【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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46.X7話 犯罪か否か(少女たち視点で) その1

「………………………………」

 

女の子同士の血で血を洗う戦いは熾烈だ。

 

中身は男な僕は、ただじっとしているだけ。

 

ゆりかとりさは、ぜえぜえって肩で息をしている。

 

ファミレスっていう公共の場で、静かなキャットファイトみたいなものを繰り広げたふたりは、ただただ……なにかをことごとく失ったような表情のまま、荒い息を抑えていっている。

 

もちろん僕はスキを見てその場から逃走。

 

僕の心臓のばくばくが落ち着くまで隅っこでじっとしてた。

 

で、機会をうかがって戻って来て……座ってもまだふぎゃって感じだったから静かに、ただただ静かにコーヒーをちびちびとすするフリをしていただけ。

 

だって、そうでもしないと僕に飛び火しそうだったんだもん。

 

そんなの怖いじゃん?

 

――女の人の怒りっていうのは大変に理不尽。

 

むかむかしているっていうお腹で発生し続ける感情がある限りには、どんなちっぽけなことでさえも壮大な怒りに変換されちゃうんだから。

 

しかも僕の苦手な言葉っていう暴力で。

 

それを僕は学習したんだ。

これまでの観察で。

 

だから、静かに静かに。

 

視線を合わせないようにしてできるだけ気配を消して、貝のようにしていたんだ。

 

まあ普段からこんな感じな気もしないでもないけれども。

 

普段以上に気を配ってふたりの意識に入らないように、なんか……こう、がんばっていた。

 

そんな感じの、とっても長く感じられた数十分だった。

 

疲れた。

もう帰りたい。

 

しばらくにらみ合っていたふたりだったけど……ようやくに休戦協定が言語外で成ったのか、おもむろにゆりかが顔を上げる。

 

……疲れ切って、今にも倒れそうな様子になって。

 

「りさりん」

「……何よ」

 

「争いはね? ……分かったでしょ、なんにも生み出さないの。 コストだけかかって得るものはほっとんどないの。 得たとしても、ほんのちょーっぴり。 だからもー止めよ? 私も悪かったっていうか、私がそもそもの原因なのは反省してるからさ」

 

「………………………………」

 

「ほら、響も」

 

「!?」

 

僕を巻き込むつもり!?

 

「さっきトイレから戻ってきてから時間経ってるし、私たちのケンカに付き合わせちゃ悪いよ。 せっかく来てくれたんだからさ」

 

あ、そういうこと……僕をダシにケンカおしまいってことね。

 

まるで「子供が泣いているわよ」って夫婦喧嘩を止めるみたいな……いや、止めておこう。

 

その場合、僕が子供役になるもん。

せめて大人側で居たい僕としてはNGな発想だ。

 

「……ふぅ、分かったわよ。 周りに人がいなくて歯止めがきかなくなっちゃったのと……ええ、分かっているわ。 ちょっと、ここのとこストレスが溜まっていたから、つい口が止まらなくて。 私こそごめん」

 

「ふぅ……」

 

ようやくほっとため息をつける。

 

ふたりの、はたして僕が聞いてもよかったのか分からないような話にまでさかのぼったりしてのケンカを聞いていて、おなかの奥がきゅーっと冷たくなって嫌だったんだけど、これで落ちつけそう。

 

「あ、やっぱそうだったの? どーりでりさりんにしては珍しく、初めっからドストレートで、がーって怒ってくるって思ってた。 んで私も負けじと言い返しちゃった」

 

「あんたはそもそも普段から遠慮なさ過ぎるのよ……だもんだから今言っちゃったみたく、イラッとさせられるのが積もっていたってのもあるわね」

 

「それについてはまことにもうしわけなく。 あ、いやマジで」

 

ふぅっ、と息を吐き出したかと思ったらくるってこっちを見てきたりさ。

 

彼女の顔はいつもの、元気な体育会系でギャル系の子とかとでも平気で話を合わせられそうなものになっている。

 

「響さんもごめんなさい。 途中で気を利かせてくれて、席、外してくれたでしょう? おかげで……どのくらい聞かれちゃったのか、あ、いえ、私たちが聞かせちゃったんだけど……多分いちばん聞かれちゃ恥ずかしい感じのところを聞かれずに済んで、ほっとしてるの。 ありがとう」

 

何それちょっと気になる。

 

「響がいなかったときの最後の方……聞かれなくてホントよかったねぇりさりん。 それもこれも、響がなにげなーく『トイレに行くから』ってりさりんに勇気出して言ってくれたおかげだよ。 ありがと」

 

あれを褒めてもらえるのは少し、いや、大分嬉しい。

 

すっごく怖い顔と声。

もちろんファミレスって場所でかなり抑えられてはいたけれども。

 

僕は今まで、この歳にもなって女子、女の人がここまで本気で怒っている場面を目にしたことがなかったから、すっごく体が縮こまっていたんだ。

 

で、そのせいか尿意がかなりの危険水域に達してきて、さらにはなんか聞いちゃいけなさそうな話題にまで飛んでいたから、もう我慢できないって気持ちを勇気に変えて言えたんだ。

 

おかげで漏らさずに済んだ。

 

これで漏らしたら「女子のケンカを前にして漏らした男」っていう、また引きこもりたくなる精神的苦痛を負ってしまうもんな。

 

