【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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44話 彼女からの、告白 1 1/4

「?」

 

ゆりかが言った。

僕のことが好きだって。

 

「…………??」

 

いや、理解はしているんだ。

僕が告白って言うのをされたんだって。

 

でもあんまりに突然なことで、そもそも僕はそんな資格とかなくって、だいたい本当の年齢が10くらい離れているって言うかそもそも今の僕でも幼い上に女の子なんだしどうして今言うんだとかでぐるぐるしてるんだ。

 

「…………………………」

 

顔がちょっとだけ赤くなっていて目元の感じが柔らかい感じになって、さっき泣いてたから目じりも赤くなってて……普段は絶対に見ることがない彼女の様子を見れば、いくら僕でも理解はできる。

 

でも感情が追いつかない。

 

……追いついてもどうすればいいんだっていう気持ちもあるし。

 

僕と大差ない見た目で普段が普段だから無意識に小学生くらいだと思いがちで。

そんな彼女が今はなんだか別人みたいな雰囲気。

 

僕が初めて目にするような……これまでの人生でも見たことのない感じのそれ。

 

りさりんとかとじゃれ合っているときみたいに、あるいは冗談を言うときみたいに……体をわざとくねくねさせてほっぺに手を当てるみたいなことはしていなくって、ただただ僕を見つめている。

 

「…………………………」

 

ゆりかは、静かに僕を見つめている。

 

……僕の反応を待っているんだろうか?

いや、そうなんだろうけど、そうだとはわかっているんだけど、でも。

 

でも、僕のことを……異性としてか同性としてかは置いておいて、中学生らしい恋愛感情って言うのを抱いている……らしい。

 

けどゆりかは……かがりとおなじように自分じゃなくて周りの子のそれとか物語の中の恋愛っていうのを楽しむ傾向があって、だからこそゆりか自身のそういうのを口にするっていうのは想像したこともなかった。

 

……僕だってずっと、ゆりかのことを、かがりみたいな女の子らしい女の子とは違って、もっと……どっちかっていうと小学生の男の子相手にしているようなそういう感じで接していたわけで、つまりは完全に予想外で。

 

女の子っぽい感じなんてぜんぜんしなかった……いや。

 

この顔が、この表情が、この目が。

女の子の……恋心っていうものを込めたものだったのか。

 

そう言えばそんなこともあったな、って感じにほんの何回か見たことがあった。

この、ちょっとばかり普段とは違う雰囲気が「女の子」だったんだ。

 

ときどき……2人で居るときたまーにしていて不思議に思っていたこれが、まさかそうだったなんて……しかもそれを向ける相手が僕だったなんて。

 

分からない。

 

僕には恋愛のことなんて全く分からないんだ。

だから混乱する。

 

25にして初恋すら未経験なんだ、今後もそんなことはないだろうって思っていたから。

今は幼女だからそういうのとは絶対に縁がないって無意識で思っていたから。

 

頭がぐるぐるしてくる。

 

久しぶりに顔を合わせて安心させて「この後に僕が居なくなってもそんなに心配しないでね」って言うだけのつもりだったのに、いきなりゆりかが変なことを言い出したんだ。

 

いや変なことって言うのは失礼なんだけど、でもかがりならともかくゆりかがこういうことを当事者として言い出すなんてなんだか不思議すぎる感覚だから。

 

「…………………………」

 

いや、冷静になろう。

 

誰かが僕のことを好きになるなんて……人としてならともかく恋愛的な意味でなんて、そんなことがあるはずがない。

 

だって僕にはなんにもないんだ、そうだよね、あり得ないんだ。

 

今の僕はこの通りにこんなに小さいし心は男で体は女なキメラだし、友達にしても家のことを一切に……肝心なことは誰にも言えないんだし、なにもかも普通じゃなくてすべてが嘘まみれなんだよ?

 

だからきっと違うはずだ。

だったら……つまりは逆だったり?

 

「僕のことが実は苦手だったんだ」とか「嫌いだったんだ」とか言っているのを、そんなかなりショックなことを言われた僕の脳がとっさに真逆の認識をしたとか?

 

だからゆりかは実は僕をそこまで友人とは見ていなくって、こんなめんどくさいことにもなっていてあんな迷惑をかけたんだ、こんな僕とは「いい機会だし……」って距離を置きたいとか?

 

よし今夜は呑んで忘れよう。

さすがの僕でも面と向かって嫌いですって言われたらしょげるに決まってるから。

 

「おーい、ひびき。 戻ってこーい。 多分また全然別なこと考えてるよキミ」

「……ゆりか?」

 

「うむ、私がゆりかだ。 そして君が響。 まずはOK?」

「……うん」

 

「あとちなみにコレ、告白シーンね? 他の何物でもなくってきちんとしたヤツ。 他意とか含みとか企みとかからかうとか言い間違いとか相手間違いとか聞き違いとか、そーゆーベタなのないからね?」

 

「……ゆりか」

「ひびき」

 

「君は僕の考えを読めるのか?」

「……ほんっと、普段はどこぞの名探偵って感じに頭いーのにどーしてこーゆーときはダメなのか」

 

どうやら読めたわけじゃないらしい。

まぁそうだよね、もし読まれてたら僕が幼女になったニートでずぼらな成人男性って分かるもんね。

 

「よし、こんせんさすってのは取れたね」

「……そうだね?」

 

