【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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5話 出会い未満の出会い その1 2/2

時間が巻き戻れば良いのに。

 

そう思いながら現在進行形で着せ替え人形な僕は、後悔し始めるほんの少しだけ前に意識を飛ばす。

僕は現実逃避だけは得意なんだ。

 

変装を解いてどうからどう見ても女の子、女児じゃなくて女子って言う存在に格上げしたように見えるようになっただろう僕。

 

もんもんとどうしようかって思ってたけどさっさと終わらせようってことで、遠巻きにしていた店員さんの中でもわりとまじめにもくもくと作業をしている人に目をつけた。

 

接客をしているわけでもないし特別に忙しそうでもなく……ときどきこっちを見ている程度の控えめさが気に入った。

あと、ガワの年齢がいちばん近そうな人っていうのも大きなポイントだ。

 

今ちょうど目のあったその人……子は高校生のバイトって印象。

大学生にしては化粧っ気がないし研修中の札もつけているし。

 

慣れていなくてもいいんだ、遠慮があるってだけで会話が減るから安心なんだ。

 

身長もわりと高めで、ウェーブのかかった……かけたのかな、そんな毛先だから髪の毛は縦に長いし、あと体つきも結構凄いけど静かに越したことはない。

 

他人の見た目なんてちょっと前までだったらこんなに意識することもなかったけど、なまじ視点が低いから近づくにつれて頭上にせり出してくる球体がどうしても意識せざるを得ないものになっている。

 

普通の男なら喜ぶんだろうな、こういうの。

醒めた目で頭上の双丘を眺める。

 

普段の僕なら別になんとも思わなくって視線を素通りしているはずなんだけど、目線に近いんだからしょうがない。

JKって年頃、属性は男なら誰でも好きらしいけど僕はそういうの興味ないしな。

 

年上にしか興味がないんじゃなかったら危なかったかも。

もちろん今の僕だから精神年齢的な意味で、だけども。

 

……この体だと大半の人が年上になるのか。

さらに見下されるな。

 

そんな悲しい現実を察知した僕は悲しくなったから、それを忘れようってしてその人にさっさと近づいて適当に声をかける。

 

「えっと、すみません。 服を探しているんですけど」

「ひゃいっ!?」

 

びくってなる。

汗がぶわってなる。

 

…………僕の方が。

 

想像していたよりもずっと若い……幼い感じの声、あと、びくってなる程度に大きい声が上から降ってきた。

 

出会い頭にお互いでびっくり。

なんにも考えないで歩いているとよくそういうのに出会う。

そのたびに僕もびくってなる。

 

ちなみに今の僕は上を向いて話さなきゃならない。

よって胸と顔が一緒に視界に入ってしまうのは仕方がないこと。

 

しょうがないことなんだ。

わざと見ているわけじゃないんだ、本当に。

 

やましいところはないんだ。

 

………………………………。

 

おんなじ人間なのに、どうして女性の胸ってこうなるんだろう。

原理は理解していてもやっぱり不思議だ。

 

「あ、あれ……? 女の子……? さっきまでは……」

 

ぽつりとその子が首をかしげながら僕を見る。

 

「……ち、ちょっと、接客よ接客!」

 

ささっと別の店員さん。

 

「すみませんっ……あれ、えっと、え、私ですか……?」

「できるわよね? 早くしてあげて!」

「ひっ、分かりました!」

 

あわあわしてるJK店員さんにこそこそしているようでいてけっこう大きな声で入れ知恵してる20代の店員さん。

 

けどJKさんのあわあわは止まらない。

すでに顔が真っ赤だ。

対人恐怖症的な親近感を覚える。

 

「………………………………」

 

……けど、どうしてそこまであわあわしてるんだろう。

 

たかが子供に話しかけられただけだろうに。

いくら僕でも小中学生相手なら平気だぞ?

