神々が愛した幻想郷 ~ Fantasia Variants Dreamed.   作:左右手

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やっぱり、展開が早い方が読みやすいんでしょうかねぇ。
けど、私としてはあんまり描写を省いたり強引な展開にしたりとかは極力抑えたいんですよね。
そのせいで展開が少々遅いですが、飽きずに見て下さっている皆様のお陰で今日も頑張れます。

さて、中編です。

-あらすじ-
彼が幻想郷にやってきて初めて出会ったのは、人形師のアリスだった。
貴重な体験をしたり、興味深い話を聞いたりと、その日は楽しんだ。



吸血鬼の幻想旅路・中

にとりと名乗ったその少女は、どうやら河童であるという。

だが、その姿は多くの現代人が抱く河童の姿とはかけ離れていた。

 

肩口にポケットが付いた青い服、スカートの方は大量のポケットが付いた青いスカート、ポケットの隙間からは工具のような物がはみ出ている。

赤い珠のようなアクセサリーで水色の髪の両サイドを上げているが、そのつなぎ目部分は頭に被った緑のキャスケットで見えない。

背中には帽子と同じ緑色の鞄を背負っており、そこに通した紐を胸元の鍵のような物で固定している。鞄の重さにもよるが、負荷が掛かって食い込みそうだ。

 

今、ボクの眼の前に居るこの少女が…KAPPA(カッパ)…?

ボクの知っているカッパってのは、もっとこう…

 

「…あ、もしかして今『頭に皿乗せて無いのか?』とか思ったろ?」

 

…心眼?何で分かったの?やっぱり、この子只者じゃ…

 

「外から来た人間はみんなそう言うんだよね~! 全く失礼しちゃうよ!」

 

なんだ、実体験か。ということは、何度か外から来た人間に出会っているようだ。

その割に、幻想郷へ行ったという話をとんと聞かないのは…まぁ、あんまり考えないでおこう。

 

「じゃあ、ああいう河童は、人間が勝手に考えた物って事だね?」

 

「そうなるね。 良かったじゃない、正しい知識を得られてさ!」

 

得られた所で、今更それを誰にひけらかすかって話だけどね。

アクタガワリュウノスケにかい?…故人だよ。

 

にとりと名乗った河童の少女は、背負った鞄から何かを取りだす。

何だろう…細長くて…緑の…これは、食べ物?

 

「せっかくの出会いだ、良かったら一つどうだい?」

 

差し出されたそれは、彼女の口ぶりから察するに食べ物なのだろう。朝は食べずに来たから、少々小腹が空いていた。…けど、未知の物を食べるのは少々躊躇われる。

躊躇無く口に出来る者なんて阿修羅くらいしか知らない。食探究の魔神だ彼は。

そういえば、彼は何処にいるんだろうねぇ。上手く人のいる所に来れたかな?

 

…まぁ、いいや。それよりも…念の為に、にとりに聞いておこう。

 

「これ何ていう食べ物なんだい?」

 

「…ああ、もしかして見た事無いのか。

これはキュウリっていう野菜だよ。 そのままでも美味しいんだ」

 

そう言ってにとりは、鞄からもう一本のキュウリを取り出して齧る。

頬を緩ませ、蕩けたような顔で咀嚼するにとり。…そんなに美味しいのかな?

 

「う~ん、うまうま~。 ホラ、ジークも食べてみなよ」

 

言われるがままに手に取り、軽く先端を齧ってみる。

 

……。

 

「あ、美味しい」

 

「でしょう~? 私も大好物なんだ~」

 

歯ごたえがシャキシャキしていて、ほんのり甘味と苦味が効いている。

これは中々どうして、美味しいじゃあないか。

どんどん食が進む。ちなみに、にとりの方は既に食べ終わっていた。…早いね。

 

一分とかからず食べ終えてしまったた。食べるのに夢中になると周りが見えなくなるね。

 

「美味しかったよ、どうもありがとうね」

 

「なぁに、キュウリ好きが増えて私も嬉しいよ」

 

…キュウリ人気無いのかな?美味しいのに。

 

「…ところで、ジークはここに何しに来たんだい?」

 

帽子の鍔を直しながら、そう問いかけてくるにとり。

…そうだ、もしかしたら彼女なら妖怪の山の天狗にも顔が効いたりするかな?

