魔理沙様だ」

「へぇ~! 私はフランドール・スカーレット、フランって呼んで良いよ!」

「ああ、よろしくなフラン」

 

スカーレット…と言う事は、あそこで伸びてる吸血鬼の血縁なのか。

…多分、こっちが妹だろうな。なんとなくだけど、雰囲気が。

 

「ところで…フランは何をしていたんだ?」

「えっとね、『ダンマクゴッコ』っていうのやってた」

「ほぉ、弾幕ごっこか」

 

どうやら、コイツも弾幕ごっこをやるらしい。

レミリアは、アイツ(フラン)の弾幕ごっこに付き合ってやってたのか、お姉さんしてるな。

 

「でも…お姉様とやるの飽きちゃった~…」

 

まあ、何度も同じ相手だとマンネリ化もするだろうな。

…よし、ここは私が一肌脱いでやるとしよう。

 

「相手を探しているんなら、私がなってやるよ」

「本当!? 魔理沙も弾幕ごっこするの?」

 

凄くうれしそうな表情になったな。よっぽどやりたかったのか。

 

「そりゃあもう、私は弾幕ごっこのベテランだからな!」

「すごいすごい! じゃあ早速始めようよ!」

 

フランが手を上に翳すと、虚空からスペルカードが出てくる。

流石に吸血鬼、そういう手品も得意なんだな。

 

私もポケットからスペルカードを取りだし、左手に構える。

 

「よし、じゃあ始めるぜ!」

 

「うんっ!」

 

 

先ずは相手の出方を窺う為に、適度な大きさの弾幕をばら撒く。

フランの方はというと、此方の弾幕を見てはしゃいでいる。避ける気は無いのか?

 

「すごい綺麗~! …あ、でも当たっちゃダメなんだよね~」

 

流石にルールくらいは知っているか。さて…どう出るか。

 

「きゅっとして…」

 

右手を前に突き出し、何かを握るような動作をするフラン。一体何するつもりだ?

 

「ドカーン!」

 

その右手を強く握り締めた途端、辺り一帯に散らばっていた弾幕が全て消し飛んだ。

何を言っているのかわからねーと思うが、安心しろ。私も分からん。

 

「今、一体何をしたんだ…?」

 

「私にはねー、どんな物も壊せる能力があるんだ」

 

どんな物でも…壊せる…?とんでもないな、それは…。

 

「その能力を使って、あの弾幕を破壊したんだ」

「成程…だが、それじゃあ勝負にならないぜ? 弾幕は基本的に、避けるものだからな」

「そーなんだー、なるほどー」

 

理解しているのかしていないのか良く分からないが…まあいい、続けよう。

 

今度はさっきよりも多めに弾幕を撃つ。…今度はしっかりと避けているな。

残像が出る程の凄まじいスピードで弾の間をすり抜けて行く…流石は吸血鬼。

 

「中々スリリングで楽しいわ!」

 

「そりゃ何よりだ。 だが、本当の弾幕ごっこはこの程度で終わりじゃないぜ!

魔符『スターダストレヴァリエ』!」

 

宣言と同時に魔力を解き放つと、私を中心に七色の星のような弾幕が展開されていく。

見た目も派手で、私のお気に入りの技だ。さあ、フランはどう攻略するんだ…?

 

「すごい綺麗だわ…この星の中に飛び込んでみたいっ!」

 

目を輝かせながら此方に突っ込んでくるフラン。自滅行為だぜ、そりゃあ…。

 

「でも…当たらないよ、このくらい!」

 

…!…あの密度の弾幕を、掠りもせずに避けている…!?

いくら吸血鬼とはいえ、初心者でそこまでの実力があるか普通…?

 

「着いたーっ!」

 

「ッ!!」

 

いつの間にか、私の眼と鼻の先までフランが迫っていた。

右手には、何やら歪な形の黒い棒のような物を持っている。良く分からないが、多分武器だろう。

武器での攻撃も、別に禁止されてはいない。弾幕ごっこと言うのはそういうもんだ。

 

それ故に、今の状況は非常にマズイ。

 

「いっくよー? 死なないでねー!」

 

「物騒な事言うなっ!」

 

大きく振りかぶって思い切り此方に叩きつけようとしてくるフラン。

動きは素人目に見ても大雑把で適当だが、そこに吸血鬼のパワーが備わってくると話は別だ。

 

当たったら悲惨な事になるのは目に見えているので、何とか回避する。

 

「~~ッ!」

 

「あ、外しちゃった」

 

先端がちょっと頬に掠っただけで、物凄くいたい…。

こりゃあ当たったら大変だったな…。何とか喰らわないように気を付けよう。

 

「…じゃあ、こういうのはどう? 禁忌『クランベリートラップ』!」

 

クランベリーか、美味しそうだ。でも罠なのか、じゃあダメだ。って、そうじゃない。

赤と青の果実のような弾幕が、私を挟むように四方から迫ってくる。

流石に収穫される訳には行かない。弾幕の隙間を見つけて、そこに逃げ込む。

 

