【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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46.X8話  響=ロリorショタ?? その4

「……その様子だと、みんな納得してくれたみたいね!」

 

絶句という言葉を理論上にしか知らないらしいかがりが言ってのける。

 

「あら響ちゃんもかしらそれはとても嬉しいわ、だって響ちゃんったら普段から自己評価というものがとても低いのだもの、この際にきちんとあなたの男の子だろうと女の子だろうと関係ないすばらしさというものを自覚しておかなければね!」

 

かがりが止まらない。

 

いつものことだね。

もうとっくに慣れている。

 

……これが、たかが半年過ぎた程度じゃ治らないものなんだっていうことくらいは知っている。

 

だから僕は黙っている。

僕にとって害はないし?

 

いや、いずれは治さないといろいろと不味そうだけども、それは彼女……の周りの人たちに任せよう。

 

とにかく彼女がそんな調子なもんだから、もちろんみんなもあっけにとられたまま立ち直ることができないでいる。

 

ゆえにかがりの独壇場はまだまだ続くんだろう。

 

……こっそりイワンさんに連絡取って、電話、かけてもらおうかなぁ……。

 

「だから私はさらに細かく教えておいてあげなければならないのよ響ちゃんさよちゃんゆりかちゃんりさちゃん、アンバランスゆえにパーフェクトな響ちゃんのことを」

 

「――下条さん」

 

僕の耳にかすかな声。

 

その主を探すと……さよ。

 

いつも通りにそわそわともおっかなびっくりともしていない、さよが居た。

 

普段なら、声が通らないからって服を引っ張ったりして注意を引いたりしているのに。

その動作、僕にもよく分かるのに。

 

けれどもくるんさんはそれに気がつかない。

 

「だけれども、それだからまたいいというのもじっくりとおはなししなければならないのよ、だって響ちゃんは普通ではないからこそ響ちゃんであって究極の」

 

「……あ、の……も、もう、そのくらい、で」

 

「美というものであらさよちゃんなにかしら私今とてもおはなしをしたくってだからしなければならないのよ、悪いけれど後にしてちょうだいね、それでなのだけれども顔つきからするにどうもりさちゃんもゆりかちゃんもあまり分かっていないようだから何度でも言うのよ響ちゃんは」

 

僕は顔を背けた。

 

右手の、かがりとさよのいる方向から。

 

なんとなくの直感。

僕はそれをいつも頼りにしているんだ。

 

それは偶にはずれるけれどもだいたいには正しい。

 

どっかの本で読んだ覚えがあるけども、それは無意識っていう僕の頭の中の意識に上ってこないもののため込んであるような知識とか経験則とかを一瞬で引っ張り出してくれるもの……らしい。

 

それにしたがった僕。

 

まさかとも思ったけども、ばっと振り向いてゆりかと目が合ったりしたって思ったら、聞き慣れているようで聞き慣れていない声が斜め後ろから飛んできた。

 

「――下条さん。 止めてくださいと、言いましたよ?」

「……え。 さ、さよちゃん?」

 

怖い。

声が低い。

 

普段と違って淀みが少ない。

 

そして怖い。

 

さよが変貌した。

 

「……ようやくに止まってくれたんですね下条さん、もっと言わなければならないかと思っていましたが、聞いてくださってよかったです」

「あ、あの」

 

さよがつっかえつっかえで話したり小さい声で話すのは……彼女が普段は遠慮しすぎるから。

 

だから、それが無くなれば当然に。

 

「下条さん、先ほどから明らかに響さんのことについて言及しすぎです、理解していますか?」

 

「え、えっと、さよちゃ」

 

「いえ、していなかったからこそずっと話し続けていたんですよね、ですけれども響さんのお顔をよく見ていましたか? 響さんはその話題でとても困っていたんですよ?」

 

おおう、ばっさり……けど僕は大人だから平気寄りの困っただったんだけどね。

 

「と言いますか下条さんもみなさんも知っていますよね、響さんはそのような話は好きではないというそもそもの前提を」

 

メガネのレンズの奥の瞳がいつものように長い髪の毛で半分ずつくらい隠れちゃっているのに、光っているように見える。

 

その口元はいつもみたいに動かしても半分以上は声にできないものなのに、きちんと低く通る、女性特有な、怒っているときの声を発している。

 

一切言い間違いもつっかえもせず。

 

静かな怒りがテーブルを支配している。

 

「ご存じですよね? 響さん自身が嫌だって言っていましたよね? 思わずで舞い上がってしまったのと止められなかった私も同罪ですが、あのとき病室で、響さんご自身が嫌だと言っていました。 覚えていないんですか? 響さんが嫌だけれども友人だから仕方ない、とでも言いたそうな表情で優しそうに微笑んでいたのを見てはいなかったんですかみなさん」

 

冷や汗がにじむ。

 

怖い。

 

別に大声でもなくって、怒っている顔つきでもないのに……怖い。

 

うん、やっぱり目は背けておこう。

 

「あのー、さよちん?」

 

「大体なんですかロリとかショタって馬鹿なんですか人に向かって堂々とそのようなことを言うのだなんておかしいじゃないですかそうは思いませんかそうではないですか関澤さん杉若さんそして下条さん。 友人でも限度というものはありますしましてやデリケートな話題なんですよ本当に理解しているんですか? 忘れているのでしたらもういちど思い出してください、響さんがそれをあの年越しのときに打ち明けてくれたというのは裏を返せば私たちと出会ってから半年以上も言えないようなほんとうに重い事柄なんですよ思い出しましたね?」

 

すごい。

 

