翌日の放課後も、俺と安城は教室で部活動縮小についての資料の仕分け作業を行っていた。昨日の時点で、種別、規模別に区分けしていたので、今日は内容の精査が主である。
「……それにしたって稼働して無い部活多すぎだろ」
バインダーに挟まれた名簿には既に部員もおらず、名前だけの部活動がかれこれ17個もバツ印がつけられている。
「まあ、発足したはいいけど具体的な活動内容がなくて、いつのまにか忘れられてたってケースだよね」
「学校側も、当時は生徒数が余りに多くて把握しきれてなかったってことか」
恨むぞ、歴代の赤羽高校卒業生……。
「まあ、取りあえず実質廃部になってた部活はこれで全部だな。あとのやつは一応現在も部員がいて、活動も定期的に行われているみたいだし」
「ここから規模縮小、もしくは廃部になる部活を選ぶんだよね……。責任重大かも」
「とはいっても、あくまで最終的に決断を下すのは学校側だ。俺たちはその前座な訳だし、そんなにプレッシャー感じなくてもいいだろ」
運動部の束の一番上の資料を何の気なしにぱらぱらとめくりながら答える。
「よし、ここからはこれらの詳しい活動内容、学校への貢献度、部員数、今後の見込みって観点から分けて行こう。活動内容が似通っていたり、属するジャンルが共通のものは合併するって選択肢もあるし」
「そうだね。部活自体が無くなるくらいなら合併した方がましって考えてる部もあるだろうし」
安城は俺の目の前においてある運動部の束を自分の方に寄せ、俺に文化部の束を寄せてくる。
「……?」
それに何か違和感を感じたが、運動部のほうが量が多いし、手伝ってくれてることへの安城なりのお礼なのだろう。
だから、俺は特に何も言わず資料に目を通す。
まずは『アニメ研究部』。部員内訳は3年生が7人、2年生が6人1年生が12人。活動内容はアニメの観賞、それらのプレゼン資料の作成、自主制作アニメ、か。
1年生が12人いるのなら、仮に卒業までに半分消えても6人以上は居るし、2年生の人数的にも部として継続できる見込みは十分ある。そして、この自主制作アニメは重要だ。確かにコストはかかるが、これがあるだけで『面白そうだし、取りあえず入部してみよ~♪』みたいな感じで一定数部員は集まるだろう。
さらには『アニメ研究部』という名前。アニメに関連する活動内容の部活との合併成功率はかなり高い。
うん、アニメ部は存続して問題なさそうだな。
次は、漫研か。雪里が部長を務める部活だが、変にひいきとかは無しに吟味するか。
えーっと……。
そこから30分くらい仕事を続け、俺たちは昨日と同様に休憩をとることにした。
「ふう……」
椅子の背もたれに体重をかけ、ぐらぐらと前後に動かしながら教室内を見渡す。放課後だけあって、教室に残っているのはごくわずかな生徒だけ。とはいえ俺にクラス内での深いつながりは無いし、安城も飲み物を買いに行ってしまったので実質一人と同じだ。
だが、さっきから時折視線を感じる。とくに男子から。彼らとしてはあくまで何となく教室に残って何となく雑談していることを装っているのだろが、こういう時、みられる方は結構敏感なものである。
「なあ、やっぱり安城さんと黒崎って付き合ってるのかな?」
「おい、やめろよ。俺安城さん結構いいなって思ってんだからさー」
「いや、安城と黒崎のあの距離感、俺のデータでは82パーセントの確率で付き合っている」
うん。君たち、会話全部聞こえてるからね。最初は本当に雑談だったけど安城が席外してから露骨に会話内容変わってるからね。
「あーあ。いいなー安城さんって結構スタイルいいし、可愛いし、それに元気はつらつ系だし、もう完ぺきだよなー」
