【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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17話 学生たちの、夏休み(2) 1/3

同性でも胸って言うのは気になるものらしい。

 

普通の仲程度でも普段の会話で日常的にお互いのそれについての言及があるとか無いとか。

 

僕に対して堂々と自分から言ってくる当たりすごいよねこの子。

 

「そう……」って反応したけど他にどうすりゃ良かったのかさっぱりだ。

 

そんなことをいつか言ってのけてきたメロンさんのダブルメロンが跳ねる。

レモンさんのダブルレモンとは比べものにならない存在感だ。

 

……いやだから僕の身長的に目線のド真ん前にあるもんだからしょうがないって。

このあいだ言われたばっかりだし。

 

「今日もまたいっそう暑いのねぇ……。 夏休み入ってからずーっと真夏日じゃないの、も――……」

「あぁ、暑いね。 ゆだりそうだな、毎日毎日……」

「本当よねー」

 

そんな彼女も暑くはなるらしい。

 

当然か。

動物だって暑かったら木陰にいくもんな。

 

「なら、もっと涼しくなってから歩かないか……?」

「それとこれとは別よ!」

「そうか……」

 

動物の本能も通用しないらしいメロンさん。

 

そんなここ最近の会話だ。

 

「夏休みで暑いし家の中でじっとしてたら?」……そんな提案は即座に却下されてこうして出歩くハメになる僕。

 

その元凶はわざわざ外を歩いて回ろうってしつこく誘ってくるかがり(大)。

 

女の子っていう身分になってしまったんだし、いっそのこと日傘でも用意しようかなって思う。

せめてこんな格好をしているときくらいは……。

 

「…………………………………………」

 

やだなぁ……。

 

ちょっとだけ下を見るとひらひらひらひらしているスカートの裾。

それも僕の腰の周りでひらひらひらひらひらひらひらひらしている。

 

布だ。

僕自身のことながらふとももと鎖骨がまぶしい格好なんだ。

 

下条さんの主張に根負けして指定されて断れなかった、肩出しのシャツに短めのスカートっていう服装なんだもん、しょうがないんだもん。

 

かろうじて……かろうじて「お肌が敏感肌で弱いんだ」って言ってその上から羽織るものとタイツで肌を隠すっていう機転が利いたおかげでなんとか致命的な羞恥心は感じずに済んでいるけど……やっぱり致命的な気がする格好。

 

それでも帽子がなければ他人の視線でとっくに参っていた。

やっぱり帽子は大切だ。

 

しかし今日もさりげなーく夏休みをおとなしくさせようとしたら反対されて頓挫だ。

 

しかたない、また次の機会をうかがおう。

 

僕は諦めが悪いんだ。

幼女になってそろそろ半年が近づく中でもまだ粘る程度にはしぶといんだ。

 

そんなことを考えながら僕の目の真横で揺れるそれの圧を感じつつとぼとぼと歩き続ける。

だって目線で動くものがあれば自然と視線が向くて意識するのは仕方がないだろうし。

 

ゆっさゆっさと動いてるし。

なんなら音すらしてるし。

 

一応事案的な感情も衝動も無くって、ただただ気になるだけだから許してほしい。

 

「はぁ……」

「♪♪」

 

「はぁ――……」

「楽しいわね!」

 

これ見よがしなため息もまったく通じない。

僕に演技の才能は無いらしい。

 

今日は下条さんの呼び出しのせいで電車でちょっと行ったところの大きめの繁華街。

テレビで最近よく見る女性に人気のスポットとやらだ。

 

「人気って作られてるんだよ?」って言っても通じなかったからもうダメだ。

 

来る前はめんどくさすぎて鬱々してたけど、いざ着いてみたら結構珍しいもの。

 

ぱっと見て町並みがどこかきれいなのとカラフルな感じなのと、あとひたすらに横文字でショーウィンドウまで来ないと何を売っているんだか分からないような店が多い気がする。

 

興味がかけらも湧かないけど観光地で写真を撮って回る気分になればなんとか乗り切れそう。

 

当然ながら歩いているのは女性が圧倒的。

男は少なめで、ただ通りがかっているだけか女性の付き添いできているって感じ。

 