…!成程…。どうやら、あの青い弾幕は此方を狙ってくるようだ。

なら、赤に気を付けつつ、青を適当に撒いて逃げ道を作っていくとしよう。

 

私の狙いは、おおむね成功した。

赤い玉が常に中心に集まるように飛んでくる事には気が付かなかったが、さして問題では無い。

中々考えられた弾幕じゃないか、私はこういう、パターンを見抜くタイプの弾幕は割と好きだな。

 

「おぉ~…全部避けちゃった…。 すご~い!!」

 

純粋に私を褒めてくれているのだろうか。何だかむず痒いけど…まあ、悪い気はしないな。

 

「じゃあ…これも行けちゃう? 禁弾『スターボウブレイク』!」

 

フランの背中の羽(?)についた結晶が光を放ち、そこから翼のように大量の弾幕が射出される。

アーチを描いて撃ち出されたその弾幕は、徐々に光を失っていき、ボロボロと崩れ落ちて行く。

 

落下した弾幕は、私がいる場所にも降り注いでくる。

回避しようにも、如何せん密度がとんでもない為に下手に動けない。

かなり慎重に動かないと、気が付いたら逃げ場が無くなっていました…なんて事になりかねん。

 

…って、アレ?これって…。

 

「…あ!? しまったぁ!」

 

完全に弾幕が届かない位置を見つけてしまった。…突っ立っていても、ここなら当たらないな。

どう見ても安置です。本当にありがとうございました。

 

「うぅ~…失敗したぁ…。 スペルカードって難しいね」

 

「まあ、これに関しては…仕方が無いよ、うん」

 

メタフィクションな話をしてはいけない。これは戒めだ。

 

「…スキありっ!」

 

「ファッ!?」

 

まさか話しているスキに弾幕を撃ってくるとは…汚いなさすが吸血鬼きたない。

…だが、その程度の弾幕を喰らう魔理沙様じゃないぜ!

 

「この程度で不意打ちのつもりか? ソイツは甘いぜフ…」

 

…あ、あれ?いない…フランは何処に…?

 

「スキだらけだよ! 禁忌『レーヴァテイン』ッ!」

 

「ッ…! 後ろかッ!?」

 

まさか、あの弾幕を目くらましに使うとはな。本当にコイツ初心者なのか…?

それにしてもマズイな…。 何だよあの巨大な炎の剣は…。まず間違いなく、触れたらヤバイって、私でも分かるぞ…それくらいはな。

 

「くらえええーっ!!」

 

思い切り此方に向けて上から叩きつけてくる。直線的な動き故に回避自体は簡単に思えるが、その攻撃範囲が広すぎて、大きく避けないと巻き込まれてしまう。

右に、左に、薙ぎ払うように次から次へと攻撃が重ねられていく。…部屋壊れないか?

回避に徹するものの、やはり近くにいると凄く熱い。切られたら火傷どころじゃ済まないな。

 

「ふえぇ~…ぜんぜん当たらないよぉ…」

 

炎の剣を振り回している張本人からそんな言葉が聞こえてくる。十中八九、矢鱈に振り回しているだけだからだろうけど。

もしアイツが剣術を嗜んでいたら、私は今頃燃え尽きているだろう。

 

「うーん…そうだ!()()を使えば!」

 

…何だろう、凄い嫌な予感がする。

 

「行っくよ~! 禁忌『フォーオブアカインド』!」

 

蜃気楼のようにフランの体がぼやける。ゆらゆらと揺れて、影が増えて行く。

最終的に、その影は4つに増えた。まるで分身でもしたかのよう…に…

 

「「「「じゃじゃ~ん!」」」」

 

「増えたァー!?」

 

どうなってんだ!?…一体どういう原理なんだ?全く持って理解不能だぜ…。

 

「どう?これなら」

「もう逃げられないよね!」

「4つに増えた禁忌の力で」

「貴方を焼いてあげる!」

 

4人のフランがそれぞれ声を発する。同一人物故か、意志の疎通がぴったりだ。

各々の右手には、先程の炎の剣が握られている。…確か、『レーヴァティン』だったか。

 

「「「「滅光『フィーア・レーヴァティン』!!」」」

 

4人のフランが一斉にレーヴァティンを構え、此方目掛けて振り下ろす。

単純に考えて、さっきの4倍の剣に狙われるって事だよな…これは、ヤバイぜ!!

 

「うわぁっ!?」

 

「ほらほらぁ~!」

「まだまだいくよ~?」

 

必死に回避するも、剣の大きさと密度の所為で思うように動けない。

そんな私の事などお構いなしに、容赦なく剣を振るうフラン達。

 

「くそっ…」

 

「う~…逃げるなぁ!」

「いや、逃げなきゃ意味無いでしょうよ」

「あ、そっか」

 

くだらないやり取りをしつつも、しっかりと此方を狙って剣を振るってくるフラン達。

あれだけ滅茶苦茶に振っているのに、互いに当たらないようにしているのは流石と言うべきか…。

 

「はぁ…はぁ…」

 

…段々息も苦しくなってきた。…流石にもう余裕が無くなってきたな。

 

「苦しそうだね」

「もうあきらめる?」

「ねぇ、そっちの剣と交換してよ」

「同じだよ!」

 

諦める…?冗談じゃないぜ…私の本気は、こんなもんじゃないさ!

