【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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40話 「男の子」/「女の子」 4/7

人生経験が無いと顔つきが幼いって言うけど僕は心まで幼かったらしい。

 

だって良い大人が中学生に励まされちゃったんだから……それも、あのかがりにまで。

 

まだまだ子供だと思っていて……実際にそうなんだけど、でもあのかがりだって「気持ちが大切だ」って心を込めて言ってくれている。

 

……こういうのって子供の方が分かるのかもね。

 

ムダに長い時間をすごしてきたからこそ知識としていろんなことを知りすぎていて中途半端な経験ばっかりが貯まっちゃって、逆にそれが単純なのにすっごくめんどくさい思考回路にしていたのかも。

 

確かに今言われたような言葉は青臭いし子供っぽいし「現実は違うんだ」とは思う。

 

そんなの君たちがまだ子供だから言えるんだって。

 

でもその一方でやっぱり……生きるっていうことは、何かをするってのは情熱とか熱意とかそういったものだっていうのもいろんな本で知っているからこそ納得もできる。

 

……そうだよね。

 

僕はきっと頭でっかちな子供なんだ。

 

だから中途半端な知識と経験でめんどくさく考えちゃってダメにしちゃう。

うん、分かってことなんだ。

 

でもまあ、最近いろいろと……魔法さんがあまりに激しかったもんだから辛くて疲れていたところもあったってのがはっきり自覚できる。

 

……僕の体感的には世界が極端に変わって1週間だもんな、そりゃあまだ心の整理がついていないのも当然だし体も弱ったままなんだから気持ちも弱くなってたんだろう。

 

ちょっと具合悪いときとかに見る夢とかはやなものだったりするし……起きてすぐ忘れるけど。

 

それにしても……階段の件で知ったことではあるけど、改めて僕にとってこの子たちの存在は大きいものらしい。

 

歳はずいぶん離れているし性別も違うけど、でも友達ってこういうものなんだなってちょっと嬉しくなったりもする。

 

――そんなことを、どや顔っていうのをしながら返事待ちの、やっぱり体は育っていても中身はまだまだなかがりとみんなに向けて応える。

 

「……僕から言い出した話だったのにね。 なんだか励まされているな……みんな、ありがとう。 その気持ちが嬉しいよ」

 

前の僕だったら恥ずかしくて言わなかっただろう言葉もがんばって言っておく。

次がいつになるか分からないし、次がないかもしれないんだから。

 

「はわぁっ!?」

 

せっかく気持ちに浸っていた僕の意識がゆりかのすっとんきょうな声で引き戻された。

 

……この子もまたくるんさんみたいに変なところあるからなぁ……なんというか予測できないっていう意味で。

 

そのへん常識人の範疇の巫女りんと巫女りさとはちがう気がする。

つまりはまともな巫女ペアと変な着物ペアなんだ。

 

「ごめんひびき! 私、みんなが……なんか恥ずかしいけどでもすっごくいいこと言ってたのに、私だけとっさに思い浮かばなくってっっ」

「ああ……いや別に、気にはしていないよ」

 

そう言えばゆりかが話す前に僕が答えちゃった形になるのか……あとでご機嫌とらないと。

 

にじり寄って来るゆりか……あ、そういう姿勢を取ると後ろの髪の毛も肩まで乗っかるんだ、夏から比べるとだいぶ伸びているけど学校は……って違う違う、今はぱっつんの下を見ていないとまた意識が変な方に行っちゃうじゃないか。

 

「あ――……私も大したことは、ね。 さよさんに釣られる感じになったけど、元々は『やりたいことがなければここを継ぐの』って言っただけなんだから」

「……わ、私は、その……同じ、闘病の、病人として、つい……」

 

2人とも「なんか恥ずかしいけど」ってのに反応しちゃってる……まぁそうだよね、漫画とかで出てくるこっぱずかしい場面だもんね、今のって……。

 

「ゆりかちゃん、ムリして言わなくてもいいのよ? 言いたいときに言いたいことが浮かんだときに言えば」

 

そして反応しないで平然とみかんを剥き始めているくるんさん。

 

「……なんかかがりんがマトモなこと言ってる……」

「ゆりかちゃん? それどう言う意味かしら?」

 

「そんなことよりなるほどぉ!!」

 

かがりを遮るように、小さい全身を使ってゆりかが跳ね上がる。

 

……やっぱりここまでしないとくるんさんを遮れないのか。

でも僕の体力と筋力じゃできなさそう。

 

「なるほどなるほど、これが青春か! ならやっぱ私も考えねば響! 待ってて、今なんか掘り起こすから! ノートに書いちゃったいろんなのとか!!」

 

今の子たちでも黒歴史とかノートに書くんだろうか。

 