「黒崎の奴、もうやることやってるのかねー」
「俺のデータでは84パーセントの確率でそういう類のことはしている」
どういう統計のデータか知らないが、その言葉に俺は夏休みの夜の学校での一件を思い出してしまう。あのときはとっさに眼をそらしたが、それでも安城の健康的な肌の色は記憶に焼き付いているし、なんなら掃除用具箱での件はそれ以上に刺激が強かった。
い、いかん。あれは事故だ。安城だって俺なんかにいつまでも憶えられているのは嫌だろうし、さっさと忘れてしまおう。
「黒崎君?」
「へぐしっ!?」
いつの間にか教室にもどってきていた安城の言葉に不意をつかれた俺は椅子ごと後ろへとひっくり返る。
「ちょ、ちょっと、黒崎君!大丈夫!?」
「い、いてえ……」
「もー、なにやってんのさー」
そう言って安城が手を差し伸べてくる。
「だ、大丈夫だ。因果応報ってやつだから」
「どういうこと?」
「そういうことだよ」
「黒崎君って、たまに訳わかんないこと言うよね」
「こういう時は訳の分からないこと言うんだよ。訳のわかること言ってどうする」
「ん~。今のも訳わかんないけど……」
困惑する安城の手を掴もうとしたが、周囲から刺さるような視線を感じたので自力で立ち上がり、椅子を戻すことにした。
「あ、これ。昨日のお返し」
再び席についた俺の目の前に差し出されたのは昨日神崎に勧められたバナナオレだった。さらに言うと、安城も同じバナナオレのパックにストローをさしている。
「二日連続で飲むほど気に入ったのか?」
「うん。私バナナオレ好きだから。これ、夏休み前は自販に無かったのに、業者さんに感謝だよ」
なるほど、神崎の勘も案外侮れないな。
俺もパックにストローをさしバナナオレを飲んでみる。
「お、まじだ。これ美味い」
「ふふ、黒崎君甘いもの好きだもんね」
「そうだな。甘いジャムを挟んだサンドイッチなら尚好きだ」
「あー、黒崎君お昼いっつもサンドイッチだもんね!」
「え、なんでお前そんなことまで知ってるの?」
その問いに安城は何故かあたふたとする。
「い、いや、ほら!たまに見かけたからさ、本当にたまにだけど!」
「お、おう。たまにな、たまに」
「う、うん……」
「さ、さて、休憩取ったし再開するか」
俺はわざとらしい口調で資料をめくる。
駄目だ、夏休みの一件以来、以前より安城とコミュニケーションをとるのが難しくなっている。
別に喧嘩したわけじゃないし、関係性が変わったわけでもない。俺たちの関係はよくて友達、悪くて依頼者と助っ人のままのはずなのに。それなのに、何気なくかわす一言一言にいちいち気を使って、相手の反応に一喜一憂して、朝下駄箱で会ったり、帰りに挨拶したり、こうやって一緒に仕事に取り組んだりする中で気持ちが大きく揺れて、それでいてその揺れが気持ちよくて。
以前木場は言っていた。俺は恋愛ごとにおいては小学生以下だと。小学生がどのラインなのか知らないが、なんにせよ、これから安城のサポートをしていくのならどこかでこの感情をはっきりさせなくてはいつか俺は崩壊する。
以前の俺なら、さっさと伝えていただろう。結果がどうであろうとそのほうが自分にとっても相手にとっても効率的だと、そんな詭弁で自分を欺き、無理やり納得させていた。
だが、安城奏と関わりを持ってしまった今となっては、そんな屁理屈は自分で棄却してしまうだろう。
どちらにしても俺の選択肢は2つ。伝えるか、伝えないかだ。だが、伝えてその先どうなるんだ?安城がどう返事しようと高校生の恋愛なんて進路選択だの卒業だのでいつのまにか消滅しているものだ。それで俺は納得するのか?今の関係を続けた方がいいんじゃないか?
