神々が愛した幻想郷 ~ Fantasia Variants Dreamed.   作:左右手

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PCの故障で数日間執筆が出来ない状況が続き、大分遅れてしまいました事をお詫び申し上げます。
この作品を見てくださっている方もいらっしゃると思うので、今後はもう少し配慮致します。

それでは、本編に移りたいと思います。


弾幕ごっこ

魔理沙に連れられ、境内の裏手へと向かった柴芭。

周囲は神社を取り囲むように木々が生い茂っているが、真ん中は開けて見通しが良い。

奥の方に目を向ければ、木々の合間から木漏れ日が差し込む光景が見てとれる。森林特有の爽やかな空気が彼らを迎え入れる。

 

「うーん、やっぱりここはいつ来ても心地良いぜ」

 

大きく伸びをしながらそう呟く魔理沙。これから戦いが始まるにも関わらず、その様子からは緊張が窺えない。

最も、彼女らにとって弾幕ごっことは『遊び』に過ぎない為、気負わずにいる方がかえってやり易いのであろう。

 

柴芭もまた、森林に囲まれたこの場所の空気を心地良く感じていた。適度に肩の力を抜き、爽やかな空気を堪能していた。

 

「さて、と…それじゃあ、改めてルール説明だな」

 

柴芭の方を向き直り、そう魔理沙が切り出す。

 

「今回はあくまでも練習だから、お互いにスペルカードは1枚だけだ。とは言え、お前はまだ1枚しか作って無いから、あんまり意味ないな。

それと、これも今回だけの特別ルールだが、お前は5回まで被弾してもOKだ。慣れるためにも、当たって覚えるのは大事なんだぜ?あ、ちなみに私は1回でも喰らったらそれでアウトだ。残機無し…ってヤツだな。

弾幕戦の間、お前はスペルカードを使っても良いし、使わなくても良い。切り抜けたいと思うんなら、使うのも手って訳さ。わかったか?」

 

魔理沙が説明を区切ると、相槌代わりに無言で頷く柴芭。

 

「よし、それじゃあ最後に大事な事を言っておこう。

弾幕は、美しさが大事だぜ。“相手を倒す”んじゃあ無くって、如何に“相手に魅せる”か、それを心がけるんだ。

…話す事はこれぐらいにして、そろそろ始めるとしようか!」

 

「ああ…」

 

今度はそう返事をする柴芭。その声に満足げな笑みを浮かべる魔理沙。

 

新緑に彩られた木々を揺らす風が、草原に立つ二人を掠めて行く。

それが始まりの合図となって、彼らは空へと上がった。

 

 

「さあ、見せてやるよ柴芭!これが本物の弾幕だぜっ!」

 

開幕一番、魔理沙の周囲に大量の弾幕が出現する。それらが一斉に柴芭目掛けて飛んでいく。

それらはまるで、夜空を埋め尽くす星々の如く煌いて、眼の前の柴芭を照らした。

その弾幕の美しさに見惚れてか、多少動きが鈍る柴芭。だが、すぐに意識を集中させ、弾幕の合間を縫って回避していく。

 

「ほう、割と良い動きだな。けど、まだまだこんなもんじゃないぜ!」

 

次の瞬間には、再び弾幕が柴芭に襲いかかる。先程とはまた違った配置だったが、それでも柴芭はどうにか回避する。

迫りくる弾幕の海を泳ぎ切った柴芭、何時の間にか彼は魔理沙のすぐそばまで近づいていた。

その距離は約5M程か、眼の前で弾幕を展開されれば回避は難しいだろう。柴芭はそのチャンスを逃さず、慣れぬ弾幕を形成する。疎らながらも色鮮やかな弾幕を生み出し魔理沙に飛ばす。弾幕を飛ばした瞬間に違和感を感じたが、その事は気に留めなかった。

眼前に迫る弾幕を前に、魔理沙は帽子の下で不敵に笑う。

 

次の瞬間、彼女の体は柴芭の視界から消え去っていた。

 

「…ッ!?」

 

目を見開き、周囲を見渡す柴芭。上を見上げると、そこには先程まで自身の眼の前にいた筈の魔理沙の姿があった。

あの一瞬で自身の弾幕の射程から逃れ、尚且つ死角に入るとは…。柴芭は、彼女の実力の片鱗を垣間見、心の中で下を巻く。

 

「驚いたか?私がいつ移動したのか、気になるだろう?」

 

柴芭の頭上から魔理沙の声が響く。彼は、上を見上げて頷く。

 

「簡単な事さ、お前が生み出した弾幕で私が隠れるであろう場所に予め動いて、そのまま私の弾幕でカモフラージュしながら上に移動したのさ。弾幕の色が似てたから、分からなかっただろう?」

