【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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16話 学生たちの、夏休み(1) 3/3

「ひびきー?」

 

ちょっと居なくなっていたゆりかがにやにやとしながら戻って来る。

その手にはコップ。

 

……ああ。

 

こういうのって懐かしいな。

 

こんな僕でも中学くらいまではなんにも考えない子供でいられたからそういういたずらをし合ったっけ。

 

「はいよ――……ぬふふ」

「………………………………」

 

僕的にはものすごくほほえましい光景を見ている感覚だけど当の本人は楽しくて仕方がない様子。

 

無邪気って素敵。

 

そんな僕の目の前にとんとおかれる謎の色のナニカ。

焦げ茶色でにおいはよく分からなくて、混ぜたってことだけ分かる感じの液体。

 

「私特製ジュースどーぞ! いつもてっきとーなんだけどわりとイケる味にするの得意なんだー。 ゲロマズじゃないはずよ?」

「…………………………………………」

 

……こういうのはお茶とかをたくさん混ぜなきゃ鳥肌が立つ味とかにおいにならないはず。

 

大丈夫、大丈夫。

 

そう僕自身に言い聞かせながらそっと口をつけて飲んでみる。

 

「こくこくこくこく」

「…………どうよ?」

 

「…………………………………………」

 

身構えていたからか普段からの癖からか両手でコップを持って目をつぶっていたらしい僕。

その液体の感覚を知覚した僕は何気に体がこわばっているのに気がついた。

 

「……確かにそこそこおいしい」

「私がひどいコトするって思ったんでしょ。 響ものすごくぎゅってしてたもん」

 

しょうがないじゃん……こういうの10年以上ぶりなんだもん。

 

「……けど、これはただの炭酸のないソーダに近い何かだな」

「まーそうなんだけどさー」

 

この気持ちをごまかすために努めて冷静に反応したら興味を失った様子のゆりか。

 

可もなく不可もない安い感じのジュースを買ったときのような……普通に無難でよくある感じの微妙な味が口と喉を流れる。

 

「けほ」

 

おっと、一気に飲んだから。

 

……外で食べるのにはいくつもの課題があるけど、ここにもひとつあったな。

 

コップが大きすぎて両手じゃないとこぼしそうってこと。

太くて重いものをつかむ握力と手首の力が厳しい。

 

手の大きさが足りていない。

 

それを補助する筋力が足りていない。

 

あと僕だとドリンクバーはボタンが届かない可能性が高い。

押しつけるだけでいいところもあった……けどそれですらっていう始末だ。

 

なにもかもが足りないんだ。

 

「これ使う?」って彼女がくれたありがたいストローでちゅーっと吸いながら……会話も無いしでなんとなく遠くを見て、乱視混じりのメガネじゃ見えなかっただろう細かいところまでを見る。

 

ドリンクバーの機械。

 

ファミレス自体に来ることも無くなっていたから何気に新鮮な見た目。

多分旅行先で電車とかバスとかを待つ時間に入る以外じゃこういう店には入らないもんな。

 

こういうところはどちらかっていうと人と話をしたり出掛けにちょっとした時間をつぶすためだったり、家にいると誘惑が多すぎるからやらなきゃならないことをするためだったり……って食べること以外のほうがメインのことが多かった気がする。

 

自炊にこだわりすぎたせいでムダに舌が肥えたもんだからファミレスみたいな中途半端な味が苦手になったからっていうのもあるんだけどな。

 

あと、安いって言ってもやっぱりお金はかかるし。

 

1回のランチ代でも肉以外の料理なら自炊で何食分にも膨れさせられるしな。

 

それにしても……店の雰囲気も何もかも昔からほとんど変わっていないんだな。

だからいくら綺麗でもどこか懐かしさが抜けないような気がするのかも。

 

タッチパネルとかがあるのは時代を感じるけど、1回触ったらもう飽きて目に馴染むもの。

 

「ところでさー」

「うん?」

 

ゆっくりとジュースを飲んでいたら目の前に崩れはじめたぱっつんとその下の両目があってびくっとした。

 

かろうじて押さえ込んだからバレてはいないはず……。

 

