【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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37話 別れはもう少しあとで 1/2

「……そう。 そんなにひどいのね、響ちゃんの病気……」

「うん……といっても命に関わるものではないけどね。 本当だよ」

 

そう言いつつ髪の毛をなでりなでりしてくるかがり。

 

ぶわっと僕の汗の匂い……甘い感じのそれが立ちこめる。

 

……いい匂いだけどでもやっぱり汗の匂いっていうわけでつまりはかがりにも嗅がれることになるから止めてほしいんだけど、さっきから止めてくれない。

 

……やっぱりこの子、僕のこと年下の着せ替え人形って見てるよね?

 

「……すんすん」

「やめてくれ」

 

全力で引き剥がす……けど剥がれない。

元々腕力じゃ敵わないもんなぁ。

 

でもこういうの、さすがの僕でも恥ずかしいからね……?

 

というかかがりだけじゃなくって、なんでみんな僕の頭によく顔をうずめるんだろ。

やはり小さいからか。

 

みんなからするとちょうどいいところに僕の頭が……きっとつむじとかが見えるもんだから、きっとついやっちゃうんだろう。

 

ほら、ペットの犬とか猫みたいに。

ほら、僕の髪の毛ってモフり甲斐ありそうだし。

 

「でも入院でしょー? 大変そ――……」

「そうね……私たちにとっては重病ってイメージしかないわよね」

 

「……こうして出歩けることもあるんだ、たいしたものじゃない。 まぁ駄目なときは動けないけども」

 

入院って聞くと大変って思うよね……僕だって聞いたらそうなる。

だから死にはしないって強く言っておかないと心配しちゃうだろう。

 

「みんなと会っていたころ……夏までは安定していて、秋は駄目で。 今は小康状態だけど、いつまた倒れて治療が必要になるか分からない、そう言われてね……もちろん命には関わらないんだけども」

 

「本当に……その、無理は。 私たちに会う……ために、無理とか」

 

じぃっとメガネの中からのぞき込んでくるさよ。

 

……本当の病人さんな経験のある黒髪ロングさんから言われるとなんだか深刻に受け取られちゃいそうだな。

 

「だから無理はしていないよ。 許可……も得ているし」

 

こうでも言わないと……特にこの子はいつまでも不安なんだろう。

 

ごめんね、ウソついて。

 

「それに、これは本当のお別れじゃない。 もう会えなくなるというわけでもなくって、また急にしばらく……次の日に約束をしていたって急に月単位で突然連絡できないことも場合によってはあるから、そのためなんだ。 この前みたいな心配はさせたくないからね。 本当にそれだけだよ、さよ。 チャットでも良かったんだけど……こうして話せるなら直接の方がって思って」

 

「そう、………………………………ですか」

 

思うところがあったのかようやくに引いてくれた黒めがねさん。

ただいつまでも言っていてもしょうがないって思ってくれただけかもしれないけど。

 

……この子、心臓かなにかが悪いって言っていたしな。

手術も経験しているみたいだし。

 

だからこそ人に心配されすぎて困るっていう感情……理解してくれたんだろう。

 

「直接会えなくても……許可が出さえすればスマホ越しにでも連絡は取り合えるしね。 ただ、どうなるかは分からない。 急に僕が返事をしなくなっても心配は無いんだ。 ただ、それだけ」

 

魔法さんのせいで今の僕……幼女のままで一切成長できないっていう可能性とか、もっと先のなにかが起きる可能性。

 

そういうものを考えるとこのまま長期間顔を合わさないうちに自然消滅っていうのがお互いに楽なんだろう。

 

……でも。

 

年は離れているとはいえ、みんな女の子ではあるとは言っても……少なくない時間をいっしょに過ごしたせいで、愛着……湧いちゃっているからなぁ。

 

「情が湧くと別れが辛い」って言うのは映画とかで良くあるセリフだけど、多分僕の人生で初めてくらいに経験している感情。

 

だから僕はこうしてこの子たちに今後も連絡を取れるって言いたくなって、言ってしまったわけで。

 

でもどうせ人っていうのは顔を合わさなくなると次第に興味が薄れていくものなんだ。

 

学校を卒業して別々のところに通うようになったり、転校したり就職したりして、初めこそ前みたいな頻度でやりとりするけどそのうちにだんだんと忘れる。

 

