【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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11話 虎穴(車) 3/3

13歳。

 

僕が今から10年くらい前の年齢。

そんなはるか昔の年齢を言ってみて「やっぱりないなぁ」って思った。

 

気持ち的にはそれよりずっと上なんだけど肉体年齢はそれよりずっと下って言う難しい状況。

 

ちょうど良い感じの妥協点が見つからないんだ。

さばを読むって案外と難しい。

 

これで13だって言い張るんだったらよっほど強い精神がないとやってられなさそう。

だってもう無理あるよなぁって思うし。

 

……それにしても。

 

とっさに口にしてから考えなきゃ行けなくなって背筋が冷たくなったけど、学生の年齢ってとっさに出ないもんだな。

がんばって年を数え直してなんとか間に合わせたけど。

 

中学卒業で15くらいだから、13、4……で間違ってはいないはず。

間違った嘘を言うとぶわってこう、お腹から血の気が引くあのイヤな感覚がするけど数秒前の僕もそれに襲われてて気持ち悪かった。

 

やっぱり嘘って苦手。

しょうがないんだけど苦手は苦手だ。

 

見栄って張るとろくでもないんだな。

 

そんなことを思ってる苦労しているんだけど、お返事がない。

ついでに軽いブレーキがかかったかって思うとまた加速して元の速度に戻ってってなる。

 

また僕の指先に汗がにじむ。

 

…………この人……萩村さん、運転は苦手なのかな。

いや、今のはドライバーを驚かせた僕がいけないのか。

 

慣れているとも言っていたし普通の運転なら平気なんだろう。

止まっているときに言えばよかったかもな。

 

もちろん驚かせるつもりはなかったんだけど結果としてびっくりさせたことには変わらなくて悪い気がする。

 

僕はこんなどうでもいいことまで頭の中でぐるぐるしちゃうんだ。

 

「済みませんでした……大丈夫でしたか?」

「はい、平気です」

 

平気じゃなかったけど僕のせいだから我慢する。

 

そうして後ろにぐっと押しつけられる感覚。

車は今度こそ流れに乗った様子でほっとする僕。

 

「……改めて失礼しました。 職業柄、見かけよりも歳が上だったり下だったりする方をたくさん見てきましたが、それほど……外見と年齢が離れている方を見るのは久しぶりだったので。 いえ、今までに何名かそのような方を存じていますので疑うとか言うわけではないのですが……まさかそれほどお若いとは思ってもいませんでしたので。 ……そうですね、中学生の方に小学生に見えるとお伝えしたら気分を害されるのは当然ですね」

 

「え、いや別に良いです」

 

なんかすっごく申し訳なさそうな声になったから良いですって言っておいてあげる。

ほんとどうでもいいことだしな。

 

けど……ふむ。

変な運転しちゃうほどにはびっくりする感じ?

 

だったら……この萩村さんの場合も驚きはするんだけど、僕の話し方とかこの前のJCさんみたいな年齢詐欺な人と会ったことがあるからこそ信じるっていう感じなのかな。

 

今回もまたサンプルとしては微妙なところだったか。

なかなかにサンプルにふさわしい人が見つからない。

 

いや、単純に僕が人見知りできっかけがないから誰にも聞けないだけだけど。

そういう意味じゃ今日この人に会えて良かったんだろう。

 

うそっぱちを信じてくれる大人がゼロじゃないっていうところは結構な収穫。

 

「中2です」って言い張れば「学生証見せて」とか言われない程度にはあり得るって感じ……で良いんだろうか?