 

その説明にはっとする柴芭。あの時感じた違和感の正体は、自身の物とは違う弾幕があったからだったのだ、と認識した。

咄嗟の判断力に感嘆しつつも、すぐさま次の弾幕を形成する柴芭。

 

「そう簡単には当たってやれんな。なにせ、私は先生だからな!」

 

その言葉に、下で観戦していた霊夢が『なんじゃそりゃ』と呟いたのを、柴芭ははっきりと聴きとっていた。だが、それはどうでも良い事だった。

弾幕の速度、質量共に先程よりも優れた弾幕が魔理沙に襲いかかる。中央に行くほどに明るい色になっていくその弾幕は、一種のアートとも取れる美しさがあった。

 

「へぇ~、綺麗な弾幕だな。そうこなくっちゃな!」

 

その弾幕を前に、より一層笑みを深める魔理沙。その笑顔は、ただ純粋に“弾幕ごっこ”という芸術を楽しんでいるかのようであった。

箒に跨り、更にスピードを上げて弾幕突っ込む魔理沙。そのスピードを維持したまま、瞬時に弾幕の隙間を見抜き、回避していく。一見無謀とも言えるその動き、だが彼女は確実に回避していく。幾度もの弾幕ごっこを繰り返し、幾重もの弾幕を潜り抜けてきた彼女の実力を考えれば、素人の弾幕を回避する事等朝飯前である。

魔理沙の動きに気を取られて、横から迫る彼女の弾幕に気付かずに、柴芭は被弾した。

 

「一回目、だな。見惚れるのは良いが、気を取られちゃあダメだぜ?」

 

口角を上げ、ニヤリと笑う魔理沙。対する柴芭は、少しだけ表情を顰めて魔理沙を見つめる。

 

「悔しいか?けど、無理もないさ。初めてであれだけ動けるんだ、大したもんだと思うぜ?

それに、まだあと4回は当たっても平気なんだからさ。まだチャンスはあるんだぜ?こっからが本番さ!」

 

柴芭を激励するように魔理沙が声を上げる。士気を高める事で、彼の内に眠るポテンシャルを引き出そう、と考えての行動であった。

その言葉に動かされるように、柴芭の瞳に戦意の光が宿る。今度は、より濃密な弾幕を形成して魔理沙を狙う。

相変わらず、慣れた動きで回避していく魔理沙。途中、僅かに掠るような場面もあったが、それは“グレイズ”と言い、弾幕ごっこにおいては『よりスリリングに弾幕を回避する高等な技』として評価の対象に入る。最も、評価する者がいるのかは知らないが。

 

「甘いッ!」

 

そう指差した魔理沙の指先から放たれたレーザーが、狙い澄ましたように柴芭に直撃する。直撃を受けた柴芭に、ダメージは無かった。

 

「これで二回目だ。見たか、私のイリュージョンレーザー!…ってね。

弾幕ごっこは弾だけじゃ成り立たないんだぜ?私みたいに、レーザーだって使ってくる奴もいるんだ。どうだ?また一つ賢くなっただろ?」

 

魔理沙の言う通り、弾幕ごっこにおいてはレーザーのような攻撃も視野に入れる必要がある。

通常の弾幕のように大量に展開はできないが、弾幕以上の速度だったり、敵を追尾したりと、通常の弾幕には無い利点がある。

そんなレーザーを通常の弾幕と混ぜて撃つことで、より攻略の難易度が上がり、また見栄えも良くなるという、弾幕ごっこにおいては基本中の基本となる技術である。

 

説明を受け、納得した様に数度頷く柴芭。その仕草が可笑しかったのか、少し吹き出す魔理沙。

それが気に食わなかったのか、魔理沙に近づき、先程よりも苛烈に弾幕を撃つ柴芭。魔理沙は、それを慌てて回避する。

 

「わ、悪かったって、そう怒るなよ」

 

軽口を叩きながらも、一切の無駄なく弾幕の合間を縫っていく魔理沙。自身もまた弾幕を打ち出して柴芭を狙う。

ぶつかり合って弾けた弾幕が、まるで虹色に輝く星のように青空を彩った。その美しさに、霊夢はお茶を飲む手も止めて魅入っていた。

 

視界を埋め尽くさんばかりの弾幕の隙間から、柴芭目掛けて緑色の弾幕が迫りくる。それらは球形ではなく、三角錐のような形をした歪な弾幕だった。

被弾すまいと、身を捩じらせ回避する柴芭。だが、避けたと思った矢先、その緑の弾幕が突如として爆発して、柴芭は爆発に巻き込まれる。

 

