神々が愛した幻想郷 ~ Fantasia Variants Dreamed. 作:左右手
スキマの出口を抜け、彼が辿りついた先には…
あの妙な空間を抜けた先には、鬱蒼とした森が広がっていた。
辺りを見回してみる。道は、多分人の手が通っているのだろう。オレが立っている場所から一直線に草が生えておらず、地面が平らになっている。
その道に沿って進んで見る内に、神社にある鳥居の様なものを見つけた。その門の先には長い階段が続いている…恐らくは高所に繋がっているのだろう。
神社というのは高い所に建てる物なんだろうか…オレにはよく分からない。
そういえば、あの妖怪…八雲紫は「もし道に困ったのであれば、小高い山の上にある神社を訪ねると良い」とか言っていたな。
あの階段、見た所かなりの長さだ。恐らく、紫が言っていた神社とやらはこの階段を上がった先にあるのだろう。
…見れば見る程長い石段だ。骨が折れそうだが、このまま右も左も分からず彷徨うよりは良いだろう。
登り続けて2分近く経っただろうか、漸く終着点が見えてくる。階段の周りを囲うように生えた木々と石段との境目から、先ほどよりも大きな鳥居が顔を覗かす。
更に、登る。神社の本殿が見えてくる。古びた佇まいだが、手入れはされている様だ。一体誰がこの神社を管理しているのだろうか。
そんな思考を巡らせていると、不意に視線を感じた。見れば、そこには一人の少女が立っていた。
頭には赤いリボン、赤い服に白い袖と、その姿は以前何処かで見た巫女という職業の人が着る服装に何処となく似ていた。
だが、その少女が着ている服は何故か肩と脇を露出する物であった。袖は一体どうなっているんだろう…。
…とりあえず、挨拶の一つでもするべきなのだろう。そう思って、声をかけようと…
「こんな朝早くから参拝客かしら?素敵なお賽銭箱はこちらよ」
思ったが阻止された。…いきなり何を言い出すんだ?この少女は。参拝客に対しての第一声が『お賽銭』とは…。
「…何よその顔は。あ、でも割と顔はイケメンね…。それで、参拝に来たの?それとも違うの?」
もしかすると、この世界ではそれが常識何だろうか…?オレには分からない…。混乱しそうだ。
「…何とか言ったらどうなの?ぼーっと突っ立ってないで…」
「こらこら霊夢、あんまり彼を困らせないの」
不意に、先の少女の物ではない声が響く。その声には、聞き覚えがあった。
二人同時に声がする方向を見上げる。何も無い空間に、両端にリボンが結ばれた一本の線が走る。
その線が口を開く。中から現れたのは、先程オレ達をこの世界に導いた張本人だった。
「あら、いたの紫」
八雲紫、彼女はそのスキマから全身を出し、その線の端に腰掛けるような体制になったかと思うと、そのままそこから飛び降りた。
不思議な事に、彼女はそのまま落ちる事は無く、宙を舞う羽のようにゆっくりと石畳に降り立った。
「アンタは…」
「ごきげんよう。さっきぶりね、化け物さん?」
等と言って、此方に手を振り微笑む紫。…何というか、初めて会った時の様な胡散臭さを感じる仕草だ。
「紫、アンタ知り合いなの?」
隣にいた少女がそう尋ねてくる。…知り合いと言えば、知り合いかもしれないな。
「ええ、彼とは色々話した仲ですもの、ね?」
オレに振るな。
「…何かものすご~く不機嫌そうな顔してるわよ」
「そ、そんな事は無いわ。彼は元々無表情なのよ…そうよね?」
オレに聞かれても困る。
「…と、とにかく、先ずは話をさせて頂戴。大事なことだからっ」
両掌を前に付き出し、やや早口にそう告げる紫。対する少女は、目を半分見開いた状態で紫を睨んでいる。
「ハァ…で、話って何よ?」
深く溜息をついたその少女は、今度はやや強めの口調で紫に対してそう問いかける。
その瞬間、一気に紫が放つ威圧感が高まる。数千年生きた妖怪と言っていた彼女の、その実力の片鱗を感じさせるような強い威圧感だった。
「…彼は、私が外の世界からこの世界に招き入れたモノよ。化け物さん、彼女がこの博麗神社の巫女、博麗霊夢よ」
そう言うと、博麗霊夢と呼ばれたその少女は頭を掻きながら、品定めをするように此方を見る。
「…成程、外来人だった訳ね。ごめんなさいね、そりゃ分からない訳だわ。
