【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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18話 学生たちの、夏休み(3) 3/3

女性って自分たちの世界に入るよね。

 

いや、僕もそういうクセあるから深くは追求できないけどさ……。

 

「りさりん、もっと計画的にやんなきゃダメよ?」

「言われなくたって……」

 

「いや何回も言ってるけどぜんぜんやんなくって赤取りそうだったの誰よ」

「ぐっ……」

「しかもボーダーだったから普段の提出物点っていうお情けで追試も補習も回避してるし」

 

2人の関係は勉強のことになると逆転するらしい。

学生って体育が得意だったり勉強ができたり友だちが多かったりすると強いもんな。

 

加えて女子は顔でも決まってくるって言うから恐ろしい。

このふたりは顔も良くて愛嬌もあっておしゃべりもできて、あとりさりんさんはお胸も大きいからきっと上なんだろう。

 

僕男で良かった。

今は女だけど。

 

……………………………………………………。

 

あれ?

 

もしかして僕女社会に出るとしたらカーストとかあったりするの?

 

え?

 

昼ドラ並みの女同士のどろどろに放り込まれるの?

 

なにそれこわい……。

 

一応今の僕もこの2人くらいには整ってるけどそんな社会ストレスで死にそう。

やっぱり無難にどこにでもいる男が最強なんだって思う。

 

「あ、置いてきぼりにしてごめん」

「あっ……ごめんなさい」

 

「いや」

 

楽だったから別に良いんだけど。

 

「響ー、怒った? ごめんねー? それもこれもこのりさりんが悪いのよー、責めるならこの子だけに」

「あんたのせいじゃない!?」

 

急に話しかけられたからYESかNOしか言えなくって不機嫌に聞こえたらしい。

 

そんなことないのにな。

 

普段から会話しないから頭の回転と口の動きと発声がうまく行かないだけなんだ。

つまりは全部だめだめなんだ。

 

「りさりんは煽り耐性がないのが悪い。 いじりやすいのが悪い」

「……覚えてなさいよ」

「ふいふい。 で、響は今日どんなの買いに来たの? こういうのってふつー、家庭……おっと。 ……んー、親とかが用意してくれるもんじゃないの?」

 

「別にそこまで気を遣う必要はないよ。 家庭教師だね。 これくらいは隠すことでもないしな」

 

「そ? 家庭教師ってふつーの生徒に取っちゃはずかしいもんだもんねぇ」

「家庭教師……確かにね? 勉強できなかったらまずは塾よね」

「りさりんに今最も必要なものだったのだ」

「あん?」

 

まーたじゃれてる……。

 

もう欲しいのは見つけたし帰るだけなんだ。

きゃんきゃんしているあいだ早く終わらないかなって奥の方にあるのを見てみたらいいのがあったし。

 

なんか偶然で欲しかったもの見つけるのってあるよね。

 

……あ、そうだ、家庭教師さんはクビってことにしよう。

 

唐突なリストラ。

もう勉強も追いついたところか設定上の学年のふたつ上まで届いたことだし必要ないってことで。

 

うん、それでなるべくその話題を回避しておいてちょっと経てば……どんな人だったのかとか聞かれても「もう来なくなったから忘れた」とかでごまかせるし。

 

うん、それがいい。

 

そもそも男か女かも考えていなかったという稚拙さだしなぁ……とりあえず女にしておくか。

同性じゃないと嫌がる親御さんとかいるしな、そんな感じでGO。

 

「もう家庭教師は来ない」

 

「……ん? どゆことそれ?」

 

……「もう家庭教師は存在しなくなっている」的なニュアンスになっちゃった。

 

また言葉が足りない。

僕はいつもこうだ。

 

「……これだ」

 

思うように口が動かないからってしずしずと差し出してみる参考書。

 

差し出すって言っても、もう腕がだるだるだから選んだのを指さすだけ。

元はといえばこの子たちに気を取られたからこうなったんだし。

 

「これ? 見ていい? あ、どもども」

「へー、見たことないわねー。 どこの出版社の?」

 

「……りさりんの家ってば参考書だけはあるもんねぇ。 あれでしょ、目移りして揃えちゃうんでしょ」

「違うわよ。 ……お母さんとかお父さんが『これが良いんじゃないか?』って買って来ちゃうの」

 

りさりんさん。

 

それ、次は「塾に行ってみない?」の前フリだよ?

ちゃんと勉強した方が良いよ?