 

「ああ、実は妖怪の山って所に行こうと思ってねぇ…」

 

「…へっ?」

 

素直に答えたところ、彼女は固まってしまった。

…コレは、妖怪からみても相当アレな答えだったのかい?

 

「一応聞くけど、別に物見遊山か何かで…って訳じゃないよね?」

「まあ、用事があるのは確かだよ」

「そ、そうか…うーん…」

 

何かを考え込むように腕を組んで首を傾げる姿が何とも可愛らしい…と、そうじゃないか。

暫し唸っていた彼女は、やがて顔を上げて此方を見る。

 

「私の知り合いに、妖怪の山に詳しいヤツがいるんだ。

ソイツに掛け合ってみてみれば、もしかしたら行けるかもしれない」

 

どうやら、妖怪の山と繋がる知り合いがいるらしい。

一体どんな人物…いや、妖怪?或いは…まあ、誰であろうと先ずは会わないとね。

 

「けど、この時間はまだいないかもしれないね。

いつもお昼時に見かけるし…暫くは何処かで時間でも潰しておくと良いよ」

 

なるほどねぇ…お昼まで寝ているタイプの人なのかな?

時間を潰すとなると…そうだねぇ、何が良いか…。

 

そういえば、彼女は最初姿が見えなかったけど…何かの能力なのかな?

 

「ねぇ、にとり」

「うん? なんだい?」

「最初にキミに会った時、姿が見えなかったのはなんでだい?」

「あー、あれはね…」

 

そう言うと、にとりは肩のポケットから何かを取り出す。

薄い小さな板…のような物だ。何だろう?

 

「コレは私が作った光学迷彩発生装置さ」

 

光学迷彩だって…?未来の技術だと聞くけれど…。

 

「ふふーん、驚いているなー? 私達河童の科学は世界一さ!」

 

できんことはない…ってかい?大したものだねぇ。

伝来した技術でなく、独自に生み出したって事か…それはすごいねぇ。

 

…そういえば、外の世界では医療機器なんかも随分発達していたね。

いずれ、医療に人間が不要になるような日も来るかもしれないね…それはそれで寂しいけど。

 

「…って、そう言えば吸血鬼なんだっけ。

それじゃあ、あんまりこういう機械とか、そういうのって興味無いよな…」

 

『アハハ…』と乾いた笑いを零すにとり。だが、俯いたその表情は『残念だ』と暗に語っていた。

 

…ボクとしては、物凄く興味があるんだけどねぇ。

せっかくの機会だし、いろいろ質問しておくか。

 

「その光学迷彩の装置、どういう仕組みで出来ているんだい?」

 

「えっ? …ああ、えっと…

これは自分の周囲に背景と同じ映像を投影して、あたかも何も無いかのように見せるんだ」

 

本当にカメレオンだったとはねぇ…。あんな小さな装置で、人一人を包めるほどの立体映像を映し出せるだなんて…一体どんな技術だい。

世界中探しても未だにそんな技術は作られていないだろうね。

 

河童と言う種族の凄まじさ、その片鱗を垣間見た気がするよ。

 

「他にも何か作ったりしているのかい? 良ければ見せて欲しいな」

「えっ…おまえ、そんなに興味あるのか…? 吸血鬼なのに?」

「吸血鬼だって機械が嫌いな訳じゃないよ。 …ボクは機械、割と好きだよ」

「……」

 

心底意外そうな顔をするにとり。そんなに機会に興味を持つ事が珍しいかい?

