【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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39話 去る年と、来る年 2/6

「かがりんって漫画とかだけじゃなくて普通に本とか読んでるのにどうして分からないのか……コレガワカラナイ」

「???」

 

夜を共にする……そんな単語ひとつでこの騒ぎ。

ナイーヴでセンシティヴな中学生というお年ごろな子たちだからだろうか。

 

まぁたしかにこのくらいの年ごろの子たちはいちいち反応するよなぁ。

初々しいあのころが懐かしい限り。

 

僕にだってそういう時期はあった。

ただ何もしないで通り過ぎただけ。

 

でもやっぱりこういう話題になると男と女で反応が結構違うんだな……いやまぁ僕のそのころの知り合いの誰もこういう話は好きじゃない感じだったから僕自身は体験したことはないんだけども……僕が知っている男同士のそういう話のほとんどが映画とかマンガとかの創作からっていうのが悲しい。

 

作り話でも現実を参考にしている以上ある程度の信憑性はあるんだろうけども……男だったのにそういうののどのへんまでがあるあるなのかが分からない悲しさ。

 

いいもん、今は女の子だもん。

 

……………………良くない良くない何考えてるんだ僕は。

 

なんか最近思考がおかしい気がする。

 

あ、でもこういう話、今後僕も振られる可能性があるのか……この子たちに。

 

「むぅ」

 

……この歳になっても、いや、男としてこの歳まで生きてきたからこそ抵抗感がある話題。

できるだけ分からないフリをするか気乗りしないフリをするかしかない気がする。

 

だって僕だし。

 

人の生態なんてそう簡単に変わらないんだもんな。

それに僕はそもそも、男女のそういうものについては――――――――。

 

「ねー、響だってこれくらい分かるでしょ? 中2だし、響は本たくさん読んでるし」

 

……そう思っていたら振られた。

 

どうしよう。

 

「……うん」

 

ちょっとなんかもやもやってなるけどゆりかもかがりも……かがりは置いておこう……特に変な調子にはなってない。

ってことはたぶんこれは普通の男女の会話で良いんだろう。

 

なら変に反応しないで普通に言えば良いのかな……僕の人生経験の無さだ。

 

「どう言う意味なの? 夜を共にするっていうの、そんなにおかしいものなの?」

「いやー、ちょっと文脈的にねぇ? なんというかその……えっとぉ」

「?? よくわからないわ?」

 

僕がそっけなかったからかかがりの注目はゆりかに集まっている。

 

それで珍しくゆりかが顔を赤くしながらあわあわしているのを見ているとなんだか不思議な気分になってくる。

 

普段は平然としている彼女でもやっぱり年相応の、青少年相応の反応するんだな。

うん、中学生ってのはこういうもんだよね。

 

男女のちょっとしたこととか表現でいちいち過剰反応する辺り、健全でなにより。

 

けどびっくりしたのはさっきのかがりの発言。

 

僕の体力がないことに気がついていて、しかも振り回したことさえ自覚していて――あの強引さは何言っても手を振り払おうとしてもどうあがいたってなすすべもなく着替えさせられるあの強引さを――自覚している。

 

それに気がついてそれがいけないことだということに気がついている。

 

衝撃だ。

 

……やっぱりこの3ヶ月っていう時間は長かったらしい。

あんなかがりだってこうして人並みの気遣いができるようになるくらいには成長しているんだから……いや本当に感慨深いっていうものじゃない、これは奇跡的ななにかだ。

 

できたらもっと早くに気がついてほしかったけどなぁ……具体的には夏休み前までには。

 

そうすればさんざんに試着させられて「どれがいいかしら……よく分からなくなってきたからもう1回全部着てみてくれるかしら?」なんて聞かれて「もうどうでもいいからこれにする……」っていうお決まりのパターンもなくなっていただろうし。

 

まぁ、もうすぐ中学3年になるんだもんな……この子たちみんな。

 

いくらかがりだって、あのかがりだって、さすがに精神年齢も肉体年齢に追いついてきているんだろう。

 

……早く体の成長に心が追いつくといいね、かがり。

 

まぁ追い越すのは無理だろうけど心の底から祈っておこう。

 

あぁそうだ、初詣にはそれを願ってあげよう。

この子はきっと別のことをお願いするだろうしな。

 

