【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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35話 「ねこみみ病」 4/7

朝起きたら姿が変わっている。

 

ものすごく不便になるかと思ったらそこまでじゃない。

 

でも僕は起きてすぐに気がついたし、なにより魔法さんみたいなことをこの子はひと言も……。

 

「体が柔らかくなったおかげでダンスとかはものすごく楽になりましたけどにゃー、普段のストレッチとか筋トレとかが楽になったので忙しくなってきた身としてはありがたいかぎりですにゃあ」

「ほんっとうらやましいわよね――……まぁ私も……『前』に比べたらずっと……」

 

「?」

 

そういえば岩本さん、結構「前のこと」って言うみたい。

 

なにかあったんだろうか。

 

そして何回も言うからには聞いてほしくって話したいんだろうか。

少なくともあの子たちならそうなんだけども。

 

「来年あたりからは学校とかスポーツとかでも普通のヒトとねこみみ病の中でもケモノ化した人を別の種目としてカウントしたり、あるいはハンデ……えっとですね、つまりはケモノ化して増えたスコアぶんだけマイナスして点数をつける、そういう動きもあるそうですにゃ」

 

「……それってどうやって測るんですか。 学校ならまだしもああ言う世界ってすごくシビアって」

「さすがは響さんですにゃあ。 その通りで、そのスコアってやつの個人差がものすごいことになっているので相当揉めているみたいですにゃあ」

 

やっぱり世の中は世知辛いらしい。

 

けど……そうだよな、変わっちゃったものはしょうがないけどそれで生きている人にとっては死活問題だよなぁ。

アスリートの人が僕みたいに男から幼女にでもなったら……まぁ、ここまで変われば諦めもつくか。

 

「……なるほど。 あの、猫とかの動画でもよく、ものすごく速く走ったり高いところから飛び降りても無事に着地とかできるものってありますけど」

 

ふと、さっきこの子の話を聞いて「映画とかみたいに屋根伝いとかで逃げたら」って考えたのを思い出す。

 

「あー。 スタントマンさんみたいなことはできませんし怖いですけど……安全な場所で3階くらいまでならケガせずに痛くもなく着地できますにゃ」

 

――――それはもう人間じゃないんじゃ。

 

そう思ったけど僕の口が重くって助かった。

 

「私みたいなネコ科になった人の中にはもっと高いところもいけるそうなんですけど、私はそのへんで怖くなっちゃうのですにゃ。 それに3階くらいからだとけっこー風に吹かれて着地地点がズレるから……多分猫ちゃんたちでも場所がずれたら酷い目遭いますにゃ?」

 

「確かに」

「あと、下りた後って……痛めたりこそしませんけど、でも足の裏から脚までしばらくびりびり痛いんですにゃ。 うまく手と足と体のバネを使って着地できれば大したことないんですけどにゃあ」

 

「……痛いで済むんですか」

「こー、両手を思いっきりばちっと合わせた程度ですにゃ。 ま、痛みといえば痛みですにゃ? しばらくじんじんしますにゃ?」

 

「………………………………すごいですね」

 

ねこみみと尻尾が生える、しかも身体能力はマンガやアニメみたいなことができる……子供なら喜びそうだな。

 

子供って言っても高校生くらいまでは案外喜べそう。

大学になると就職のこと考えて頭抱えそう。

 

人間なんてそんなものだ。

 

僕は良く知ってる。

 

「で、響くん?」

「岩本さん?」

 

「あ、私のことはひかりちゃんでも」

「せんぱい?」

「この子のこともみさきちゃんで良いのよ?」

 

「……ええと、年上の方なので止めておきます」

 

「マジメねぇ」

「そんなところも……」

 

あの子たちもそうだったけどこの子たちも呼び方にこだわるのか。

出会ってまだ1時間なのにな。

 

ちらっとスマホ見るけど……まだ萩村さんたちは着いていないらしい。

 

「それでね? ――――実は私も同じようにねこみみ病にかかっているんだけど」

 

「え」

「どんなタイプか想像できます?」

「……岩本さんまで。 …………」

 

……岩本さんまでそうだっていうのは初耳なんだけど……でも、それで前のことって。

 

まぁ、ねこみみ病になっている島子さんとコンビを組んでいるんだし考えてみれば当然か。

ただ仲が良いとかじゃなくて、この子もまた別のねこみみ病で……政府広報とかで出てるのかな。

 

でも……んー。

 

「…………………………………………」

 

「……真正面からってなんかこしょばゆい」

「そういうものですにゃ」

 

やっぱりテレビに出る人でもこうして近くでじっと見られるのは恥ずかしいのか。

 

でも彼女の耳は……人のしかないし、前髪に隠れてちらっとしか見えないけど上にはそれらしきものはない。

 

しっぽも……服から出ていない、少なくともここに来るまでと今座っている範囲では見えていない。

 

つまりはぱっと見て分かるものじゃない?