…あと、さりげなく『アンタ』から『おまえ』になってたね。まぁ、どうでも良いけど。

 

呆けた表情を浮かべていた彼女は、次第にその頬を緩めていく。

 

「…そんな事言ってくれるヤツなんて、同族以外では初めてだよ!」

 

そう言ってとても嬉しそうに笑うにとり。太陽のような笑顔が眩しい…別に日光平気だけど。

それにしても…同族、つまり河童以外には機械は受け入れられていないのか…。

 

確かに、争いを産む物ではあるけど…それでも、人を豊かにし、時に救える力だとボクは思うね。

 

「家に来なよ、色々見せてやる!」

 

ここに来て二度目のお誘い。幻想郷の女の子達は随分と積極的だねぇ…。

相手からアプローチを掛けられるのはあまり慣れない…。…まぁ、いいか。機械、機械。

 

「それじゃあ、お誘いを受けましょう」

 

「そうこなくっちゃな! 家はここの近くだから、私についてきなよ!」

 

そう豪語したにとりは、突然水に飛び込んだ。

ああ…河童だっけ、そう言えば。…って、泳いでついて来いって?それも吸血鬼に?

 

…仕方がない、魔眼(コレ)使って追いかけよう。こんなしょうもない事に使いたく無いんだけど…。

 

当然、千里先までなんて見渡せる訳がない。精々半径100Mといった程度である。

大事な眼を追跡の為だけに使うだなんて…()()()、怒るんじゃないかなぁ?

 

川を泳いでいるにとりを左目で捉える。結構スピードが速い…流石は河童。

走って追いつけるかどうか分からないね…仕方がない、飛ぼう。

 

一呼吸置いた後、隠していた背中の羽を広げる。

…普段は邪魔になるんだよね、大きいから。

 

川の周辺は木が生い茂っている。低空で飛んだら羽にぶつかって痛いだろうし、何より辺り一帯切り株だらけになっちゃうだろうからね。

仕方がないので、木にぶつからないギリギリの高度で飛んでにとりを追いかける。

 

…なんだろう、妙な視線を感じる。

辺りに気配は無いんだけど…まぁ、気にしないでおくか。

 

 

さてさて…お、にとりの動きが止まった。どうやら、あの場所らしい。

後ろ振り返って『しまった』とでも言いたげな表情になるにとり。

 

さて、そろそろ降りるか。…あえて、彼女の目の前に。

 

「ひゅい!?」

 

「遅れてごめ~ん」

 

予想通りの反応が帰ってくる。…面白いね、彼女は。

 

「い、何時の間に…」

「ずっと上からついてきてたよ~」

「そ、そうなんだ…そういや、吸血鬼だから飛べるんだ。

ハァ、びっくりしたぁ…。てっきり置いてきちゃったかと…」

 

案外おっちょこちょいなのかも知れない。…まぁ、女性には一つくらい、何かしら欠点があった方が愛らしいものだけどね。まあ、ボクの持論はどうでもいいか。

 

「それじゃ、気を取り直して…ここが私の家だよ。 ちょっとボロいけど、中に入ったらきっと驚くぞ~?」

 

にとりが指差す方向には、川に面した一件の家があった。

木造りの比較的小さな家だが、彼女の言には内部はその限りでは無いらしい。

 

「さあ、上がっちゃって!」

 

「お邪魔しちゃいまーす」

 

案内されるままに中へと足を踏み入れる。

 

感想としては…こう言っては失礼だが、想像していたよりも案外普通の部屋である。

もっとこう、機械がお出迎えするような光景を想像していたけれど…。

 

「あ、そっちは普通の部屋だよぉ。 メインはこっちだよ~」

 

後ろからにとりの呼ぶ声が聞こえる。

その方向に向かうと、玄関を進んだ先に物々しい鉄製の扉があった。

 

「今開けるから、ちょっと待ってて」

 

そう言うとにとりは鞄を降ろし、紐で固定していた鍵を取り外す。

ああ、それがこの扉の鍵だったんだ。肌身離さず持っているなら、なくす心配は無いね。

 

鍵穴に鍵が差し込まれ、扉がゆっくりとスライドして開く。

扉の向こうは、ボタンのような物が付いた機械が置いてある小さな部屋。

…というか、エレベーターだね。当然、全自動の。…もしかして、このエレベーターも自作か?

 

「その顔を見るに、エレベーターも知ってるみたいだね。 理解あるのはとっても助かるよ!」

 

相変わらず彼女は上機嫌だ。こういう語らいが出来るのが嬉しいのかな?

