【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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46.X12話 さよと本と感傷と その3

 

「んぐ……あ、ところでさよ」

 

ふたりで黙々と……これもまた他人と、この子たちと食べる中ではものすごく珍しい……っていうか多分初めてだろう、静かに味わって食べるというものをして僕は満足した。

 

だから勢い余って彼女が頼むのに合わせ、僕らしくもなくビター系のデザートを頼んでほおばっていたんだ。

 

「どうかしましたか……? ……あ、あの、それは確かデザートの」

「うん、それは知っているけれども、聞きたいことがあったのを思いだしたんだ」

 

それをさよにじーっと観察されていたのはこれまでの経験で慣れきっているからいいんだけれど、食べていたら思い出したんだ。

 

……こうして食べているのを見られているだけで食べ残しを催促されているって感じないのって、すっごく貴重な気がする……。

 

「聞きたい……こと? ……はいっ、いいです……なんでもっ。 準備はできていますから……っ」

 

何でこの子こんなに食い気味なの?

 

なんか本でひととおり盛り上がってからこの子のテンションがおかしい。

 

と言うか準備とかじゃなくて、ただ聞きたいだけだけどね?

 

けども何でこの子はここまで僕のことを凝視してくるのか。

軽く顔が赤くなる程度に気合いを入れているらしい。

 

今でもいまいちこの子の反応が分からないけれど……ま、いいか、いつものことだし。

 

それよりも僕の口が、甘さ控えめなこれを……数口でもう受け付けなくなってきたのが残念。

 

コーヒーと合わせても……やっぱり甘さっていうものは僕の味覚には合わないらしい。

 

……いつになく食べちゃったし、これが夕飯になりそうだな。

 

実にエコな体だ。

夜はお酒だけで充分なんだしな。

 

「……それじゃ、遠慮なく。 さよ、君は朝からずっと本屋にいた……らしいけども」

 

尾けていたけども。

見ていたけれども。

 

この目で、ばっちりと。

 

「聞けば、体がまだまだ本調子ではないから学校では欠席や早退、保健室の多いというけども……試験前の大事な時期に出歩いてもいいの? それも、ずっと立ちっぱなし……だったって聞いたけど」

 

さっきの会話でこの子から聞き出したから嘘じゃない。

 

「……あ。 え、っと……そっちのこと、でした、か……」

 

「? そっち? ……他になにかあったか?」

「い、いいえっ、なんでもないんですっ」

 

なんだか慌てだしてそっぽを向いてメガネを外してふきふきしているさよ。

動揺しているみたいだけども……心当たりがない。

 

けど、そういうのは他人と接していればよくあることだもんな。

 

かがりの反応とかかがりの思いつきとかかがりののしかかりとか。

 

「それで……その。 実は、こうして……私が、すっ――……すき、なことをする日にはですね。 ……お家を出る前に、多めにお薬、飲んで……ですね。 なので、ふだんよりも楽に……学校よりも、ですので、それで大丈夫、です」

 

……それってば無理してるんじゃないの?

 

薬って、そう簡単に増やしていいものじゃないはずだけど?

 

「君の医師や家族の人は怒ったりはしないのか?」

 

「はい……その。 多めのお薬は、いつもはダメ、あ、辛いときは良いって……ですけれど、副作用、とかもあるんですけど。 こうして楽しいこと……私なら、本屋さんを見て回るというもので……楽しむだけ楽しんで、免疫を活性化、して。 そういう、精神的な満足の方が、大切……だと言われている、ので」

 

「……なるほど、ね」

 

確かに病は気からって言うし、医学的に証明されてるらしいね。

 

あれだ、つまりはお医者さんがとりあえずで「ストレスを減らしましょう」って言うあれのこと。

 

だから僕にとってお酒を呑まないって言うストレスを減らすためにお酒を呑むのはセーフなんだ。

 

「また……入院することに、なっても。 それまでに、たくさんのしたいことをして……楽しんでおけば。 希望……もっとしたいって、持てます、し。 ……なによりもお外に出るだけで体力もつくからって……」

 

「……君は、偉いね」

 

何も不自由なく生きてきた僕みたいなのとは違って大変なはずなのに。

 

「え、……そっ、そんなことはありませんっ。 それよりも、響さんの方が余程頑張って……」

 

こういうときにも僕の嘘がちくちく刺さってくる。

 

僕が病気だっていう嘘。

 

けども今さら変えることはできないし、白状したところで僕だけが楽になってみんなを混乱させるだけだ。

 

だから僕はみんなには、必要なことしか言わないって決めたんじゃないか。

 