 

塾代とか家庭教師代ってその参考書とかを月に10冊買うくらいかかるんだから。

 

中抜きもとい仲介手数料的な感じで塾とか家庭教師派遣の会社からその半分くらいをもらってた経験があるから知ってるんだ。

 

「ほーほー。 ………………………………?」

 

「……………………………………………………」

 

なんかゆりかの手が止まる。

りさりんさんは固まっている。

 

ページを見てから表紙を見て、2人顔を合わせて、もういっかいページへと忙しい。

 

仲良いな。

息も表情の変わりようもぴったりだ。

 

「……えっとー、響さんやい。 これ、高校のじゃない? お間違え?」

「いや、合っているよ。 高1のだからね」

 

いちいち芝居がかるのにも慣れたけどほんとうにオーバーリアクションなゆりか。

 

芸能界とか目指せばいいんじゃないかな?

僕、ちょうど良い感じのコネあるよ?

 

あ、でも今どきはセルフプロデュースな時代か。

でも事務所とかのバックアップあった方が人気出やすいって聞いたことあるし……。

 

「あっれー? たしかこの前退院……あ、ごめん……え、これも言っていいの? あ、じゃあ。 ……響が退院してからまだ勉強追いついてないって言ってたって思うんだけど……?」

 

しどろもどろなゆりかはわりとレア。

 

「あれは家に戻ってきたばかりだったからね。 今までは全然勉強していなかったんだ」

 

嘘は言っていない。

意図的に僕の状況を曲解しただけだ。

 

意訳とも言う。

 

「退院? ……響さん入院してたの? たしかに体が弱いって言ってたしゆりかよりも小さ……あ、ごめん。 背もかなり低いし……聞いていいのか分からないけど重い病気とか……?」

 

「りさりん、もうちょっと待ってて? それ、初対面で聞いちゃいけないやつ」

 

僕は初対面で話したけどね。

 

「……のはずなんだけど響って結構そういうのオープンだよね。 初めて会ったときもそうだったし。 私、結構気ぃつかってそこまでは言ったりしてなかったんだけど……」

 

「ゆりかの友だちだろう? ならこの先どこかで会うかもしれないし、それなら知っておいてもらったほうが話が早いしな」

 

こうして夏休みの午前中って言う遭遇しないはずの時と場所で実際にばったり会っちゃったからには「会わないだろう」っていう仮定は通用しない。

 

元々ゆりかともこの近くで知り合ったんだもんな、そりゃあそうか。

 

「いちいち……そうだな、誰にどこまで話したのかを忘れるくらいならさっさとぜんぶ話しておいたほうが楽だし」

 

毎回誰にどこまで嘘ついたか、どのくらいの嘘か嘘じゃない範囲かっていちいち気にするとストレスで背が縮みそうだし。

 

「あと僕はこの通りだから。 この容姿のことと一緒で説明し慣れているからぜんぜん気にしないから平気だよ」

 

「お、おぅ……」

「すごいわねぇ」

 

まぁぜんぶウソなんだし。

 

いや完全にウソじゃないけど、状況的に見たらある面では合ってはいるんだけど……やっぱりでまかせであることには変わらないんだし。

 

……ほんとうははじめっから言わなきゃよかったんだけどな。

 

それこそ「家の事情でほとんど話せない」っていういいわけを最初に思いついていて貫いていれば今ごろはミステリアスな存在なだけで済んだはず。

 

……………………………………………………。

 

……こうやって、あとからならいくらでもベターな選択ができるのにな。

 

後悔というやつはいっつもこうだ。

やっぱり嘘はつかないに限るな。

 

男に戻ったら何でも素直にしよう。

 

記憶力も良いって方じゃないんだからその方がずっと楽に過ごせるはずだもんな。

 

「ずばずば言うあのメンタル。 見習いなよ? りさりん。 正直は美徳よん?」

「こんの……」

 

ごめん、嘘なんだそれ。

 

「……学校に通ったりするようになったら必ずみんなに聞かれるだろうしな、こういうのは。 なら君たちで慣れておこうって思ってね」

 

やっぱり僕の見た目は子供なんだし中学生って言い張ってるしで学校は必要。

最近はすっかり忘れていた通う先の学校のことも考えておいたほうがいいのかもしれない。

 

……けどなぁ。

 

そこまで決めちゃうし完全なウソになっちゃうしどうしたものか。

 

ひとつのことを決めると数珠つなぎで新しいことも決めなきゃならなくなる。

だから盛ったりマシマシにしたり解釈を変えるだけならともかく、完璧なデタラメは大変だ。

 