 

でもやっぱり無理のある設定だったみたいだなぁ……この見た目で中学2年っての。

 

今だってシートに座るっていうよりは乗っているっていう感じの大きさだしな。

脚が短すぎて、座るところを膝に合わせれば腰が浮くし腰に合わせればふくらはぎの微妙なところがこの原理になって気持ち悪いって言う始末だし。

 

どう見ても一般的な人間のサイズ未満だ。

10歳くらいまでは何かと不自由な世の中らしい。

 

……子供のとき父さんの運転する車じゃ僕、どうやって乗っていたんだろう。

 

まったく記憶に残っていない。

あまりにも昔過ぎるもんなぁ。

 

「…………………………………………」

 

しんと静まる車内。

 

なんだか気まずくなって外を見ようってしても窓の外がよく見えない。

視点が低すぎてビルの上の方とか空しか見えない。

 

……乗り物に乗っていて真横がよく見えないのってちょっとイヤだな。

 

何かにつけて不便でしかない幼女ボディがにくらしい。

 

 

 

 

静かで快適だなってご機嫌になってる僕だけど視線を感じてちょっと残念。

運転に集中しているように見えるけど、ちらちらって僕をミラー越しに見てくるのが分かるんだもん。

 

人の視線ってなんで分かるんだろうな。

 

……けど。

 

やっぱり無難に小5とか小6くらいにしてもよかったかもしれない。

 

意味のない意地を張るんじゃなかった。

無駄に疑われるくらいなら……って何回目かの後悔をしても遅いんだ。

 

1回言っちゃったことって撤回できないもんな。

沈黙は雄弁よりってのは良く言ったもの。

 

今から思えば何歳くらいに見えるのかって上限を見極めてからでも良かったかも。

 

でももう遅いからこのまま乗り切ろう。

間違えたってのは言えないんだもん。

 

大人ならともかく子供……学生が、たかだか10回くらいしか誕生日を経験していないのに自分の年と学年を間違えることって滅多にないはずだからな。

 

それも1歳ならともかく何歳もだなんて、自分から嘘言ってますって言ってるようなもん。

 

自分の歳とか、誕生日が20回を超えてくるとだんだんどうでも良くなってくるんだけど、それまでは僕自身が何歳かって言うのが何かにつけて大切だもんな。

 

とは言えなんだか気まずいままなのもヤだからもっかい言っておこう。

萩村さんも大人だから流してくれるだろう、きっと。

 

案外繊細な人だったりするかもだし、全然気にしてないよって教えてあげないと。

 

「自己紹介で必ずそのように驚かれるので慣れていますから気にしなくても結構です。 下に見られるのは……今のように虫の居所が悪くなければ普段はスルーするので。 歳を分かってもらえたので機嫌も直ったので大丈夫です」

 

「そ、そうですか……」

「はい」

 

年齢については帰ってから要再検討の様子。

 

「………………………………」

「………………………………」

 

信号いくつか分の静寂が心地よい。

 

そういえば僕は車とか電車とか乗っていると振動と音でだんだんと眠くなってくる体質だった。

 

今はどうなっているんだろう?

車はともかくバスとか電車とかで今でも眠くなるんだろうか。

 

この見た目で眠りこけたら心配されちゃうから気をつけないとな。

 

あ、でも、バスとか電車とか……この見た目だと子供料金で行ける……?

 

そんな素晴らしい考えがよぎる。

 

本当はいけないことだけど肉体年齢的には何一つまちがってないわけだし、なにより半額っていう言葉には何か重大な意味がこもってる気がするし。

 

「………………………………ええと、それでしたらついでにもうひとつだけよろしいでしょうか」

「はい」

 

「……身長や……その、失礼ですが……体重など。 ……その、……以前から変わってはいないのでしょうか……」

 

こんどは何言いだしてるんだろうこの人。

 

頭の中が???ってなっちゃったじゃないか。

この人にしては珍しくつかみにくいふわっとした質問だし。

 

でも……え?

 

どういうこと?