そういうものなんだ。

 

僕は幼稚園とか小学校で転校したことがあるから分かる。

多分幼いながらに泣いたりしたし、しばらくは手紙とか電話とかしてたけど……すぐに忘れる。

 

人なんてそんなもの。

僕でさえそうなんだ。

 

だから僕が前以上に人前に出なくなって、つまりはこの子たちとも距離を取ってだんだんと会わなくなっていけば……来年の今ごろにはもうお互いに過去の人になっているだろう。

 

たまに思い出して「懐かしいなー」って言うだけの関係。

 

それは寂しいことだけど、もともとが嘘の関係なんだ。

だから、これできっと良いんだろう。

 

そのうち別れるって言っておけば、直接会わなければ……連絡できたとしても、そのうちに。

 

「そういう意味でのお別れだったのね? 響ちゃん」

「あぁ」

 

ようやく頭に乗っていた重みとくすぐったさから解放された。

 

「でも響ちゃん、ひどいわ!」

「……なにが?」

 

いきなり耳元で大きくなるかがりの声。

 

不意打ちだったから耳が痛い、頭が痛い。

くらくらする。

 

けど……なにかかがりのスイッチ入るようなこと言っちゃった……?

 

あれ?

 

ここのところはうまく回避して制御できていたって思っていたのになぁ……。

 

「いきなりだもの! もうお別れだなんて言うからてっきりもう2度と会えないのかと思ってしまったじゃない!」

「いや、きちんとそのあとに」

 

話を聞かないくるんさん。

 

「びっくりしたんだから! 今みたいにきちんと順を追っておはなししてくれていたらさっきみたいに驚いたりはしなかったのに! ねぇ? そう思うでしょう!?」

 

女の子って「みんなもそう思うよね?」って口癖だよねぇ……この中でもかがりくらいだけども。

 

「あー……まー、たしかにねぇ……しょーがないって思うけどさ。 響も……あとさよちんもか、ときどき考えたこと省略して……こー、ずばっと言うことあるからねー」

 

ほら、ちゃんとゆりかとかは聞いてくれるのにこの子は……。

 

「私もびっくりしたわねー。 なにせ久しぶりに……退院でいいのかな、した直後にいきなりあー言われちゃあね。 マンガとかドラマ漬けだとどーしても悪い方に考えちゃうわよねー」

 

ヒマさえあればドラマを観ているらしいりさりんが言う。

 

「…………え……? 私も……ずばっと? …………え?」

 

……多分自覚が無かったんだろうさよが僕の顔と彼女の手のひらをあわあわしながら見比べている。

 

「……癖なんだ、済まない」

「まー響とかがりんの相性、会話的なのは壊滅だからねぇ……普段は響が合わせてるけどこういうときは大変そう」

 

ゆりかがとっても良いことを言っている。

 

「?」

 

でもかがりはそれに全然心当たりがないらしい。

 

だろうね。

僕ががんばってることだからね。

 

「……響ってさ」

 

ゆりがぽそっと言う。

 

「こう……男らしいっていうか……あ、さよちんもそういう傾向あるけどね? なんていうのかね……あ、もちろん良い意味よ? 頭が良い感じの……すぐに結論まで考えられちゃう人にありがちな傾向っていうかさ? わりと結論重視派っていうか……その、さっきみたいだったりさ。 テキトーなこと話している最中にぼそっと大切なこと言ったりするからね――……いや、良いとこでもあるんだよ? 私は好……………………きよ? もち、ふたりのそーゆーとこ」

 

なんか最後急につっかえてたけど大丈夫?

 

「最近はかなり減ってたけどねー。 なんて言うの? 話し上手になった感じだったし。 ほら、初めのころとかよくかがりんのこと怒らせてたじゃん」

 

「……そうだったかな……?」

「そういえばそうだったかしら? 良く覚えていないわ?」

 

珍しくくるんさんと一緒に「くるん?」ってなる感じ。

 

「も―忘れてる……ま、当事者っていうのはそういうもんかねぇ……でもさ、響も合わせてくれるけど私たちは平気な訳よ。 私とかさよちんならそういうのに耐性あるし、たぶんりさりんも部活とかである程度慣れているんだろうけどさ……かがりんは……その……うん……純粋な乙女だから」

 

「?? ゆりかちゃん、それってどういう意味なの?」

「や、わからないならいいんじゃない?」

 

脳みそお花畑ってことだよ?