「ちょっと、黒崎君!聞いてる!?」
その言葉に、俺は現実へと引き戻される。机の向かいで安城が頬を膨らませていた。
「わ、わるい。聞いてなかった」
「そこはもう少し取り繕ってよ……」
なんだかデジャヴを感じるが気のせいだろう。
「そ、それで?なんだっけか」
「あ、うん。私大体精査したけど、黒崎君の方は?」
「あ、ああ大体終わってる」
「それじゃあ、これ、生徒会室に持っていこっか」
安城は椅子から立ち上がり、仕分けしたプリントの何箇所かに付箋を貼り、それらの隅を揃え、抱えこむ。俺もそれに倣い付箋を貼り、抱える。
***
生徒会室の位置は、入学した時に渡された案内図に記されていたので知ってはいた。だが、俺は入学してから一度もそこを訪れたことは無い。まあ、生徒会室を訪れる用事がある生徒なんてのもそうはいないだろうけど。
教室のある2階から3年生の教室のある3階を通り越し、4階へとたどり着く。この階層にあるのは生徒会室、図書室、技術室、美術室、そして空き教室がちらほらと。
生徒会室は優遇されているのか階段を昇り切ってすぐのところに位置していた。
「失礼しまーす。会長、いますかー?」
「どうぞー」
安城が扉をノックすると、すぐに向こうから生徒会長の仲谷の声が聞こえる。
「俺、外で待ってるわ」
仲谷とは体育祭実行委員会の一件以来顔を合わせづらくなっている。あの後、安城が俺の作った予算案の事を説明してくれたことで表面上は和解という形にはなっているが、一度できた溝というのはそう簡単には埋まらない。
まあ、仲谷は今年で卒業だから埋める間もなくお別れだろうけど。
「……わかった。それじゃあプリント頂戴」
「ほいっ……と」
安城は俺から文化系の資料を受け取ると生徒会室へと入っていった。
用件が終わるのを待つために、俺は壁に寄りかかり、携帯を取り出し適当にネットを漁る。
だが、俺がめぼしいニュースを見つける前に、こちらへ歩いてくる足音が聞こえた。
「……どうも。結城先生」
「黒崎か。今日も安城の手伝いか?」
「え?」
「ああ、説明不足だったな。安城から君の話は聞いている」
「いや、今の説明も説明不足なんですけど」
「ああ、すまない。ちゃんと説明しよう」
「いや、別に興味ないです」
だが、結城先生は俺の言葉を敢えて無視したのか、俺のと同じく壁に寄りかかり、右手に持っていた缶コーヒーのタブを開ける。
「私は基本的にはどこかのクラスの担任はしない。立場上できない、と言うのが正しいか」
「……」
「そこは、理由を問いかけるところだろう」
「俺、回りくどいの嫌いなんすよ。特撮ヒーローの名乗り口上を二回目以降早送りで飛ばすくらいには」
「それは大分損している気がするが、まあいいだろう。では、さっさと結論から言ってしまおう」
「おなしゃーす」
「私は生徒会の顧問なんだ」
結城先生は俺が入学した時からこの学校に居るのは知っていたが、その肩書きまでは知らなかった。
そして少しの沈黙。だが、何故沈黙したか俺には分からなかった。だから、俺は会話を再開させる。
「なるほど、そりゃたしかにどっかのクラスの担任になったらそこに肩入れしちゃって不公平な結果になるかもしれませんね」
「そのとおり。そして、生徒会の会議の中で安城の口から君の名前がよく出てな」
「へえ」
「私は参加していないが体育祭実行委員の時も、君の名前は関係者から頻繁に聞いていた」
「まあ、一波乱起こしましたからね」
要するに、生徒会の顧問だから、生徒会の一員である安城の手助けをしている俺の事も知っていると、そういうことらしい。
「それで、君に興味が湧いてな。校長に頼んで臨時担任にしてもらった」
「なんすかそれ、禁断の恋ってやつですか?」
「大人をからかうな。……それにしても、周囲の人物から聞いていた情報と今の君は何と言うか……ずれてるな」
「他人の評価ってのは良くも悪くも先入観とかでフィルター掛かってますからね」
俺は自嘲気味に笑うと、何となく足元を見る。すると、そこにはプリントが一束落ちていた。拾ってみると、それは俺たちが仕分けていた部活の資料の一つだった。安城の奴、落して行ったのか?
