【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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34話 魔法と抵抗と「NEKO」 4/4

性同一性障害とかトランスジェンダー。

 

本当の人には悪いけど、僕だって今はそんな状況。

だから人に分かりやすい例えとして使わせてもらう。

 

よく考えたら初めからこの言葉を調べておけば良かったんだって気がついた。

 

特にかがりとかに対して言っておけば着せ替え人形にならなくて良かったんだろうって。

この言葉も概念も知識として知ってはいたんだし、思い出せていれば今までの苦労の大半はさらっと片付いていたはずなのにってしょげる。

 

見た目通りの女の子らしくなる研究とかしなくても……いや、あれはあれで……いやいややっぱり良くない気がする。

 

「でも本当にごめんね? そんな他人……初対面の私たちにも話しにくいこと言わせちゃって。 後でこの子の耳でもしっぽでも好きに弄っていいから許してね?」

 

動いている猫耳と尻尾?

 

もちろん許すけど?

 

「人を売らないでくださいにゃ! というか同罪ですにゃ?」

「だって私にはそんなもふもふ生えていないしー? 年上とはいえ女の子のねこみみとしっぽよ? 男の子なら余計に、ね?」

 

この人……僕が男だって言ってから余計におねえさん振ろうってしてない……?

 

一応僕の方が年上なんだけど……?

 

なんでみんな僕に向かってそうするの……?

……小さいからだよね、知ってた……。

 

「なら触らせてあげたら良いんですにゃ、その髪の毛とかそのいっつもわざと見せびらかしているムダな脂肪とか」

「なに言ってんのみさきちゃん!? 男の子の前なんだって!」

 

む、いけない。

女の子同士の軽くセンシティブな話題に入りかけている。

 

僕はそういうのが苦手なんだ、ここは無理やり話を戻そう。

 

「僕の体は、肉体は女なんです。 でも心は男なのでそういうのも苦手です」

 

「んもー、マジメさんですにゃあ。 でも中学生男子ならそんなもんですかにゃ? あ、だったらこそせんぱいのお胸とか」

 

「み・さ・き・ちゃん?」

「にゃ!」

 

戻せなかった……あ、いや、「こほん」ってしてるし戻してくれそう?

 

「みさきちゃんが暴走しかけちゃったけど……でもなるほど、それで納得が行きました。 だから最初にぱっと見た感じが男の子だったんですね」

「あー、確かにですにゃ?」

「髪の毛がそんなに長くてもなんだかそう見えたんですよねー、あの目が合ったとき」

 

「……そんなに目が良いんですか?」

「あ、合ってなかった?」

「いえ、僕は合ったって思いましたけど」

「私も『そう感じた』から……ほら、人の視線って肌で分かるものだし?」

 

僕は小学生からメガネ……今は無くなってるけど……だったから目が良い人の感覚が分からないけど、どうやら見えていたらしい。

 

……小さいころから近視とか乱視とか無い人ってぜんぜん違う感覚なんだろうなぁ。

 

今の僕だって目が良くなってるけど「見えちゃ行けないんじゃないか」って脳みそが錯覚起こすことあるし。

 

「遠すぎてそこまで気が回らなかったのかもしれないけどねー、でも私の勘違いで押しかけなくって良かったかな。 ……にしても良かった!」

「何がですか?」

 

「うん……あ、これはさっきみたいな勧誘じゃないからね? 念のためにね?」

「はぁ」

 

「どうせだから言っちゃうんだけど……『もし君が女の子だったとしたら』、どう考えても将来的に私がアイドルしているのが恥ずかしく……ううん、女として嫉妬しちゃいそうな成長するんだろうなぁって思っちゃってね? 異性だって思えばため息出るくらいだけど、同性だと……ねぇ? 妬いちゃう感情ってしつこいから」

 

「……勧誘ではないんですね?」

「褒めちぎりからの勧誘じゃないない! 純粋に褒めてるのっ」

「そうですにゃー、男の子だから言いますけど私もため息出ますからにゃー? モテモテですにゃー?」

 

……整ってる顔。

 