 

20代さんがひそひそを抑えない。

こういう風に接客するの、っていうアドバイスがぜんぶ丸聞こえだ。

 

けど僕は大人だからじっと待つ。

スーパーのレジの新人さんとかを優しく見守るのは得意なんだ。

 

他人に期待しないからっていうのもあるんだろうけども。

 

「……あ、はい、ど……どのようなものを、おしゃがし……ですか……あぅぅ……」

 

噛んだ。

かみかみだ。

 

服屋の店員としてはちょっとメンタル弱いんじゃないかこの子?

驚きすぎだろう。

 

見た感じでいちばん接しやすいからと思って声をかけたんだけど。

人選まちがえたかな。

 

さっきまで変装していた僕もまぁ悪いんだけど、服屋でお客に声かけられてそこまで驚くものなのかな、普通。

 

顔、真っ赤にしてぷるぷると震えているし。

 

子どもから話しかけられてここまで緊張しているのを見ていたらなんだかちょっと親近感が湧いてきた。

どうやらこの子は僕サイドの子らしい。

 

……親近感はいいんだけど大丈夫かなこの子で。

子供相手にここまでってのは大変な気がする。

 

まぁこんなに驚いているってことはさっきの変装で完全に今の僕だとは思えないってことだから、男装自体は成功してるのが分かって嬉しいんだけど。

 

まぁいいか、さっさと済ませてしまおう。

汗だくになってきているのを見ているだけっていうのも忍びないし。

 

同じサイドのよしみだ、気がつかない振りをしておこう。

 

僕は大人だからその程度の気遣いはできる。

ガワはギリッギリ少女な中身幼児だけど。

 

で、さっさと注文を言っておこう。

 

こういう人相手には具体的が良いから……。

 

「あの、とりあえずで今着ているような男っぽい感じのもの……サイズ感は普通で良いです……と、僕に合いそうな流行りの、ちょっとだけ女の子っぽい服を2、3着選んでほしいと思って。 あと来たついでなので下着とか靴とか帽子なんかもみんなまとめて揃えたいんですけど。 せっかく来たのでついでです」

 

こくこくこくとものすごい勢いで首を……頭を振っているのを見ながら考えていたセリフを吐き出す。

 

ふだんはひと月で、長くても合計で10分未満しか人と話さない僕でもきちんと用意しておけば言いよどむことはない。

 

少なくとも、この子よりは。

 

みんなはどうしてあんなにぺらぺらと何十分でも考えないで話せるんだろうな。

この子とか僕にはその技能が欠けているのかもしれない。

 

「は、はいっ……分かりました。 ……あの、お好きなデザインや、あと、その、サイズ、などは……」

 

ちらっとでかすぎるサンダルを見て「下着まで?」って顔をしながら聞かれるけど、ここは勢いで押し切る。

 

そのための人選だし。

ちょっと怪しいけどな。

 

ともあれ堂々としよう。

おどおどしてない体面だけは得意なんだ。

 

「ふだんは家にあるものか兄のお下がりしか着ないのでよくわかりませんし、最近背も伸びてきたので春のものをまとめて揃えたいんです。 必要だったらサイズも測ってもらえますか?」

 

まくしたてる。

 

それっぽいいいわけとそれっぽい感じの話しかたで、ついでに分からなかったサイズとかもまとめて知ることができて楽ができる。

 

もちろん想定通りだ。

 

「……分かりました! お持ちするのに少々時間がかきゃ、かかりますので、こちらの更衣室で、少し、お待ちくだしゃい! ……急いで探してき、ます……」

 

噛み噛みでそう言い切ってどこかへと走って行く店員さん。

ついでにいつの間にかさらに3人ほど寄ってきていた他の店員の人も聞くなりささっと離れていく。

 

走って行くことはないのに……。

 

特におかしいことは口にしなかったから大丈夫だと思うんだけど。

あ、他の店員さんに聞いているっていうか話しかけられているな。

 