「だからゆりかちゃん、今のそれはどういう」

「ちょい待ちかがりん。 私は今、大切ななにかを探しているのだ」

「そうなの? 大切なら仕方ないわね?」

 

「ん――……掘り起こせぬぅ。 そのうちいい感じの出るだろーから思いついたらでいいよね。 私だけなんにもなくてごめんね響?」

 

「いやだから別にムリをして言ってもらう必要は……」

「でも、それにしてもさーひびきんや?」

 

ひとりひとりの顔を見回して……最後に僕の顔をじっと見るゆりか。

 

「……………………………………」

 

「?」

 

……ぱっつんの下の眉がいやーな形になっている。

なんだか非常に不快な笑顔をしている。

 

なんというか……にまにま?

によによ?

 

口元もなんだか小憎たらしい感じになっているし……この子の好きないたずらっぽい顔つき。

 

さっきまでの雰囲気がたったのそれだけで吹き飛んでるからいいんだけど、でもなんだかいらっとする感じの……あー、これを毎日やられたらりさりんみたいに怒りっぽくもなるか。

 

でもなんだろう、また変なことを思いついたのか?

 

「実はさ? 私たちってば……自慢じゃないけど自慢になっちゃうけどね? 学年でも学校でもわりと人気なのだよ?」

 

それって自分から言うもの?

しかも今ここで……場の空気に酔ったままだったりする?

 

「ねえ響? この美少女軍団を見てなんとも思わないのかね?」

 

普段こういう話題をしてこなかっただけになんか新鮮……だけどそうか、褒めてほしいのか。

 

そういえばゆりかだけまだだったしな。

かといって、この流れ、みんなまとめてってことでいいんだろう。

 

それなら適当に褒めてあげよう。

 

普段からかがりに言ってあげているみたいなのを言えば良いんだよね。

 

「確かにみんなかわいくて綺麗だね」

「ひゃっ!?」

 

え?

こんなのでいいの?

 

ゆりかって案外ちょろくない?

 

「今でも美しいのにまだ中学生なんだ、将来有望と言うものだと思うよ」

「ちょ、ちょっと響さんっ、待っ」

 

りさりんもまた顔が赤くなってきてる。

 

「みんな髪の毛や肌にも気を配っているみたいだし、服装だって……ほとんど私服しか見たことがないからかもしれないけど、でもいつも似合った服装をしているって感じるし」

 

「女の子だからよ!」

 

かがりは変わらない。

むしろ変わったら困る。

 

「今日の服装……言い忘れていたけれど、ゆりかのその着物も君の雰囲気にぴったりだ」

「う、うぅ――……」

 

なによりも僕に合わない感じのうるさい系とかだらしない系の子たちじゃないっていうのが大きいからね。

 

「……きれい…………はぅ」

「ちょっとさよちゃん大丈夫!?」

 

さよは……うん、きっと慣れてないよね、こういうの……ごめんね?

 

「響ちゃんってば、私たちのことについては今みたいに聞かないと言ってくれないのよ? 会うたびに聞いた方が良いわ、ゆりかちゃん」

 

む、要らないアドバイスが。

 

「ぅえへへ……って、ちょいちょい君たち。 今は私と響の会話なの、しゃらっぷ!」

 

すぐに戻ってきたゆりかがまたいたずらな口調に……こういうときは変なこと言い出すから苦手なんだけどなぁ……。

 

「……で、あ――……ま、響だもんね、そーやってさらって言えるって知ってる知ってる。 うん、知ってた。 そもそも響自身の基準がアレだからしょーがないことなんだけど……だってそのフェイスだもんねぇ。 あとその髪の毛どーなってんのほんとに。 ワカメか? ワカメなのか?? 透けるワカメなのかぁ?」

 

なんかまくしたたているゆりかの様子が何か変?

 

「ともかくわれわれ人気のびしょーじょ4人を集めて囲まれてさ? こんなすぐそばで侍らせてさ? ほら私とは密着してて他のみんなとも足でくっついてるっていうもはやすんごいことになってる響じゃん?」

 

「ゆりか、君に関しては君自身がくっついてきているんだけど?」

「こまけーこたーいーのよ」

 

じゃあどうしろと……これが女の子のめんどくさい感じってやつ?