だが、そのプリントに張ってある付箋を見て一つの仮説が立った。
「はあ……。また回りくどいことを……」
「どういうことだ?そのプリントがどうかしたのか?」
「まあ、多分。もうそろ安城がでてくるでしょうし、その時確認します」
俺の言葉の通り、1分もしないで安城は生徒会室から出てきた。
「お待たせ―!黒崎君!……と、結城先生?」
「お疲れさん」
「ご苦労だったな、安城」
「え、なんでそんな眉間にしわ寄せてるの二人とも?」
「白々しい事言うなよ。ほらこれ」
俺はさっき拾ったプリントを安城に手渡す。
「おかしいと思ったんだよ。お前がわざわざ机の上の文化系の資料と運動系の資料の場所を入れ替えた時から」
「あ、あははは……」
「このプリントに乗ってる部活動、『ゲーム部』は部員数もわずか、そしてここ最近の活動実績もない。おまけにお前はこのプリントの付箋に『廃部検討』って書いて、しかも今さっき俺の足元にわざと落として行った」
正直、安城がこんな回りくどい事をしている理由も大体分かる。だが、やはりはっきりと言語化するべきだろう。
「お前は俺になんども『ゲーム部』の資料を見る機会を与えた。つまり、お前はこの部活動に関して、俺になにか頼みたいことがあるんだろ?」
「うう、やっぱりばれたか~」
「というか、ばれること前提だろ、それ」
俺の言葉に安城は咳払いをしてから答える。
「単刀直入に言うと、私はこの部活を廃部させたくないの」
「そりゃまたなんで?」
「それは……私的な理由で」
「はい?」
「とにかく!私はこの部活を廃部させたくない、でも私は生徒会の書記でしょ?だから、その……」
「立場上変に肩入れもできないってことか?」
「そう!流石黒崎君!それじゃあ……」
「断る」
「即答!?」
「あのな安城。部活動の縮小に関しては学校側も意地悪で言ってるわけじゃない。本当に予算的人員的に厳しいからやむをえずとった策なんだ。仮に無理やり一つの部活の廃部を阻止したらどこかの部にしわ寄せが行くだろ」
それは中学の時、漫研の廃部を阻止した俺だから言えることだ。もしかしたら、あの手この手を尽くせば廃部の阻止は出来るかもしれない。だが、結局それは誰かの犠牲の上に成り立つことだ。それを阻止しようとすればまた別の犠牲が出る。要するにいたちごっこなのだ。
「で、でも……」
安城は尚も食い下がる。
「そうだな。私も反対だ」
唐突に今まで黙っていた結城先生が口を挟んできた。
「学校側としても生徒会顧問としても、その役員に私的な理由での擁護をされるのは困る。一つ特例を認めたらもう言い訳ができなくなるからな。ただ……」
「ただ?」
「ただ、生徒会にも学校側にも関係ない『部外者』がやったことまでとやかく言って責任を取らせるつもりは無い」
「それって、俺に安城の用件を飲めって言ってるんですか?」
「そうはいってない。ただ事実を述べただけさ……っと。もうこんな時間か。私は職員会議があるからここで失礼させてもらうよ」
「お、おい!」
俺の制止も虚しく結城先生はひらひらと手を振り階段を降りて行ってしまった。
「えっと……」
脱力しながら俺は安城の方へと視線を戻す。
「く、黒崎君……。お願い!」
「うぐっ……」
その時、俺の中で二つのマインドが戦いだした。『安城を助けよう』というマインドAと、『流石にそこまでやる義理は無いだろ』というマインドBだ。俯瞰して見ればBの意見を聞くべきだろう。だが、俺はなぜかAよりの思考に手を伸ばそうとしていた。
――いや、まて、落ち着け。
――いいや、もうまてない、押すぞ!
