【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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48話 彼の、準備 2 6/7

強靱な肉体。

 

筋肉が、こういう温かくなってきた季節からは服の下から形を主張していて、背もとっても高くって、こう……すごみっていうものもあって。

 

イワンさんとマリアさんはご自分たちのお顔がそんなお体に乗っていて、一般的な子供に対してどんな風に映るのか、もういちどしっかりと自覚したほうがいいって思う。

 

「そうだ、思いついた! 庇護下に入れば良いのだよ!」

 

イワンさんが叫ぶ。

 

庇護?

何の?

 

「うむ、そうだ! なんなら保護者の方たちやご家族の事情なども、それがどれだけ込み入っていようとも、その一切合切を受け入れることができるぞい! そして、そしてだな、適当な親戚同士を番いにして、あ、いや、今のはナシだ響! ナシだからな!」

 

……こうして会話のところどころで平然と他人たちをどうするって出てくる辺りが怖すぎる。

 

「適当に戸籍などをごまかしてもいい、なにせ本人たちの意思が重要だからな! そして儂らが響の本物の爺さんと婆さんに! どうだ響!」

 

そう言いながら鼻息がかかるまでに迫ってきたイワンさんのお顔が片手で押されたかと思うと、今度はマリアさんのお顔がどアップになる。

 

「そうだ、君はそれほどに大切なのだよ響。 私たちがこうして……ほら、この痣がはっきりと見えているだろう?」

「えぇ、まぁ」

 

昔……事故にでも遭ったんだろうか、にできたであろう傷が元になった痣。

 

なんにもケアしていなければ、そりゃ見える。

なんで今日に限ってお化粧していないのかよくわからないけど。

 

せめて前髪をその部分だけ伸ばして隠せばいいのにーって思うし、さんざんに言ったんだけどな……聞かないんだ、この人。

 

「だろう? そのようにカムフラージュをしなくとも……優しい話し方と声音を選び、少し力を入れると潰れてしまいそうな小動物を触るような意識でなくとも、自然体でいても……ここまで怯えずかわいいかわいい孫のような子など見たことも会ったこともないのだよ!!」

 

いや、怖いって毎回思っているんだけどね?

言わないし態度に出さないだけだからね?

 

僕の優しさだからね?

 

「無理は承知なのだが、どうかいまいちど頼む! 私のことを婆さんと! そして、いずれは法的にも……」

 

「だからお断りします」

 

この人たちに対するためにはとにかくばっさりとが1番。

 

「そんなことを言ったらおふたりののお孫さんがかわいそうですし……こんなこと、万が一にでも聞かれたら怒られますよ?」

 

「あやつらはかわいげがないのだ! もっと孫らしい響がいいんだもんっ」

 

「もんっ」じゃないよ、いい歳して……。

 

 

「おや」

 

手元の旗が乗っていたプレートは8割くらい食べ切ったらしい。

すごく珍しい。

 

さっきからメッセージの着信が荒ぶっているスマホ。

 

そこに表示されている時間は、あの子たちとの待ち合わせの時間。

 

……じゃあ次、行こっか。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

来るたびにストレスを感じて、今の僕がどれだけちっこいのかっていうのをいやっていうくらいに自覚させられる、駅の周りっていう繁華街。

 

けど「これで最後なんだなー」って思って見ていると、新しいお店ができていたり工事中になっていたり、なんだか綺麗になっているところがあったりして意外と飽きない。

 

それに小さいのにはもう、いい加減に慣れたし。

 

フードの下に帽子をっていう格好から、視線が煩わしいときだけフードのみを被るっていうのになったっていう僕自身の変化も感じる。

 

そうすると当然に顔は見えちゃうんだけど思ったよりもじろじろ見られないし、あと僕の視界もぐっと開けるし……もう顔を隠す心配はなくなるから。

 

フードを取って髪の毛を見せびらかすようにすると知らないうちにスマホを向ける人が出てくるから、こういうところでは絶対に被っていなきゃならないけど。

 

大変に失礼な人たちって意外といるんだよなぁ……でも多分今どきのそういう人たちは失礼って思いもしないんだろうね。

 

やっぱり目立つもんね、この髪の毛。

銀色だもんね。

 

しかも陽の光で虹色っぽくなるし。

なんなんだろこれ。

 

……こういうのも最後、かもね。

 

「あ、いたいた。 おーい、響さーん!」

「お待たせ……ふぅ、しまし、たぁ……」

 

顔を上げるとそこには元・巫女ペアのりさとさよ。

 

今日も動きやすそうなショートパンツっていう短パンの一種を着こなしているりさと、長い髪の毛に合った丈のロングスカートを履いているさよ。

 

このふたり、見事なまでに服装まで反対向きなんだけど、気がつけば一緒にいることが多い。

 

友人関係って不思議だよね、似たもの同士と真逆がくっつきやすいから。

 

ゆりかとかがりもまたメロンとレモン、いやレモンとメロンだし、話も合わないはずなのにそれでも一緒によく話しているのを目にしていたあたり、人は反対の性質も求めるんだろう。

 