 

……ああ、きっと萩村さん、最近背が伸びたかとかの世間話にすり替えようとしてみたけど僕の顔を見て、僕が女の子に見えるもんだから困ったんだ。

 

最近はハラスメントの判定がものすごく厳しいから異性に身長とか体重とか言いにくいんだな。

 

うんうん分かる。

今ってなんかものすごくめんどくさい世の中だもんね。

 

芸能事務所って言う立場の男だから気軽に聞けないんだろう。

大変だね。

 

「はい、小学校の途中から伸びなくて。 体重も……あまり食べられませんし」

 

仮に本当に中2で小学校低学年な身長ならこんな感じだろうって言っておいてあげる。

 

「……そうですか。 いえ、何でも……失礼なことを聞いてしまいました」

「別に構いませんけど。 こうして送ってもらっていますし」

 

車内の雑談にしてはなんだかお互いに緊張感あふれるものになっちゃったけど、おかげでヒマじゃなかったからな。

 

なにより楽してるんだ、実は話し好きかも知れない萩村さんの相手くらいはしないとな。

女の人じゃないから飛び飛びすぎなくって楽だし。

 

……いや、単純に他人と沈黙な時間を過ごすのが苦手って可能性もあるのか。

 

うーむ。

 

 

 

 

「途中の運転や話題で失礼しました」

「いえ。 僕のせいもありますから」

 

そうしているうちにまた雑談チックな話を振ってくるようになったらしくってぼんやりしているあいだに着いた様子。

 

身を乗り出……せないからシートベルトを引っ張りながら外を見てみると、そこそこに大きい駅ビルにぎゅっと詰まった広告の看板。

 

乗り換えするおっきい駅。

 

送迎のロータリーやら僕でも知っているいろいろな店やら平日の昼間だっていうのにたくさん行き交ういろんな格好の人たちやらでせわしい空間。

 

この辺久しぶりに来たなぁ。

普段は用事がなくって来ないから……多分前に来たのは数年前とかいうレベル。

 

本当にひとり暮らしだと行動範囲が限られるよなぁ。

インドアだから余計に。

 

インドアで根暗で引きこもり経験者なニートを継続している子供の肉体だからこそ、電車代と人混みの苦労と疲労を回避できたのがとてもありがたい限り。

 

いや、電車代なんてどうでもいいんだけど……ほんと体力のない身としては楽こそが命だって実感する。

 

「済みません、こちらでよろしいでしょうか。 これ以上近くには止められないようなので」

「はい、ありがとうございます。 歩かずに済んで助かりました。 おはなしも聞けましたし」

 

普通に電車で来ても同じくらいで着いたんだろうけど……まぁ、駅まで歩く分もショートカットできたし、ロータリーからの数十メートルなんて誤差だしな。

 

「ちょうど行きがけでしたし時間にも余裕がありましたから。 それに移動中に私たちの活動を紹介できましたし響さんのことも教えていただきましたし。 ……これであのときに勧誘を止めたこと、今井にしつこく言われないようになると思いますので…………私もすごく、ありがたいんです」

 

すごくっていう単語に力がこもっている。

 

一瞬だけ顔が曇るかわいそうな萩村さん。

あれだけ激しい人が同僚だと大変そうだな。

 

ぐいぐい来る女の人は怖いよね。

うんうん、分かる分かる。

 

つくづく社会は厳しいらしい。

やっぱりニートでよかった。

 

そんな誇らしさでどやってしそうになる。

 

「すぐにとは言いませんので」

「……?」

 

「この前の通りに何年後でも構いませんので、ご興味が湧くのをお待ちしています。 私たちと一緒にたくさんの人を元気にするお仕事……少し気になる程度でも結構ですので、もし何かありましたらお気軽にご連絡ください」

「そうですか」

 

ここで「分かりました」とか「はい」とか「はぁ」とかのニュアンス次第で肯定にも取られかねない返事は厳禁だ。

萩村さんはまじめでも悪……今井さんとか、その上の人とかに「そう言ったよね?」って言われると困るもん。

 

さすがは慣れているだけあって最後までご苦労様だな。

聞き流しても頭に残る程度にはいろいろと聞かされたし……やりおる。

 

ビジネスライクに分かりやすく簡潔にどんな仕事があってどんな生活になってとか、お仕事のメリットとかデメリットとか、どれだけの人気でだいたいどれくらいのお金が入るのかとかも頭に入っちゃってるもんな。