でもゆりかってそういうのとは無縁だって気がしてたんだけどなぁ。

 

「んでさ? おおみそかに年越しでなんかうれし恥ずかし青春してさ? ……オールナイトになりそうで、つまりは『夜を共に』してるのよ……あ、深い意味じゃなくってさ?」

 

振り袖をふりふりしながらあいかわらずわけのわからないことを言い続ける。

 

「んで病気が……前みたく収まったり良くなったりしたらさ? お泊まりなんて計画しても誰からも嫌がられるどころか楽しみにされてるなんてさ? ――いやーホント、これがうっかり学校の誰かに知られでもしたらクラスどころか学校全体の男子みんなのテキだよねぇ。 ねぇ? だってさ」

 

「びしっ!」っとわざわざ口に出して、どっかで見たようなポーズをしながらひと呼吸溜めて、すうっと息を吸うゆりか。

 

「――はたから見たらこれ、響っていうショタ系将来有望超中性的銀髪……えっとまだまだあるけど、ともかくそんな属性モリモリ系美『男子』響『くん』が」

 

――――――え。

 

「ちょっぴしちっこいけどそれはまぁ今後に期待するとしてさ。 で、そんな響がびしょーじょを4人もはべらしてるとか囲ってるとか、そーとしか言いようがない状況じゃん? ねぇ? いやー、現実はアニメを超えるねぇ……あ、いや創作でもそんなにはないよ、こんなシチュ……いやあるか。 でもま、現実味のあるシチュって意味ではやっぱなかなかないと思うよ? ね? そー思わん? 響?」

 

ぶわっと体じゅうの毛穴が開く感覚と同時になるべく周囲に変化が無いかって、普段は全然機能していない僕の五感を総動員。

 

――ゆりかが僕のことを……男って言った。

 

魔法さんが何かをしでかす可能性に。

 

ゆりかは僕のこと、男って認識している。

認識できている。

 

なんで?

どうして?

 

だってこれまでの人たちは誰ひとり僕のことを男だとは思わず女の子だって、幼女だって思っていて……僕から何かしなければこんな危険なことにはならなかったのに。

 

そんな僕をよそに、ゆりかは続ける。

 

「いやー、ひびきんははたしてこの中で誰を選ぶのかにゃー、私とっても気になりますにゃー? それともまとめて行っちゃう……ってのは現実っていう制約上なかなか難しいと思いますが。 まー、内縁のなんちゃらっていうのもあるんだしみんなの同意があればあるいは、ねぇ? ……そのへんどーよ? まずはりさりん、コメントをどぞ」

 

待って……僕が選ぶ?

 

え?

 

どうしてそんな話になるの?

 

だって僕が男だってだけで……あ、そっか。

 

僕が男だって思っているのなら……この子たちは女の子で僕は男。

中学生で男と女が仲良くしていれば当然にはやし立てられる状況なんだ。

 

「ゆりか……あんたこそ甘酒で酔っ払ってるんじゃないの?」

「まだまだ顔が真っ赤なりさりんには言われたくないにゃー?」

 

「あんただって今は真っ赤よ?」

「またまたー言いたくないからって」

 

「ねぇ、さよさん?」

「えっと、……はい……」

 

「……えマジ? 本気で? うわホントほっぺた熱い」

「あんた自覚してなかったの?」

「やだぁ、恥ずかしっ! 深夜のテンションってこわいっ。 ……ほっぺコップで冷やしてるから、そのあいだにりさりん、コメントよろ」

 

……ゆりかが照れているって言うことは本当に僕のことを。

 

僕のことを……おかしくなったりしない状態で男だって認識できていて、それは他のみんなも。

 

「ま、いいけどね。 恥ずかしいついでだし……で、まー私も気にはなっていたのよね。 響さんが誰を選ぶのかな、それとも選ばないのかなって。 いやまぁその、私だって年頃だし? ……あ、響さんが誰かさんみたいな恋愛脳とはかけ離れてるっていうのは知ってるから今ここで言えっていうのは酷かもだけど……いい機会だし知りたいかって言えば知りたいかも。 まー、きっとすぐに『そんな気は誰にも持っていないよ』って言うんでしょうけど、ただの興味本位で、ね。 そう、仮定の話で、もし恋愛するとしたら誰とが良いのかってっていう話よねー」

 

「なんだかんだりさりんも興味津々なお年頃♡」

「女子だから当然でしょ?」

 

……警戒してはいるけど、ふたりともおかしくなる様子はない。

僕自身に何かが起きる気配も、ない。

 

「ね? 響さんにとってはこの中で誰がいちばん魅力的なのかしらね? 女の子だらけのこの空間でたったひとりの男の子の響さん? いえ……呼び方ずっと迷ってたんだけどさ、響さん的には『響くん』って呼んだ方がいいのかな?」

 

赤い顔をした2人の少女が僕の目を見つめてくる。

 

でも僕にはそれを受け止める余裕はないんだ。

 

……どうして?

 

なんでこの子たちが僕のことを男だって認識できている?

だってそうさせないための魔法さんのいつものなんじゃないの?

 

考えても考えても答えは出なくって、場の空気ってやつは女の子の味方をしていく。

 

――この場で男だってはっきり言われて意識されるようになった僕だけを残して。


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