体格とか性格とかそういうものを。

 

そもそもの組み合わせ……ゆりかとりさりん、かがりとさよっていう組み合わせもまた正反対だしなぁ。

 

そういうのって、なんだかおもしろい。

 

「よかったわ、急いで来たから間に合った……ふぅ。 さよさんは大丈夫? 少し小走りだったけど」

「はっ……はい。 少しずつ体力……つけて、いるので……」

 

息が荒そうっていうよりは体が運動についていけないときの僕とおんなじような感じだし、大丈夫って言ってるから本当に体は大丈夫だって信じる。

 

けど、今日のお別れ。

 

みんな予定があるんだし、無理しなくてもいいって言ったのにね。

お別れなら病院でとっくにしたんだし。

 

でも、きっと最後に会えるタイミングで会いたいんだよね。

 

今ならその気持ち、僕も分かる気がする。

 

「お迎えはまだなの?」

「うん」

「……よかったです。 このあと空港へ向かわれるんでした……よね? 時間とか……」

 

「うん、まだ大丈夫。 それにこのあとすぐじゃなくてね、荷物を取りに1回家に戻るんだよ。 だから余裕はあるんだ」

 

空港とか本当は嘘っぱち。

 

だけど、嘘ではあるけど場合によっては本当になるかもしれない。

そんなものだからウソにもならないかもしれなくって、だからそんなに心は痛まない。

 

お迎えがあるっていうのも本当だし、その時間を時間内に合わせるために決めているっていうのもある。

 

「走ってきたから暑いわねー」

 

ふぁさっと髪の毛を持ち上げるりさりんと、さりげなくスカートをひらひらとさせているさよ。

 

髪の毛をぱさってしてうなじがひんやりするのも、スカートをばさばさするとすーすーしてふとももが冷たくなって気持ちいいのも分かるー。

 

そうなっちゃった、元・男の僕。

 

いつ戻るのかは全然分からないけども。

 

「……そうね、お迎えが来ちゃうときっと慌ただしくなっちゃうだろうし、先に言っておくわ」

 

りさりんが……身長差からちょっとだけ屈むようにしてくれないと会話ができないから屈んでくる。

 

ごめんね……僕ちっちゃいからね……中学生って言い張ってる小学校低学年なミニマムボディだからね……。

 

「響さん、お元気で。 で、元気になって帰ってきてくれると私、嬉しいわ! 今度はみんなで一緒に、5人そろっての旅行とか! ……えっと、私たちは良いんだからつまりは問題ないってことだし? 響さんさえイヤじゃなければ、こっ……今度こそお泊まりとかもしましょう? みんな大賛成なんだしっ」

 

お泊まりってワードで顔が赤くなる初心なりさりん。

 

いやまぁ中学生女子がこんな見た目だろうと同級生の男子とお泊まりって考えたらそうなるよね……ほら、かがりの持ってた少女漫画でも結構過激なシーンとかあったし……。

 

「私たちみんな、響さん自身が男の子でもイヤじゃないし。 まぁ何度も言ったからわかってるとは思うけど、念のためによ? それに結局さ、夏休みはまだ知り合ってそこまでじゃなかったし、そこからはみんなで出かけるっていうの、できなかったじゃない? 仲良くなったこの5人そろって電車とかバスで日帰りで遊びに行くのとか、誰かのお家でみんなで……あ、それは病室でやったわね。 とにかく、まだしたことないこといっぱいあるから!」

 

りさりんは意外と恥ずかしがり屋さん。

 

だからこうしていつものクセがさらにマシマシになって、早口でばーっと伝えて来る。

 

けど、それは嬉しいこと。

 

一気に話したから苦しくなって顔がとうとう真っ赤になってそっぽ向いて「今日は暑いわねー」ってつぶやきつつ息を整えているりさりん。

 

そんなりさりんを見ていたらくいくいって肩のあたりをつままれていて、振り向くとさよが近づいていた。

 

……風が吹くたびに、前髪が長すぎるせいで隠れがちな目が見える。

 

うつむき加減な、眼鏡越しの目が。

 

「……響さん」

「うん」

 

「また一緒に、本の感想とかお勧めの紹介とか……お話し、しましょう」

「うん」

 

「私、待っています。 ……もちろん学校のお友だちやゆりかさんやかがりさんと……するのも楽しいんですけど。 えっと、なんといいますか、その……響さんとだと、似たような本と照らし合わせたりしての考察とか、そういうもので……えっと、読んだあとも楽しむことができて、楽しかったんです。 ……また新刊を一緒に読んで、感想とか言い合ったり……しましょう。 ……ふぁ……」

 

無理にりさりんに合わせる必要もないのに、それでもがんばって気持ちをひと息に……出会ったころからすれば相当に聞き取りやすくなったさよの声を聞いた。

 

息継ぎがこれでも足りなかったのか、それとも緊張しすぎたのか酸欠になってよろめいて、あわててりさりんに抱きかかえられるのを見て……この子からも大切な友人って思ってもらえてるんだな。

 

そう思って僕はがんばって、顔の表情を変えないようにした。

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