やっぱり新人さんだったのか。

たぶん働き始めて数日ってレベルの。

 

それにしても一気に何人かの店員さんが動き出している。

ここの人たちそんなにやる気あったっけ。

 

ないからこそわざわざここへ来ていたっていうのもあるんだけど……。

 

ぽつんと取り残される幸せに浸る僕。

こういうのは人に任せてこそしあわせ。

 

「あ」

 

そもそもいつも、ここでもイヤホンとかして必要なときだけ僕から話しかけていたんだった。

それで普段と違うように感じるのか。

 

あとは僕がちっこいからってのもあるんだろう。

女の人は子供に弱いらしいからな。

 

そうしてしばし。

 

「………………………………」

 

すぐに来るかと思ったらぜんぜん戻ってこなくて待ちぼうけを食っている感じになってきたから適当なカーテンの前に腰を下ろしてぼんやりする。

 

ちらりと後ろを振り返るとそびえるような高さの全身を映す鏡には……今のところは僕が「入っている」らしい、とにかく色素の薄い外見の幼い女の子。

 

首を傾けるだけでフードに隠していた髪の毛が少しずつぱらぱらと外に流れ出てくる。

 

それをしまう。

 

……さらさらしてるな。

 

それにしても、やっぱり顔と髪の毛だけ隠して下をズボンにしてさらにパーカーで上半身の細さを隠したら背丈以外の情報は隠し通せるんだな。

 

思いつきでも案外うまくいくもんだ。

 

……逆に言うと今のように顔と髪の毛をばっちりと見られたらさすがに少年だとは思ってもらえなさそうなんだけども。

 

まぁそれは気をつけていればいいし。

フードを被っていれば良いんだからむしろ気が楽まであるしな。

 

……これからの季節はちょっとだけ大変そうだけど、まあなんとかなるだろう。

 

理想はサングラスとかマスクまでして完璧に隠れることだけどさすがに怪しすぎるな。

秋とか冬ならまだしも、さらには大人ならまだしも子供だし。

 

今なら花粉症だということで行けるか……?

いや、さっきので隠し通せていたんだからいいか。

 

めんどくさいし、マスクは暑くて息苦しいから苦手だし、めんどくさいし。

 

ともかくこれが年の近い女性から見てもそうだと分かっただけで収穫だし、同時に隠さなければ僕の目に映るとおりの女の子だと……他人からでも認識されるらしいことも実証できた。

 

女性服エリアで女の子の服を頼んで「えっ?」ってならなかったんだから大丈夫なんだろう。

たぶん。

 

ようやく、この体になってからようやっとで目で見たとおりの外見になっていることが確定したわけで、残念なようなほっとしたようなもにょもにょするような複雑な感情が渦巻く。

 

「男性用の売り場はこちらですよ」ってさりげないフォローで移動させられるのをどこかで期待していたんだけどな。

そう考えると女の子だと確定してしまったという表現のほうが正しいのか。

 

うーん。

 

嬉しいような悲しいような。

 

「…………お待たせしました!」

 

お、ようやく来たか。

 

考えに沈んでいた意識を戻すと鏡を見たままで固まっていた僕の髪の毛は結構……というかほとんど落ちて手の甲にまでかかっていた。

 

くすぐったい。

 

……声と一緒に、また走っている音がする。

別に急いでいるとはひと言も言っていなかったんだけどな。

 

仕事熱心なのか生真面目なのかその両方か。

まぁ新人さんのバイトなら大半がそうなるのかな?

 

さてさて、それじゃあ他人から見て僕に合いそうな服はどんなもの。

 

「……………………………………?」

「とりあえずは、こちらですっ!」

 

首を戻した僕の目の前にどっさりと置かれたのは、服を持っていたらどうぞといつも渡される布でできた大きい袋の中にみっちりの服。

 

みっちみち。

それが、みっつ。

 

……とりあえず?

これが?

