【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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40話 「男の子」/「女の子」 1/7

☆☆☆

 

 

平地から吹き付ける風で、彼女の外套となびく髪とが音を立てている。

 

しかしこの程度は寒い内にも入らないと見え、彼女はただただ電波越しに視ている。

聞いている。

 

無線と手元のタブレットの表示からその幼女の動き……しばらく動いてはいないが、それが手に取るようにわかるようになっている。

 

顔の片面を覆う化粧で隠してある痣を無意識で撫でつつ、コートの下にはまるで舞踏会にでも出るような場違いな服装をしている彼女は、ただただその表示と音だけを意識して。

 

ときどき下の境内を眺めて目を休めながら少々の寒さも気にせずに立ったまま、ただ待っている。

 

もしもの場合に備えて。

 

誰もいないかのように静まっていたその場に、がさ、と茂みからの音が聞こえ、彼女はとっさに銃を取り出して構える。

 

「………………………………――――」

「……―――――、―――…………」

 

……出てきた人物を認めるとそれを収めて問いかける。

 

「………………………………、――――、――――――――?」

「……、――――――――……」

 

答えたのは先の兵士たちよりもいくぶん軽装で、けれどもどう見ても平和なこの国で着るべきものではない服を身につけており、そのあちこちが切り傷や熱で解けたような跡などでぼろぼろになっているものを着た男。

 

彼女と同じく初老にさしかかった、この国ではめったに見ない……あの幼女と同じように、けれどももっと薄い銀色の髪を持ち薄い色の目をしていて体格のいい眼帯をしていた男だった。

 

「していた」というのはいつも着けていたから。

 

ある幼女からのアドバイスを元に、最近は子供受けが比較的よくなったそれを今は外しているから。

 

だがその奥の目は……光っていた。

月明かりはない。

ただその目が、目そのものが星のように光っていた。

 

その輝きは眼帯をつけなおしてしばらくして発光するのを止めたらしい。

 

手元には杖ではなく刃物が……つい今し方まで小枝や草を断ち切るために使い、その前には「障害物」に対して使用していたまっすぐで鋭利な刃物があった。

 

利き手には長細いその刃物を持ちもう片手にはその鞘を持っていて、つまりは仕込み杖というもので。

 

彼は体についた枝や葉を払いつつ、きん、とただの杖に戻し、彼女の元へと近づいて行き……隣に立ち、とん、と先を下ろして体重を預け下を見下ろした。

 

「――――――――――――――――………………。 ――――、――――…………」

 

いつものようにぽつりとつぶやくような、しかし低く深い声のせいでそれで充分な語り方で。

 

「……っはは。 ……――――――――――――――――……」

 

くだらない冗談とでもいうように笑い未満の笑いをする彼女。

 

それまでずっと手元か眼下から目を離さなかった彼女が、そのとき初めて大きなため息と共に眉間を押さえる。

手渡されたタブレットを受け取った彼もまた画面に集中し、耳に入れてある機器から聞こえてくるふたつの会話を聞き始めた。

 

「――――――――――――――――………………」

 

今までは表情を変えることもしなかった彼女がそのとき初めて顔をしかめ、その口からは落ち込んだような声が……切るような冬の息吹に吸い込まれていった。

 

 

☆☆☆

 

 

なんかさっき変だったんだよなぁ……やっぱ不整脈?

 

25越えるとだんだんそういうの出て来るって言うし……あ、でも今の僕は子供なんだよなぁ。

 

うーん。

 

これ以上みんなに注目されたくもないから動かずに体の感覚を探るけど……なにもないよなぁ。

なんだか変な感覚……なにかが僕に衝突したような感覚があったんだけど気のせいなんだろうか。

 

「にしても将来の夢かー。 大きく出たねぇ響」

 

おっと、そういえばみんなの視線が僕に集まっていたんだった……さすがに考えごとしちゃ悪いな。

 

「そうかな。 新年の話題としてはそこまで変わったものでもないと思うけど」

「いや――……ま、こういうときだからちょいハズくてもノリで言えるかぁ」

 

甘酒のせいっていうよりは深夜のテンションなんだろう、みんなと同じようにほほに赤みが出ているゆりかが反応してきた。

もちろん片手にはゲーム機。

 

……会話をしながらゲームをしながらテレビを聞きながらっていう器用な子だ。

 

「でも響が話題を提供だなんて珍しー。 ……ね、甘酒ってホントにアルコール入ってないんだよね……? りさりんはお神酒とか呑んじゃったんだろーけど響は……」

 

「ほんの微量は入っているとのことだけど……それはそうとして、ゆりか、それはどういう意味なのか」

「いんやぁ特に意味はないよ? たぶん」

 

今は呑んでないし僕だって呑みたいよ。

でも呑めないんだ……持って来てないから。

 