「また当たっちまったな、これで三回目だ。そろそろやばくなってきたか?」

 

弾幕を放った張本人が、黒煙に包まれたその場所に声を掛ける。

煙が晴れると、多少煤けてはいるが目立った外傷も無く平然と浮く柴芭の姿があった。弾幕である以上、先程の弾幕もまた殺傷力を伴わない物であった。

 

「今のは、一体…?」

 

解せないと言った表情(最も、ほぼ無表情であるが)で、魔理沙に問いかける柴芭。

 

「今のは私の弾幕の一つ、名づけてマジックミサイルさ。掠りでもしたら爆発するから、避けたからって油断は禁物だぜ?」

 

「…先に言ってくれ」

 

「言ったら面白くないじゃないか」

 

「…そういう、ものなのか?」

 

「ああ、そういうものさ」

 

そう答えると、柴芭はほんの少しだけ口角を上げ、また元の表情に戻る。そして、再び弾幕を形成し、魔理沙を狙う。

 

(今…笑った、のか…?)

 

再び周囲を覆った弾幕の海の中で、魔理沙はそんな事を考えていた。

 

 

------

 

驚いたわね、本当に。アレが素人ですって?誰も信じないわよ、そんなの。さっきの回避と言い、弾幕の量と言い、初めてとは思えないわ。

もしかしたら、アイツにはそういう才能があるんじゃないかしら…?紫も、能力が複数あるって言ってたし…。

 

…けど、やっぱり素人には違いないか。既に残機が二つまで減らされてしまっている。その上、魔理沙は無傷。スペルすらまだ使っていない。

実力でいえば魔理沙の方が上なのは事実だけど、何故だろう…柴芭がこのまま負けるとは思えない。

 

「ほらほら、どうした柴芭!動きが鈍ってきてるぜ?」

 

そりゃあ鈍るでしょうよ。慣れない動きをあれだけさせられれば疲れもする。

…あ、被弾した。これで、残りはあと一回だけか。自分じゃないとはいえ、こうも残機が減っていくのを見るのはいい気分じゃないわね。

 

回避する動きも鈍ってくる、弾幕の量も段々減ってくる、それでも、彼は諦めない。彼の中はに、もう諦めるという選択肢が無いのだろう。

 

その後も柴芭は奮闘するも、どんどんと柴芭の攻撃は勢いを失っていく。

疲労が蓄積されているのだろう、遠めに見ても、肩で息をしているのが見てとれた。

 

それでも、魔理沙の弾幕は留まることなく、更に苛烈に柴芭を追い詰める。

…再び、被弾する。これで残機は無し…もう後が無いわよ、柴芭。あなたは、このまま負けてしまうの…?

 

……?私は何で柴芭の応援をしているのかしら?初めてやった柴芭が勝てる訳が無いじゃない…。勝てる訳、無いのに…

一体どうして、私は彼に『勝って欲しい』だなんて、思ったのかしら…?

 

 

「…さて、もう後が無いなぁ柴芭。それにしても、まさかここまで戦えるだなんて思わなかったよ。正直、凄く驚いてるぜ」

 

私も驚いている。初めてであそこまで戦えたヤツは、恐らく彼ぐらいしかいない。

それだけの才能を秘めているに違いない。私の勘がそう告げている。いずれはもっと強くなる、そんな予感がする。

 

「これでお互いに、残機無しだな。…後が無いのは私も同じか」

 

そう言って魔理沙は自嘲的に笑う。

 

「だから、お互い最後はスペルカードで勝負を決めようぜ」

 

魔理沙がそう提案する。成程、最後はより派手に、美しく…か。実に魔理沙らしい提案だと思うわ。

それに、柴芭のスペルカードを見てみたいと思っていたし、ちょうど良いわね。まあ、魔理沙もそれが狙いだと思うけど。

 

その提案を受けて、ゆっくりと頷き、手元にスペルカードを構える柴芭。そして、魔理沙は満足気に笑う。

 

「…いくぜ!柴芭!!」

 

「ああ…!」

 

…!今、柴芭が少し笑ったような…?気のせいかな…?