 

……って言ったらさすがにかわいそう。

 

でも今のはお馬鹿さんってことじゃなくって、なんか周囲に花が生えてそうな雰囲気ってこと。

ほら、夏休みお勉強とか思い出せばそんな感じでしょ?

 

地頭は良い方なのに、悲しいほどまでに夢想家って感じの。

 

「……突き詰めて言うと感性の違いとか考え方の違いとか? 脳の仕組みが男に近いかと女に近いかの違いっていうやつなのだよ多分。 ほら、最近授業でやったでしょ? あんな感じ。 文系と理系とかまでは行かないかなぁ……うーん難しい。 普段こういうのってグループで分かれてるからなぁ……まぁけど簡単に言うと個性っていうことで良いんじゃない?」

 

「はぁ……」

「あ、ダメだ、全然分かってないや肝心のかがりんさんは……でも残念かなー。 それじゃ響、今日のクリスマスパーティー来られそうにないねぇ」

 

急に話が飛ぶ。

 

……ん、今日はイヴだからつまり国内的には今日がクリスマス本番か。

 

「そんなものが……?」

 

「うん。 だって『2度目の退院おめ!』な響へのさぷらいずの予定だったんだもん。 だから響が食べられそうな甘くないケーキとか……もちろんちっちゃいやつ買っておいたんだし。 けどそんなに体悪いんだったら」

「そうよね、よくよく考えたらそんなにびっくりさせてしまうようなこと……退院したばかりの人にしてはダメだったわね。 もうっ、誰が考えたのかしらね!」

 

僕も夏みたいに元気だったら……何も知らなかったら楽しめただろうけど。

ありがたいけど、今は残念ながらそういう場合じゃなくなっちゃったんだ。

 

……ごめんね。

 

「…………………………」

「…………………………」

「…………………………」

「……あら?」

 

……なんか寒くない?

 

暖房消した?

 

気のせい?

 

「……サプライズにしようって主張してたの、かがりんじゃないっけ。 忘れたの?」

「私はなんども……止めたんです、けど……さすがに危ないんじゃないか……って」

 

「あらあら?」

 

あー、かがりなら言いそう。

 

「素敵なパーティーをすれば響ちゃんも元気になるわ!」とか。

 

「……だ、だって! 私たち、響ちゃんとまた会えるって思ったら舞い上がっちゃって思わずで!」

「かがりんが、したかったのよね? まー止めなかったのも私たちだけどさ」

「うぅ…………はい……」

 

またいつものかがりの暴走だったらしいサプライズ。

 

そんなの普通にクリスマスパーティーだよって言えば良いだけなのに……本当女の子ってサプライズが好きだよねぇ……。

 

着せ替え人形にし始めたときから一向に変わる気配がない。

やはりくるんくるんメロンか。

 

「……こほんっ! とにかく本当はね? さよさんのお家のいちばん広いお部屋でする予定だったのよ。 もちろんご両親の許可もいただいたわ?」

「はい、私と同じような………………………………友だち、……が、いるって言ったら。 むしろ……両親の方、から。 ……まだそんなに悪いのなら仕方ありません……けど、残念です……」

 

しゅんとなるさよ。

 

メガネが曇っている感じがする。

 

「クリスマスパーティー、響の退院祝いでしようってことになってみんなで準備してたんだよねー。 さぷらいず仕様は昨日急にかがりんが言い出しただけだけど」

 

「飾りつけ、終わらなかったわね……あと少しだったのに」

「それもこれもムダに派手にしたがるかがりんと凝り性なさよちんが悪い」

 

「だって!」

「……私、凝り性……え……?」

 

あ――……学校の文化祭とかみたいなノリだったのかな。

 

みんな学生だもんね、きっとそういうのは男女関係なく好きな子は好きなもの。

 

さよも乗り気だったみたいだし、きっと楽しみにしていたんだろう。

 

……気持ちだけは受け取っておこう。

 

「…………………………」

 

……そっか。

 

これが、サプライズが嬉しいって気持ちなんだ。

 

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