【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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46.X3話 偽乳と牛乳 1/2

「まーだまだ寒いよねー」

 

病院の中はあったかいけど外は寒い。

まだまだ冬のお見舞いに来たゆりかが手をすりあわせている。

 

「あ、そーだ、今日はまだかがりんしか来てないしさ、聞いときたいのよ、今のうちに」

 

折りたたみのイスでぎこぎこと鳴らし始めていたゆりかが、がたっと前のめりになる。

 

ぱっつんがふわっと浮かぶ。

 

「なぁに? ゆりかちゃん」

 

彼女は基本的に気分屋だ。

 

ただしその隣に居るくるんさんがはるかな上級者だから霞んでいるだけ。

 

「んとさ……もー響もこーいう話題慣れてるだろーし、当事者しかいないからぶっちゃけるけどさ?」

 

そんなゆりかがこんな前置きってことはちょっと恥ずかしい系?

でも前置きしてくれるだけマシだよね。

 

隣でパン菓子を頬張ってる子なんかは絶対そういうの無いから。

 

「なぜに、どうして。 なんで! なんでかがりんはひびきにひったすらに服着せたがってたのさ! ひびきによると、それはそれはもー果てしのないものだったって言うじゃん? なんだってそんなことしてたのかがりん!」

 

「あら、そんなこと」

 

そんなこと?

僕がどれだけ男としての自意識を削られたのか知らないんだね?

 

「だって響ちゃん、かわいいじゃない?」

 

「え、そりゃあまあそうね?」

「ええ!」

 

「…………………………」

「…………………………」

 

「……ゑ? おしまい?」

「ええ!」

 

うん……きっとそうなんだ。

 

この子にとって「理由」なんてのは「そのときの気分」ってだけだもんね……。

 

「いや違うのよかがりん、そうじゃないのよ……それは答えになっていないのよ……」

「あら? そうかしら?」

 

ぱっつんがくるんに対して困惑している。

 

うん、突っ込みって大切だよね。

 

けどもゆりかはまだかがり歴が浅い。

彼女の言動を理論立てて説明できるのはこの場で僕しかいないだろう。

 

「ゆりか……いや、それで正解なんだよ」

「え、うそん。 たったそれだけってのはないでしょ」

「いや、あるんだ」

「え、えぇ……」

 

なんだか衝撃的な表情をするゆりか。

彼女の視線が向かった先には……頬張っていたのを飲み込んでとろけているかがりだ。

 

「それにだよ、それはもうとっくに……かがりに捕まったときから諦めていることなんだ。 よりにもよってこのかがりがいる店で、このかがりに向けてコーディネートっていうものを頼んだのが運の尽きだったんだ。 ただそれだけなんだよ」

 

「おお……ひびきが煤けてる……」

 

「それに、かがりはかがりだからね。 『自分ももちろんだけれど、他人も見境なく着せ替えしたい、着飾りたい』っていう欲望、それ以外の理由も感情も持ち合わせていなかったんだろうし持ち合わせていないんだろう。 かがりだからね」

 

「ありがとう響ちゃん!」

 

僕はどうしてお礼を言われているのかを理解するのに数秒かかる。

 

……とりあえず何も考えないで脊髄反射で話すのはやめた方が良いって思う。

 

「私たちが初めて会ったときのことよね? えぇもちろんそのとおりよ! だってかわいかったんだもの!」

 

「そ、そう……ホントにそうなのね……」

「……かがりだからね」

 

「おおぅ、響が死んだ目をしていらっしゃる……ま、まぁヒガイシャな響がそう言うんなら良いんだろうけどさぁ」

 

「うん。 最初から諦めさえしていれば大抵のことは受け入れられるんだよ」

「これが諦観というやつか」

「そうとも言うね」

 

僕のため息に心底同情してくれているらしいゆりか。

なんかいたずらしようとしてたらしい彼女が真顔に戻る程度には深刻な悩みだ。

 

「でも……はぁ――……去年の夏は至福だったわぁ」

 

