【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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46.X11話 さよと本と感傷と その2-2

「悪かったね、さよ。 僕の分まで……取り分けておいた分を食べてくれて。 無理して食べ過ぎたりは」

「い、いえ……平気、です。 私、少食というわけでもないので……」

 

「でもかがりに強奪されたりはしない?」

「い、いえ……あ、でもお弁当とか学食も、1口欲しいって……」

 

僕たちがようやくに頼んでお昼が来て、いつもかがりやゆりかにしているみたいにお皿を余分にもらって、僕の分を半分くらいを取り分けてから食べ始めて。

 

いつもみたいに何も考えないで、すすっとさよに渡したらがんばって食べてくれちゃった。

 

けども苦しそうにしていないところを見るに、実は食べようと思えば食べられるタイプなのかもね。

 

「あっ、あの……今のは、無理をしてではなくて、その、本当ですっ。 響さんの頼んだお料理も……私の、も……少なめの量でした、し」

 

現役JCに気を遣われる現役JCを名乗る僕。

いつものだね。

 

「そうか、ならよかった。 君は体の状態がいい方では無いんだし無理をさせたのかと思ったけれども」

 

「はい、腹……9分目、くらい、ですので」

「……それはけっこう食べたということじゃないか?」

 

「あ、は、はい……でも食べ過ぎ……ではない、ですから」

「そうか。 ならいいんだ」

 

見た感じ苦しそうってわけでもないし……もしかしたら9分目ってのはこの子なりの冗談なのかもしれない。

 

意外とお茶目なとこあったりする?

ほら、僕みたいに圧力皆無な相手なら話しやすくって素が出るとか。

 

「あの……やっぱり、まだご飯の量……取るのが難しい、ですか……?」

「ううん。 僕は、この見た目通りの体だからね。 食べる必要がもともと少ないんだよ。 元気……だったときからずっと、ね」

 

男のときだって男にしては少食だったし、普通の量食べると食後眠くなったりするから受け付けなかったし。

 

そういう意味ではこの体もある程度前の感覚で居られる気がする。

まぁさすがにお子様ランチでちょうど良いお腹って考えると凹むけど。

 

「そうですね、背も低くて……あ、ごめんなさいっ」

「いや、別に気にはしてないよ」

 

「で、でも、私、つい……」

 

む、この感じちょっとネガってる?

 

僕が良く「今の答え方で傷つけちゃったんじゃないかな……」ってなるから分かる感じの表情してるし。

 

「……僕たちは病気と病院に縁のある仲だよね」

「え、ええ……」

 

「じゃあ僕たち、他の人たちとは違ってあんまり気を遣いすぎても疲れるんじゃないかな。 だからむしろ、どれだけ悪いのかって自慢するくらいでいいよ。 病人同士なんてそんなものだし」

 

聞きかじったけれども実際にそうらしい話で押し切っておく。

「入院している人同士ってそうなんだ」ってマリアさんも言っていたし。

 

僕は個室って言う贅沢してたから知らないけども。

 

あ、でも中庭でぼーっとしてると話しかけて来る人たちとの最初の話題ってお互いの病気についてだったりしたっけ。

 

「……そう、ですね。 私、いつも言われる、のに……こうやってネガティブになるというのは、体にもよくない……って」

 

そんなことを考えていたら、なんだか暗い話へと転がっていっている気がする。

 

これはよくない。

 

ご飯を食べているときには、とにかく楽しくなくちゃいけないんだ。

そうじゃないとご飯がまずくなっちゃう。

 

こういうのって感情で左右されるものだから。

 

別の話題……楽しい話題、どっかにないかな。

 

……そう言えば、普段は話すことってみんなから振られる。

 

かがりは気がつかずに頭の中から浮かんできたあれこれを場の流れや僕たちの意志に関係なく叩きつけてくるし、ゆりかやりさもとめどなく話しかけて来はするけども話題を気まずくならないようにさりげなく動かすのが上手だし。

 

考えてみたら僕からっていうのはほとんど……無い……?

 

僕の方が年上なのに?

 

……相手が女の子って言うのを抜きにしても、僕がいかに対人関係に弱いのかが分かる。

 

うつむいちゃっているさよ。

 

その手前のテーブルにはお皿が下げられちゃって飲みものしかなくって、他にはお互いの荷物くらいしか無いし。

 

む、荷物……ああそうだ、そもそも僕たちはそのためだったんじゃないか。

 

「……そういえば君の鞄は重そうだけれども、それは先ほどの本屋で手に入れた本だけで?」

「は……はい、そうなんです。 少し買いすぎて……」

 

ここに来るまでもときどきふらふらしていたのを見逃してない。

 

重いと体の制御が難しくなるよね、分かるー。

この体になってさんざんに経験済みだもん。

 

「し、試験までまだ数日ありますけれど、もう復習以外にすることがなにもないですし。 み、みなさんは忙しいみたいで放課後のお誘いとかもなくなって……時間が余って、ですので……奮発して、買えるだけ買ってしまいました」

 

「タイトルとか、教えてもらっても?」

「もちろんですっ」

 

急に元気な声になって……心なしか話し方もつっかえるのが減りつつ、引き寄せた鞄をもどかしそうに開けている。

 

……本当に好きなんだね、本が。

 

その気持ちはよく分かる。

 

無意識だろうけども少しだけ口が嬉しそうに曲がっていて、すき間から見える目も輝いている様子。

 

これでさっきの微妙な空気が飛んでくれて良かった。

僕もやればできるんだね。

 

「えっと……ちょっと待っていてください、今すぐに……」

「うん。 ……あ、カバーとは言っても新品の本が汚れるのは嫌だろうし、手に持って見せてくれるだけで……」

 

……うん。

 

さよの動きが普段になくきびきびとしている。

 

まるでいつもの、かがりの後ろで遠慮がちにしているっていう方が別人って思えるくらいに。

 

やっぱり好きなことって元気になるよね。

 

「はいっ、ありがとうございますっ……それでですね響さん、今日買ったのは文庫と実用書の……ちょうど5冊ずつですね」

 

声も元気になってるし、なんならメガネと前髪越しの目も輝いてるかもしれない。

 

そして話すスピードが上がり始めている。

 

「それと雑誌などと、少しジャンル分けの難しいものをいくつかと……それも今日は欲しいだけ買うと決めていたので……少し高かったですけれど、それでも満足したので、帰ってからじっくり読みたいって……」

 

この子も。

 

この子もこの先、あの子たちと一緒に学校で学生生活っていうものを送っていく内に自信もついてきて、普段からこうして話せるようになって。

 

で、いずれは……体育以外は優等生になるんだろうから委員長とか、そういうものにさえなったりも……他の子の推薦とかでなりそう。

 

委員長っぽい見た目だし。

 

「響さんっ」

 

僕の方に身を乗り出すようにして本を突き出してよく見えるようにしてくれながら、その本のどこに惹かれたのかを教えてくれるさよ。

 

その髪の毛のあいだからは眉も上がって見開いて光っている瞳と笑顔になっている口元が……楽しいものを話しているときの女の子というものになっているのがうかがえる。

 

いつもこんな感じになって……恥ずかしがりが薄れて前髪を短くしたら、きっと男女問わずに好かれる子になる。

 

「……なるほどね。 僕も以前それを読んだけれどおもしろい内容だったよ」

「やっぱりっ……私、これをいちばんに読みたいなって……」

 

……僕がその姿を見ることはできないかもしれないっていうのが残念ではあるけども。

 

でも、いいんだ。

 

この子たちが……僕の友だちになってくれた子たちが、そうして楽しく過ごしてくれさえすれば。

 

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