でも「私を見て分かるかな?」って雰囲気なんだよね……なんだろう。

 

「……からかっているわけじゃないですよね?」

「本当よー? テレビとかで説明するとき、みさきちゃんのを今みたいにしてそのあとに私っていう毎回しているお約束です。 というか、こうでもして茶化さないと割とシャレにならないというか。 特に女性の方たちからの……ね?」

 

うーん。

 

シャレにならない。

女性同士で。

 

なんだろう。

 

……胸が大きくなるとか?

 

目線は合わせてないからバレないはず……だけど、彼女のはそこまでじゃない。

 

多分は偽乳を使っていなければC……なにを考えているんだ僕は。

たしかに岩本さんのほうが島子さんのよりもこころもち大きいかもいやそうでもないかいやいや忘れよう思考がおかしい盛る系のだったらそうじゃないってば。

 

胸は大きさじゃない、トップとアンダーの差だとかなんとかたたき込まれたからなぁ……。

僕がこういうことを自然と考えるようになった元凶のメロンさんの罪は計り知れない。

 

「……はい、そろそろ良いですね。 でしょ? 見ても全然分からないでしょ? そうなんてす。 私の場合はなにかが生えたりはしないんです。 つまりはケモノ化でもない別のねこみみ病なんです」

 

あ、そっか。

ねこみみ病でわざわざ「ケモノ化」って言うくらいなんだから別のもあるのか。

 

でも、別の?

 

ねこみみ病と似たような病気……じゃないんだっけ、現象で姿が変わる――――

 

「分かりやすく言ってしまうとです。 響くんみたいな若い子にはまだピンとこないかもしれませんが」

 

女性同士で困ったことになる。

 

見た目がそこまで変わらない……ように見える。

けどはっきり区別されるくらいに変わる。

 

それはまるで、僕のように――――――――――

 

「私のねこみみ病の症状は『若返り』なんです」

 

「――――――――――――――――――え」

 

 

 

 

若返り。

 

岩本さんがかかっているって言う、ねこみみ病のもうひとつ。

 

若返る。

 

つまりは幼くなる。

 

それはまるで僕に起きたような。

 

「……あははっ、わかりやすいねこみみとはちがってやっぱり『若くなる』っていうのはおさな……んんっ、若い響くんにはいまいちピンときませんでしたか?」

「………………………………いえ」

 

体じゅうから汗がぶわっとして、この魔法さんがねこみみ病の症状のひとつだったのかもって思ったらなんだか落ち着かなくなって。

 

…………こういうときでも無表情な僕はまたまた誤解されたらしい。

 

今回ばかりはそれでよかったんだけど。

 

でも。

 

「そうですねー、これもいつもしているやりとりだから気にせずに答えてほしいんだけどね? あ、怒らないから大丈夫だよ? テレビでも配信でもいつもやってわざとおかしなこと言う子に『めっ』って言ったりする程度なの。 ――私、響くんから見ていったいいくつくらいに見えます?」

 

高校生くらい……じゃないのかな……少なくとも見た目とか態度とか、話し方は。

 

幼さがまだ残っていて、よっぽど若く見えていたとしても多分成人はしていない……か、少なくとも前の僕よりは年下な印象。

 

でも若くなったって言っていた……ってことは前の僕より年上?