「響って近距離苦手な感じ? もうちょい離れた方が良い? ガマンしないでね? そういうの」

「……いや。 ただ急なことに驚いてしまうだけなんだ」

 

「そ? あ、でさ、これもう食べないの?」

「ん? ……あぁ、食べきれないからね」

 

身を乗り出してきているゆりかの指すのは僕の食べ残しのサンドイッチ。

 

育ち盛りだもんな。

成長が遅いからこそたくさん必要なのかもな。

 

やっぱり小学生にしか見えない彼女のほっぺとか肩周りを見るともなく見ながら結論づける。

 

ファミレスの食事。

 

こういうものなら1人前食べきれるかもって思ったけど……やっぱりムリだった。

1人前って言っても元の体だとたぶんこれでも半人前くらいの感覚なんだけどなぁ……。

 

悲しいかな僕は半人前。

 

見た目相応にお子さまランチがちょうど良いんだ。

 

胃の拡張が急務だ。

食欲ってどうすれば増やせるんだろう。

 

毎食前に食前酒でも飲む?

 

体動かすだけだと疲れて寝ちゃうだけだしなぁ……。

 

「……いつものことだけど、ほーんとびっくりするくらいの少食だよね、響って。 そんなんじゃ体力戻るの時間かかるんじゃないの? もう退院して……何ヶ月なんでしょ?」

「うん、まぁね。 けど、どうしても胃が受け付けないから」

 

「…………………………………………」

「ただ体力が無いだけなんだ。 気にしないでくれ」

 

なんか不安そうだったから大丈夫だって言っておいてあげるけど、ほんとうになんでだろうな。

 

この食欲の無さ。

本当に子供だからってことだけなんだろうか。

 

最近はそこそこ……繁華街とか駅とか電車に乗っての移動とか公園への往復とかでそこそこの運動に、こうして外で会話をするっていう口も頭も体力も気力もものすごく使う重労働をそこそこしているわけだけど……それでも一向に食欲が増える兆しはない。

 

ちゃんと僕なりには動いているんだ。

むしろ過労に感じるほどなんだ。

 

そんな状況なのに食べられないもんだから体重も増えるはずがない。

なんなら気を抜いてご飯を抜いたりするとあっという間に1キロ2キロ減るからおっそろしい。

 

僕は前からだるかったり熱中したりしてると食べるのを忘れるから気をつけなきゃなんだけど……こんなこと言ったら肉体的な同性のほとんどを敵に回しそうだけどな。

 

でも太れないっていうのもそれはそれで厳しいものがあるんだ。

 

この苦しみはこうなってみないと分からないもの。

僕だって前から知識としては知っていたけど「ふーん」でおしまいだったもんな。

 

一時期はまってたトレーニングのときに買い貯めてあった牛乳とかと混ぜて飲むあれとか試してみたけど、気持ち悪くなっただけだしな。

 

買いすぎてもったいないことをした。

飲み物なら……お酒ならいくらでも飲めるのにな。

 

「…………………………………………」

「?」

 

僕の目の前で僕の食べかけだったサンドイッチを……僕の口がついたところは切り取ってあるけど、それでも平気そうに頬張っていた少女は首をかしげる。

 

……そういえば目の前でじっと僕の食べ残しを見つめているこの食いしんぼさんもまたぜい肉が限りなく少なそうな体だよな。

 

薄着だからはっきりわかるけど肩周りとかふとももとかが子供のそれだ。

 

もう少し肉をつけたほうがいいぞ、肉を。

女の子はちょっとだらしないくらいがちょうど良いんだって思うしな。

 

まぁこの僕が言えた義理じゃないけど。

 

 

 

 

「あ」

 

女の子はいつも唐突に声を上げるからいつもびっくりする。

けど今回はびくってならなかったから安心。

 

「……どうかしたのか?」

「よく考えたら私……ごめん」

 

「?」

 

「食べることとかってお医者さんとかお家の人とかか言われてるよね……体力のこととかも。 ちょっと無責任だった……」

 

しゅんとしている関澤さん。

 

あ――……確かに本当の病人相手ならそうなるか。

 

「いや……平気だよ。 僕は気にしていない」

「ほんと?」

 

罪悪感って言うのはこういうちょっとしたところで突き刺さる。

 

「今のところ、順調……に回復してきているし。 体力がないのと少食なのは……あとこの背の低さは元からだしな。 君が気にする必要はないよ」

「……そう? ならよかった」

 

「…………………………………………」

「…………………………………………」

 

しんとなる一瞬。

こういう一瞬は気まずい。

 

「じ――――――――――……」

 

けど、ぱっと表情を明るくしてわざとらしい声で伝えてきたのは……もういっこ残ってる僕の食べ残し。

 

半分以上食べちゃったやつ。

 

……本当に食べるの?