…まあ、ボクもアリスと話が出来てとても楽しかったけどね。

 

にとりが操作盤のボタンを押すと、自動的に扉が閉まり、エレベーターが下降を始めた。

 

「へぇ…静かで良いね。 快適、快適」

「ふふーん、中々のモンだろう。 でも、驚くのはこれからさ」

「それは楽しみだねぇ」

 

果たして、どんなオーバーテクノロジーが飛び出すのやら…。

 

程なくして、静かに響いていたエレベーターの音が止まる。

どうやら、ここが降り場のようだ。地下に作業場とは、考えたねぇ。

 

「さあ、着いたよ!」

 

ゆっくりと扉が開く。扉の向こうは暗闇に覆われて良く見えない。

 

「電気を付けて…と、ハイ!」

 

天井の照明が付き、部屋全体が明るく照らされる。

 

voll geil(フォル ガイル)…!(これは凄い…!)」

 

外の世界の超一流の研究機関と比較しても数段勝るであろう設備がそこにはあった。

まるでSF映画の1シーンの中にでもいるような気分だ。

 

「実際に見て触って体験すれば、きっともっと驚くよ!」

 

にとりに案内されるまま、施設内をぐるりと一周する。

至る所に彼女の発明品が置いてある。それらを一つ一つ動かしてもらったり、試してもらったり…その度に、新たな発見と驚きがあった。

 

室内のプールで運転させてもらったのは、水力だけで動く乗り物。道中でにとりが被ったのは、脳波で動かす事が出来るロボットアーム。にとりが背負って使って見せたのは、人間が飛べるようになるプロペラ装置等々…。

まるで一つのアトラクションのようだ。発明の数々が楽しみに満ちている。

 

「これをみんなキミが創ったっていうのかい?」

 

「まぁね、趣味の一環みたいな物さ」

 

趣味でそれらを作ってのけるとはねぇ…河童って本当に凄いね。

それにしても…これなら長時間見ていても飽きないね。

 

「…そうだ、おまえにも何か作ってやるよ」

 

「ボクにかい?」

 

お昼には知り合いが来るって言っていなかったっけ…?…まさか、お昼までに?

 

「私ほどになればなぁ、このくらい昼飯前なんだよ!」

 

中々上手い事言うねぇ、そういうの嫌いじゃないよ。

 

にとりはそう話しながら机に向かい、作業をし始める。

既に一人の世界に入ったみたいだ。…邪魔したらいけないね。

 

それにしても…少々悪い気がするねぇ、わざわざ作ってもらうなんてね。

 

「…遠慮なんていらないよ、“盟友”」

「“盟友”…?」

 

そう言うとにとりは作業の手を止め、此方を真剣な眼差しで見つめる。

 

「そうさ。 …私たちは、もう赤の他人なんかじゃないよ。

一緒に過ごした時間はごく短いけど、その中で互いを知って、互いを理解出来た。

…それはもう、“盟友”なんじゃないかな?」

 

盟友、ねぇ…。何故だか…思い出してしまったよ、()の事を。

…所詮過去の事だ。…今一度、盟友と呼べる者と出逢えた事を喜ぶべきだろうね。

 

「ああ…そうだね、盟友」

 

「へへっ…おまえは吸血鬼だけど、私にとっては無二の盟友だぞ」

 

キミが笑うと、ボクも釣られて笑顔になる。友だちの輪は広がっていく。

そこに種族の隔たりなんて、きっと関係ないのかもしれない。

 

それこそが、幻想郷という世界なんだろう。

だって、こんなに素敵な出会いに恵まれたんだからねぇ。

それだけでも、この世界に来てよかったと思うよ。

 

 

「できたぞ盟友~」

 

あれから数時間の後、発明品を見物したり弄ったりしていたら、にとりがボクを呼んだ。

 

彼女がその手に持っているのは、液晶が付いた薄い板のような機械。

一見すると、外の世界で最近流行っている『スマートフォン』と呼ばれる物に似ている。

 

「一体どんな機械なんだい?」

 

「これは通信用の機械さ。 …けど、電波は必要ないんだ」

 

電波を使わない…それはまた、凄いねぇ。一体何で通信するんだろう?