僕は美醜の区別があんまり付かないから分からないけど……この人たちの反応を見る限りそうなんだろうな。

 

僕から見たらすごく整ってる……多分世間一般的には「かわいい」アイドルの人たちなんだろうけども、でもやっぱりその感覚がよく分からないんだ。

 

「ま、ここまで違うと嫉妬もできなさそうだけど。 だってねぇ? 今の君が成長して……えっと、体が女の子でも男の子っぽくするんでしょ? だったらきっと中性的で、こう……すんごいことになりそうじゃない?」

「顔のお肌は子供、あ、ごめんなさいですにゃ、思春期でお肌が荒れ始める前ならともかく、その絹みたいな……シルクみたいな髪の毛ってどーやって維持してるんですにゃ……知りたいですにゃ……」

 

「? 知り合……友人の、女子の友達に聞いたとおりのケアくらいですけど」

 

「………………………………………………素材ね」

「……………………………………素材ですにゃあ」

 

「……私たちも苦労しているのよ…………」

「……大丈夫ですにゃ、分かりますにゃ……」

 

ふたりとも、僕の顔と髪の毛を眺めながら自分の顔とか髪の毛を弄りだしている。

 

……女の子にとって、女性にとって外見はとてもとても大切なもの。

 

それを理解している僕は黙ってすごそうとするけど……何か違和感がある。

 

なんだろ。

 

えっと、ちゃんとこの人たちには男って扱ってもらってるよね?

それで良いはずなんだけども。

 

「……………………あ」

 

つぶやいた声は髪の毛の枝毛見つけて熱心な2人に届いていなかったみたい。

 

だけど……そうだ。

 

この子たちは今までの人たちみたいに僕のこと「男子だとは認識してはいても男性とは認識していない」んだ。

 

話してる内容からも僕のことを見た目通りに……さばを読んでの中学生としても、子供って表現してる。

 

でも、それはおかしいんだ。

だって僕は「大人の男」――前の僕に見えるはずなんだ。

 

お隣さんだってそうだったしご近所さんたちだってそうで……僕を知らない人たちだって、最初の何回かは免許とかわざわざ見せていたけど最後の方はめんどくさくなって、ただ口で「男なんです」って言っただけでもお酒を買えたりしたんだ。

 

なのに今はそうじゃないみたい?

 

でも大人の女性に向かって「大きくなったら……」とか言わないはずだからやっぱり少年として見られているんだ。

 

……ほんと、どうなってるんだろ……あの日に確かめて回ったときは確かに大人の男だって見られてたはずなのに……うーん。

 

考えれば考えるほどドツボにはまっていきそうだし、ひょっとしたら魔法さんが今はそういう気分なのかもしれないし……だからとりあえずは放置しておこう。

 

そんなはずはないけど実際にそうなんだからしょうがない、今はそう思っておこう。

 

「あの、僕のことよりさっきのおはなしの続き、聞きたいんですけど。 ……あ、いえ」

 

さっきの。

自己紹介の後のなにかについて。

 

その話題のときにさっきみたいな状態になったんだった。

 

……だからまた魔法さんが出しゃばってくるかもしれないけどひょっとしたら今は疲れて休んでいるかもしれないし、もうどうにでもなれって諦めてくれているかもしれないし。

 

怖いけど、またああなっても戻って来られる。

それは実証済みだから怖いけどがんばろう。

 

そうしないと……ああなっちゃう原因が分からないと、また何ヶ月も寝たままになっちゃうから。

 

どんどんみんなから置いて行かれちゃうから。

 

「……僕、それについては初耳だったのであんまり理解が追いつかなかったんです」

「え? でもそんなことって」

「あり得るんですかにゃ?」

 

……そこまで大切な話じゃなかった……?