 

「ナメるなよ、素人! ベテランの力と言う物を見せてやるぜ!」

 

この私の代名詞とも言うべきスペルカードで、決めてやる!

 

「恋符『マスタースパーク』ッ!!」

 

「「「「…!!」」」」

 

ありったけの魔力を八卦炉に注ぎ込み、思いっきり発射する。

 

「ま、負けない!」

「こんなものぉ!」

 

フラン達もレーヴァティンを一斉に振るって対抗するも、次第に押されていく。

 

そして…

 

「「「「うわああぁ~!!」」」」

 

超極太のレーザーがフラン達を呑み込んだ。…私の勝ちだな。

 

「やっぱり、弾幕はパワーだぜ」

 

 

------

 

「あはぁ~…負けちゃったかぁ…」

 

「はぁ~…つ、疲れた…」

 

病み上がりだってのに、ちょっと調子に乗りすぎたかな…。

 

「…でも、楽しかったぁ~」

 

「…ああ、そうだな」

 

…なんだか、コイツの笑顔を見ていたら、疲れも吹き飛んじゃいそうだ。

窓の外に目を向けると、太陽が西に沈み始めていた。…そろそろ帰らないとな。

 

「…もう、帰っちゃうの?」

「ああ、人間は夜には寝る生き物だからな」

「そっかぁ…」

 

帰る旨を告げると、しょんぼりと寂しそうな顔をするフラン。

 

「そんな顔するなって。 …また、遊びに来るよ」

「!! …約束だよっ!」

「ああ、約束だ」

 

そう約束すると、嬉しそうに満面の笑みを浮かべるフラン。

…また今度、コイツと遊んでやるのも悪くないな。

 

フランと別れて、私は紅魔館を後にした。

廊下を渡る途中で、銀髪の男の人が会釈をしてきたから、こっちもそれと無く手を振っておいた。

 

…もしかして、さっきすれちがったのが主人だったのかな?

 

まあ、良いか。…今日は、楽しかったな。

 

 

 

 




フランちゃん大正義。異論は認める。
狂気を無くした彼女は、最早ただの純粋な少女です。

そして、レミリア・スカーレットは二度死ぬ(格言)
だんだん扱いが雑になっている気がしますが、メリハリだと思って下さい。

重い闘いでは無い為、少々戦闘描写が荒いかも。
毎回あんな調子でいくと、書いている此方が満身創痍になってしまいますのでゆるして。


次回、『吸血鬼のお悩み』。人間とどう向き合っていくか、というお話になる予定。


今回登場したスペルカード

フランちゃんうふふ。紅魔郷のEXは多分今やったらクリアできないと思います。

禁忌「クランベリートラップ」
フランドールのスペルカード。クランベリーの罠。
上下左右から掬うように赤と青の弾幕が迫ってくる。青の方が追跡してくる。
その弾幕は何処となくクランベリーの収穫作業と似ている。

禁弾「スターボウブレイク」
フランドールのスペルカード。崩れゆく虹の輪。
虹を描いた弾幕のアーチが壊れて、残骸の弾幕が降ってくる。
ちなみに、中央部分が完全安置。別名、休憩タイム。
宇宙船が亜高速で動く事により、ドップラー効果で星が虹色の輪のように見える現象をスターボウという。

禁忌「レーヴァテイン」
フランドールの代表的なスペルカード。でっかい炎の剣でぶった切る。
北欧神話に登場する伝説の武器、レーヴァティンが名前の由来。見りゃわかる。
その形は剣とも、杖とも、矢とも言い伝えられており、はっきりとした形はわからない。
日本じゃ専ら剣扱い。このカードも例外ではない。

禁忌「フォーオブアカインド」
これまたフランドールの代表的なスペルカード。フランが4人に影分身する。
意味は4カードと同じ。ポーカーではフルハウスより上で5カードより下の手である。
分身は意志を持っており、一人で漫才が可能になるという優れ物。


魔符「スターダストレヴァリエ」
魔理沙のスペルカード。魔理沙の代表的なスペルカードの一つ。漸く登場だよ。
虹色の星の輪が魔理沙を中心に広がる。弾幕の味は甘いと思われる。(儚月抄にて)
原作においては、ほぼ必ず魔理沙の自機ボムとして登場。前方に星型の弾幕をばら撒く。


滅光「フィーア・レーヴァティン」
この作品のみのオリジナルスペル。フランドールが使用。
フォーオブアカインド状態で放つレーヴァティン。破壊力も難易度も4倍になる。
名前の『滅光』の由来は、北欧神話において、レーヴァティンがユグドラシルを明るく照らす雄鶏『ヴィドフニル』を殺す武器として言い伝えられている所から。
フィーア(Vier)はドイツ語で『4つの』という意味。





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