…さて、さっき紫が言ったけど、私の名前は博麗霊夢。この博麗神社の当代の巫女よ」
「…天月柴芭。…はじめまして、巫女さん」
先ずは挨拶をする。…こういうのは、本来は最初にやるべき事なんじゃないだろうか?それとも、これもこの世界の常識だったりするんだろうか…?…わからん。
「…ふーん、ところで、なんでアンタはコイツを連れて来た訳?…それに、何でさっきからコイツのことを『化け物さん』と呼んでいるのよ?」
横で笑みを浮かべていた紫に、霊夢は畳み掛けるように質問する。紫は笑みを崩すことなく、その疑問に対する答えを用意する。
「…彼が何故『化け物さん』なのかというとね、霊夢。…彼が、人間ではないからよ」
その言葉を紫が告げた瞬間、霊夢が少し驚いたような表情になる。
「…人間じゃないって、じゃあ妖怪だっていうの?でもコイツからは妖怪の気配は感じないわよ?」
「…ええ、確かに彼は妖怪では無いし、まして妖力なんて持ってはいない。けれど、貴方なら気付いているんじゃないかしら?彼から純粋な霊力が感じられない事に」
…?会話についていけない。妖力?霊力?…一体何だと言うんだ。
「まあね。でもそれなら『力を持たない普通の人間』って事で片付く筈よ。なのに何で『化け物さん』な訳?いい加減答えを教えなさいよ」
少し怒気を孕んだ口調で霊夢が捲し立てる。そんな霊夢を紫は笑みを浮かべたまま静かに見つめる。そして、その笑みを消したかと思うと、いきなり此方へと向き直り、
「柴芭、霊夢と戦いなさい」
そう告げるのだった。
「「…は?」」
二人同時にそんな声が出る。見事なハーモニー。…じゃなくて
「ちょっと待て…何故戦う必要がある?」
「そうよ紫、いきなりすぎて意味が分からないわ。詳しく話しなさい」
二人がかりでそう非難する。対する紫の表情は、先ほどとは打って変わって真剣そのものだった。
「まあ落ち着きなさい。何も殺し合えなんて言っている訳じゃないわ。
先ず、戦う理由は…そう、貴方の力を知る必要があるのよ。私も、霊夢も、そして、貴方自身も、ね」
そう言って此方を指差す紫。…オレ自身の実力?一体何を言っているんだろう?
「…つまり、私が見抜けなかったその力の正体を探る為に、一戦交えようって訳ね」
そう霊夢が言ったところで、漸く理解できた。戦う目的が。
「ええ、そうなるわね。…とはいえ、いきなり全力でぶつかるのは拙いから、軽い模擬戦だと思ってね」
「スペルカードルールじゃなくて良いの?」
またも知らない単語が出てくる。スペルカードって何だろうな。カードゲームなのかな。その名の通りカード勝負なのかな。
「あのねぇ…彼は外来人よ?スペルカードなんて持っている訳無いじゃない。
…それに、貴方の能力を使う訳には行かないでしょう?それじゃ勝負にならないもの」
どうやら、オレは持っていないらしい。それはそうだろう。そもそも今初めて聞いた。
「それもそうか…でもまぁアンタが許可している訳だし、別に良いか」
そう言うと、霊夢は体を此方に向け、何やら棒のような物を構える。その棒の先には菱形の紙の様なものがいくつも連なっている。
足を開き、自然体でその場に立つその姿は、一見力を抜いているように見えて、全く隙を感じさせない構えだった。
「そういうわけだから、柴芭って言ったっけ?アンタの力、見極めてあげるから、かかってきなさい」
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柴芭に対してそう発破を掛ける。数拍置いた後、柴芭は素手の状態で踏み込んでくる。…ふーん、中々早いわね。
そのまま殴りこんでくるかと思いきや、寸前で動きを止め、私の額目掛けて掌底を打ち込んでくる。いきなりフェイントとはね。
だが、それはある程度予測していた動き。寸前で体の軸を右にずらして回避し、そのまま体制を低くする。ちょうどしゃがみこんだような状態になる。そして、左手を地面に付き、右足で柴芭に足払いを掛ける。だが、跳躍された事でその攻撃は空振りに終わる。
…まだまだ、それで避けたと思ったら甘いわよ。
飛んで避ける事は想定済み、飛んだ先には霊力を仕込んだ起爆札を設置済みよ。起爆札は、触れたと同時に爆発するように術が込められた札。当たればちょっと痛いわよ、どう避けるのかしら?