おいしいものとかきれいな服とか少女マンガとか、そっちの方に。

 

だから僕がお願いしておいてあげればフェードアウトするまでにもきっと何回か連れて行かれるだろう買い物でも少しは遠慮してくれる……ようになるかもしれないし。

 

「えっと、ふたりとも」

 

ぶるっと寒さが昇ってきた僕は反射的に楽しそうな問答をしているふたりを見上げる。

 

「どうしてそこで男女の、その……とにかくそれが出てくるのかしら? どうしてゆりかちゃん?」

「いやいやかがりん、それはさすがに友達でも言いにく……っとごめん響、なーに?」

 

「りさとさよの2人はどこにいるんだ? まだ来ていないのか? あと寒いよ、ここは」

 

「あ、そだったそだった。 今呼んでくるから、かがりんと先に上がって待ってて? いくら大丈夫そうでもいつまた発作、起きるかわかんないんでしょ? だったらさ、こんな寒空で立ちっぱもなんだしあったかいところで座ったり横になれるだろうし。 そのほうがいいはずだよね、かがりん?」

 

「えぇ、わかったわ。 それでは響ちゃん、こっちについて来て?」

「……どこへ? ここは神社の……管理している人たちが住んでいる」

 

「いいの、許可は取ってあるから。 それよりもちょっと人が多いから、手、繋ぎましょうね?」

「いってらー」

 

振り袖をふりふりさせているゆりかを後にそう言いながら僕の返事を待たずにさっさと手を取ってしまうかがり。

 

……やっぱり変わっていない。

 

やはりくるんさんだった。

ほんのちょっとだけしか変わっていなかったな。

 

「……あ。 えっと、これはね? 響ちゃんが苦手な子供扱いをしているのではなくってね? は、はぐれたら困るからよ?」

「それを子供扱いと言うんだけども」

 

だから、手を……く、離せない。

 

「だってこの人出だもの、響ちゃんは背が低いから1度見失ってしまったらお互いに見つけられないでしょう? だからこれはしかたないことなのよ」

「ちょっと、かがり……スマホで連絡を取れば」

 

ぐいぐいと手をしっかりと握られてしまいつつ連れて行かれる。

 

……買い物のときみたいに。

 

やっぱり変わってないじゃないか……いや、あれよりは足元が悪くってかがり自身も下駄を履いているから多少はゆっくりとではあるけど、でもやっぱりこの子の行動原理はなにひとつ。

 

「さ、こっちよ? ここからは足元に気をつけて? 砂利と石畳で歩きにくいから転んだら痛いわよ?」

「その感じ、もしかして転んだのか?」

「……………………」

 

転んだらしい……厚底と着付けで歩きにくいのに、いつもの調子だったんだろう。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

参拝するためにできている行列。

 

その長い人ごみにずっと根気強く並び続け、自身の番が近くなってきたと思ったらさも用事があるかのようなフリをして列から離れ、そのまま……並ぶと30、40分にもなる列の最後尾へ回るという奇妙なことをしているスーツ姿。

 

同じようなことをしているのが4、5人……男性だけではなく女性も、その他にも境内のそこここで話し込んでいるフリをしているのが年齢格好を問わず、散っている。

 

「もう隠す必要がなくなったから」と、最近は――この冬になってから、具体的にはクリスマスイヴの前日からそのまま出して歩いている、けれども今日はしっかりとフードにしまってある、その長い銀色の髪の毛を持っている幼い少女を――その子だけを見るために。

 

監視するために。

 

その少女……幼女と、その幼女の手を引いている少女が一緒に入っていった建物を……これも写真を撮るフリをして、特殊なカメラを備えたタブレットのそれやカメラとで引き戸が閉まるのまでを確認し、そっと連絡を取り合う。

 

彼らのしぐさはあまりにも自然で、服装も、あるいは話し込む組み合わせも、そこに並んでいる誰にも不審になど思われない、ごく普通の、自分たちと同じような参拝客だとしか見えないもの。

 

若者の連れ合いだったり夫婦だったりあるいは1人だったりと、なんの共通点もないように見えるようにしているスーツ姿たち。

 