 

まぁ軽く聞いただけでも「まずは数曲歌って踊れるようになって」とか「演技指導」って言葉が出てきた時点でハードすぎるから僕には絶対ムリだって悟ることになって興味はこれっぽっちも湧かなかったけど。

 

むしろマイナスだ。

ニートを選ぶような人間に労働の美しさを説かれても効果はいまひとつなんだから。

 

僕だって楽だったら考えたかもしれない。

 

座ったまま用意された原稿を読むだけだったりするならまぁなんとか……って気はしなくもないけど……いやいや、やっぱりイヤだな。

 

注目されたくないんだから何したってヤなんだ。

 

いちど高いハードルを掲げられてから下げられると「それならいいかな……」って思っちゃう心理そのままじゃないか。

 

いけないいけない。

危ない危ない。

話術が危険だ。

 

適当にお礼を言いつつ車を降り……ようとして、さっきは閉めてもらったドアが予想よりずっと重くて、あと地面までの段差が大きくてよろけたりしつつ苦労して降りて慎重にドアを閉める。

 

「…………………………………………」

 

へぇこって感じの気の抜けた音。

 

半ドアだ。

 

「…………………………………………」

 

ばたんって顔に吹き付ける風。

 

「では失礼します、響さん。 また機会がありましたらいつでもご連絡ください。 メールでもメッセージでもお電話でもその週にはお返事できますので」

「はい、送っていただいて本当にありがとうございました」

 

連絡する気はないけどありがとね。

 

運転席から窓を下ろして僕に挨拶もそこそこに、後ろから来た車からの無言の圧力で高級車は走り去っていった。

 

「…………………………………………ふぅ」

 

話し疲れたって気がついて脱力。

 

車の振動の感じが体に残っていたから、なんとなくぼんやりと萩村さんが見えなくなるまで突っ立っていたけど気がつくと日差しが真上に来ていて熱気が戻ってきた。

 

やっぱり外は暑い。

タクシーをいつも使う人とかマイカー通勤の人の気持ちがよく分かる。

 

僕ももっとお金があればそういう生活をしたい。

贅沢すぎる気がするけど思うだけなら良いよね。

 

楽できた上に情報も手に入ったし、一般人……の範囲だろう常識的な大人。

 

今の僕に対して多少の興味と好意を持っているみたいで、いざというときに使えるかもしれないツテができたっていうのは大きい。

 

年齢で思いっ切り嘘ついちゃったけど、何かあれば叔父さんとかお隣さん以外に頼れる人が出来たのは大きいよな。

まだ誰にも幼女になったって言ってないから唯一の連絡先とも言える気がするし。

 

今井さんだって悪魔的に強引だけど……裏を返すと強引だからこそ一緒に働く見返りになにかを要求すれば飲まざるを得ない状態に持っていけそうだし、ほんとうにいざって言うときの当てができたのは安心する。

 

契約書とかのうち本人がしないといけないものにぜーんぶサインして期待させておいて「じゃあ親御さんにもお話を……」っていうタイミングでまとめて暴露ってすれば断れまい。

 

騙して悪いけどお互いに利用する関係なら僕も遠慮なく丸投げできるんだ。

もらった名刺にも連絡先があったし、忘れられない程度に連絡を取っておいたほうがいいかもしれないな。

 

うまく乗せられて気がついたらステージとかは絶対に避けないといけないけど。

 

絶対に。

 

けど、いざって言うとき……そう、ずっと考えているように成長できないとか、成長できてもやっぱり仕事とかめんどいってなったときには……。

 

じりじり焼かれるのは勘弁だから日の光を避けるために帽子とフードを深く被り直して、目の前のモールへと急ぐ。

 

さっさと薄着を調達したい暑さで熱さ。

 

サイズとかはこの前のでもう分かっているし、どの辺に行けばどの服があるのか……は分からないか、あのときは全部持って来てもらっちゃったしな。

 

まぁサイズは分かっているしなんとかなるだろう。

いざとなれば今のような格好だけでもいいしな。

 