 

いやでも魔法さんが発動したしな、せめてどんな話題だったかは知りたい。

 

「用語とかも知らないものばっかりで……あ、僕は家庭の方針でテレビとかネットをあまりしないのでみんなが知っていることでも詳しくないんです。 だから、実は聞いていてもさっぱりで……つい分からないままで合わせてしまったんです。 済みません、僕の悪い癖がまた」

 

相手が話しているのにうわの空で適当に合わせちゃう。

本当に悪い癖があるから事実なんだ。

 

「なので申し訳ないんですが、もういちど。 今度はちゃんと聞きますので、分からないところは訊ねますので。 ……初めて聞く、中学生の僕にも分かりやすく教えていただけますか?」

 

うん、なんか良い感じに言えた気がする。

 

「済みません、聞いていませんでした」って言ったら普通の人なら怒るだろうけど……この子たちなら多分大丈夫。

 

あげた恩をここで使い切れば良いんだ。

 

「……あぁ、そうでしたにゃ、これは失礼しましたにゃ」

 

先に僕の言ったことを飲み込めたらしい島子さんが尻尾をぴんと伸ばして……触りたいな……僕を見る。

 

「秋からずっと『これ』についてインタビューとか取材とかワイドショーとかで解説する役割ばっかりしていたので、初めの頃にしていたようなゼロからの、基礎からの説明っていうものがすっぽりと抜けていましたにゃ。 お家の方針でニュース見ないんならしょうがないですにゃ。 あ、でも聞いても大丈夫なんですにゃ? 今私たちが勝手に教えてお母さんとかお父さんに怒られませんかにゃ?」

「あ。 ……大丈夫だと思います」

 

「……いざってときは連絡くださいにゃ、私たちが謝りに行きますにゃ」

「いえ、きっと大丈夫です」

 

この会話で僕の架空の両親がとんでもなく厳格な家庭ってことになってる気がするけどもう居ないし良いや。

 

「僕も知らないままって言うのはやっぱり嫌なんです。 だからわからないままに適当な相づちを打っている途中から……せっかく話してくださっているからにはきちんと聞きたいと思いまして。 おふたりとも、お詳しいようですし。 ですから」

 

「――――――――――響さん。 君、ほんとうに中学生?」

「――、え」

 

どきっと――嘘をついているのを見抜かれたような感覚で、一瞬で頭から血が引く感覚。

 

「あ、いやね? すっごく話し方が……ま、いっか。 長くなっちゃうと途中で迎えが来ちゃうし手短にだよね。 ……こほん! それなら私の出番ね!」

「そういうことなら先輩にお任せですにゃ」

 

「任されました。 でね? つい最近子ども向けの番組で子どもさんとお年寄り向けに……ちょっとだけですけどこれについて解説したので、きっとわかりやすく説明できると思います!」

 

教育番組のお姉さん、みたいなイントネーションで話し始める岩本さん。

 

……すごいなぁ、話し方までガラって変わるなんて。

 

「じゃあ簡単に説明するから、途中でも良いから分からないところ……今後の番組とかでも助かるからどんどん質問してね?」

「はい」

 

「よしっ。 ……んんっ」

 

――これでようやく、僕の。

 

魔法さんの、幼女の、「これ」に関係のあるなにかについて普通の人が知っているらしい知識――あるいは関係のあるそれを知ることができる。

 

「……?」

 

姿勢を正した教育番組のお姉さんの横には……猫さんが猫っぽいポーズを取っている。

 

え?

なんで?

 

「にゃんっ」

 

岩本さんに寄りかかるように横を向いて両手を「にゃん」ってしながらもたれかかって、背中はのけ反っていて、耳はぴくぴくと……すっごく早くいろんな方向に動かして、しっぽもくるくると丸めたり伸ばしたりして、それを片手に巻き付けていて。

 

……あの、僕、そういうマスコットが居なきゃ集中できないくらいの子供じゃないんだけど……教育番組ならしょうがないのか……。

 

「それじゃあ説明しますね? みさきちゃんと私が『かかった』、見た目が変わったり何かが生えちゃったりしちゃう、けどぜったいに人に移ったりはしなくって、遺伝とかでもないもの。 普通の人じゃなくなっちゃったからって言っても絶対にいじめたりしちゃいけない『病気じゃないナニカ』のこれについてです」

 

――見た目が変わったり。

 

「いちばん分かりやすいのが『ねこみみ病』」

 

――ねこみみ病、………………………………って、え?