すると柴芭は、腰に差していた短剣を抜き放ち、起爆札を真っ二つに切り裂いた。
…成程ね。確かに、起爆札自体を破壊されてしまえば、込めた霊力が失われてその機能を失うから、判断としては正しいわ。けれど、それをあの一瞬で見抜いたって言うのかしら…。だとしたら、侮れないわね。何せ、能力なしの戦いだから。
柴芭が着地するであろう場所に先回りし、お祓い棒を構える。柴芭は、落下の勢いを維持したまま短剣を構える。
私の持つお祓い棒は、とある知人が鍛えたマジックアイテムで、並の金属よりも頑丈な作りをしている。
お祓い棒と短剣がぶつかり合い、鍔迫り合いが起きる。数秒睨みあった後、短剣を薙ぎ祓い、その勢いで後ろへと飛ぶ紫芭。私もそのまま後ろへ跳躍する。2度、3度と宙返りをしながら着地する柴芭。
…成程、身体能力や瞬発力は結構あるみたいね。けど…
「そんな控えめじゃ、アンタの力がわからないじゃない。もっと本気を出しなさいよ」
眼の前の男は、未だ本気で戦おうとしていない。その度に少し腹が立つが、今は感情的になっている場合ではない。
あくまでも本気を出さないというのなら、出させるまで。
無表情で此方を見る柴芭の目の前に、札で作られた大量の分身を生み出す。
「…ッ」
いきなり現れた分身に動揺したのか、一瞬だけ動きを止める柴芭。
その隙を付いて、瞬時に彼の背後へと回る。腰を落とし、背中の中心目掛けて正拳突きを繰り出す。
「がッ…!」
判断が遅れたのか、私が放った一撃をまともに浴び、声を漏らす柴芭。そのまま数メートル程手前に吹き飛んで行ったが、地面に落ちる前に彼は咄嗟に空中で体制を立て直し、何事も無かったかのように着地を決める。
だが、再び短剣を構え直し、此方を睨みつけるその表情は苦痛に歪んで見えた。
「いい加減、本気出しなさいよ。…それとも、それが全力なの?」
そう煽ると、先程よりもさらに鋭くさせる柴芭。今度は、より早い速度でこっちに突っ込んでくる。…気概はあるみたいね。
そんな思考を巡らす間にも、向かってくる柴芭からは目を離さない。彼は走ってきた勢いに乗せて、かなりの速度で私の喉を目掛けて貫手の状態にした右手を繰り出してくる。
流石に当たる訳にはいかないので、再び体の軸を左にずらして回避…ッ!?
どうやらその動きは読まれていたらしく、前に付き出した腕をそのまま払い、手刀打ちのようにして再び喉を狙ってくる。頬を掠めはしたものの、その場で後転することで直撃は回避する。
見れば、掠った所がぱっくりと切れていた。切られた箇所がひりひりと痛むが、気にするほどのダメージでは無い。
…速度といい威力といい、さっきまでとは比べ物にならない。どうやら漸く本気を出してきたみたいね。
数歩跳んで距離をとり、懐から数本の封魔針を取り出す。霊力によって針上に固定された札、それが封魔針である。
その封魔針を紫芭に向かって投擲する。恐らく、彼は飛んできた封魔針を短剣で切り落とすだろう。封魔針に気を取られている間がチャンスだ。
案の定、彼は針を切り落とした。…やっぱり、気付いていなかったみたいね。彼が針に気を取られている間に、周囲に起爆札を散布させていたのよ。
彼が全ての針を切り落とすか終わらないかのタイミングで、周囲に展開しておいた起爆札をまとめて柴芭の方へと飛ばす。
周囲は全て起爆札で覆われている。ついでに言うと、彼の頭上にも起爆札を設置させておいたから、上に飛んで逃げようとしても無駄。八方塞がりの状態になった訳よ。これを無傷で抜け出すには、それこそ何かしらの能力が無ければ無理…!?