はじめてって言うのは不安でしょうがないものだけど、なんとか1回でも経験しちゃえば次からは楽だ。

 

とりあえずは服を3セットくらい買う。

それだけでたぶん疲れるから適当なところで涼んでから帰ることにしよう。

 

あんな思いはしたくないから重そうだったら送ってもらおう。

変な顔されるかもだけど……そこもなんとか適当に言って。

 

「……♪」

 

1ヶ月ぶりの外出。

 

連休とは言っても平日だしお昼は微妙に外れているしそこまで混まないだろうし、外に出た記念になにかを食べて帰ってもいいかも。

 

どうしても残しちゃうのはご愛敬だな。

物理的に胃がちっこいんだもんな。

 

この前みたいに残飯処理を任せられるJCさんがいるわけじゃない、しょうがないって思っておこう。

 

……そんなことを考えつつ急いでいたせいか周囲の索敵がおろそかになっていたらしくって、気がつくとすぐ目の前……上に誰かがぬっと出てきて危うくぶつかりそうになる。

 

今の僕、視点が低すぎて正面を見ているだけだと見える範囲が狭いからなぁ……。

 

ひやっとしてむっとするけどぶつからなくてよかった。

体重的にも体積的にもぶつかったら僕がただじゃすまないもん。

 

ほとんどの人は僕よりも背が高いはずなんだからちゃんと前を見て歩いて、できれば僕に気を遣って避けて歩いてほしいところだ。

僕と違って遠くから見えているはずだしな。

 

でも歩きスマホとか多いし、相手が変な人だったりしたらそれはムリな相談か。

やっぱりどれだけ首が疲れようともちょっとは上を向いて歩くクセをつけないとな。

 

とまあ頭の中でひととおりの文句を言いながらその人を迂回。

 

ぶつかりそうになったからってこんな子供に怒ってくる人はいないって思うけど気まずいしな。

 

「あの、えっと。 すみません」

 

女の人だったか。

怒って無さそうで良かった。

 

「あの……その。 えーっと……」

「……はい?」

 

あとからもたもたって感じで声をかけてきているらしい。

 

僕の方を向いて話しかけようとしているらしいからってとっさに返してたけど……あ、これ、めんどくさいアンケートとか地域の子どもの見回り隊とかだったらやばいんじゃって気づく。

 

思わず足を止めちゃって背筋がひやっとしたけど一応はその人の顔を確認だ。

なんとか隊の人だったら全力で逃げよう。

 

そう、思ったけど……その人の顔、いや、その子の顔を……僕は知ってしまっていた。

 

「……わぁっ、やっぱりっ! 先日に私が服を選ぶのをお手伝いさせてもらいましたあのときのきれいなお客さまですよねっ!? こんなところでまた会えるなんて! まぁ!! お久しぶりですっ! あっ、あのときの服! 着てくれているんですねっ!」

 

きーんと耳がして頭がぐわんぐわんする。

言葉の暴力で足がすくむ。

 

……近くで見上げるとでっかい胸と顔が同じくらいの大きさに見える、髪の毛の先がくるくるしていて体に見合わない童顔で、でも子供相手でも上がりやすくって噛み噛みだったあのときの……服のお店の店員さん。

 

今日は噛んでいないし制服だし、話すスピードもまあまあで留まってはいるけどあの恐怖は忘れない。

蘇る恐怖。

 

「…………………………………………」

 

黙るしかない僕に向かって再会の喜びをこれでもかってまくしたててくる。

 

……なんでこの子がこんなところにいるんだ。

 

僕は他でもない君を避けるためにあえてこんなところまで来たっていうのに。

 

……こんなことなら何も考えないであの店でまた人形になっておけばよかった。

それなら……少なくともいちばんの強引なこの子には会わなかっただろうにな。

 

あぁ、終わった。

僕の貴重な外出が。

 

ぼんやりとその子のJKさんらしい格好を眺めるしかない僕だった。

 

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