 

えっと、僕、そんなに頼んでない。

 

「他の者と手分けしてお客さまに似合いそうな服を集めてきました! サイズも大きかった場合と小さかった場合と両方揃えましたし色のパターンも揃えました! さぁっ、まずはどれにしましょうかっ!」

 

頼んでない。

 

近い近い。

 

頼んでない。

 

目の前いっぱいに広がる店員さんの顔と胸で強烈な圧を感じてのけ反ると、さらに詰め寄られた。

 

この子……さっきとぜんぜん違う?

別人じゃないのか?

 

「着慣れていらっしゃると見受けられる男の子っぽいファッションにしましょうか? あるいは中性的で、それとも大人びた服装ですか? それともまずはかわいらしい服を試してみますか? さぁ、いかがなさいますか!?」

 

「………………………………………………………………」

 

離れて。

 

だから近いって。

 

ぐいっとアップになるその子の顔は、なにかとても素敵なものを見つけたみたいな表情になっていて、走っていたからか少し紅くなっている。

 

けど、違う。

そうじゃないんだ。

 

そこまで気合入れて欲しいって言ってない。

適当なものをセレクトして欲しいのに全部持ってこられても困る。

 

いきなり過ぎる展開で僕の口も頭も追いつかなくてフリーズしている。

いくら準備すれば人と問題なく会話できる僕だって準備していなければムリなんだって。

 

あと、やっぱり近すぎるから離れて欲しい。

近づかれすぎると考えるどころじゃないんだって。

パーソナルエリア的なそれに入って来ないで。

 

僕は弱いんだ。

 

…………でもこの感じ。

どこかであったような?

 

……………………………………………………。

 

……あぁ。

この強引な感じは昔、母さんが服を着せてきたときと同じパターンなんだ。

 

……だったら、きっと。

 

一切の抵抗は無駄なんだ。

だから。

 

「予算に収まるなら何でもいいです。 ぜんぶお任せします…………」

「お任せください!」

 

…………迫ってくるのから逃れたい一心でどうにか返事をした。

してしまった。

 

けどしょうがない。

もう駄目なんだ。

 

暑苦しい。

こういうタイプの人は苦手だ。

なんでさっきまで擬態してたんだ、隠さないで欲しかった。

 

ずるずると更衣室へ。

 

「………………………………」

 

やっぱり親を待つとか言えば……いやいや、それだと帰りもこの格好だしせっかく来た意味がなくなってただ疲れただけになって損した気になるし。

 

諦めよう。

 

真横に張り付いている……正確には斜め上だけど、その子が何かを言うたびに会話がムダに膨らんでいくから下手に口出ししたりしないで、黙ってハイハイいっておくのがいちばん楽で正解なやつだって分かった。

 

だから僕はbotになるんだ。

相槌さえまちがわなければ言いはずなんだ。

 

きっと。

 

店員さんがごそごそと出していく服の感じは、どう見てもちょっとませた小学校の女の子がよく来ているようなドのつくピンクとかラメでキラッキラしているやつが多い。

 

……今着ているこういう服や「ちょっとだけ」女の子らしい服装が見当たらないんだけど?

 

ちょっと?

これで?

 

……女性の価値観は分からない。

 

それにこの子、さっきと違ってものすごくはきはき生き生きしているっていうか待ってそもそもさっきまでのどもりっぷりと緊張っぷりはいったいどこへ?

 

やはり擬態か。

同情して損した。

 

僕はしょげた。

だるんってなった。

 

嫌な予感しかしないけど……とりあえずこれだけはわかる。

 

人選、絶対まちがった。

 

素直に慣れてそうな人を選んでおけば良かったんだ。

後の祭り。

後悔とはなんとやら。

 

もう、さっさと選んでもらって帰りたいってしか考えられない。

 

そうして回想が着せ替え人形botになっている僕の中で追いついちゃって、僕はもう1回思考を今朝まで飛ばした。

 

早く終わりますようにって祈りながら。

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