「んじゃせっかくだし最初に反応した私から言ってみよっか!」

「ゆりかからでいいのか?」

 

「だってぇー、せっかくだから響のはラストに聞いてみたいし。 ねぇ?」

「え、ええ……」

 

みんなが頷いている……女の子同士の独特の感性で僕のは後回しにされるらしい。

 

「私はねぇ……ほれ、悲しいことにたぶん何年経ってもたいしておっきくなれないでしょうこの見た目。 だってお母さんもだからねぇ……このロリロリしい見た目を活かして今流行りの実況者とか、あるいはプロのゲーマー! なぁに、世の中の男の半分はロリコンなのだ、だからこそこの私の出番なのだよ!!」

 

「あっはは、ゆりかが男に! そんなちんちくりんじゃ誰も寄ってこないわよ、ブラだって」

「あ、ちょいりさりんや」

「むむー!!」

 

お口チャックされたりさりんのことは……気がつかなかったことにしよう。

 

「……っていうのは無理そうなので、おとなしくサブカル関係のお仕事したいなっていうふわっふわな感じよ」

 

ぐいっと甘酒をひとあおりして……酔いはできないのに、けどそうしてゲーム機をかたんと置いておちゃらけた感じがすっと引く。

 

「……マジメな話ね? ちょっとは考えたし調べたしやる気だったのよ? けどさ、あーいう人気商売って個人の人気っていうかビジュアルとキャラクターってやつ以外にも資本とか人員っていうバックアップが不可欠なの。 世知辛い話だけど結局はコネと組織力ってことで私は言われたとおりにやるだけな会社員とおんなじことになるらしいのよ。 知ってる? あー言うのって始めて1年以内にほとんど止めちゃうの。 病んだりストーキングされたり囲われたりして」

 

……この子、本当に中学生?

 

「なにより一部のトップ層以外は短命な宿命だしなんか変なのがついてきたら精神病みそーだし……飽きられたらそこまでなのだ。 ブームってヤツは読めないもんだからねぇ……あと顔出ししたら間違いなく面倒だし」

 

「ぷはっ……そうねぇ、いくら脳天気なあんたでもたしかに大変そうかもー」

「りさりんの評価がいきなり辛辣ぅ!」

「こくこく……ふぅ。 今のはそこまで考えてたのねって褒めたのよ?」

 

顔は真っ赤なまんまだけどちょっと落ち着いたらしいりさりんのろれつが戻って来た。

 

「いやりさりん今私のこと、のーてんきって」

「そーだったっけ? でもゆりかってふたりいるから問題ないわよね……あはははは、ゆりかがふたりって! あっはははは!!! のーてんきがふたつよふたつ!! あー苦し」

 

「そこで唐突に普通のテンションに戻らないでよ……でもだーめだこりゃ。 おっかしいなぁ、お水ならたっくさんこれでもかって飲ませたのに。 ……りさりんや、ちなみに響は何人いるのかね?」

 

笑い初めてまた顔が……さっきよりも真っ赤になっている巫女りん。

 

……これ、ほんとうに大丈夫?

りさりん笑い上戸ってやつじゃないの?

 

「うーん……重なってるぅ……とりあえず5人くらい! もっと増えてもいいわね!!」

 

「5人とな! みんな聞いたかね! オリジナルの響自身をここにひとり残しておいて、他4人をひとりずつ配布すればまるっと収まるじゃない!!! みんな、ひびきんズを好きにできるよ!!!!」

 

「ゆりかも落ち着こうか」

「やん、私は素面よ?」

 

ゆりかは甘酒しか飲んでいないはず……だよな?

いや、ときどき席を外しているし、ひょっとしたら巫女りんのお家の人からこっそり?

 

これが外に漏れたらまずいかも……未成年飲酒がふたりだし。

いや、こっそりな僕を含めたら3人か?

 

来る前に景気づけにってほんの軽ーくだったから「はーって吐いてみてー?」ってやられたらバレちゃう。

 

「じょーだんよじょーだん。 でも私には響はやっぱひとりしか見えないなぁ。 ……ねね、響って分裂したりしない?」

「僕を何だと思っているんだ君は」

「そうよ、修行不足よゆりか! ちゃんと5人いるもの、もっと鍛えなさい!」

「了解でありますっ! そしていつかマイ響を手に入れるのだ!」

 

「……さっきからよく話の流れがわからないの……分かる? さよちゃん」

「えっと、その……かがりさん。 それはですね……」

 

どうも静かだったかがりは途中から着いて来られなくなっていたらしく、今までの流れをわかりやすいように説明し出すさよと顔をつきあわせている。

 

ハテナしか浮かんでいないかがりに対して懇切丁寧に、はじめから説明をしているさよ。

 