ちょうどデパートとかのベンチでたむろしているような、だるーい表情が目立つ目立つ。

僕もおんなじ気分だしおんなじような顔しているんだろうなぁ。

 

ご苦労様だ。

 

お互いにねぎらいの視線。

 

……すぐに逸らされた。

通用しなかったらしい。

 

悲しい。

 

一方で元気そうなのはチャラそうなほんの一部の人だけ。

男とはそんなもんだ。

 

もちろんそんな奴らは今を楽しんでいるわけじゃないだろう。

 

女の子と一緒にいるのを楽しんでるだけなんだ。

あるいはこの時間を楽しそうにして乗り切ればって思ってるだけ。

 

男なんてしょせんは単純な生きものなんだ。

 

でもそんな夢も希望も持ち合わせていない僕はただただだるい。

 

だるいのはともかくこういうスポットっていうところは僕には生涯縁のないエリアだと思っていたから不思議な感覚さえしてくる。

 

興味をそそられるお店がひとっつもないのに来るって言う不思議さで。

 

なんで僕はここに存在しているんだろう……。

 

哲学的な問いかけが僕の中に芽生える。

 

まぁ実際に歩いてみればなんのことはない。

きれいめな繁華街がみんな女性向けのお店で埋まっているだけのこと。

 

ただそれだけだ。

 

道のタイルまで徹底的にきれいになっているあたり本気度がうかがえるというもの。

こういうのって町の設計段階からぜんぶ仕切ってあるんだろうか?

 

「やだっ!」

「……なに?」

 

「やだっ!」の「やだ」の発音は悲鳴とかじゃなくて鳴き声だ。

 

つまりは彼女の感情の揺れ動きが脳みそから口へと直通で出てきただけのこと。

そう理解しておかないと疲れる。

 

「見て見てほら! 見て見て響ちゃん!」

「…………………………………………………………」

 

「これもかわいいわよ!」

「……………………そうだね」

 

「やっぱり!? そうよねー、かわいいわよねー!」

「…………………………………………………………はぁ……」

 

めんどくさい。

投げやりな返事でも満足するからまだましか。

 

いちいちなにかを見つけては急に立ち止まっていちいち僕に同意を求めてくるかがり。

とにかくいちいちめんどくさいという他ない。

 

個人の意見というものを聞きたいのか聞きたくないのかどっちなのかって問い詰めたいところ。

 

それすらもめんどくさいからしないけどな。

さっさと終わらせたいんだ。

 

駅から少し歩いてきたけど、どこもかしこも女性が好きそうな小物とか服とかスイーツとか……ひと言で言うと僕が興味を持たない感じしかしないお店だけしか無いからやっぱりだるんってなる。

 

好き好んで買いたいものはないし、買い食いとかも旅先でしかしたことないしなぁ。

休日にどこか近場に行って買い物して……っていう過ごし方なんて僕は知らない。

 

おかげで今すぐにでも引き返してベッドかビーズに潜りたい気持ちでいっぱいな僕。

たいして歩いていないのにすでに疲れがすごいことになっている。

 

気持ちの問題だ。

 

帰りたい。

帰れない。

 

「これも欲しいんだけど、ちょーっとお高いのよねぇ……。 厳しいわー」

「………………………………」

 

この子に裏は無い。

 

「買って欲しいなー」って言うのじゃ無くってただ本当に「これも欲しいんだけど、ちょーっとお高いのよねぇ……。 厳しいわー」っていう思考が口から出て来ているだけだ。

 

そんな中くるんさんは元気なことこの上ない。

中学生って元気だな。

 

ほとんど1軒ずつといった調子にお店から出たら隣のお店に僕を引っ張って突撃。

端から端まで隅から隅まで品物を見て回ってずーっと僕に感想ではなく同意を求めてくる。

 

こういうときはほんとうに男女の感性の差っていうものを痛感すると同時に僕の脳みそはまだ男で居られてるって言う安心感。

 

下条さんと会っているあいだはいつもこんな感じ。

 

関澤さん相手なら……彼女が追っているという番組とかゲームとかいった僕でもそれなりに楽しめるもので一応は会話というものを楽しむこともできるんだけどな。

 