なにがすごいって、さっきのかがりと同じくらいのスピードでよどみなく話しているっていうのが。

 

ものすっごくメルヘンにすっ飛んで行ってていたかがりのとは違って、とんでもなく重くて意味の込められているさよの言葉。

 

……この子、僕と何か似てるところがあるから何かにかちんって来ちゃったんだろうね。

 

普段怒らない人が怒ると怖いって言うのはそういうこと。

 

「えっと、さよさん、私たちは」

 

「それに私たち調べましたよね、時間をかけてよーく。 そして確認しましたよね、4人全員で響さんの心と体の性別の不一致について。 響さんのお体は私よりもずっと重い病気を背負っているんです、その上に心までつい去年までは心の性同一性障害というものについてご家族へさえ思うように伝えられなかったと聞きます。 これは忘れてはいませんよね? そのようにして響さんはとても心身共にお辛いんです、それなのに闘病を頑張られていて手術を受けるために外国に行く決意をされて、心の方も私たちのように会って半年しか経っていない、しかも心の性別として異性の私たちに向かってそれを両方とも打ち明けてくださったんですよ? それなのにみなさんはいったい何を考えているんですか響さんこんなにも嫌がっているじゃないですか、人のことを過剰にはやし立てて楽しいんですか」

 

ふう、と、息継ぎのためかは分からないけども大きめのため息をついた隙を狙って、僕も、ふぅ、と落ち着くための呼吸をする。

 

だって怖いもん……ひとまわりもしたの女の子の張り上げたりもしていない声でも。

 

「……あ、あのね? 私、ちゃんと聞いたよ? 響に。 平気そうだし、そう呼んだりしたって別にいいんだって。 だからだいじょう」

 

「それは響さんと私たちが友人だから我慢してくれているのであるというのを考えたことはないんですか関澤さん、これは本来ならば軽々しく話していいようなものではありませんし、許されない行為なんですよそれを本当に分かっているんですか、響さん自身がそれを口にしているならまだしも他人が言うだなんて」

 

さよ。

 

すっかり忘れていたけれど、この話し方はあのときの、僕が倒れていたときに耳からかすかに聞こえていたような鋭い感じのもの。

 

なんだけど、あのときよりもずっとずっと長く速く話している。

 

「そして杉若さんも調子に乗りやすい関澤さんだというに、それを止めないでご一緒になって、いえやはり響さんが本当に嫌ではないかをきちんと聞きもせずにまくし立てていた下条さんも同罪なんですよみなさん、響さんを傷つけて楽しいんですか? 私はそれに気がついてあの写真のときのことを思い出したりもして今とてもものすごい罪悪感に追われていますよ? 本当に何を考えているんですか少しは頭を使って考えてくださいよ」

 

「ええと……さよちゃん、ごめんなさい」

 

怖い。

 

起こってくれてる内容はもうどうでも良くなって、ただただ怖い

 

あの、おとなしくて……他にもいろいろあるけれど、でも僕に1番近い性格をしているんだと思っていたさよが、この子が本性を表している、この瞬間が。

 

……とりあえず、じっとしておこう。

 

 

 

 

「……あ、響さん?」

「……何?」

 

ひととおりに言いたかったものを言い終えたのか、静かになったさよが話しかけて来る。

 

顔を上げるついでに3人をちらっと視界に入れてみるけれど、みんな死屍累々という様子。

 

とくにかがりのしょげ方が著しい。

くるんがへにょんになっている。

 

「私は響さんのことを。 すごく素敵な男性だと思っていますよ? ……あ、ぁぅ、えっと……つまり、知的で、いつも冷静で、達観していて、頼りになって……その……ぇ、えっと、つまり……」

 

さっきまでの威勢がどっかへ消えちゃったのか、急に話すのがゆっくりになっていって声が小さくなっていって、顔と目がうつむき加減になるさよ。

 

「……おおっとぉ? これは思わぬ伏兵みたいだぜい?」

 

「ゆりか。 茶化さないの」

「あい」

 

「……さよちゃんが落ち着いてくれて、よかったわぁ……」

 

ずず、とストローに口をつけて吸う。

 

……ジュースはすっかり生温くなっている。

 

どれだけのあいだ、僕は動けないでいたんだろうか。

 

………………………………。

 

だけども、分からない。

やっぱり、分からない。

 

この子、さよでさえ一瞬で豹変するっていう女性、「女」の「性」っていうものが……僕には、あいかわらずに分からない。

 

少女たちのそれでさえ、未だに分からないんだ。

 

「……けれど、さよちゃん素敵だったわっ! お友だちを想ってそこまで叱れるだなんて!! 私は怒られていたけれども、すばらしいことだと思うわっ!」

 

「……ぁ、わ、私ったら……ごめんなさい、その、言い過ぎて……」

 

「見たかいりさりん。 ああして怒られても瞬時で忘れられるかがりんという存在を。 いやマジで、ほんっとに忘れてないかあとで確かめないと、まーたおんなじ展開になっちゃうからりさりん協力して?」

 

「……私もまだ……お母さんに怒られたときみたいな感じになってるのに、あれはすごいわねぇ……あんなに一瞬で立ち直れるものなのね、人って……」

 

………………………………。

 

ひとまずは。

とりあえずは。

ここのところは。

 

僕が、男と女、半々くらいで見られただけましだったと。

 

そう、思っておこう。

 

うん。

 

だって……その、僕の事情っていうものを少しでも知っているこの子たち全員から「ロリ」……女の子だって言われていたら。

 

僕はどんな気分になっていたのか、分かったもんじゃないから。

 

 

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