【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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46.X5話 女装…… その1

「僕がしているのは女装か否か」っていう切実になっちゃった話。

 

それはあっという間に広がった。

女の子だもんね……そうだよね……。

 

病室が狭い。

 

厳密に言うと僕の周りだけが狭い。

狭っ苦しい。

 

僕は囲まれてもう逃げられない。

 

スマホの中に保存されている写真と、ここにいる僕とを何度も何度も何度も見比べられている。

 

帰りたい。

 

「ほほう……ほーほー……ひびきがねぇ……」

「すごいわねー、男の子だとしたって……かわいらしくて素敵だと思うわ? ねぇ?」

 

「……え、ええ……素敵……です……」

「でしょう!? そうでしょう、このときの響ちゃんはっ!」

 

個室で、しかもすみっこの特別な扱いのここだって、さすがに姦しい5人が揃えば狭くはなる。

 

しかもみんながベッドの周りに椅子を並べて至近距離で取り囲んでベッドから降りられないようにしているもんだから、そりゃあもうね……。

 

自信満々のかがりの顔が特に近い。

 

近い。

うざったい。

 

「もう♪ 響ちゃんったら照れちゃって!」

 

憎らしいくるんくるんに囲まれたほっぺをぐいって押したらなんか喜んだ。

 

この子はもう駄目だ。

 

僕の痴態な黒歴史な写真を僕にいちいち見せてくるために、みんなよりもずいっと近づいてくるもんだからとにかく近い。

 

押してもさらに喜んじゃうあたり本当に駄目な子だ。

 

気を抜くとすぐに、くるんってしているまつげが見えるくらいのゼロ距離にまで迫ってくる。

 

この子はこう……どうしてここまでべたべたしてくるんだ……。

 

「………………」

 

なすすべもない僕はぼーっと見渡す。

 

さよは席に座ったまま、かがりが見せに来るのだけを待ってくれている良い子。

 

そこまで騒がないし。

それだけでも救われるっていうものだ。

 

続いてはりさ。

 

いつものようにゆりかとくっついては彼女と一緒に画面を見ている。

彼女もまたじっくりとは見るけどもそこまで騒ぎ立てたりはしないから、まだいい方。

 

表現もいくらかマイルドに選んでくれるし。

 

うん、この子たちはいい子たちだ。

 

問題は――いつものふたりだ。

 

その片割れのゆりか。

 

とにかくもまあ、服装が替わるたびに思いつく限りの似ているキャラクターを挙げてそれをネットですぐに探し出して僕に見せてきて「髪の毛も同じようにしたらクオリティ高いコスになるよ!」とか何とか迫ってくる。

 

もちろん冗談じゃない。

 

でもゆりか自身は本気みたい。

コスプレとかでいちいち探しているし。

 

止めて。

構わないで。

 

……そしてこの写真を見せている元凶。

 

彼女に撮られさえしなければ、そしてそれを思い出してきたりなんてしなければ……そもそもこんな目には遭っていない、くるんくるんくるんくるんとしている彼女。

 

かがり。

 

やっぱりくるんメロンだ。

 

「けど響さん……普段の、私たちと会っていたときのいつもの響さんからは想像もできなかったけどね? こうしてかわいらしい服を着ていると、見た瞬間にびっくりしちゃうくらいにかわいらしいわねー」

 

「でしょうでしょう!? りさちゃんもそう思うでしょう!?」

「ええ。 確かにかがりさんが言うだけのことはあるわねぇ……」

 

そう、りさに精査され。

 

「あ……わ、私、は。 こちらの響さん……え、あ……はい、そちら、です。 ……の、響さんが……えっと……いちばんだと……はい」

 

なんだかんだで見せられたら普段に無く食い気味なさよ。

配慮なのか好みなのかは知らないけども「女装」の中でも比較的マシなのを選ぶ良い子。

 

「あらあら、さよちゃんはシックな感じのお洋服な響ちゃんが好きなの?」

「ええ……はい。 なんと、なく……ですけれど。 その……儚い感じが……」

 