「なっ…!?」
突然彼がその場で一回転したかと思うと、そのまま頭上で爆発が起きた。
どうやら、回転して周りの起爆札を全て掴み取り、そのまま頭上の札に投げて爆発させたようだ。
そんな無茶な真似、普通の人間じゃまずやらないわね。…というか、そもそも何故彼は起爆札に触れても平気だったのだろう。本来は術者以外が触れた瞬間に起爆する仕掛けなのに…。
もし、触れてから起爆するまでの僅かな時間に全ての札を掴んで投げたのだとしたら…それこそ、人間技じゃないわね。
「霊夢」
不意に後ろから声を掛けられる。ああ、そういえばコイツが居たっけ。
「何よ?」
自分で始めさせておいて中断させるなんて、何を考えているのよ。
「ここまでの戦いを見て、考えが変わったわ。…霊夢、スペルカードを使いなさい」
…え?でも、それじゃあ…
「良いのよ。それに、そうした方が引き出しやすいでしょうし…」
またブツブツ訳のわからない事を言い出す紫。良く分からないけど、とにかく能力使っても良いってことね?
とりあえずは、そう納得する。気を取り直して、紫芭の方を見る。多少呼吸が荒くなっているようだが、まだ戦えそうだった。
「…今からスペルカードを使って戦う事にするわ」
そう告げるも、何の事か分からないといった様子で首を傾げる柴芭。
「すぐに分かるわよ、スペルカードがどういうものなのか。…どうせ当たっても死にはしないから、安心して喰らいなさいッ!」
そう啖呵を切り、スペルカードを宣言する。
『霊符「夢想封印」ッ!』
宣言と同時に、私を中心とした周囲に大量の光弾が出現する。
その光弾は、辺りに散らばると同時に膨張し、巨大な光の塊になる。唖然とした表情の柴芭は、そのまま光の中に呑みこまれていく。
本来スペルカードに殺傷力は伴わないが、特別な力を持たない普通の人間が喰らえば、気絶ないし死傷する事だって珍しくは無い。
そんな物を人間に、それも外の世界から来たばかりの人間にぶつけるだなんて、紫の考えている事は本当に分からない。
けど…さっき見せたあの動き…。起爆札を素手で掴んだりしたのもあるし、もしかしたら…。
そんな思考に耽っていると、突如光の中から轟音が響く。
「ぐっ…!?」
その直後、凄まじい風が吹き荒れる。あまりの風圧に、思わず腕で顔を覆う。
彼が元居た場所にあった光の塊は、全て跡形もなく吹き飛ばされていた。そして、風が止むと同時に彼の方に目をやると…
「…ッ!?」
彼の背中から、巨大な翼が生えていた。
その翼は、鳥のような羽ではなく、蝙蝠の様に飛膜が生えた翼だった。
衝撃的な光景だった。人間の背中から翼が生えるだなんて…。私の横にいた紫も、その光景に驚きを隠せずにいた。
だが、そんな彼の体は目に見えて傷ついていた。やはり生身で夢想封印を受けたからであろうか、はたまた既に限界が近づいていたのか、そのままその場に倒れる柴芭。恐らくは気を失ってしまったのだろう。
背中の翼は、まるで霧が晴れるかのようにさらさらと崩れて行き、最後には消えてしまった。
「まさか…いえ、そんな筈は…。でも、もしかしたら…」
紫が一人で何かブツクサ言っているが、何の事かはさっぱり分からなかった。
それにしても…とんでもない人間を連れて来たものね。…いや、『化け物さん』…だっけか。
「…まぁ多分、能力を持った人間って事でしょうね。確かに、外の世界では怖がられるかもしれないわね」
紫が連れて来た理由もなんとなく分かった気がするわ。それにしても…
「彼、このままにしておくわけにはいかないわね」
その場に倒れていた柴芭を抱える。…重いわね。それに、間近で見ると物凄い筋肉質だし…って、一体何を考えているのよ私は。
彼を抱えて母屋まで行き、畳の上に寝かせる。…早いとこ手当てしなきゃね。
「…それで、コイツの力の正体は分かったのかしら?紫」
自分の世界に入りかけていた紫に対しそう声を掛ける。すると、我に返ったかのように此方を振り向く紫。その後すぐに表情を戻すも、その仕草がどうにも滑稽に見えた。
「…そうね、彼は能力を持っている。それに…力が読めない理由も、なんとなく分かったわ」
「じゃあ教えてくれる?私も気になるのよ」
そう言うと、少し顔を曇らせるも、紫は答えた。
「彼は…複数の能力を持っている可能性があるわ」
…複数?え?それは凄い事…ね?