それに気がつかないかがりがうっとりしたまま抜かし始める。

 

「響ちゃんのお洋服をいぃーっぱい選んであげられたのだもの……響ちゃんが元気になって帰って来たらまたたくさん選んであげられるのよね……それも楽しみよぉ……」

 

くるんくるんくるんしているかがりと、それを引き気味で見つめているゆりか。

 

そんなふたりを見ているうちにふと思い至る。

 

……いつになるかは分からなくても、この子たちと……どんな形でも会うって決めたけど。

 

もし久しぶりに会ったとしたら……成長できたとしてもできなかったとしても、そんなこととは関係なしに手を引かれて連れ出されて着替えさせられて、いちいち感想を求められて買わされてっていう未来が待っているって。

 

女ものは流行り廃りも早いし、そのときに着ている服を流行遅れ……「かわいくない」って決めつけられて服屋へ直行させられて着せ替え人形。

 

うん、考えなくても分かる未来。

 

前ならまだしも今なら、僕のことを見た目はともかく中身は男だって知っているくせにこれなんだ。

 

そのときにそう主張したってきっとこの子には通じない。

 

「分かったわ!」って自信満々だけども……多分本当には実感していないんだろうし。

 

……どうか、どうか男に戻れますように。

 

着せ替え人形は……こう、心を侵食してくるんだから。

 

「ま、お着替えの件はいいとしてさ? ……ハイライト消えてるけど、てかだいじょぶひびき」

 

大丈夫じゃないけど慣れてるよ。

 

「響自身がそこまで気にしてないって言うんだから良いのかなぁ……だけど、だけどさ?」

 

かがりが自分の世界に閉じこもってぶつぶつ言っていただけの空間に、ゆりかからの意味のある言語が戻ってきた。

 

「私、ちょいと気になってね? ……これ、かがりんが席外してるときに聞いちゃったんだけどさ……ね? 響から聞き捨てならないコト、聞いちゃったんだけど。 ……ちょいとねぇかがりん。 かがりんってば、そろそろ目覚まして? ね?」

 

「あら、ゆりかちゃん」

「うむ、私がゆりかだ」

 

トリップしていたかがりの意識も戻ってきた様子。

 

「かがりん? ……響ってさ、はた目に見たら私未満の小学生で……それも初めの頃みたくだぶだぶなカッコばっかしてたら……いや、こうして顔を出してても下手すると幼女」

 

「…………………………」

 

じっとゆりかを見つめる。

 

否定はできないけど抗議はするんだ。

 

「……じゃなくて低、じゃなくて高学年くらいの小学生。 こーして体に合った服着てて顔と髪の毛だしてたら低学年にも見えちゃうことあるでしょ、ひびきって。 そんなひびきに対して、かがりんってさ?」

 

いいんだ、ちいさくたって。

それでも生きていけるんだから。

 

「……かがりんってさぁ――……」

 

……ゆりかの様子が変?

 

具体的には目がどんよりと……ちょっとびっくりしたけど魔法さんの影響じゃない感じに曇っててハイライトオフってやつで。

 

そんなゆりかは……そんなにも恐ろしい目をかがりに向けつつ、イスごとじりじりとにじり寄っていく。

 

「……事もあろうに。 こともあろうに! 響に、どっからどー見てもよーじょばでぃな響にブラっていうものをつける提案をされたそうじゃないですかこんちくしょう! うらやまけしからん!」

 

女の子の間では胸のサイズは致命的らしく、ゆりかが普段とは違う感じに暴走している。

 

……ちなみに今のは何に対しての怒りなんだろう。

 

「それも子供用のやつ……私、今でもほとんどそれしかつけてないけどそれならともかくだよ! 盛るためのそーゆーモノをオススメされたそうじゃないですかねぇかがりさん! てかよく響の体のサイズのものがありましたねなんででしょうかねこんちくしょう! 設計した人もオッケーした人も売り出した人もヘンタイですねこんちくしょう!」