 

「この携帯は、妖怪の持つ妖力や、魔法使いの魔力なんかを通じて会話が出来るんだ。

こうやって、持ち主を登録するんだ。魔力を込めて、持ってみなよ」

 

とりあえず、言われた通りに魔力を込めて持ってみる。

画面には『マスター登録完了』の文字、その下にはボクの名前が表記されている。

名前までその場で登録するとは…一体どういう技術なんだ?

 

「これで完全にそれはおまえの物だ。 それじゃあ、次は通話相手の登録の仕方だね」

 

普通の携帯で言う所のアドレス登録みたいな物だね。それの魔力版みたいな感じかぁ。

にとりはボクが持った携帯の前に立つと、機体に手を翳した。…何をしているんだろう?

 

そう思っていると、画面に『データ登録完了 河城にとり』と表示される。

 

「これで登録が完了したよ! これでいつでも好きな時に私と話ができるぞ。 …ただし、忙しくない時に限定されるけどな」

 

本当かい…試しに、『通話』のボタンを押してみる。

 

「『はいはーい、聞こえるよ。 ちゃんとそっちからも音聞こえてるでしょう?』」

 

目の前で喋っているのもにとりだが、この機械から聞こえてくる声もにとりの物だ。

…どうやら、本当みたいだね。…改めて、ここが常識の通用しない世界なんだと思い知らされた。

 

「なるほどねぇ…ところで、相手からこっちに掛ける場合はどうするんだい?」

 

「あぁ~…まあ、いずれ量産する予定ではあるよ。 私は一応通話できるけどね。

…盟友がもっといろんな人と知り合って、通話する友だちが増えたなら、

その時はこの河城にとりが、盟友の盟友の為に一肌脱ぐよ!」

 

胸を張ってそう言うにとり。…フフ、本当に頼もしい盟友だ。

 

量産かぁ…外の世界の携帯もそうだけど、それって大変なんだよね。

部品だってタダで手に入る訳じゃあるまいし…ボクもなるべく、助力しようかな。

 

「あっ!」

 

「んっ?」

 

突然何かを思い出したかのようにはっとするにとり。一体どうしたんだい…?

 

「この携帯の名前を考えていなかったよ…これはうっかりだ」

 

そこ、重要なのかい?…それにしても、名前か。何かあるかなぁ…?…あっそうだ。

 

「じゃあ…『フロイント』といのはどうだい?」

「『フロイント』…? どういう意味なの?」

「ドイ…外の世界の言葉で『友だち』っていう意味さ。 ちょっと安直かな?」

「…ううん…凄く良いよ! 『友だち』…素敵な名前だよ! それにしよう!」

 

意外や意外、あっさりとOKが出た。

けどまぁ、ボクも何だかんだ、気にいったフレーズだったからね。

 

ヒトでも妖怪でも、誰とでも繋がる…そうなったら、きっと素敵だろうね。

…これから長い付き合いになりそうだ。よろしく、Meine Freund(マイネ フロイント)(素敵な盟友).

 

「…さて、そろそろ良い時間だね。 アイツも来てる頃だろうさ」

 

机の上の時計(デジタル)を見ながらそう言うにとり。時間が経つのは早いね。

 

「それじゃあ、外に行こうか。 その知り合い、紹介するよ」

 

「了解だよ」

 

最後に軽く彼女の発明を見納めつつ、ボクらは家の外へと向かった。

 

 

外に出ると、確かに太陽が真上まで登っていた。今日も良い天気だ。

 

「いるかなぁ…あ、いたいた。 お~い! 雛ぁ~!」

 

にとりが大声で誰かの名前を呼ぶ。彼女の視線の先には誰かが立っていた。

名前を呼ばれたその人物は、ゆっくりと此方に歩み寄ってくる。

 

「どうしたの、にとり? …あら、そちらの人は?」

「ああ、私の盟友のジークさ。 紹介するよ盟友、コイツが私の言ってたヤツだ」

「コイツって…。 …初めまして、私は鍵山(かぎやま)(ひな)、種族は厄神(やくじん)よ」

 