 

ていうか食べたいの?

 

そんなにはらぺこなの?

 

そんなに成長期なの?

 

いやしんぼなの?

 

……どれだけ食欲旺盛なんだろう。

僕とたいして違わないその体のどこに収まるんだか教えて欲しいくらいだな。

 

「……これも? いや、違うのなら別に」

「ありがと――!!」

 

うるさい。

 

しょうがないからまたナイフとフォークで僕の口が突いた部分を切り分けようとする。

 

「響ってば潔癖?」

「……一応他人の口がついているのは食べないほうがいいんじゃないか?」

「んむ――…………………………」

 

なんでそこで不満そうなの?

 

気がついたらお皿を手元に寄せて今にもかぶりつきそうな感じでこっちを見ているゆりか。

 

まぁあちらにとって僕は友人の枠らしいし、確かに同学年の同性って見られてるならそういうの気にしないのかもな。

 

そうは思うけど僕の両手は止まっている。

 

困った。

 

尿意だ。

 

突然の尿意なんだ。

 

「?」

 

ゆりかが見てくるけど気にする余裕が無い。

全身がアラートを発しているんだ。

 

この体になってから本当にいきなり襲ってくるようになっている気がする危機感。

なんというか……気を抜いていたらいきなり膀胱にずしんとくるような?

 

で、あわててぎゅっと締めないと漏れてくるかもってなるの。

 

前はなんとなくトイレに行きたくなってもそこから1時間とかぜんぜん余裕だったんだけどな。

なんならちょっと経つと忘れるくらいだった気がするのに。

 

前に不思議に思って調べたら、なんでも女性の体の排尿を抑える筋肉は男のそれよりもかなり弱いらしい。

くしゃみで出ちゃう人もいるんだとか。

 

女ってやばい。

 

僕はまだそんな経験はないけど、それだってこうしてちょっとでも行きたくなったらすぐに行くからだし万が一はあり得る。

 

それで漏らしでもしたら1週間は落ち込む自信がある。

 

それに、外だけは絶対にダメだ。

それにそれに今は知り合いのゆりかもいる。

 

まちがいなく立ち直れなくなるだろう。

2回目の引きこもりは避けたいところなんだ。

 

「済まない……少しトイレに。 食べるぶんは自分で切ってくれるか?」

「あ、うん。 分かった、そーするね」

 

かちゃかちゃとお皿とかを押しやるとイスから飛び降りるようにして……何でもない風を装いつつ全力でトイレへGO。

 

「…………………………………………………………」

 

なんだか変な視線を感じるけどとにかく今はトイレだトイレ。

トイレさえできなくなったら僕は男どころか人としての尊厳を失ってしまう。

 

立って歩き始めた途端にゆるくなってきた感じがあるしで膀胱を刺激しないようにしながら、でもすばやく向かう必要がある。

 

……来たとき、事前に場所を意識しておいてよかった。

 

じゃないとところどころの仕切りで視界が遮られているせいで矢印とかぜんぜん見えないしなぁ。

 

あー、だからお店とかでよく子供が迷子になるのか。

 

そりゃあそうだ、親の後ろに誰かが入っちゃったら見失うもんな。

 

それでわたわたしてるうちに角を曲がっちゃってとかそんな感じなんだろう。

 

大きくなってから小さくなったからこそ分かるそんな仕組み。

トイレで夢中の僕の頭の中は変に高速回転している。

 

帰りがけにご意見書とかに書いておきたい。

 

看板とかサイン……足元とはいわないからせめてもっと低いところに設置して欲しいって。

 

迷子防止です、って。

 

 

 

 

「うわ」

 

僕は絶望した。

 