でもやっぱりおかしい。

何かが間違っている。

 

人間的魅力なんて皆無な僕にどうして、まだ未来のある少女の彼女が。

 

……こうして気がついたらゆりかがずいぶんと近くに来ていて目の前で手のひらを振っているんだし、さっきの考えで正解かも。

 

でも、もしそうだったとしたら……10年以上ぶりに友達って感じられる……年下だけど、さらに言えば女の子たちだけど、そんな子たちができたと思ったら相手の方から「距離を置きましょう」って言われたんだとしたら、僕は。

 

「ほいっ」

「!?」

 

目の前でぱん、と軽ーく両手を合わせられて意識が引き戻された。

 

……たしかこれって猫だましとかいうものじゃ。

 

「今度こそ戻って来た? 響。 いつもみたいに思索にふけるのは話聞いてからにしてちょ。 なにげに緊張してるんだからさ、私も。 告白って、する方は死ぬほど恥ずかしいのよ? いい?」

「あ、うん……」

 

ふぅ、とため息をつくとベッドの端にぽふっと腰掛けて、少し頭を傾けながら見下ろしてくるゆりか。

 

「……やっぱ1回言っただけじゃ通じなかったねぇ……さすがは響。 ま、知ってたけど? だって響、別のことを考え出すとてきとーに返事すること多いし。 あと視線がその辺のテキトーなものをふらつき始めるからみんな知ってるのよ?」

 

バレてた?

よくかがり相手には使っているオートでの会話っていうの。

 

ちらりとかがりを見てみる。

 

「?」

 

すっごく楽しそうな顔してるけど、やっぱりくるんってしている。

 

良かった、彼女にはバレていないらしい。

 

「で、さ? 改めて……はっきり言うしかないかぁ、これむっちゃ恥ずかしいんだけど、でも響だしねぇ……いい? 私の言う『好き』は友情のとかじゃなくて、もち恋愛的な意味。 だって私は響が男の子だってはじめっから思ってて、んで半分は事実だったんだし問題ないって分かったし。 ……ま、女の子でも多分……言っただろうね。 そんときはもっと言うの迷っただろーけど……つまりはライクではなくラブよん。 本気でガチの」

 

うん、さすがにここまで言わせたらもう誤解の余地はないよね。

 

というか最近の子って進んでるんだね……ああいや、僕が子供のころからたまにクラスの女子がそういう話してたから多分僕に縁がなかっただけで昔からそうなんだろう。

 

「……とりま何か返事ちょうだい?」

 

「……え、えっと。 まず君は、あのときの僕の……年越しのときのあのときので、僕が。 心は男だけど体は女だっていうことは理解しているんだよね? あと面倒なことをこれでもかと抱えているっていうことも」

 

「あ、そっち……響らしいかぁ。 うん、それも込みでよ? もちろん」

 

なんか脱力してるゆりか。

 

なんでだろ……最重要な大前提を確認したのに。

 

「だってさー、あのときもそうだったけど……てゆーかめったにフード外してくれないからわからなかったけど、でも今ならこーして」

 

ゆりかが被さるようにしてきて……いつものかがりみたいに……手ぐしで僕の髪の毛の先の方をすき始める。

 

「長ーい髪の毛だしまつげ長いし、綺麗っていうよりはもはや美しいって感じ。 んで私よりも幼い系でクール系な女の子なんだよね……体の方は」

「……まぁ、な」

 

なんとなくで僕も、いつも視界にちらちら入ってくる横の髪の毛を指に絡めて目の前に持ってきてみる。

 

「……それ! ほんっと、どーやったらそんなナチュラルな感じの髪の毛が生えるのか……光に当たってるとなんかプリズムみたいなのが浮き出てるし、ほんとなんなのさ! ずるい! 羨ましい! やっぱり生まれって大切……」

 

「ゆりかの髪も綺麗だと思うけど?」

「……………………そういうところ……」

 

「?」

 

「……なんでもない! で! そんな響だけど、私、ついこないだまではそーだって知らなかったからさ! はじめっからちっこい男の子だと思って、いや、思い込んでいたの。 私には年下属性あんまなかったはずなんだけど……人生って分からないのよ」

 

ゆりかも肩の方から髪の毛を引っ張ってきて、それを僕とおんなじように持ち上げて陽の光に照らしている。

 

黒髪が、陽に当たっているところだけ少しだけ茶色っぽくなっている。

 

「だからさ、男の子だって思っていた以上……年聞くまでは小学生だって思ってたから、よっぽどのことがなきゃ仲良くなれないだろうし、ほら、さすがに小学生相手だと世間体がーとか以前に接点皆無でしょ? でも同い年だって……学校通ってたら同じ2年だって知ったから。 ――会ったその日からずっと、うすうすこういう気持ちがあったんだからさ……こうして本気で好きになっちゃったとしたって、仕方ないじゃん?」

 

いつもだったらもう片方の手でおんなじことをして「ヒゲ!」とかしそうなのに、そうする気配もなく、ゆりかは、ただただ真剣に僕を見下ろしながら語ってくる。

 

「……だって。 だってさ? 初めて会ったときから……私が響のことなんにも知らなかったときからさ? その。 ……気になってたんだもん。 まさかのこの私がほんのちょっぴり、それもただの偶然でこうなっちゃったの。 あはは、こういうのってほんと理屈じゃないんだねーって」

 


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