雛と名乗ったその少女は、スカートの裾を摘んで軽くお辞儀をする。

服のスカート部分は赤、それ以外は同じく赤だが暗い配色になっている。エメラルドグリーンの長い髪をサイドから伸ばし、胸元で一本に束ねた髪型が印象的だ。

リボンを結んだヘッドドレス、髪を束ねたリボン、左腕にもリボン…と、全身に至るまでリボン尽くしである。リボン付きだ。

 

厄神…確か、厄を溜め込む神サマだっけ?あんまりその辺は詳しくないから分からないや。

 

「初めまして。 ボクはジーク・フォン・アーカード、種族は吸血鬼です」

 

「吸血鬼…? その割には、日光を受けても何とも無いみたいだけれど…?」

 

やっぱりその質問は来るか。アリスに次いで二回目だね。…そういえば、にとりは質問しなかったね。

うーん…どう説明したらいいか分からないんだよなぁ。完全に先天的な物だろうし。

 

「…まあ、体質って事で」

 

「はぁ…まあ、そういう事にしておくわ。 ところでにとり、私に一体何の用?」

 

少々難しい表情をしつつも流してくれた。…まあ、先ず納得はしていないだろうね。

そして、彼女の意識は本題へと移る。にとりに呼ばれたんだっけ、そういや。

 

「そうそう…実はさ、お願いがあるんだよ」

 

「お願い? …貴方からのお願いだなんて、珍しいわね」

 

不思議そうに首を傾げる雛。人形のような容姿とその動作が相まって、妙に可愛らしい。

 

「コイツ、どうやら妖怪の山に用があるみたいなんだ」

 

「えっ…? 妖怪の山に…?」

 

コイツというのは言うまでもなくボクの事。当然、用事がある訳さ。

妖怪の山のエライ人なら、今までこの幻想郷に来たヒトとかも把握してるだろうし…ましてや吸血鬼なんて珍しい種族が来れば、それは少なからず話題にもなっただろうしさ。…まあ、人じゃ無くて天狗だろうけど。

 

「雛ならあの天狗にも顔聞くでしょう? …なんとか掛け合ってくれない?」

 

「そう簡単に言うけど…。 うーん…どうだろう…」

 

何やら難航している模様。それほどあの山は近付くのが難しいのかな?

 

「…分かったわ、何とか掛け合ってみる」

「本当か! ありがとう雛ぁ!」

「でも…危なくなったら、すぐに引き返すわよ。 …貴方も、それで良い?」

「ああ、構わないよ」

 

天狗がどの程度の強さなのかは知らないけど…まぁ、少なくとも最低限、自分の身を守るくらいは出来るだろう。雛って子は、強いのかな?

 

「それじゃ、兎にも角にも先ずは妖怪の山へ向かいましょう」

「了解~、それじゃねにとり~」

「またね盟友~! 向こう着いたら連絡くれよ~!」

 

一先ずにとりと別れ、ボク達は妖怪の山へ向かう事にした。

 

 

「…ところで、貴方は何故妖怪の山へ?」

 

川を上流へと上っていく途中、雛がそんな質問をしてくる。

 

「尋ねたい事が色々あるのさ。 …お山のお偉いさんにね」

「尋ねたい事…? …まあ、あまり余計な詮索はしないでおくわ」

「そうしてもらえると助かるよ」

 

説明がめんど…話して微妙な空気にしたくないからね。

 

「それじゃ、ボクの方からも質問良いかい?」

「何かしら?」

「キミとにとりって、どういう関係なんだい?」

「私とにとり?」

 

何やら親しげに話していたのが気になっていた。

厄神様って、知らないけど神サマなんだろう?にとり何気に凄いよね。

 

…いや、ボクの場合もっと凄いのがいたな、そういえば。

 

「そうねぇ…にとりはどう思っているか知らないけど…私は、友だちだと思っているわ」

 

「へぇ…」

 

にとりは知り合いだと言っていたけど、本当は照れ隠しだったりするのかな?