僕が勝手に、僕のやらかしたことのせいで考えて感じて痛みを覚えているだけなんだから。

 

これが、きっと罰。

 

懺悔ってのは本人にじゃなくって、全く関係ないどこかにすべきなんだ。

 

「……本屋での物色を朝からにでもして、お昼も外で食べたりして。 というのが、君が楽しめる、君がひとりで過ごすときの休日ってこと?」

 

「あ……はい。 そう、なります……ね」

 

なんか僕がぷらって外に出る日と似てるね。

 

「……でも、まだ体が大丈夫そうなとき……こうしてレストランやカフェに寄って、飲みものを片手に買ってきたばかりの本を読み、ます。 ……それでも平気なときには、さらに、下条さ……かがりさん、の見せてくれた雑誌に載っている服を見たり……します。 いつか、それを着て……たくさん出歩けますように、って」

 

似てなかった。

 

あ、いや、幼女になってからはたまーにそういう日もあるけども。

 

「……けども……服については、かがりと出かけたら必ず買わされるんじゃないか? ほら、君は放課後とか少しだけなら彼女とって聞いたし。 ……少なくとも僕が彼女に呼び出されるときはそうなんだけども……いつも」

 

「え。 ……いえ。 そんなことは、ない、です。 おすすめと試着は、させられますけど……」

 

「……そう……どっちにしても」

「は、はい……嫌では、無いんですけど……」

 

「………………………………」

「………………………………」

 

沈黙が答え。

 

……なまじ本気で嫌じゃなくって、ただただあの子がうるさくてめんどくさいってだけなのが的確。

 

「……でっ、でもっ。 でも、本、だけでなくて、ひとりで服も……見て回る、というのもですっ。 かがりさん、とお知り合いになる前には考えもしなかった、ので……新鮮で、楽しいんですっ」

 

「……そういうものか」

 

うん……まぁね。

 

あの子に頼まなかったら、多分通販で必要な分しか買わなかっただろうし。

 

「はいっ。 ……響さん、は、どう、なんですか……?」

「僕か? ……そうだね」

 

あの子に絡まれたせいで、家の中は幼女な服まみれになった。

けども、それを着て家の中で過ごしているとなんとなく楽しいのも事実。

 

「……生活用品以外に興味らしいものはないし、大半のものは……家が用意するんだ。 だから僕は、せいぜいが本屋に寄って新刊などを見て回って。 僕も君と同じようにかがりの影響か、最近は服も見たりすることもあって。 けども君とは違ってこのとおりに食欲がないものだから、食べたりはしないでそのまま帰る方が多いね。 カフェだって……ほら、この通りの見た目で、何かと不都合だからね。 うん、親を探されるから」

 

「あっ……ま、まだまだ成長期のはず、ですから……っ」

 

服だってマネキン一式から流行りまでを意識して、お店の人に尋ねたりして……ひとりのときにはワンシーズンまとめてじゃなくて、ちょこちょこと買うようにはなった。

 

この見た目に合うようなものを。

 

……女物を。

 

もちろんズボンやシャツっていういつものも揃えるけども、でも。

 

……うん、しょうがないことなんだ。

 

だってかがりの前で、彼女基準で「ダサい」ものを着ているとずるずると服のフロアへと連れ込まれるっていう苦い経験を幾度となく味わったからなんだ。

 

確かにおしゃれな服は楽しいけども、それは男だって同じはず。

 

決して女装趣味が華開いたとかじゃない。

 

よし。

 

「私と、同じ……あ、いえ、なんでも、ない……です」

「? そうか」

 

なんだか少し顔を伏せていた彼女は、おもむろに視線を合わせてきて。

 

「……ところで、あの、響さん。 響さんさえよろしければ……私はまだ大丈夫、ですけど、響さんのお体も良いの、でしたら。 ……買った本、一緒に読みません、か……? 少しだけでも……ええと、お家の中でひとりとは……また、違いますから……」

 

一緒に、か。

 

そうだね。

お互いに今日はヒマなんだ。

 

「うん。 たまにはそういうものもいいよね。 お互いに疲れないし、なによりもお宝を手に入れてきたばかりなんだ。 1、2時間程度なら……楽しもう」

 

「本当ですかっ」

「うん。 ……君はどれを読むつもり? 僕は――」

 

彼女なら読んでいる途中で遮ったりはしてこないだろうし、別の話題を唐突に振ってきたりもしない。

 

きっと……例えるなら学校の図書室で同じテーブルで向き合って本を読む、そんな感じになる。

 

……こうして外に出てきたのも、ちょっとだけだけど人恋しかったからなんだし。

 

うん。

 

――こういう午後も、悪くはないよね。

 

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