「……え? あのさ、かがりん、マジ? マジでこれ響なん? ウソじゃなくて? 加工とかじゃなしに? うそーん」

 

騒ぎ立てた片割れのくせに、いざ見てみると何回もかがりに訊ねているゆりか。

 

「そうよ? どれも同じ日に……こんなこともあろうかって、先輩方からいただいていたものも含めていろいろ組み合わせて着てもらったのよ、響ちゃんに」

 

なんでこんなことがあろうことになっちゃったんだろうね。

 

「だってこのときの響ちゃん、ほんっとうに素直に着てくれそうな雰囲気だったから、前からずっと考えていた順番で、上なら上、下なら下、ワンピース系はワンピース系でって感じでね!」

 

「長い長い長い! あと近い近い近い! 胸で圧死するよぅこんちくしょう!」

 

かがりに押し潰されそうなゆりかを見てちょっとだけほっこりする僕。

 

「けど……や、ほんと。 お顔はどれどれ……ううむ、確かに今ここにおわします響とおんなじだけど、だけどだけど……へぇ――……髪の毛いじって服も選ぶとここまでなるのかー、へ――……。 あ、これ。 なんか、あのゲームで出てきた感じに似てるかも」

 

あのゲーム?

 

……ああ、ゆりかが僕に接触してくるきっかけになったっていう。

 

それのせいで僕はたいへんな目に遭っているんだ、発売元には責任をとって欲しい次第。

 

「それで、ゆりかちゃんはこの響ちゃんがお好みなのかしら?」

「むっちゃくちゃお好みですかがりさま!!」

 

ゆりかがますますうるさい感じになりつつある。

かがりは最初からぜんっぜん変わらないうざったさ。

 

「それでねそれでね!? 響ちゃんはね、素材がね! なにもしなくたっていいものだから、それはそれはもう映えるのよ! 分かる? 顔つきも体つきも、モデルさんとか西洋人形さんとかのそのままなものだからイメージ通りに着せ替えできるの! だからどのような服だっていちどは着せてみたくなるのだし、実際にしたのよ!」

 

されたのよ……じゃない、されたんだよね。

 

「ええ、多少大きくてもそれはそれでそういう着こなしという感じになるっていいわよねー、それでそれで、どれでも平然と着こなしてくれるものだから私も張り切ってしまって、手当たり次第にバリエーション豊かに組み合わせてみて後で選別しようかって思っていたのだけれど、実際にして見たらどれも消せないくらいに似合っていて! おかげでその日のお昼を挟んで何時間も楽しい時間が過ごせたのよっ」

 

僕にとっては正に地獄の数時間だったけどね?

 

かがりが突出してひたすらに口開いているけれど……よりにもよってこの4人が次から次へと僕の黒歴史とも呼ぶべきあれを眺めて感想を言い合っている。

 

……本当にどうしよう、これ。

 

こんなことになるだなんて思ってもいなかったから、諦めて「いいよ」って言っちゃったばっかりにこんな事態になっている。

 

なんで僕ってこんなに年下の女の子に対してはっきりNO言えないんだろうね。

僕も不思議。

 

……写真。

 

一昔前の表現だと写メってやつになる。

僕の上の世代なら通じて、その下には通じないときもあるちょっと旧い共通言語。

 

あの夏、かがりに頼まれて……いや、迫られて断れなくって仕方なくいやいやに諦めて被写体にならざるを得なかった写真。

 

かがりがなぜか自室のベッドの下の引き出しに持っていた、僕の体にぴったりなサイズがほとんどだった服の山。

 

なぜか。

なぜだ。

 

それを順繰りに……後半からは、いや、前半の途中からかもしれないけれど、とにかく僕の記憶から抹消されていて気がついたら家に帰っていてズボンを脱ぎ捨ててクッションに埋もれていたのを僕自身が僕自身で発見したほどのダメージを負ったんだ。

 

つまりはまた「お人形さん」させられたわけだ。

 

つらい。

悲しい。

 

こういうのって「つらみ」とか言うんだってね。

 