「今週のマンガもう読んだ?」とか「ゲームどこまで進んだ?」みたいに話す内容がどう考えても小中高生の男子が盛り上がる話題しかないあたり、まるで僕みたいに「実は中身は男でガワだけ女の子なんだ……」とか唐突に告白されたとしても驚かない。

 

それくらい楽にラフに居られるからレモンさんの相手は楽。

その分の女子力的なものがぎゅっとメロンさんには詰まっているらしい。

 

男の感性。

 

常識が通じるというよりメンタルがどっちかって言うと男に近くて、たぶん小学校のときから男子に混じって遊んでいる感じの女子だろうレモンさん。

あの子なら普通に話が通じるんだけどメロンさんはそうもいかないのが困る。

 

いわゆるゆるふわ系女子ってやつだな。

 

あまりよく知らないけどイメージ的にそんな感じ。

 

ゆるゆるふわふわさんとなんにも考えないで話そうとすると、選ぶ話題も話している感じもなにもかもが微妙に食い違って結局めんどくさいことになる。

 

かがりは期待していた返事が来なくて不満になって僕はどうしてそうなるのかが分からないというどうしようもない状態になって、結局は僕がこうやって面倒を見る感じになってめんどくさいんだ。

 

試行錯誤したり「初めての彼女を作ろう!」的なものを読んだりしてどうにかこうにかそういうのはだいぶ減ってきてはいるんだけど彼女いない歴な僕なもんだから難しいこと。

 

まだ大学の理系の科目をやれって言われた方がやる気も上がるってもんだ。

 

ゆるふわさんが持ってきた雑誌を一緒に読まされていて「おいしいスイーツとやらを食べに行きましょう!」って言われて「けっこう並ぶみたいから僕が空いている時間に買っておくからどこかで食べよう」って至極真っ当で常識的で効率的な提案をした途端に機嫌が下がっていく感じとかもうよく分かんない。

 

なんなの?

 

本当に感情でしか生きてないの?

 

頭と2個の胸と2個のお尻の中にはわたあめでも詰まってるのこの子??

 

こんな子を見て親御さんは平気なの???

 

なるほど、モテる男とそうでない僕らとのあいだにはこうした女性っていう不思議ななにかに対する理解と忍耐と努力がなにもかもが違うんだな。

 

「そんな努力とかするくらいならそれなら別に一生独り身でいいや……」って思っちゃうあたりが恋愛に興味ない男という僕たちみたいな人種。

 

今の時代の結構な勢力だ。

 

まぁお互いさまなんだろうけど。

 

そういうわけでとにかく下条さんと会うときは関澤さんのときの……最低でも倍以上は気を遣うことになって、それはもう疲れるもの。

 

だけど1回、その扱い方っていうのをわかってくると途端に相手するのが楽になってくるからおもしろい。

 

ふたを開けてみればなんと言うことはないんだ。

 

要は一緒にいるときに体験していることとか話していることとか見ていることとか感じていることとか、そのすべてを同じように感じる努力をするだけ。

 

つまりは「わかるー」というこのひとことに尽きる。

 

いやほんとうに。

 

ほんとうは分かっていなかったとしても「分かる」って言っておけば解決しちゃうんだ。

ちょろいのか複雑なのか分からない。

 

しかも中学生でこれってことは高校生でさらに進化して大学生でどうにかなるんだ。

大学でおとなしくしておいて正解だったな。

 

だから困ったときにはとりあえずで「わかるー」に似ているニュアンスのなにかを口にしておけば間違いはまずない。

 

「分かる分かるー」っていう万能の言葉を手に入れたから難易度はがた落ちでどうにか一緒に居られている感じ。

 

それだけで頭を動かすのを止めておいて、でもときどきは察してかがりが言いたいだろうことを言ってあげさえすれば機嫌も維持できるし手を引っ張られて歩くことも減るし……服屋に押し込められることも少しだけは減る。

 

全部は減らないしときどき適当なのがばれて怒られたり着替えさせようとしてくる。

そんなものだ。

 

 

 

「うん、いいな」

「うん、似合っていると思うよ?」

「かわいいね」

 

「うんうん、かわいい」

「僕もそう思うよ」

「僕もそれが合うと思っていたよ」

 

微妙にニュアンスを変えながらの返事。

 

ふぅ。

 

ぼーとしながらオートで会話してこんな返事だけをアレンジして繰り返しているだけで今日もくるんメロンはごきげんだ。

 

たったのこれだけでもう30分くらいは稼いでいる。

 

そうでないと着せ替え人形再度だからな。

必死になって勉強した甲斐があったというものだ。

 

これで将来に彼女とかができた場合にも不安にならずに済む。

その前に体をどうにかしないとだけどな。

 

幼女が女の子と付き合いたいとか……いや、今の時代ならアリなのか……?