 

「え……ええと……」

 

そんなゆりかにかがりがたじろいでいる。

実に珍しいものを見た気がする。

 

「ねえなんで? なんでなんで?? どうして? 貧乳ってそんなに罪深いモノなの? 修正しなきゃ行けないものなの? 罪なの? ねぇ教えてよでかいかがりさん……」

 

「ちょ、ちょっと待ってゆりかちゃん、なんだか怖い感じになっているわ!?」

 

「だって怒るよ? あたりまえじゃん? そーんなでっかいのふたつ抱えてるかがりさんにはわからないでしょー? 深い悲しみを。 知らないんでしょー?」

 

「……大きいの? 悲しみ? ……………………??」

 

……かがりってすごいよね。

 

この状況でもそれに思い至らなくって悩む仕草をするもんだから、腕を組んで胸が動いてゆりかの視線が刺さる感じになってる。

 

……わざとじゃないよね?

 

そうだよね?

もしそうだったとしたら僕は人間不信になる自信があるんだけども。

 

「と、とにかく怖いから怒るのやめてちょうだい! それに下着のことなら響ちゃんから頼まれたもの!」

 

「む」

 

捏造されそうになったから反論。

こういうときに否定しておかないと事実ってことにさせられちゃうんだ。

 

「僕はブラジャーなどというものは要らないんだと言ったと思うけど? そもそも胸がないんだ、肉体年齢は……2人が見る通りに幼いんだから。 だから要らないって言ったはずだよ」

 

そう、ないんだ。

 

裸になって思いっきり腕を前か後ろに反らさないと確認できない程度には。

 

というか今思えばあれはただの常識的な範囲の脂肪。

男でさえうっすら乗ってる感じの脂肪なだけで、あれは胸じゃない。

 

せっかく女の子になったっていうのにそれすらないんだよ?

 

じーっとかがりの胸を暗い瞳で見つめているゆりかの袖をくいくいと引っ張って意識を戻してやる。

 

「んぁ……? ひびき……?」

「ゆりか、落ち着いて。 それは仕方のない話なんだよ」

 

不毛な会話なんだ。

 

「響。 巨乳に辱められたんだよ? いいの? 復讐しなくて。 やらないの?」

 

どんな字を書くかは分からないけどやらなくていいって思うよ。

 

「どうしてそこまで気が昂ぶっているのかは知らないけれど、でも落ち着こう。 かがりに対しては何を言っても」

「でもさ! それにしたって!!」

 

くわっと……今度は僕の方を見つつ、やり場のない怒りのような感情を発し始めたゆりか。

 

……友達との間で胸のサイズとかな会話があったと見た。

 

女の子って大変だね……胸って服の上からでも分かっちゃうからさ。

男なら……ほら、プールとか温泉とかでもなければ基本的に気にならないものだし。

 

「これ! 巨乳だから!」

 

さすがのかがりでも「これ」呼ばわりはやめてあげよう?

 

「だから私、そもそも知り合ったときからさ! 私のような悲しみを背負った仲間たちと――あ、たくさんいるんだよ? 私たちみたいに、もう諦めかけてるそんな仲間が。 そりゃあもう、たっくさん」

 

中2でそこまでとは思うけど、思春期にとっては大変なのかもね。

ほら、発育次第だけども女の子って小学校高学年から胸の大小が明確になってくるし。

 

「ときどきかがりみたいな『我らの敵』に対して『そのダブルメロンが縮まないかなー』とか『こっちに半分くらい来ないかなー』ってな感じの儀式してたりするんだけどさ?」

 

「え? ダブルメロン? 縮む?」

「おのれ、そうやってとぼけてからに……」

 

とにかくゆりかはかがりのかがりたるその部分をけなしたいらしい。

なんでかは知らない。

 

……けどさ、なんでこの子は僕っていう男がいる場でそんなこと言い出すの……?

 

実はやっぱり君も僕のこと男だって本気では思ってないでしょ……?

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