と、ぼんやりしていたら両肩に衝撃と重み。

 

びくっとして前を見るとほんの数センチのところに関澤さんのぱっちりな目……あ、眉毛長いなこの子……があって、もういちどびっくりした。

 

「…………響! 学校、行けるの!? どこ!? この近く!?」

 

近い近い近い。

 

身長差で上から被さられるようになっているから小さいはずなのに威圧感があるし。

 

揺れる揺れる。

世界が揺れる。

 

僕の首ががくがくしている。

幼女の細い首がぽきっと折れちゃいそう。

 

わー、蛍光灯がちかちかしてるー。

 

「……いや、当分……先の……ことにはなると……思うし……まだ決まって……もいないけど……」

 

声がぐわんぐわんしている。

なんか新鮮な感覚。

 

「……なぁんだ残念! でも決まったらすぐに、すぐに! ……教えてよ? ね?」

 

「……分かった」

 

荒い鼻息を感じながら絞り出した声に満足したのか、ようやく離れてくれたレモン。

 

……かがりよりもはるかにマシとは言ってもゆりかもやっぱり年頃で多感な少女。

ときどきこうして暴走気味になるよな。

 

そこそこ話したけど未だによく分からないそのポイント。

ジェネレーションと性別と性格のギャップはまだまだ深い。

 

でも、学校ってだけでそこまでなるもの?

 

詰め寄るほどに気になるものなの?

 

……僕だったら「ふーん、良かったね」で済ませちゃいそうだからいまいち分からない。

 

だから友だちって言うのが少なくって同窓会とかの連絡も来ないんだろうな。

 

悲しい。

 

「りさりんりさりんっ」

「はいはい」

 

でもなぁ。

 

こんなに考えなきゃ行けないくらいならはじめっから恥を捨ててさ、「ニートに準ずる不登校」とか「ひきこもり」とかそういう限りなくほんとうに近いことを言っていたほうが良かったんじゃないかな……。

 

そうすれば悪いって思ってくれて深く追求されないんだしさ……。

 

あと、肉体年齢もひとけたから10歳くらいだって正直に。

 

あ、でもそれだと子供扱いだからやっぱりやだな。

なにが悲しくて小学生にならなきゃいけないんだ。

 

でも、そうすればこうやってゼロから設定を考える必要もなくてウソもほとんどつく必要もなかったわけで。

 

今よりもずっとずーっと楽だったんじゃ?

 

そう思うと僕って墓穴あっちこっちに掘ってる気がする。

 

はじめっからか?

はじめっからか。

 

「えと、そういうわけでりさりん。 響はこないだまで、ずーっと何年も……10年まではいかないよね? …………あ、さいですか。 10年以上……え、そんなときから? 入院しててろくに勉強もするどころじゃなくって。 でも退院もできるくらいに元気になってきてそっから勉強するほどまじめさんでね?」

 

そう、彼女によって僕の遍歴が構成された。

 

すうっと息を吸い込むけど膨れないレモンさん。

 

「……なワケだったんだけど! そうだったはずなんだけど! 少なくとも中間くらいまではそうだったんだけど……。 だって聞いたとき試験範囲の問題とか分かんないって言ってたし!」

 

ああ、あの。

あれって私立の受験の問題だったね。

 

高校受験のやつだって。

 

逆に解けたら先生にばれるところだったらしいよ?

 

だって中3の公式何個も使うやつだったし。

今の僕なら解けるけどね。

 

威張れないけどね。

 

中身は成人してるから。

 

「……そうだったのに! 何? この1ヶ月で何があったのひびきぃ!? もう勉強は追いつくどころか追い越しちゃってホームティーチャーもお役御免にするほどで、手元には高校の参考書とか!! なにその超ハイスペック!? マンガのキャラみたい!」

 

うん、僕もそう思う。

そういうキャラクターっているよな。

 

聞いただけでウソだって思うし実際にウソだし……。

 

「………………………………」

「………………………………」

 

ふたりの視線が厳しい。

 

……やっぱり嘘だって思う……?

