【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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43話 「魔法」と「変異」と、そして 1/6

よく考えたらちょっとしたことで「ものすごい恩だからぜひぜひ返させてほしい」って付きまとわれるのって事件に巻き込まれるときの鉄板だよね。

 

何人もの大人……それも明らかに外人で体格が良すぎる人たちに囲まれるようにしてドナドナされている僕は、そんなことを今さらながらに思いながら絶望していた。

 

けどもいざ建物に入ったら拍子抜け。

 

ここ、本当にただの病院じゃん……なんか考えすぎた?

 

よく考えたら別に強制じゃ無いもんな。

 

おじいさん……じゃなくておじさんもおばさんも、別に僕の手を掴んだり他の人たちが僕を連行されるエイリアンみたいにはしないでそばを歩いているだけだし。

 

何かこの人たちが見た目からして怖いし強引だから怖かったけど、その辺は故郷の国では普通なのかもしれない。

 

そう思いながらリノリウムって言うんだっけ、独特な廊下を歩く僕たち。

そう思わないと怖くってしょうがないってのもある。

 

……暗い廊下の先までを眺めるついでにそっと見上げた先の2人を見て、改めて思う。

 

夏休み明け以来に会ってもやっぱり怖いっていう印象のふたり。

頬のケガがあるおばさんと眼帯のおじさん。

 

おばさんも今はお化粧と髪の毛で隠しているみたいだし、おじさんの眼帯もケガしたみたいな白いのになっていて威圧感が薄れている。

 

少し、ほんの少しだけはぱっと見の威容が軽減されている感じ。

 

けどあいかわらずに大きいよなぁふたりとも……2メートルは超えてるしなぁ。

 

こつこつこつこつとひたすら歩くばかりなのは怖いから「怒らないよね」って信じつつ沈黙を破ってみる。

 

「……あの。 病院、ですよね? ここ。 あの、僕は」

「快諾してくれて、そしてこうして着いて来てくれて助かるよ」

 

いえ、ただただあなたたちがとっても怖いから抵抗しないだけなんです。

 

ほら、人質とかにされたときはおとなしく言うこと聞くっていうあれなんです。

 

とは言えないひ弱な僕。

 

「あぁ、疲れてきたら言ってくれ。 車椅子にでも乗せてあげよう」

 

いえ、さっさと僕帰りたいんです。

でもあなたたちが怖すぎて言い出せないんです。

 

「それでだな。 ここは何の変哲もない、本当に何もないただの病院というものだよ。 君の端末で検索すれば名前も出て来るはずだ。 ほら、そこの案内板を見てもらえばわかると思うが」

 

と、ちょっと先の壁に掛かっている周辺地図を杖で指してくれるおじいさん。

 

……なるほどね。

 

大雑把にどの辺かってのは分かった。

ちょっと安心する僕。

 

「うむ。 故あって遠回りしてきたから距離に比してかなり遠く感じただろうが、実際には先ほどのお宅からはさほど離れてはいないのだよ」

「そうですか」

 

なんでそんなことしたんですか。

それじゃまるで警察を撒くみたいな感じじゃないですか。

 

悪いことしてるんですか?

 

なんて言えない。

 

「規模も……まぁ中の上という程度だな。 評判も悪くはなく、そう……大きな施術もできる程度の、な」

 

僕、内臓とか取られちゃうんだろうか。

 

映画とか漫画とかじゃ病院って怖いところだよね。

どうしても怖いイメージがぐるぐるしちゃうよね……。

 

明かりがほとんどついていなくって、ついていても薄暗い緑だったり赤だったりして。

どんな音でもいちいち不気味に反響する病院の廊下っていう長細いところ。

 

こうしていると、なんとなくで押されて来てしまった……あのときもそうだった、僕とは縁がないから慣れていなくって不安で……叫び声が反響していた病室を思い出させる。

 

父さんと母さんのときを思い出させる、あの空間。

大きな事故の後で傷ついた人とか動かなくなった人の家族で大変なことになっていたあの空間。

 

「……大丈夫かね?」

「あ、はい」

 

大丈夫じゃないけど怒らせないように。

 

「不安なことがあれば何でも言ってほしい」

 

……どうしよ。

 

言う?

言うの?

 

でも怒らせたら……いや、ここまで来ちゃったらどっちにしろ何かされるならもう手遅れだ。

 

なら意思表示しておこう。

今のところ怖いだけだもんな、この人たち。

 

「……ここまで。 騒ぎにならないようにしていただけたのには感謝しています」

「なに、たったこれだけのことだ。 気にするなと」

「でも」

 

じっと……見下ろされる感じになっているけどそれはもうどうしようもない。

 

上から視線が来るのって怖い。

それは諦めるとして、でも言わないと。

 

じゃないと普段の僕みたいに流されちゃうだけだから。

 

「僕があのときにお願いしたのは……友人のところから、なにかがあったときになるべく騒ぎにならないように穏便に助け出してもらうことだけで。 あれだけのお金とかたくさんの人たちとかまでは……あと、ここ。 病院まで送ってもらうことまでは……その、後で行きますから」

 

しどろもどろになって来ちゃったけども言いたいことを言ってみた。

 

「たしかにそうだね。 そこまでしか言われておらん」

「うむ、そうらしいな」

 

でも、2人は「あ、そう……」くらいの反応。

 

僕はちょっとめげそうになる。

 

「……そうなんです。 病院についてはあの血の量を見たら仕方ないかもしれませんけど」

 

訳アリってことで救急車に押し込まれなくて安心してるけど、でも。

 

「……あんな大金は、やっぱりいくらなんでも僕が困ります。 三が日が終わったらすぐにお返ししたいので口座とか」

 

「ところで響くん」

「あ、はい」

「ちょっとこちらへ来てくれないかね?」

「え? あ、はい」

 

なんか遮られて……怒ってる感じじゃないからほっとするけど、僕の中でふとした疑問が浮かぶ。

 

あれ?