「ええ…けれど、彼は恐らくその能力を無意識の内に封印していたのでしょうね。
初めて彼に出会った時、最初は何の力も感じさせなかったもの。それでも、
…きっと、彼はあの力のせいで余程辛い思いをしてきたのでしょうね。力を封印したのも、それを思い出したくないからかもしれないわね」
紫が言った「彼ら」という単語が少し気になったが、言及はしないでおこう。ややこしくなりそうだし。
それにしても、力のせいで、か…。幻想郷じゃ考えられないわね。でも、きっと外の世界じゃそういう訳にはいかないんでしょうね。…だから紫は、彼を連れて来たのかな。
「…けど、なんで複数あるって分かったのよ」
「彼が貴方の起爆札を何故掴めたのか、分かるかしら?」
…何故?と聞かれれば、分からない、と答えるしかない。
「…まあ、私もまだそこまでは分からないんだけどね。あの札は、持ち主以外が触れた瞬間に爆発する仕掛けになっているのに、何故彼が触れている間爆発しなかったのか、考えてみたのよ。
それで、恐らく、触れた物の力を封じたりするような能力を持っているのかもしれない、と推測を立ててみた訳。…あくまで、推測だけれど。
そうすれば、翼が生えた能力以外にも能力を持っていると説明が付くわ」
「けど、もしかしたらアイツがそう言う種族なのかもしれないわよ?」
「それはあり得ないわ。翼が生えた人間は有翼人種…一般的には“翼人”と呼ばれるけれど、翼人は本来生まれながらにして翼が生えている物なのよ。自由に出したり戻したりは出来ないの。
…それに、生えている翼も、鳥の羽のような形をしている筈よ。彼の翼は、大凡鳥のそれとはかけ離れた形をしていたわ」
…言われてみれば、あの翼の形は蝙蝠に近かった。
けど、飛膜以外の表面には鱗の様なものがあった気がするし、大きさも私の数倍以上はあったと思う。…蝙蝠とは比べ物にならないわね。
考えれば考える程、彼に対する謎は深まっていく。普段なら考えを放棄している所だが、彼に対する興味はより強くなっていった。
「ねえ、霊夢?提案があるの」
紫が改まってそう尋ねてくる。一体何だというのよ?
「何?」
「彼を此処に住まわせてあげられないかしら?」
此処に?…何でよ?
「彼は幻想郷に来たばかりでアテが無いもの。暫くの間でも構わないから、だめかしら?」
ダメとは言わないけど…うーん…食費が増えるのはなぁ…。
「…それに、彼と共に過ごすことで、もっと彼の事が分かってくるかもしれないわよ?」
そこは確かに興味がある。…このまま野に放つ訳にもいかないし、仕方ないか。
「別に良いわよ。ここにおいても」
「そう、良かったわ♪」
何で紫が喜ぶのよ…本人の意志を代弁している心算なのかしら。
気が付けば、既に紫は居なくなっていた。言いたい事だけ言ってさっさと帰っちゃったよあのスキマ妖怪。
…まあ良いか、今はとにかく彼の手当てをしなきゃね。
戦闘描写は難しいですね。特に、二人称や一人称の視点で描くとなると。
今回から暫く柴芭の視点で物語を進めていきます。
もう少し投稿のペースを上げねば…