 

 

「恋符『マスタースパーク』ッ!!」

 

そう宣言すると同時に、魔理沙はポケットから八角形の手のひらサイズの道具を取り出す。

ミニ八卦炉と呼ばれるその魔道具から、空を覆い尽くさんばかりの眩い閃光が迸る。凄まじい勢いで放たれたそれは、今にも柴芭を飲み込まんとしていた。

 

「『claw-incomplete』」

 

対する柴芭もまた、不完全なそのスペルを宣言する。それと同時に、柴の腕があの時現れた半透明なドラゴンの腕に包まれる。

そして、その腕を交差させながら空中を薙ぎ払う。虚空を切り裂くような轟音と共に刃のような光が大量に出現し、眼前に迫る閃光目掛けて奔る。

 

閃光と刃がぶつかり合う。眩い光が視界を埋め尽くし、思わず眼を手で覆いそうになる。

だが、このぶつかり合いの決着を見届けたい一心で、それだけは堪えた。

 

マスタースパークの勢いは留まることは無く、光の刃もまた絶えることなく放たれ続けている。

このまま、スペル時間終了までぶつかり合いが続くのだろうか?…否、決着は着く。確証は無いが、そんな予感がする。

 

そして、ついにその時は来た。

 

「なっ…!?」

 

異形の爪から放たれた刃が、魔力の閃光を切り裂いた。

 

だが、本当の意味で決着が付く事は無かった。

刃がマスタースパークを切り裂いたと同時に、スペル時間が終了してしまったからである。

 

互いに全力のスペルを出し切った二人、そのままゆっくりと地上に降りてくる。

 

「ふ…ふふ、ふふふふふ」

 

柴芭は何も言わず黙っていたが、いきなり魔理沙が不気味に笑いだした。

 

「あっははははは!!すごいな柴芭!お前すげぇよ!!」

 

そう言って柴芭に詰め寄って彼の肩を揺すりながら魔理沙は大声を上げる。柴芭は…大分お疲れのようね。肩をがくがく揺すられて頭も一緒に動いている。

結局無茶させたみたいね…ハァ、コイツに頼んだのはどうだったのかしら…?

 

「それにしても…結局、決着つかなかったな。うーん…この場合、勝敗はどうなるんだろう?」

 

揺すっていた手を離し、考え出す魔理沙。突然離されたからか、つんのめって倒れこむ柴芭。

もう少し丁寧に扱いなさい。…それにしても、決着か。…そうね、これは…。

 

「…なら、審判に、聞けば、いい」

 

地に伏していた柴芭から提案が出る。息が苦しそうね、すぐ休ませないと。…審判って言うと、私の事かしら?

 

「おお、その手があったか」

 

そう言うと魔理沙が此方を見る。あー、私ね。はいはい。そうね…今回の結果は…

 

「“引き分け”…ね」

 

引き分けだなんて、スペルカードルール始まって以来の事(私が認識している限りでは)だけど、勝敗の付け様が無いのだから仕方ないじゃない。

少し腑に落ちない表情の魔理沙を無視して、倒れている柴芭の元へ向かう。そして柴芭を担いで神社に…やっぱり、重いわね。

 

「柴芭、いつかは今回の決着つけようぜ!」

 

指を差し、そう宣言する魔理沙。その眼には、確かな闘志が宿って見えた。

…魔理沙ったら、かっこいいこと言っちゃって。ひねくれ者かと思いきや、意外に熱い性格してるじゃない。

 

だが、直後に魔理沙のお腹から響いた音でその評価は一変する事となった。

 

考えてみれば、まだお昼食べていなかったわね。…はいはい、そんな顔赤くしないの魔理沙。

一先ず、柴芭は休ませておこう。あれから時間が経ったとはいえ、まだ精々日が多少傾きかけた程度だ。今からでも遅くは無いだろう。

 

「…あら?」

 

後ろに眼をやれば、柴芭は寝息を立てていた。

慣れぬ事続きで疲れたのかな?…まあ、今はゆっくり寝かせておこう。柴芭の分は、何か作り置きで用意しておくとしよう。

 

「あ、霊夢!私も手伝うか?」

 

珍しく気を使うような発言をする魔理沙。らしくないわね。…でもまあ、

 

「大丈夫よ。アンタも疲れてるでしょう?今は休むと良いわ」

 

そう言葉をかければ、大人しく縁側に腰掛ける魔理沙。

 

柴芭を布団に寝かせた後、私は台所に向かった。

魔理沙のマスタースパークを破ったあのスペルの事を考えながら。

 

 

 




初弾幕ごっこ、その決着はお流れとなりました。
いつかは決着が付くかもしれませんし、付かないかもしれません。

スペルカードでは無いけど、今回出て来た単語の解説。

・イリュージョンレーザー
東方シリーズにおける魔理沙のショット。
直線にレーザーを撃ち続ける。攻撃範囲が狭いが、威力が高い。

・マジックミサイル
東方シリーズにおける魔理沙の別タイプのショット。
当たると爆発するミサイルを撃ち続ける。元ネタはD&DというTRPGに登場する呪文。

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