せめぎ合う二つのマインド。激しい競り合いの結果、勝者は。
「取りあえず、話だけ聞かせてくれ」
まさかのマインドCだった。
***
「と、いうわけで」
「どういうわけだよ……」
そんなツッコミをいれつつも、俺と安城は部室棟の最上階の一番奥、今回の件の重要参考人、『ゲーム部』の部室の前へやってきた。
赤羽高校の最辺境の地ともいえるこの部室の扉には、木製のプレートに『ゲーム部』と簡潔に記されぶら下げられていた。
「よし」
なぜか気合いを入れている安城がドアをノックする。
「はーい、どうぞー」
その返事と同時に安城が扉をあけ、俺たちは部室内へと足を運ぶ。
部室の中は真っ暗。カーテンは全て閉められており、面積の半分は押しやったであろう机といすが無造作に積まれており、もう半分は薄い明りに照らされていた。その明りの発信源はと言うと、黒板の近くにおいてある机の上の薄型テレビだった。
「どういう……ことだ?」
なんだこの引きこもりの部屋みたいな部室は。はっきり言って情報がほとんどない。俺が戸惑っていると安城が部室前方の蛍光灯のスイッチを入れる。
すぐに室内が照らされ、視界がはっきりとする。
「もう、亜美ちゃん!私言ってるでしょ、ゲームをする時は部屋を明るくしてテレビから離れてやろうって!」
「うわっ、お姉ちゃん、何ですかその夕方6時の子供向けアニメのコピペみたいな説教。正直懐かしいです」
「そうそう、あのころはよかったよね、最近はあんまり夕方にアニメやらな……じゃなくて!」
「なんですか?お姉ちゃんもゲームしにきたんですか?」
「違うよ!言ったでしょ、助っ人を連れてくるって!」
そこでようやく俺が会話に入る余地ができた。正直いらなかったけど。
「……ほんとにご縁があるとはね」
「あ、黒崎先輩じゃないですか。昨日ぶりですね♪」
「え、二人とも面識あったの?」
「いや、ぜんぜ「はい!」
「……どっち?」
「黒崎先輩からしたら、私は昨日初めて会った可愛い後輩でしょうね」
なんか『後輩』の前にいらん付加情報がついてた気がするが気のせいだろう。
「てかお前……神崎もこの前俺と会うのは初めてみたいなこと言ってたろ」
「そうでしたっけ?まあ、先輩と喋ったのは昨日が初めてですけど」
「けど?」
「噂はお姉ちゃんから聞いてたので」
「え?」
「ちょっ!」
「お姉ちゃんったらいっつも先輩の事ばっかり話してくるんですよ~。『黒崎君が凄い』とか『黒崎君に助けてもらった』とか『黒崎君のお嫁さんになりたい』とか『黒崎君のご両親にはいつ挨拶すればいいんだろう』とか」
「言ってない!後半の2つは絶対言ってないから!」
「いや、ちょっと待て安城」
「く、黒崎君!ホントだから!言ってないから!」
「いや、そんなことより」
「そ、そんなこと!?」
「お前と神崎って……どういう関係なんだ?」
安城は神崎を『亜美ちゃん』と呼び神崎は安城を『お姉ちゃん』と呼んだ。確かに良く見るとこの二人の外見は似ている。だが、安城は『安城』奏で神崎は『神崎』亜美だ。
するとこれは凄く複雑な事情を抱えているのだろうか。
「あ、いえ。違います。私たちはただのいとこです」
「お前絶対エスパーだろ」
「エスパーなら脳に直接語りかけますよ」
「なるほど、それは確かに」
いとこ、ねえ……。なんだかだんだん状況がわかってきた気がする。
「安城、一応説明してもらっていいか?」
「え、ええと……」
そこから安城による説明が10分ほど行われた。実際には説明の内容自体は3分くらいで終わるものだったが、途中途中で神崎が訳の分からない茶々を入れてきたため、無駄に7分も消費した。
「要するに、安城はいとこが所属する部活を廃部にさせたくないから俺にそれを阻止してもらいたいってこと?」
「ま、まあね」
「あのなあ、そんなことなら……」
そこで俺は言葉に詰まってしまった。『そんなことならさっさと言え』と、そう言おうとしていたはずなのに。
「……そんなことなら、諦めろ」
「うわ~辛辣ですね先輩。大切な友達の頼みをそこまでバッサリと」
「そもそも大元はお前だろ神崎」
「さらに辛辣ですね」
「とにかく、俺はこの件については……」
「えー、助けて下さいよ~!ゲーム部が廃部になってもいいんですかあ~!」
「正直、どうでもいい」
俺は別に便利屋でも万屋でもない。誰かれ構わず助けたい訳じゃない。安城のいとこだとしても対して知りもしない人物を助ける理由は無い。
「なるほど。先輩の言い分はわかりました」
「俺殆ど言い分述べてないんだけど」
だが、神崎はそれには応じずにっこりと笑う。
「それじゃあ、私とデートしてください」