【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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47話 01/01→06→ 5/6

プチ冬眠とか何バカなこと考えてたんだろ僕。

 

多分また冬眠したって聞いて動揺したんだろうな。

 

今度は痛かった方の手を使わないようにして体を起こしてみると、腕とか脚に何本ものコードが張り付いている。

 

吸盤……心電図とかの?

 

コードだらけで今の僕はまるでロボットとか人造人間的な感じになってる。

研究所で生まれたての的な。

 

なんかとっても動きづらいって感じるけど、別に拘束とかされてるわけじゃないしでぼけーって座ってる。

 

……するっと拘束とか出てくるあたりにマリアさんたちの強面に対する僕の印象がうかがえる……いや、だって信用したいけどなんか怖いし?

 

人は見た目なんだ。

 

「……まず、気分は問題ないかね? 5日間も寝ていたのだがね」

「あ、はい。 大丈夫だと思います……普通に」

 

「……その程度なんだね、君にとっての『反動』は。 しかし心臓に悪いな……こういうのは、いつ見ても」

 

あ、確かに人がいきなり何日も寝ちゃったら昏睡って訳で心配もするか。

 

「いや、君は悪くはない。 悪くはないんだが、私たちにとってはだね、ここまで強いそれは遠い昔……そう、故郷を出て以来だから」

 

……って言うことは、この人たちも僕みたいな人を1回は見たことがある。

 

「響くん、改めて……良いかね? 君はあの晩から5日……5日だ。 つまり今日は1月の6日となる。 世間では正月というものが終わっているという日付なのだよ」

 

魔法さん。

 

今度はなんでなの?

 

冬眠、それもあのときは3ヶ月だったのに比べるなら5日っていう短い時間で済んだのだけはよかったんだけど……でも、それがまた起きちゃうなんて。

 

……薄々感じてはいたけどなぁ……あの夢を見始めたときからなんとなく、そうなんじゃないかって。

 

僕が変な夢を見るのイコールで冬眠。

寝るのがちょっと怖くなる。

 

「君はあの晩……記憶がはっきりしているのか分からないから簡潔に話そう。 君は私たちと一緒にこちらに来て簡易な検査を受けてもらい、その翌夕方に風呂に入ったりしてもらって軽く話した後すぐに寝入ったと報告を受けている。 ここまでは覚えているかい?」

 

「はい……それから?」

 

「うむ。 それからひと晩経ち、昼になっても起きてこないと連絡を受けたが疲れからだろうと待っていた。 しかし夕方を過ぎ……さすがに寝過ぎだからそろそろこちらから起こそうとしてみたのだけれど、一向に目を覚ます気配がない。 ……だが君の年齢を考えたなら血を吐くという反動とあの騒動での疲れは大変な負担だったはずだ。 だからともうひと晩待ってみた」

 

……なるほど。

 

冬眠に入ると、普通に起こそうとしても起きられないんだ。

 

「そして翌日。 3日になるのだね、1月の。 その日の昼を過ぎても起きようとしない。 だから声をかけたり体を揺すったりして起こそうと試みたのだが、それでも効かない。 これは通常ではないと調べてみたところ、君の脳波も心拍もともに深い眠りについている人間のそれのままだ。 それも生命維持機能も限界すれすれのところで――つまりは尋常ではなかったのだよ。 まるで冬眠だ」

 

そこまでしても起きないとなると本当に冬眠って感じなんだな、魔法さんのこれって。

 

「……判断には非常に迷ったが」

 

僕の体から吸盤をぺこっぺこって外していく。

 

「体温もかなり低くなってはいるものの、心拍も呼吸も低いところで安定している。 そして君は私たちを頼った際、このことについてなにも言わなかった。 だから私たちの判断の下で君のバイタルを監視しつつ、異常があるまではなにも手を加えないと決めたのだ。 せめて点滴くらいはしようと言う意見もあったのだがね……」

 

点滴。

つまりは針。

 

それが僕の体に入ってくるっていうこと。

それは僕の体が傷つけられるっていうこと。

 

僕を攻撃しているって認識するのか、それとも見た目を著しく変えるっていうのに当てはまるのかはわからない。

 