 

「『病』って言うけど病気じゃないのよ? ただ最初にそう呼ばれていたから今も使ってるだけのただの名称なんです。 突然変異……まぁ指が1本多い子みたいな感じかな? とっても珍しいけど居なくはない感じ。 他には『ねこみみが生えちゃう症候群』とかもよく言われるんだ。 そのほかにもいろいろあるけど今は『ねこみみ病』って呼びますね?」

 

ねこみみ?

 

生えちゃう?

 

…………??

 

「……ごめんなさい、いつもみたいだとちょっとバカにしている感じになっちゃいますかね」

「あ……いえ」

 

「響さんは中学生ということでもう少し細かく説明しますと、英語圏では『NEKO』とか『NEKO-MIMI』とかもよく言われていますね……まぁ聞こえ方はほとんど同じですけど。 本来の意味なら猫って言う単語の『Cat』とかになるはずなんですけど、こちらの呼び方がそのまま定着しているみたいで……正式名称の代わりに『ねこみみ病』って言ってるのと同じね。 まぁコミカルになっているので私たちとしては助かる限りなんですけど」

 

「………………………………」

 

頭が着いて行っているのに追いつかないって言う珍しい感覚。

 

「おかげであちらさんの検索とかがどえらいことになっているとかなんとか。 あ、詳細な学術名とかは私たちもよく知らないっていうか発音しづらいから覚えていないの。 どうせ司会者さんがボード出してくれますし。 とにかくねこみみ、ねこみみなんですよ!」

「つまりは私に生えているこの耳! がシンボルマークでトレードマークなんですにゃ」

 

「だからみさきちゃんは便利なのよねー」

「人を便利な猫って言うなですにゃ!」

「って言うのがいつもの流れなの」

「体が反応するレベルで染みつきましたにゃ」

 

島子さんのねこみみがすごい勢いでぴこぴことあっちこっちへ向いている。

 

ついでにしっぽがそのねこみみを、頭の上のほうについているはずのそれをくるんと伸びて……指している。

 

ゆらゆら、ふさふさしている。

 

……どう見ても機械の動きじゃない。

自分の意思で、自分の体の一部として動かしている?

 

つまり岩本さんの今の説明は、嘘っぱちとか子ども相手のホラっていうわけでもなくて、つまりは本当で――。

 

「………………………………、え?」

 

どういうこと?

 

ねこみみ?

 

しっぽ?

 

ぐるぐるしてくる頭の中。

 

「おぉ――……ほんっとうに初耳だったんですねぇ……」

「最初の頃はよくみんなそういう顔してましたにゃ!」

 

「そりゃさっきの会話について行けないわけです。 響さんは悪くないです、みんなが知ってるって思い込んでいた私たちが悪かったんです」

「人には事情がある……そうですにゃ、知らない人もまだまだ居るんですにゃ?」

 

多分僕だけだって思うけど……駄目だ、インパクトのせいで頭が。

 

「いろいろすっ飛ばして会話していましたしねぇ……って言うかただのグチでしたもんねぇ、これについての……怒られて当然です」

「………………………………いえ」

 

しっぽをぺしりと岩本さんに振り下ろしている島子さん。

そしてそれをぐいっとつかまれて「にゃー」とか言っている。

 

かわいいけど……それよりも。

 

一体どんなものかって思って身構えていたのに……なんだそれ。

 

子どもにも分かりやすいようにって、通称とか愛称とかそういうものだったとしても……あんまりな名前じゃないか。

 

身構えたのに力が抜けていく。

だってねこみみだよ?

 

魔法さんが僕を乗っ取るほどの何かなんだからきっと大層なものだって思ったら……ねこみみ。

 

目の前でぴこぴこ動いてる、島子さんのねこみみ。

 

……僕、ねこみみなんて生えてないよね?

尻尾も生えてないよね?

 

心配になってこっそり触ってみたけど、僕の尾てい骨からは何も生えていなかった。

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