そうなったら、たとえ僕でも立ち直れない。

少なくとも年単位でこの子たちに会えないだろう。

 

やっぱり、逃げる勇気が大切なんだな。

 

伊達に幼女になってから1年も引きこもってないんだ。

いばることじゃないけども。

 

「ってーわけで話題変えて雰囲気戻そっ! せっかく響が会えるっていう貴重な日なんだしっ」

「そうね。 もう30分も無駄にしちゃったもんね」

 

「うげ、そんなに」

「通りで喉がカラカラよねぇ」

 

怒っているって言っても、よくもまあ機関銃みたいに言い合えるよね……30分も。

 

僕だったらがんばって5分だし、終わったら寝込む自信あるけども。

 

「……2人とも、もう仲直りは」

 

「一応ね。 これくらいのケンカじゃー、言いたいこと言い合って疲れたら元に戻る仲、だからねー、りさりーん♥」

 

「こら、顔近づけないでよっ。 ……今日はもう、いえ、これからも調子に乗って煽ってきたりしないでよ? あと、さっきみたいなうっかりも! ったく……」

 

「ふむ」

 

こうしてころっと気持ちが切り替わるあたりがすごいなーって、いつも思う。

 

なんていうか、嫌なことがあったとして。

 

僕だったらしばらくもやもやしっぱなしで、たとえどうにかして怒りを発散したりしてもなかなか元には戻らないんだ。

 

声に出したり物に当たったり……ほとんどしたことはないけども……しても解消できなくて、おなかがいっぱいになったり体を動かしても駄目。

 

結局は寝ちゃうか……大人になってからは「お酒」っていう良い手段ができたんだけど、それ以外ではなかなかに収まらないもんなぁ。

 

なのにこの子たち……いや、記憶にある限りの母さんもそうだったか……いきなり怒って、怒り散らして。

 

で、すっきりしたらすぐに機嫌がよくなるっていうのは……女性の性質、なのかな。

 

もちろん個人差はあるだろうけど。

 

実際にさっきのケンカだって、かなり怒っていたのはりさの方。

ゆりかの方はそれなりのことを暴かれてもそこまで本気じゃなさそうだったし。

 

例えばさよとかも……ああいや、お正月のときのあれとかを見るに怒るときは怒るか。

 

それはそうだよね。

人間なんだから。

 

今のも、あくまで男女でそういう傾向が強いっていうだけなんだから。

 

……あれ、そういえばかがりは?

 

「………………………………」

 

「ようやくひびきが百面相するようになったのね」

「さっきまで……多分表情ひとつ変えないでじっとしていたものね……悪かったわ」

 

駄目だ、いくら考えてもあの子が本気で怒る場面が想像できない。

 

何なら怒るんだ?

おかしを取り上げて目の前で食べてやったりしたらか?

 

しかし……うーん、あの子はなぁ……。

 

それにしても、こうしてケンカをできるっていう友人関係っていうものには少し憧れてる。

 

だって僕にはそんな人……あの後にふさぎ込んだ挙げ句の世捨て人的な生活をしていたせいで全然いなかったもんな。

 

まぁ僕の性格上今みたいな言い合いはしないだろうけども。

 

む?

 

そういえば僕……本気で怒ったらどうなるんだろ?

 

チワワみたいになるんだろうか?

 

「それで、平和……平和な話題ねぇ。 うーん……意識してみるとなかなか思い浮かばないものね。 普段はなんにも考えなくっても勝手に話してるのに」

 

「僕は無理にそうしなくても……静かにお茶を飲むというのもまた楽しいと思うよ」

「おぉ――……なんかオトナ――……」

 

会っているからと言ったって、なにもずーっとずーっと話し続けている必要はないんだ。

 

それが、この子たちにはどうも理解できないらしい。

 

ああいや、ゆりかとならお互いにゲームをしているとき、さよとなら同じように本を読んだりしているときには話さないで過ごせるから違うんだけれども。

 

一応はりさりんも漫画読んでるときは静かだし、かがりも恋愛漫画なら夢中になってくれるか?

 

「あ。 ひとつあったわ、そう言えば」

「ほう。 りさりん、その心は」

 

「犯罪か否かってやつ。 覚えてるでしょ? ゆりか」

「犯罪か否か……?」

 

「響さんと初対面の頃のあの話の続き」

 

「……あー、あれ」

「そ、あれ」

 

なんで平和が犯罪?

犯罪が平和なの?

 

哲学的な話?

 

僕、そういうの興味ある。

 

「……僕には、その語彙自体が非常に物騒だって思うんだけど?」

 

「あ、これはもちろん比喩……でもないかしらね、でも今は問題なくなったものなんだし、これ自体はゆりかだって平気だろうから。 そうでしょ?」

 

「まーねー。 もークリティカルなとこは聞かれちゃったしぃ、今さらなんだけど……あ、やっぱ思い出すとうあーってなる」

 

「でも良いのよね?」

「あいあい。 罪滅ぼし的にどぞ」

 

「ならよし! それじゃ話すけど――」

 

どう見てもよさそうじゃないけどゆりか自身が「いい」って言っている以上僕には止める権利はないし、なにより話す気になっている女子の話を止めることなんて僕にはできない。

 

僕の気が弱い……いや。

 

こういうことでさえ「そこまでのことじゃないよね」って思っちゃうこういう性格は、どうしたって。

 

体が変わったって変わらないんだから。

 

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