 

女子校とか行けば実現できちゃう……?

 

「…………………………………………」

 

いやいや、お金とか戸籍とか親とかどうするのって以前に学校はめんどくさい。

 

「……あ! あそこの屋台、あのジェラート!! 並んでるわよ!?」

「人気みたいだね。 暑いし、冷たいの食べたくなってきたな。 並ぼうか」

「そうね! なら響ちゃん、早く早く!」

 

うまく視線を誘導してお腹にたまりそうなものからアイスっていう半液体な半固体で気を紛らわせることに成功しつつある。

 

暑いのは確かだしな。

それもこれもこの炎天下をわざわざ歩くからなんだけど。

 

「楽しみねー」

「分かる」

 

さて、なにも入ってなさそうな下条さんはおいしいものに弱くて空腹に弱い。

ほとんど同じ意味なんだけどとにかくそんな感じだ。

 

だから「食べたい……」ってぽつっとでも言ったりぼーっと見ていたりでもしたら、食べないという選択肢はない。

 

まぁお金に困ってるわけでも無いしちょっと食べて残りは押しつけたらいいもんな。

 

ここで「そう……」ってスルーするとだんだんと口数が減っていったと思ったらいきなり不機嫌になるんだ。

最初のころはなんでそうなるのかが分からなくってほんっとうに悩んだもの。

 

女性は言わないで察して欲しいらしいんだけど、それなら女性のほうは男性の察するというの自体が難しいんだっていうのを理解はしなくてもいいけどせめて知っておいて欲しい。

 

たったひと言「こうしたいの」とか「こう言って欲しいの」って言ってくれさえすればなんとでもなるのになぁ……。

 

だから熟年離婚とかになるんだ。

違うか?

 

まぁいいや。

 

今はなにかおいしいものを見つけさえすればいいって知ってるからちょろいもの。

ちょろんメロンだ。

 

犬とか猫とかそんなイメージ?

とりあえず満腹にさせておけばいいみたいな。

 

つまりは野生動物みたいに空腹だけを避けるべし。

 

散歩中言うことをきかなくて飼い主をぐいぐい引っ張っている大型犬を見かけることがあるけど、僕の中でのメロンさんのイメージは完全にそれだ。

 

でかいのも一緒だしな。

 

飼い主さんもとい親御さんはもっと躾して?

 

こういうのは女性の特徴だとも思ったけどよく考えたら肉体だけは僕も女だし、たぶん精神的なもので脳みそ的なものなんだって結論づける。

 

僕は甘いもの食べなくてもめんどくさくなって適当に2、3食抜いたりしても別にむしゃくしゃしてきたりしないしな。

 

女性ホルモンのせいなのかもな。

この1歩ごとにたゆんっとしている胸とおしりを見ていればなぁ……。

 

同性の女性ですら結構な頻度でメロンさんを見てるし。

 

下条さんの顔に目が行って髪の毛のくるんくるんを見て体を見て僕に視線が行ってからもう1回彼女の胸のあたりをガン見するのが今日だけで何十回。

 

女性視点でも相当に詰まっているらしい。

 

そういえば男っぽいレモンさんもやはりレモンだし合っているのかも?