しかもよりにもよって僕を良く知る残りの3人に、今この場で、当人の目の前でご開帳するっていう拷問を受けているんだ。

 

つらい。

帰りたい。

 

けど今はここが寝床だからもはや逃れられなくって。

 

それに……どうせいつものように僕の周りはみんなに囲まれていて逃げられやしないんだ。

 

いつものように。

 

……全員が揃う前に、かがりとふたりきりになれたスキに「どうしても!!」って僕なりに精いっぱい凄んで見せたのがよかったのか……いやなんか変な顔していたあたり凄めていなかったんだろうけども、あまりに恥ずかしすぎるものは別のアルバムに入れておいてもらったから致命傷は避けられている。

 

それ以外の写真をこうして見られているだけでも充分に致命傷だけども。

 

だけど僕は、初めてこの身で理解した。

 

証拠って言うものは、写真って言うものは……なによりも人を脅して言うことを聞かせるのにこれ以上なく効果的なんだ。

 

ひとたびそれを誰かに握られたが最後、すべての恥をひけらかす覚悟がないと言いなりになるしかないんだ。

 

そう、今の僕のように。

 

初めはベッドの中で、せめて視線は遮ろうって思っていたけれど写真が変わるたびにベッドに乗っかって、僕の上に乗っかって真っ先に見せてくるもんだから……だから今はこうして体育座りをしてぬぼんってしているんだ。

 

もうどうにでもしてくれって感じの鯉みたいな気分で。

 

それもこれも僕が男だって会話を改めてしちゃったがゆえに、みんなも僕もそれを意識しちゃっているからなんだ。

 

つらい。

 

ああ、こんなことになるんだったら家に帰って女物を……かがりに用意されたものよりも僕がぎりぎり大丈夫な女成分抑えめな服を取ってくるんだった。

 

そうすれば……ああいや、それだと駄目かもって思ったんだ。

 

かがりが好きそうな感じに上はふわっとしたシャツに厚手の羽織り物、下は上のデザインに合わせたスカートにタイツっていうのとか。

 

だけどもヒートアップしているかがりに一蹴されて「家に取りに行ってくる」って言われたが最後、どんな格好をさせられるか分からなかったばっかりに提案しちゃったんだ。

 

――「夏休みにかがりの部屋で、好き勝手に着替えさせられたときの写真が残っているよね? それでいいよ」って。

 

消してくれてるって言う淡い期待はすぐに消えちゃった。

 

あれは正に、女装って意識が強かったがゆえに……恥ずかしかったから、かがりによるといいはにかみ具合だって太鼓判を押されちゃったときのものだから、今見せられると余計に恥ずかしいんだ。

 

それなのに家に帰るのがめんどくさいのとダメだしされるのもまた嫌だからって、写真を見せれば話が早いじゃないかって言っちゃったもんだから。

 

……あのときの僕はおろかだった。

愚者だった。

 

そのせいで……ほら、今の僕はこんなにも後悔しているじゃないか。

 

なにが悲しくて中学生の女子たちに……ひとまわりも年下の子たちに僕の女装姿を見られなきゃならないんだ。

 

……いや、どっちにしろそうさせられてはいたんだけど……なんていうか、こう、覚悟ができるかどうかって違いがあるんだもん。

 

あのときの服装。

 

かがりが指示するのに合わせて体を動かしながら着飾られていたときのだから、それはそれはもうふりふりってした赤とピンクと白がメインで、リボンなんかつけられていた覚えもあって……そんなコーディネートだったんだから。

 

それを見せられた僕の身にもなってほしい。

 

時間は巻き戻らないって知ってはいるけど、でも思わずにはいられない。

願わずにはいられないんだ。

 

戻りたい。

この惨劇が起きる前に。

 

具体的には僕が押しに負けて、めんどくささに負けて「写真でいいじゃない?」って提案しちゃう前に。

 

ああ。

 

僕はもういちど膝小僧のあいだに……病院の服だからスカートっぽくて、だからまくれ上がらないようにっていう無意識の仕草をしていたっていうのにまたまたダメージを受けつつ……ぽすっと、顔をうずめた。

 

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