がんばれ。

がんばって。

 

かがりへの説明はかなり根気が要るから……主導権を握れないとすーぐに話題が逸れていくっていう意味合いで。

 

理解力自体はあるんだけどなぁ……なにせくるんくるんくるんメロンなんだ、何かを思いついたら手遅れなんだ。

 

「……やっば、ほんとにぽわぽわしてきてる。 ……神社のだから手作りなの? この甘酒。 アルコール抜けきってないんじゃ……でももう1杯!」

 

なるほど。

 

あ、いや、お酒のことじゃなくてさっきのゆりかの話のこと。

 

好きなことを仕事にするっていうのはとっても大変だっていうけど、そうやってきちんと考えていろいろと調べて現実を見ながらだったならいいのかもって。

 

そんな感じで探していくのなら、きっとなにかが見つかるんだろう。

 

……そして僕も巫女りんとおんなじ感想だったのは黙っておこう。

だって、その……普段のお調子っぷり、いや、子供っぷりが……。

 

「響? なんか変なこと考えてない??」

「いや、なにも?」

 

変なことは考えていないからセーフ。

 

「そー? あやしいなぁ」

「…………」

 

ゆりかがやけに人の機微に敏感なのはいつもどおりだな。

 

「……ま、話を戻すとしまして。 ……今はまだふわっとしてるけどさ、私、ゲームでもアニメでも小説でも映画でもドラマでも……っていっぱい好きなものあるからさ、その中のどれかで活躍じゃなくても貢献とかできそうならどれでもいいのよ。 あえてかたくるしく言ってみるなら出版とか制作とか? 作り手っていうのでも才能さえあればいいかなーって。 まーだぜんぜん分からないけど」

 

「そうか。 なれるといいね。 ゆりかの好きなことだもんな、応援している」

「ぅへへぇー」

 

僕みたいに手遅れになる前に。

できたら学生のうちからしたいことを見つけておくといいねって。

 

僕も多分やりたいことがないから就活とかしなかったんだろうし……きっと僕みたいな人もそれなりにいるんだろうから。

 

「んぁ、じゃかがりんにバトンタッチぃ!」

「……え? 私?」

 

少しだけ赤みが増したほっぺたを隠すようにしつつ、照れ隠しからか唐突にかがりのご指名。

 

さよから説明を受けていて、でも思っていたとおりに全然わかっていなさそうなくるんさんへ話題を投げた。

 

「えっと、なんの話でしたっけ?」

「……将来の夢だよ、かがりさんや」

「? どうしてさん付けになったの? ゆりかちゃん」

「も少しメモリ増設したほうが、あ、いやなんでもない、ささっ、どうぞどうぞ」

 

違うんだゆりか……メモリ、短期記憶能力はちゃんとあるんだ。

でもそれがさっき観た番組の何かだったり雑誌とかマンガの目に着いたのをずっと反芻していて駄目なだけなんだ。

 

「めもり? ……えっと、そうねぇ……ちゃんと考えたことはなかったけど、私ならきれいなお洋服とかが好きだから、そうなると服飾っていうことになるのかしら?」

 

うん、そうだろうね。

君は着飾るのも好きだけど着せ替えるのも好きだもんね……店員さんと盛り上がってたもんね……その傍で人形してた僕は良ーく知ってるよ。

 

「ひとことに服飾と言ってもデザイナーさんだったり実際に作る方だったり、さらに進んでみるのなら特定のデザインの専門学校に通ったり……好きなデザインを作る人が見つかれば、その方に弟子入りしたりすることも考えられそうね」

 

「……かがり? そこにおわしますはかがりさんですか?」

「やぁねえゆりかちゃん、私は私よ!」

「んなバカな」

 

ゆりかが目と口を開けっ放しにしている。

その場のみんな……僕を含めた、かがりを除いたみんながそうしている。

 

だってくるんさんがくるんさんらしからぬことを、深く考えもせずにさらっと言いのけたんだ。

 

さっきまでのゆりかの話を聞いていただけのこの子が。

 

……いやいや、この子も一応は中学2年なんだ、一応は……それくらいの知識と思考は持ち合わせているんだ。

 

ただそれをいつもはぜーんぶ、目の前の好きなことだけに振り分けちゃっているだけで。

 

まじめにやればできるっていうのは夏休みでよーくわかったしな……となるとこの子には誰か面倒見のいいスパルタなお目付役が必須ということになるわけだけど。

 

……そうか、弟子入り。

 

ああ言う世界は厳しいって言うからきっと師匠とかがいれば……!

 

きっとそのうちに見つかるはず……それもまた明日の朝に祈ってあげよう。

お賽銭を奮発しておけば願いは届くかもしれないんだしな。

 

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