…案外素直じゃ無いところあるのかもね、盟友(にとり)は。

 

神サマだって、誰かと仲良くしたいって望みがある。ボクには、良く分かる。

河童であるにとりと、彼女は友だちになった。

なら…ボクだって『友だち』になれる筈だろうさ。

 

「…雛、ちょっと良いかい?」

 

「何かしら?」

 

ボクはフロイントを取り出し、雛に近づける。

 

「何、それは?」

「盟友が作ってくれた、友だちの輪を繋げる道具さ」

「友だちの…?」

「ボクと友だちにならないかい、雛?」

「…!」

 

目を見開き、驚いたような表情をする雛。

そりゃあ、困惑するか。…でも、こういうタイプには押しが肝心なんだ。

 

「でも…」

「…ボクは、この出会いを偶然だとは思わない」

「えっ?」

 

「この世界に来てから、ボクは色々な事を知り、学んだ。

それらは全て、誰かとの出会いを通じて得た物なんだ。

…にとりという盟友が出来たのも、きっと偶然なんかじゃない。

だから…キミとの出会いだって、運命の巡り合わせさ」

 

運命ねぇ…自分で言っておいてなんだけど、何とも曖昧な事だ。

最も、コレはレミィの受け売りだけどね。…けれど、出会いに意味がある事は事実だ。

 

「嬉しいけど…でも、私は厄神だから…」

 

「だから…何だい?」

 

そこまで言うと、目を伏せて少しだけ悲しそうな顔をする雛。

 

「私に近づいた者は、皆不幸になってしまう。

…だから、私と友だちになったって、何も良い事なんて無いわ。

にとりも、本当は私の事は…」

 

ボクは、雛の肩を左手で掴み、そのまま引き寄せる。

 

「きゃっ……へっ?」

 

「友だちなら、信じてやるべきじゃないかい?」

 

雛の眼を見て、はっきりとそう告げる。

暫く見つめ合った後、やがて彼女は目を閉じ、少しだけ口角を上げる。

 

「…そう、ね。 私、にとりの事ちゃんと信じてやれてなかったわ。

ありがとう、ジークさん。 …少しだけ、気が楽になったわ」

「ジークで良いよ」

「分かったわ、ジーク。 …けど、貴方も不幸になってしまうわよ?」

 

不幸…か。認識はできないけど、多分振りかかるんだろうね。

…ボクはもう、不幸なんて慣れているから、別に今更って感じだけどね。

 

「フフ…ダークサイドは吸血鬼の領域だよ」

「…分かったわ。 けど…後悔しないでよね?」

「麗しい女性と仲良くなるのに、どうして後悔なんかする必要があるんだい?」

「ふふ…参ったわ、私の負けよ」

 

苦笑しつつも、雛はフロイントに手を翳す。

そして、画面には『データ登録完了 鍵山雛』の文字が表れる。

 

やったね。やっぱり、友だちは多い方がいいね。

 

「何だか、不思議な感覚ね。 …さて、そろそろ行きましょうか」

 

ああ、そうだ。妖怪の山に行くんだった。…山の妖怪達とも、友だちになれるかな?

 

…何だろう、さっきから視線を感じる。

川で視られた時と同じだけど…本当に何事もないと良いんだけどねぇ…。

 

 

彼女に連れられ川を上る事10分少々、妖怪の山の入口が見えて来た。

明確に『入口』だと認識できた訳ではないけれど、その場所に来た時、雛が立ち止り、それらしき場所を指差して『あそこが妖怪の山よ』と言っていた為に入口だと思った訳だ。

 

「さて…これから知り合いの天狗に交渉に行ってくるけど…用心してね」

 

そこまで話すと、雛は真剣な表情で此方の顔を見つめる。

そんなに見つめられるとドキドキ…はまあ、後回しにして、と…。

用心は何時だってするけど…どうしたんだろう?そんな改まって…。

 

「もし貴方が私の厄のせいで不幸になっていたら…と言う事もあるわ。

無いと思いたいけれど…もし情報の伝達が遅れて、天狗に囲まれたるような事になったら、大人しく山を降りた方が良いわ。

いくら排他的な種族と言えど、有無を言わさず…なんて事にはならない筈だからね」

 