 

でもでも島子さんと仲良いし高くて20代……あ、女の人ってお母さんと娘でも友達みたいになれるんだっけ……余計分かんないや。

 

「………………………………えっと」

 

なんだか目をきらきらさせている岩本さん。

 

……あ、よく見たら眉毛、剃っていなくて地毛でまつげも目の色も茶色掛かっているみたい。

茶髪、染めているんじゃなくって本物だったんだ。

 

ついでになんだか茶髪というと染めているっていうニュアンスが含まれちゃうし、これからは栗色ポニーあざとい若作り岩本さんと呼んであげよう。

 

「……済みません、分かりません。 お化粧もすごく薄いですし、それでもお肌も、いえ、全体的な印象からいってもどう見ても高校生……か、僕の上の学年の中学生にしか見えないです」

 

分からない以上思いっ切り低く見積もってあげた。

僕なりのリップサービスってやつ。

 

だって女の子は女の人になっても1歳でも若く見られたいんだって知ってるから。

 

実際にそう見えなくもないしな……高校生でも不思議じゃなくて、お化粧とか服装次第で女の子っていくらでも変わるから。

 

おとなりの島子さんと比べると背も低いし胸……は関係ないけど童顔系だし。

 

ださい格好にさせて、あるいは中学校の制服を着させて、あの子たちの前に立たせて「同級生なんだ」って紹介したら「上級生みたい」って言われそうだけど納得もしてくれそうな雰囲気。

 

胸はそこそこあるけど現役JCなかがりとりさりんっていう前例がいるし、女性の年齢は胸ではわからないというのは知っているし。

 

「いやー! いやいやー! 中学生! ねぇみさきちゃん私中学生だって!」

「さっさとお答えするですにゃ」

「そう見えちゃいますかー! 中学生! でも中学生な響くんからそう見えるんなら」

「さっさとお答えするにゃ」

 

「JKって言われて嬉しくなるのに」

「さっさと言うですにゃ」

 

「……もうっ! 分かってるってみさきちゃん!」

「…………………………………………」

 

「それでですね? 私、中学生! って見ていただけるのは本当に初めてでだからとっても今私は嬉しいんですけど、ともかく私はこうして実際の肉体年齢が著しく若返ってですね?」

「せんぱい」

 

「あぁもう最初のころは同じスタジオとかインタビュアーの女性の方からの視線が気持ちいーいくらいに刺さってきましてね? あぁ私の年ですね、あぁでもその前に具体的な年齢を」

 

「27ですにゃ」

「あ」

 

……27?

 

岩本さんが?

 

「……ねぇ、いきなり」

「にじゅうななさいですにゃ。 にじゅーななさい」

 

天井のシャンデリアっぽい明かりが気になるのか、上を眺めつつぽそりとつぶやく島子さん。

 

「みさきちゃ」

「私プラス10歳ですにゃ。 じゅっさいですにゃ」

 

でも……ぼくと同世代。

 

20代って予想は合ってたけど……でも、見えないなぁ。

 

「み、みさきちゃーん……? なに先にバラして……普段はもっと」

「ひかりさんは、元27歳、現17歳っぽい感じですにゃ。 …………元、27歳。 27さい、にじゅーななさい。 アラサーですにゃ」

 

「連呼しないで!?」

「だって事実ですにゃ」

「うぐ」

 

あ、これ怒ってる。

 

急にトーンが下がったし……どっかで尻尾踏んづけちゃった?

 

「さっきからまたあぁやって若く見られてからにコーフンしないでくださいにゃお相手の響くんもドン引きですにゃ」

 

僕は静かに待つ。

 

「ついでに言うなら響くんのひとつふたつ上の世代に人気だったくらいにはアイドル歴も私たちの中でトップクラスに長くってですにゃ。 私が小さいときから人気だった、目標だった人ですにゃ」

 

「みさきちゃんひどい」

「さらにさらにメディアへの露出も減り始めてご本人もそんな感じで『そろそろ引退考えてるかも』ってささやかれていたくらいの年増ですにゃ」

 

年増。

 

それは僕にも刺さる。

 

だって前の僕……今の僕に入っている前の僕の意識。

 

それは岩本さんと……地元がこの町なら。

 

下手をすれば学校同士のイベントとかで遠くからでも顔を合わせたこと……はないだろうな、アイドルって学生のときからするものだから。

 

…………………………………………。

 

けど、そうだよね。

 

……まぁ成人していない猫さんからすれば20後半なんて年増……つまりはおじさんおばさんになるよなぁ。

 

自分が歳を取ると別にそうは思わないし感じもしないんだけど……でも僕が高校生くらいまでの感覚じゃあ25を過ぎたら親の世代ってことで……つまりはおじさんおばさん。

 

なんか凹んだ。

しょげた。

 

……歳を取るって嫌だなぁ……今は若返ってるけど。

 

うん、さっきのはしゃぎっぷり。

 

僕だけは素直に褒めてあげよう……僕も知らない人に「学生さん?」って聞かれるのは嬉しいって分かるから……おじさんは嫌だから……。

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