でもそうされた場合、魔法さんが働いて点滴のセットごと吹っ飛ぶなんてことにもなりかねなかったから危ないところだったのかも。

 

高い機材が置いてありそうな病院の中で針が飛び回ったりしたら大変なことになっていただろうし。

 

もちろんそうならないかもしれないけども冬眠中は魔法さんが僕の体をコントロールしているわけだから、そういうのを止めることすらできないしなぁ。

 

……この人たちは、詳しく聞かないでくれてはいるけど、どう考えても魔法さんに近いそれのことを知っている感じなんだ。

 

だからそんなことが起きたとしたって大丈夫なはず……だったのかもしれない。

もしそうなっていたらしょうがないからって全部話していたかも。

 

でも、そうはならなかったんだ。

 

「……その顔色だと、特に具合が悪いとか脱水だとかも無さそうだね。 ……悪いが君が気がつく前に先に話してしまうと、一応君には寝たきりの患者用の……はっきり言ってしまえば、おむつというものをだね」

 

え?

 

おむつ?

 

子供どころか赤ん坊みたいにされてるの?

 

え?

 

「ああ、安心してくれ。 医療従事者ではあっても女性に頼んだよ」

 

いや、そっちの心配はしてないけどさ。

ごわごわとかはしていないけど……え?

 

「そのような感じで、君に対してはそれ以外のことを……寝返りの世話だけは数時間おきにさせておいたが、それ以外のことは本当になにもしていない。 した方がいいという意見も多かったが、君からそれを頼まれていないということで押し切らせてもらった……なにしろ排泄さえ確認されなかったからね。 それは正解だったようだ」

 

人は水分を摂らないと3日で死ぬ。

それを知らないはずはないのに、それでもあえて僕に何もしなかった。

 

……魔法さんみたいなので動かない人は死なないって、知ってる……?

 

「……落ちついているね。 ということはそれは、その強さの反動は――良く、あることなんだね?」

「えっと……はい。 このタイミングでまたなるとは」

 

「……そうかい。 幼いのに君は……」

 

冬眠。

 

いずれまたなるんじゃないかっていうのはクリスマス前に目が覚めてからなんども考えていたことではある。

 

けどまさかこんなところで……いや、運がよかったんだよね、きっと。

 

もしこれが年越しのときとか倒れたときとかだったらあの子たちにもっと心配させたはず。

 

まぁ血を吐くのとどっちがって感じだけども……いや、さすがに血を吐く方がインパクトでかいよね……。

 

今回のも何が原因なのか分からない。

 

ただの偶然なのか何かしらのトリガーがあるのか……規則的に来るのかも分からない。

 

だけど今回はたったの5日っていう、前回から比べるととっても短い……けど、よくよく考えてみたらやっぱり寝て起きたら何日も経っていたっていうのは困る。

 

でもでもあのときみたいに3ヶ月っていう季節まるまる飛ばすなんてことにはならなかったんだ。

 

……この違いは何なんだろうね。

 

「反動はね。 そもそもそんなに長引くものじゃないんだよ」

 

マリアさんが言葉を選びながら言う。

 

「君が他の人……同じような人たちのことをどこまで知っているかわからないから、もし知っていたら済まないけれどね。 しかし、よほどの反動というものを抱えている人でも複数の日を跨いでのそれというのは……私でも見たことがないんだよ。 長年の経験で多くのそれについて知っているからこそ、余計に君が心配になる」

 

「……そうですか。 ご迷惑を」

 

「いや、迷惑なんてことじゃないんだ。 ただ単純に心配で……そう、誰だって、例えば路上にうずくまって苦しそうにしている人がいたら心配にもなるだろう。 それが知り合いや身内だったとしたのなら、なおさらだろう。 それと同じなんだよ。 ましてや君は、私たちと……」

 

そこで口を閉ざしちゃう彼女。

 

あれ?

その先ってあれかな?

 

「ここまで聞いたら仲間になってもらわないとねぇ……けけけ」って感じなの?

 

「通常であれば反動の後はひと月も安静にしているなら自然に、完全に治まるものだ。 精神や肉体に過剰な負担をかけてはならないのだよ。 西洋医学的に言うならば絶対安静というものだ」

 

そうなの?