流石にある程度の容赦はあるみたいだ。

…けど、何で大人しくした方が良いのかな?理屈は分かるけど、理由が分からない。

 

「…当然、抵抗したり暴れたりしたら、それ以上に厄介な事になるわ。

貴方は吸血鬼…多分、哨戒の天狗程度なら簡単に倒せるでしょうね。

だからこそ、暴れたりしたら大変な事になるわ。 …もしそうなったら、天狗との全面戦争になりかねないわ。 …()()()()があったばかりで、それだけは何としても避けたいのよ」

 

あの異変…?一体過去に何か起きたんだろう?

詳しい事は分からないが、彼女の真剣な表情から割と切実な案件である事は分かった。

 

「分かったよ…。 それじゃあ、用心しよう」

 

「ええ、そうしてね。 …私が言うのもなんだけど、幸運を祈るわ」

 

そう言って、雛は山の奥の方へと飛んで行った。

…幸運、ねぇ。残念な事に、ボクはそう言う物にはとことん縁が無いらしい。

 

 

何故なら、既にボクの元には不幸(ミスフォーチュン)が訪れているからだ。

 

「…そんな警戒しなくても、別に暴れたりなんてしないよ」

 

ボクを取り囲むように、多数の視線を感じ取れる。

数は6…いや、7か。…高々侵入者一人にそこまでするかい、普通?

 

ボクを見ていた者達が降りてくる。やはり数は7だった。

全員が右手に片刃の刀剣(ブレード)、左手にメープルみたいな模様が入った(シールド)を持っている。恐らく、雛が言っていた哨戒天狗と言うヤツだろう。

皆白い髪の色をしていて、尻尾が生えている。…天狗?服装はそれっぽいけど…。

…まぁ、にとりの前例があるし、長い鼻のヤツだけが天狗ってワケじゃあ無いんだろうね、多分。

 

「…吸血鬼の言葉など、信用できると思うのか?」

 

取り囲む天狗の内、リーダー格だろうと思われる天狗が、威圧するような口調でそう告げる。

何だろう、随分と嫌われてるみたいだね吸血鬼。ちょっぴりショックだよ…。

 

「まぁ、信用しろとは言わないけどさ。 …それで、どうするんだい?」

 

軽い調子でそう問うと、いきなり此方に剣を突きつけてくるリーダー天狗。

その天狗はギラついた眼で此方を睨みつける。まるで仇敵でも見るような眼だね。ボク、こっちに来てから何かした覚えは無いけど…。

 

「貴様をこの場で捕らえる。 抵抗するような真似はするな」

 

あんれぇ…?何か雛が言っていた事と食い違ってるような…。

…まぁ、確かにここで抵抗すれば、更に増えた周囲の天狗達に袋にされそうだ。

新天地に来ていきなり障害沙汰なんてボクはイヤだから、素直に言う事聞いておこう。

 

「…分かったよ」

 

「そうだ、それでいい。 大人しくついて来い」

 

捕らえるって事は…牢屋かな?って事は看守がいるよなぁ…フロイント使えるかな?

…そういえば、アリスはどうしてるかな?そうだ、今度アリスも登録しておこう。

 

若干現実逃避染みた事を考えながら、ボクは天狗達に連れられて山へと向かった。

 

 

 




二日目にして、二人の友だちが出来ました。
何やら便利な通信機器を入手しました。
哨戒天狗「お前を天狗の国へ連れて行く」ヤクザ天狗はコワイ!


今回登場した通信機『フロイント』、後々にも出番があると思います。
幻想郷には似つかわしくない現代(どころじゃない)的な道具ですが、原作地霊殿での陰陽玉のスマホ版みたいな物だと思って頂ければ分かり易いかと。

天狗ポリス捕まってしまいました。ですが、問題を起こさない為に彼なりに考えての事です。


次回、吸血鬼の幻想旅路・下。牢に入れられたジークに、とある天狗が興味を持ちます。


またしても、活動報告の方にこの話の解説を挟む予定です。
ヒマなら読んでください(雑)



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