これは、そんな人が少しずつ変わり始めるような、そんな少しの希望が見え隠れする短編小説です。
この作品に登場する人物は全て架空の人物であり、リアルに何の関係もありません。
2作品目で最後になりますが、どうぞ最後まで見てくれると嬉しいです。
朝起きる
溜まっているたくさんの通知を読む
それとなく元気を装って返事をする
ご飯を食べる
学校に出かける
いつも同じような生活を同じようなリズムで繰り返す
変わらない日常は面白みがない、でも嫌なことも無い。
まだ社会人にもなっていないのに、私は人生というものに飽きていた。
大人からしてみれば子供の戯言と言うのだろう、でも飽きているものはしかたがない。
子供は、飽きればすぐに辞める生き物なのだから。
私が生きている中で唯一、大人に負けないものがあるとすればそれはSNSだろう。
毎日たくさんの人が見てくれて、たくさんの返事をくれる。
楽しい時は共感してくれて、悲しい時は慰めてくれる。
たとえリアルではなくてもそれをしてくれる人がごまんといる。
でも、それだけだ。
いくら私が何を話したところで、それはただのひとりごと。何も気にする人なんか身近に居ない。
そうだ、私なんか何も取り柄がないし勝てるところなんてない。きっと私は世界というものの中に必要が無い。
変わらない毎日を過ごしているうちに、私はそういう勝手な思い込みをするようになってしまった。
きっとそれは自分が卑下しているだけで実際はそうでないのかもしれない。でも、そう思わずには居られない。
今の世間はとても生きにくい、何をするにしても自分の価値や、評価がつきまとう。
そのうち大人になれば自分の評価に足を取られて動けなくなるのではないか、なんて思ったりもする。
「まあ、思ったところで何もならないんだけど…笑」
いつもの朝の意味の無い考え事を終わりにして、私は今日もバスに乗りこんだ。
バスの中にはいつも乗っているおばあちゃん。
おじさん。
私より下の学生が数人ほど居た。
みんな忙しそうだったり、眠そうだったり、生きるのに忙しそうに私には見えた。かく言う私も昨日夜更かししたので少しうつらうつらしながらバスに揺られた。
バスに揺られて30分ほど、そこに私が通うがっこうがあった。なんてことはない普通の私立校で、私の他にも多くの生徒がチャイムに間に合うように早足で歩いていた。
私を追い越していく人達はとても生きるのが楽しそうに見えた。
お昼になり私はいつも通り図書室に向かった。
そこにはいつもどおりの静寂とあの人が居た。
「…よう」
私はいつも通り少し俯きながら会釈をした。
話しかけてくれた人はひとつ上の先輩、浩司先輩だ。
勉強はできるがスポーツはてんで苦手、だけど私と同じく本が好きだ。多分私の何倍もたくさんの本を読んでいる。
今日も私は静かな顔で本を読んでいる浩司先輩に話しかけた。
「先輩………何かおすすめの本はありますか……………?」
「ん………これとかどうだ」
先輩が渡してくれた本は、今話題の作家が初期に出した本のようだった。
「いつも…ありがとうございます」
「………………おう」
休み時間に話したことはたったこれだけだった。だけど、一日の中で多分1番楽しいと思える時間だった。
家にいる時よりも、教室で友達と話す時よりも、SNSを触っている時よりも、どんな時よりも私はこの時間が好きだった。
きっとこの気持ちが何なのかは分かっている、でも、今はまだこのまま知らないふりをしておこう。そう心に決めていた。
学校が終わり、私はまた帰りのバスに乗るためにバス停にいた。
「あれ?…………今日はもう帰り?」
振り返ると浩司先輩が居た。
「はい、今日は文芸部は休みなので…」
「そっか………気をつけてな」
そう言って浩司先輩は本を片手に歩いて帰っていった。
やっぱり浩司先輩とは少ししか話せないけど、少しの会話だけで家に帰ることですら楽しいと思えるくらいだった。
家に帰り、お風呂に入ってご飯を食べた。
そして今日の課題をすぐに終わらせていつものネットサーフィンをしようとして、ニュースの最新欄に好きな作家の新作が明日発売という記事を見つけた。
「明日…先輩にこのことを話してみようかな…?」
ふと口に出してしまって、私はまた明日先輩と話がしたいと思っていることに驚いた。
変わらない日常に飽きていて、やる気なんてなかったはずなのに…。
でも、明日は何故かいいことが起こる気がする。
そう思った少し上機嫌な私はいつもより少し早いけどベッドに潜り込んだ。
明日が来るのを少し待ち遠しいと思いながら。
最後まで呼んでくれてありがとうございます。
私が残す最後の作品が呼んでくれた人の時間の無駄にならなかったことを切に願います。あ、自虐じゃないですよ()
思いつきで始めた投稿なはずなのにいつしか2作品目になっ てました。投稿者としてはとても少ない部類に入ると思います。でも私が作ったこの文が少しでも見られたのならそれは幸せなことです。
これから先また戻ってくるかもしれませんが、このアカウントはこれで最後にしようと思います。
次はもっとマシな作品が作れるようになってるといいなぁ(白目)
長くなりすぎましたが、読んでくれてありがとうございました!