 

あ、だから……冬眠明けにはビルの中で逃走劇を手伝ったりしたし、その後は雪かきとかしてたりしたから?

 

「君の場合にはそうもいかないのかもしれないがね、私たちとしては最低でもそのくらいの期間。 つまりは2月の頭くらいまでだね、それまではここにいて私たちの世話を受けてもらいたいと思っている。 無論、強制ではない。 君が数日で出たいと言えば、君の意思を尊重する」

 

僕の両手をぎゅっと包み込む……冷たくってごつごつしててしわしわのお手々。

 

……やっぱりこの人たちは魔法さんみたいな何かを知っている。

それはねこみみ病って言うのとはまた違うものってのも分かる。

 

だって僕が血を吐いたり何日も寝ちゃったりするのを「そういうこともあるよね」って感じなんだから。

 

つまりは普通の人たちじゃない。

 

僕はこの人たちとおんなじ?

 

それとも違う?

 

――それを知るには聞かなきゃいけなくって、そうなると僕はこの人たちの面倒になるって簡単に予想がつく。

 

けど、魔法さんが何をするか分からない。

 

これを口にしたらどうなるのかが。

 

「もし君自身と、君の保護者の方たち……連絡してから判断してほしいところだが、そのどちらもが良いというのであれば。 どうか、私たちを安心させてもらいたい。 できるならここで先の期間は経過観察をさせてほしいのだよ。 欲を言うのなら君の『変異』や『変質』についても尋ねたいところだが……こちらは無理にとは言わない。 とにかくここにいてほしい、面倒を見させてほしい。 ただ、それだけなのだよ」

 

マリアさんもイワンさんも、たったの1回しか会っていなかったはずの僕を助けてくれて、ここまで心配してくれている。

 

心配させている。

 

でも僕自身も心配なんだ。

 

「また数日後に何か起きるんじゃない?」って。

「また何日から何ヶ月寝ちゃうんじゃない?」って。

 

「起きたら血まみれで何ヶ月経ってました」って。

 

……僕は、決めた。

 

人を頼るって。

 

「わかり、ました」

「本当かね?」

 

「はい……でも、申し訳ないですけど、僕のこれのことをお話しすることはできないと思います。 でもここで静養……安静にするくらいなら僕の方からお願いしたいくらいです」

 

もし今度別の何かが起きても、誰かが傍に居てくれる。

 

迷惑を掛けたくないって気持ちより、そうして安心できる気持ちの方が濃いんだ。

 

……相手から「いいよ」って言ってくれているなら、甘える。

 

それくらいはしても良いのかもしれないって。

 

「さらにお世話になりますし、また迷惑を掛けてしまうかも」

「迷惑ではないよ……ともかく良かった。 あぁ、すぐにあいつも連れてくる。 きっと喜ぶだろう……少し待っていてくれないかね?」

 

そう言い残したマリアさんはものすごい大股で……頭をドアの上の枠にぶつけそうでひやっとしたけど大丈夫だったみたいで、あっという間に部屋から出て行った。

 

……世話焼きっていうのなんだろうな、あの人たち。

 

事情があるにしても、見ず知らずの僕をここまでなんだもん。

――裏に何かがあるとかもちらっとは考えるけど無視する。

 

……そういえば飛川さんも叔父さんもこういう感じだったっけ。

 

いや、思えば学校の人たちも近所の人たちも……父さんたちの事故を知っている人たちは、そんな感じでよく話しかけてくれていて。

 

僕はそれに気が付けなかったから何度いろんなこと言われても「結構です」ってはねのけちゃっていたんだ。

 

けどもそれはあの人たちにとって……悲しいことだったのかもしれない。

 

それは今までに、前の僕を気遣ってくれていた人たちみんな、ひょっとしたらそうで。

 

……だから僕は初めっから間違っていたのかもしれない。

 

だけど今、それを……僕の意志で初めて理解して、受け入れたのかもしれない。

 

僕を心配する気持ちを。

 

僕はこんなことになってからようやくに、気恥ずかしいその気持ちを受け入れられるようになったんだ。

 

ちょっとだけ、大人になれたんだ。

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