トイレは片方だけに行列ができている。

もちろん女性のほうだ。

 

ドアの外に……えっと、何人かが群れを成している。

その全員がうつむいてスマホを操作している異常風景。

 

タイミング悪かったみたいだぁ……。

 

立ったままだと危ないから1回戻って時間が経ったらって思ったけど、それだとなんだか危険な気がする。

 

「…………………………………………」

 

見回しても残念なことに共用トイレはない。

まぁただのファミレスだからな。

 

今どきでも新しいところとか大きいところとかじゃないと飲食店なんかには無いよね。

 

こういうときはむしろ小さいお店の方がトイレがひとつだけだったりして遠慮は要らないんだけど……しかたない。

 

僕は覚悟を決めて足を踏み出す。

 

……男のほうはいつものようにがら空きだし、こっちでいいや。

 

いちいち髪の毛を出して整えてしまって整えてがめんどくさいから、あと恥ずかしいからこうして屋内で会っているときとかもずっとパーカーとズボンでぜんぶ隠しているのが役に立つん。

 

肉体は女だけど女未満の幼児だから女な特徴の胸もおしりも無い僕だ。

 

ちょっとお行儀悪い気もするけど「これはファッションなんだ」って言ってお店の中でもフード被ったままの人だっているくらいだし、別に不審に思われやしない。

 

子供ってのもあるな。

この時ばかりはこの小ささに……感謝してやらない。

 

でも女だってのはバレやしないだろう。

 

相手はみんな立ったままスマホしているんだしのぞき込まれない限りは問題ないはず。

バレる要素が顔と髪の毛しかないっていうのは悲しいけど、こういうときには役に立つな。

 

……男ならこういう苦労がないのになぁ。

 

女ってだけで大変って言うのの意味がちょっと分かる。

けど今の僕は便利な仕様だからすいすいだ。

 

並んでいる女の人たちを尻目に入っていくと……そういえば最近は毎回共用トイレを選んでいたからひっさしぶりな男のトイレ。

 

この雰囲気が懐かしいまである。

 

「あ」

 

僕の足が止まる。

 

…………………………………………。

 

……立ってしている人のおしりとアレがちょうど目の高さになることに気がついたんだ。

 

僕は嫌な気持ちになった。

 

とても不快だ。

すさまじく気分が悪い。

 

僕はなんだってこんな目に遭うんだ。

世の中は理不尽に満ちあふれている。

 

久しぶりに誰かに対して文句を言いたくなった僕。

 

……トイレに入ったらいきなり視線の先に来ることになるらしいのを知る。

今はさいわいにして誰も居なかったから現物を見ずに済んだけど油断はならない。

 

ズボンを下ろしてする人も居るから警戒しないと。

 

この視線の高さだとちょうど……見たくないのに見ちゃうことになるもん。

嫌に決まってるじゃん。

 

頭を振って急いで個室に向かう。

 

……にしてもこの仕切りもない陶器のこれも見るの久しぶりだな。

ずいぶん見なかった気がする。

 

「…………………………………………」

 

最近、こういう上の方は隠す気もなくてこぼさない程度の覆いしかないやつが増えたような気がする。

 

確か、これだと前に立つから掃除が楽になるんだっけ?

そんな記事を読んだ気がしないでもない。

 

まぁ僕には……少なくとも今のところは縁のなくなってしまったものだからどうでもいいか。

 

毎回座ってするのも面倒だし早いうちに戻りたいけどなぁ……。

 

せめて性別だけでも戻って、あわよくば僕の子供のころの外見にはなって欲しい。

 

そうすれば……20年後くらいには「歳のわりに若く見られるんです」って言って大手を振って外に出られるかもしれないんだし。

 

理想は起きたら元の体だけど。

そのための下着姿同然の寝間着だ。

 

かちゃり。

 

「ふぅ」

 

個室の鍵を下ろしてひと安心。

 

すぐにできるからよかったけど、でもやっぱりトイレは男のほうがなにかと。

ほんとうになにかと楽なんだなぁ。

 

……なるほど、トイレのことを考えたらやっぱり女の格好は止めておいた方が良いんだな。

 

髪の毛を出していたりスカートだったりするとさっきみたいな場面で不利なことになるんだ。

そんな格好だったらこっちに入るときに見とがめられるだろう。

 

やっぱり女装は進んでするものじゃないな。

けど、しなきゃならないときってあるからなぁ……。

 

 

◆◆◆

 

 

「…………………………………………」

 

じゃぁぁぁぁぁーっと水の音が響く。

 

僕のおまたの下から、水面から。

 

…………すっごく恥ずかしいんだけど、これ?