そういえば僕、名前とかこの人たちに名乗ったっけ?

 

あとあのとき僕女の子だって言った気がするんだけど……最近の記憶と混じったかな。

 

それから2人はあんまり答えてくれなくなっちゃって、けど、おばさんが先導して僕が後ろに、さらにその後ろにおじさんっていう囲まれた感じがしなくもない状態のまま、おじさんの杖がカツンカツンと廊下の先にまで響き続けるのを聞きながら歩くことしばらく。

 

遠く廊下の先にまで飛んでいった音が跳ね返ってくるから、なんだか不気味さが増してきた。

 

帰りたい。

 

だめ?

だめっぽい。

 

おじさんの後に続いている人たちが減ったけど、それでも何人分の足音がうるさいくらいに増幅されている。

 

初めは怖かったけど何分か歩いて慣れて来た感じの音を聞きながら「思ったよりも病院って広いんだなー」なんてあたりまえなことを思いつつ、だんだんと僕が知っている病院っていう感じの待合室とかが出てきて、でもそこも真っ暗に近くって余計に気味が悪くって。

 

「あー、僕たち裏口っぽいところからぐるっと正面口っぽいところに来たんだなぁ」って思って。

 

そうして案内された先は。

 

「えっと……ここって、診察室……いえ、検査とかするところでしょうか」

 

ドラマとかでしか見たことがない大きな機械とかがある、手術室にも似た印象の広い部屋に通された。

 

「あぁ、そうだよ。 そういう認識で構わない」

「いえ、ですから僕はこういうのは」

 

「これは要らぬ世話なのだと、今この瞬間ももちろん思っているし君の体に何もないのだろうとは半ば以上に確信しているのだがね」

 

あのスプラッターぶりを見てそう言い切れるのってすごい。

外国の人って頑丈そうだもんね。

 

……さすがに何か違うって分かってるけど、ほら、僕逆らえないから。

 

「あれだけの反動というものを目にしてしまったからには見過ごすわけには行かないんだ」

 

反動?

 

なにそれ?

 

「念のため。 あくまで念のために。 そして君の安全と私たちの安心のため、ここで一通りの検査というものを受けてもらいたいのだよ。 病院で経過の不明な怪我をしている患者にする、ごく普通の検査……MRIだとかエコーだとかね。 そのくらいなら良いのだろう?」

 

何が良いのかはさっぱり……だけどとりあえずひどいコトされるわけじゃなさそう。

 

そうだといいな。

そうだって信じてる。

 

この人たちもなんか訳アリ……外国人だもんね、ただの偏見だけども……だからこそ訳アリ仲間っぽい僕のことちょっとだけ面倒見ようって思ってくれてるだけだって思いたい。

 

切り刻まれたりしないでね?

 

そのへんに注射器とかたくさん置いてあるのも見ないフリ。

 

「なに、隅から隅までというわけではないさ、せいぜいが人間ドックくらいだよ……あぁ、君の歳ではまだまだそういうものとは縁がないか」

「そうですね」

 

「安心するといい、君」

 

安心しようって努力してます。

 

おじさんがしゃがんで来て頭をぽんってしてくれているけれどその手までが大きいもんだから、それに眼帯って前みたいなおっきい黒光りなものじゃなくなっているっていってもやっぱり怖いっていうのもあって、ぜんぜん安心できないけども。

 

「今から君を診る人員……スタッフはすべて我々の息がかかったものだけだ。 一般の者ではないからたとえ何があってもその情報を漏らしたりはしない。 なにしろ我々の――口外できない事情をその身に宿しているか、あるいは知っているか、その身内で固めているのでな。 大丈夫、情報は外には漏れない。 いわば血の結束。 だからまず心配は要らないよ」

 

「どんな翻訳の仕方をしたらこんなめんどくさい言い回しになるんだろ」って思いつつも、僕が安心しようって思っていた感じに僕を心配してくれているらしいとも感じる。

 

「まぁ、もちろん君のご両親、あ、いや、保護者や関係者……そういったところに診てもらってもいいし、むしろその方が本来はいいのだろうが。 なぁ?」

「うむ、確認させたがやはり無かったな」

 

「?」

 

「あぁ、いや、君の名前が我々の名簿になかったというのがひとつ。 さらには君……たちが今まで私たちに知られていなかったというのが、もうひとつ。 そしてなにより君自身が……これまで、君がその歳になるまで頼ってきたはずの保護者の方たちではなく、あえて私たちに『判って』連絡してきた。 つまりは、そういうわけだよ」

 

どういうわけなんでしょう?

 

なんかすごい勘違いしてる気もするんだけども、今はその方が安全っぽい。

 

「だから事情を知るものによる検査を。 君の体に大事がないと確認する、そのための体制が整っている環境にあるのだとは思えなくてね。 どうだろうか? 受けてはくれまいかね?」

 

「…………………………」

 

よく分からないけども、とりあえずNOって言ってもダメそうってのは分かった。

 

それにどうやら本当に普通の病院みたいってのもあるしで、僕はちょっとだけ警戒心を……解いて置いた方が楽なんだろうなってなんとなく思いながら従うことにした。

 

「りさりんに渡した分のお金、腎臓で返してもらうよ」とか言われませんようにって願いながら。

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