僕もさくらんぼだしな。

 

なるほど。

 

そんなどうでもいいことを考えながら体と口はオートで対応させている器用な僕。

 

「もっといろんな味乗せなくていいの?」

「あぁ、お腹壊しても困るしね」

 

つまりはいろんな味を食べたいってこと。

でもめんどくさいから今は無視しとこ。

 

手元にはいつの間にか買ったアイス。

 

僕のコーンの上にはふたつの丸いのが、そしてメロンさんの手には4つが乗っている。

 

そういうことになったらしい。

そう言えばそうだった気がする。

 

周りの女性たちに習って適当なところに腰掛けて、ぎりぎり足がつく高さで口の中に冷たい味としゃりしゃりとした感触が来る。

 

しゃりしゃりしゃりしゃり。

しゃくしゃくしゃくしゃく。

 

アイスとシャーベットか……なるほど。

 

食べる前にみんな自分たちの顔とアイスを画面に収めているのがおもしろいくらいに同じだ。

そしてかがりは座ったそばからまずかぶりつく。

 

……よかった。

 

この子が「なんとか映え」ってのに興味なくて。

 

「あ――――……。 冷たくて甘くて。 おいしいわね……」

「夏はやはり冷たいものだね……」

 

それだけには同感しつつものすごい勢いでしゃりしゃりしゃりしゃりしゃくしゃくしゃくしゃくと食べ続ける音が耳もとで聞こえる。

 

ちょっとこそばゆい。

 

流行りのASMR的な?

とか思っていたらピタリとそれが止んでなにやらのうめき声を発し始める。

 

……大丈夫?

 

頭が。

 

いや、流石に失礼かな?

 

「……――――! ……キーンってするわぁ……。 響ちゃんは大丈夫?」

「僕は奥歯で噛まないようにしているし、それほどは」

 

「そうなの!?」

 

経験則で口の前のほうだけで食べるようにすれば平気だと知っている。

なんでかは知らない。

 

僕だけのものかと思っていたけど今の体でもそうだしな。

前歯はかなり冷えるけど頭痛よりはマシだろう。

 

あと、そんなにがっついて飲むみたいに食べないっていうのもあるとも思うけどなぁ。

 

言ったって治りゃしないだろうし、聞いても聞かずにおんなじようにかぶりついてはぎゅーっと目を閉じてるしどうしようもないから静かに食べていよう。

 

とりあえずは体力を回復しないとだ。

 

この子の相手はとにかく疲れるからな。

 

 

 

 

「ふたりともお綺麗ですね! お洋服もおそろいでお手々もつないで……仲いいんですね! 親戚の方とか、ひょっとしてご姉妹だったりします? 最近はそういう方たちをたまに目にするので!」

「え、えーっと……」

 

お店の中、店員さんがするリップサービスを真面目に捉える憐れな下条さん。

 

「…………………………………………」

 

つながれた腕の先から振り返ってくる。

ちょっと困ってはいるけどどちらかといえば嬉しそうな感情がにじみ出ている。

 

どこをどうしたら姉妹なんだか。

 

けどまぁいちいち説明するのも面倒だし……なによりこの場の選択肢はこうすれば良いって理解している。

 

「そんなところです」

「まぁ! いいですね! 利発そうな妹さん? ……いとこさん? ……でうらやましいです! どおりで雰囲気が似てるって……」

 

買わせるためのお世辞で心の底から喜んでいるらしいくるんさん。

 

似ている?

 

僕とくるんが?

 

どこが?

 

……女性の価値観はほんっとうに分からない。

顔も髪も体もなにもかもがぜんぜん違うのに。

 

あと雰囲気だけはぜったいにない。

 

ありえないな。

絶対にだ。

 

この僕のどこがネジの緩んでいるゆるふわだ。

 

髪の毛を隠してズボンなら弟、そうでなければ妹。

 

関澤さんと出かけるときはそんなこと言われもしないのに、こうして下条さんと出かけるとほとんど毎回、それも何回もおんなじようなことを言われる。

 

いやまぁ手を引かれておとなしくついて行っているっていう光景がそう移るんだろうけどさ。

 

きっと「姉妹くらい仲が良いんですね」っていう意味なんだろう。

そう翻訳している。

 

けど、僕がくるんメロンさんと似ているって言われるたびに……なにかこう、心にもやっとするものが広がる。

 

「………………………………」

 

高校生と見間違える背丈とファッションセンス、でっかいおっぱいにおしり。

 

いいなぁ。

 

身長と体重と胸とおしり、ちょっとでいいから分けてくれないだろうか。

 

どうせすぐに増えるんだろうし、少しくらい良くない……?

 


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