 

誰もいないって分かっていても恥ずかしいんだけど……?

 

なんなのこれ……?

 

男のときだったらそもそも立ってできたし、座ってするにしても向きを調節できたから消音できていたのに……ホースが無いもんだから方向も勢いも自然のままだ。

 

今まで家でも共用トイレでもまったく気にも留めていなかったんだけど、音……派手に響くなぁ。

 

完全な個室じゃないんし当然といえば当然か。

なるほど、音姫さん機能は必需品だな。

 

しゃぁぁぁぁぁぁ。

 

「…………………………………………」

 

最初のいちばん勢いのあるのから少しずつ衰えてくるけどまだまだ音は止みそうにない。

 

反響してる気がする。

天井を伝って外まで。

 

そんなわけないんだけどそんな気がしてならない。

そわそわする。

 

いや、さっきまでは誰もいなかったけど来ているかもしれないし……って思っちゃって。

 

相手はどうせ僕のことを男だと思っているだろうから「よっぽどガマンしてたんだなー」ってくらいにしか思わないだろうけど、それでもなんだか恥ずかしい。

 

個室から出たらバレるしな。

 

ふとももをぎゅっとして音を閉じ込めて量を抑えようとは努力しているけど、どうやらあまり効果はないみたい。

 

無駄な抵抗だ。

 

……なんでこんなに響くんだろう。

 

男のときなら根元のほうで水量だけなら本能的に簡単に調節できたはず……だったんだけどなぁ。

 

とっても便利だったんだ。

 

けど、今はどうにも抑えられない。

 

困った。

 

しかもさっきまで肩だしレモンさんに合わせてがんばって飲んでいたから、まだ止まらない。

 

あぁぁ、止まらない。

 

ふとももにびしびしと生暖かい感触。

 

……終わったら拭くのも大変そうだな。

 

女って不便だ。

 

 

◆◆◆

 

 

「あー……おなかいっぱい。 ごちそーさまー……」

「…………………………………………」

 

結局男子トイレには誰もいなくてよかったって安心して戻ってきたら、関澤さんが僕のぶんまで平らげてぐてーっとしていた。

 

ご丁寧に食べ残しのところまで、きれいに。

 

いや……切りなさいって言ったよね?

 

聞いてなかったの……?

 

捨てるのはイヤだったから残飯もとい食べ残しの処理はありがたいんだけど……このくらいの子たちって口がついているのとか気にしないんだなぁ……。

 

スイーツとか分け合って食べたりもするんだろうか。

 

するんだろうなぁ……。

 

食べさせ合ったりするんだろうなぁ……。

だって女の子ってそういうもんだって言うし。

 

「たったの600えんちょい、かっこ税別。 そんだけでこれだけ食べてジュースいっぱい飲んで何時間でもいられてさー……ファミレスは最高だぁぁ……」

 

そんな僕のじとーっとした目つきにも気がつかない食いしんぼさんはお気楽だ。

 

薄着の下でおなかが膨れているのが僕からでも分かるくらいになっている。

どれだけのものがこの子のお腹の中に吸収されたんだろう。

 

「1.5人前……いや、もうちょっとか。 さすがに苦しくないか?」

「へーきへーき、私、食いだめとか得意……うぷ」

 

「…………………………………………」

「ちょーっと時間経って、動いたらすぐ消化されるって」

「……そうか」

 

ちょっと心配だけど別に顔色も悪くないし、単純な食べ過ぎの様子。

 

……これが若さか。

正確には健康的な若さ。

 

良いなぁ。

 

体と心の両方が若いっていうのもありそうだ。

僕のように半分だけっていうのとはワケが違う。

 

本物の子供だもんな。

 

……成長期。

 

羨ましい限りだ。

 

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