ぱっと見れば「きっと地元の会社の人たちなんだろう……こんな日まで働いているかわいそうな」と思われる程度の彼らの半分ほどは外国の風貌だ。

 

けれど彼らの視線は一般人には注がれず、ちらちらとではあるがしっかりとその幼女と友人が入っていった建物に注がれており……そして常に境内の内外へも同時に気を配っている。

 

何かがあればいつでも上着の内側と腰に用意してある鈍器……あるいは刃物、さらには銃器を使えるようにしておきながら。

 

「――――――――、――――――――――――……」

 

そして銀髪幼女たちが建物に入ってもその中を……熱・音波探知を使った装置でどこへ移動しているのかをお互いがたびたびに受けている、知り合いからの電話を装った会話で……異国の言語で。

 

皆が持っているタブレット端末上で、それは逐一共有されていた。

 

……内部に事前に設置してある音源まで、しっかりと。

 

それはその幼女の服に付けられていて――――――――。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「さぁ、こちらよ? 響ちゃん、座って座って?」

 

有無を言わせずに僕が上がらされたのは昔懐かしい感じの和室だった。

こんなのはもはや旅行先とかで観光用になっている昔の家屋くらいしか見ない気がする。

 

それも、ただ「お邪魔します」とだけ口にしたかがりに引きずられつつ、なすすべもなくただ導かれて到着しただけで何が起きてるのか僕には分かっていない。

 

かがりも「良いから良いから」ってだけだし……何が良いんだろう。

 

こういうのって神社の神主っていうんだっけ?

そういう人たちが管理していたり住んでいたりするわけだからきちんとその人たちに報告しないといけないんじゃ……いくらなんでも不法侵入はちょっと。

 

みんなの感じを見る限りそれは取っている……もしかしたら具合が悪くなった人のために解放されてるのかも……とは思うけど、でも不安だ。

 

レモンさんはともかくメロンさんはメロンさんだし。

 

どうして今ここにいるのがこの子なんだろう。

レモンさんだったら少なくとも安心感はあったはずなのに。

 

僕と一緒に居るのはよりにもよってくるんくるんメロンさんだからなぁ……。

 

「……かがり?」

「どうしたの響ちゃん? あぁ、みんなは多分すぐに!」

 

「そうではなくて」

 

ダメだ。

この子は好きにさせちゃ行けないタイプの子なんだって知っているじゃないか。

 

「本当に家主に断りもなく勝手に上がっていいのか? だってここは神社の本殿と繋がっているようだし、つまりは事務所とかここのご家族が住んだりしているところだろう? 入り口にも特に何も書いていなかったし、だから」

「いいのっ。 もうちょっとでそのワケがわかるからっ」

 

「…………」

 

……かがりがこう言うときは大抵何かを隠している。

にやにやしているのが顔に出ているし頻繁にくるんをくるんくるんしているし。

 

なんかむかつくから見ないでおこう。

 

けどなんだろ。

さっき言っていた「許可はもらってあるっていう」あれのこと?

 

けどここまで誰にも会わなかったし、かと言って。

 

「………………………………」

 

……まぁ、今日はもこもこしたって寒いんだ。

 

クリスマスの時みたいに雪こそ降ってはいないけど、代わりに切りつけるような風が恐ろしく寒くて痛いんだ。

 

だからこうして温かいところで……屋内で目の前にはストーブがあってこたつまであってっていう、なんだか生活臭あふれるこの空間で座っていられるっていうのはたしかに楽でもあるし、今はここでいいや。

 

「ほら、響ちゃんも早く!」

 

目の前のくるんさんはくるんくるんしていて、こたつを囲むようにしている座椅子のひとつに座って適当なことを言いながらくるんっとしている。

 

とても不安だ。

この子が安心しきっているのがまた、余計に僕を心配にさせる。

 

心配だからこうして……怒られたらすぐに出られるようにってコートも着たままで立ちっぱなしで悩んでいるわけなのにこの子はどうしてこうなんだ……。

 

「……」

 

ま、でもさすがに無断ってのは無いだろう。

もう上がっちゃった以上は座ってくつろぐくらいしても変わらない気がしてきた。

 

でも……無いよね?

 

無いよね?

 

この歳になって「人の家に勝手に入っちゃメッでしょ!」って大人から叱られたくないんだけども……。

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