 

僕もそう思う……なんかごめん……。

 

「…………いや、その。 みんなよりも、……時間が、あっただけだよ。 時間と、見張られている環境と。 それさえあれば、きっと君たちだって同じこと、できるはずだ……」

 

でも今さら「嘘です」なんて言えない。

それがドツボっていうヤツなんだ。

 

「いやいやいやいや絶対ムリだから! 私だったら隠れてゲームとかしちゃうしさぼるし! ねぇりさりん!! りさりんなら分かるでしょ!!」

「え、えぇ…………ごめんなさい、毎日ヒマなのに宿題さえしていなくて……」

 

りさりんさんが僕に向かって何故か謝る。

 

「ほれ、見習いたまえりさりんくん。 勉強はやればできるんだよ?」

「……明日から。 誘われてたとおりあんたの家でするわ、勉強……流石に響さんのを聞いたらやらなきゃって思ったわ……」

 

しょげりんさんになっている。

 

「おおぅ、りさりんが響のおかげでついにデレた!!」

「勉強よ勉強!!」

 

「………………………………」

 

くっついてるふたりを見てちょっとだけは癒やされるけど、でも罪悪感で胃が痛い。

 

きりきりきりと痛む感じのこれ。

背中まで痛んでくるあたりもはや懐かしい感じでストレスを感じているようだ。

 

……10年以上先取りしているんだからできるのは当然なのに。

 

さっきまではそこまでじゃなかったんだけど、こうしてウソで褒められるのが続くと良心がこなごなになってくる。

 

やめて。

 

僕自身がすごいのでも何でもなくって、ただ1回やっているだけなんだ。

 

そこまで言わないで。

僕はそこまでの人間じゃないんだ。

ただのどうしようもないニートなんだ。

 

僕は元の、まだある程度の力仕事でも嫌でしょうがない雑用でも……やろうって決心すればできる健康な体を持った男。

 

でも、ただそれだけだったんだ。

 

将来の可能性で言えば君たちの方がずっとすごい存在なんだ。

 

少なくともニートやってるよりはずっとずっと。

 

そうやって、いっそのことぜんぶバラしてしまいたくなる気持ちがもたげてきたけど……もっと酷いことになるだろうしって思ってぐっと、なんとかこらえることができた。

 

……帰ったらお酒飲んで寝よう。

 

もう勉強する気もなくなった。

僕は弱いんだ。

 

昼間っからで呑んだら朝までぐっすりだろう。

1日スキップすれば多分ちょっとだけ楽になるんだ。

 

僕はそうやって今日までやって来たんだ。

 

「えっと、すごいですね響さんって」

「……いや」

 

「あの、……知り合ったばかりであつかましいって分かってますけど、勉強。 響さんがよければ、教えてくれ……もらうことって、できますか……? あ、もちろん時間があるときにちょっとだけで良いので……」

「でた、りさりんのコミュ力! あとなんか敬語! 敬語りさりん良い!!」

 

ぐったりしていた僕をかがみながら見下ろす感じでりさりんさんが迫っていた。

その後ろからぴょんぴょんとゆりかが跳ねている。

 

……うん、全体的に大きい。

 

いろいろと。

メロンさんとは違って健康的でがっしりとした感じにいろいろと。

 

それに反比例する憐れなゆりかの髪の毛が跳ねている。

 

「……おーいりさりん。 私が教えたげるってばさー、もちろん優ーしく手取り足取り……」

「……ゆりかはイチイチ『こんなことも分かんないの?』とか煽ってくるじゃない。 イヤ」

「なんですと!! あれは愛のムチってやつなのに!!」

 

「…………………………」

 

ぎゃあぎゃあ言い合ってさっきみたいな感じに戻りつつあるふたり。

 

……とりあえずで時間がかかりそうでやり応えのありそうな数学だけでもって買いに来たの、失敗だったな。

 

まさかゆりかと、ついでに……りさりん……まずい、名前が定着している……なんとかさんがいるなんて。

 

語感いいもんな、りさりん。

 

登校日って概念そのものがすっぽりと抜け落ちていたし、そもそも偶然に会うなんて思ってもみなかったし。

 

……いや、そもそも、そもそもこうしてゆりかと話すのもかがりに追われるのも、みんなその偶然ってやつのせいなんだけどな。

 

……僕がこの姿になった魔法。

やっぱり呪いか、これ。

 

罪悪感もようやく引いてきたしでもう少しで座り込みでもしそうなくらいだった脚にも力が入ってきた。

 

……病気設定使って切り抜けようかな。

けど、やっぱり真っ赤なウソはなぁ……うーん。

 

「それにしても2年分以上だよねぇ!? それをたったのワンクールどころか1ヶ月ですっ飛ばしちゃうなんて! 響、恐ろしい子……!」

「はぁー、ほんとうよね。 もちろん努力したからだっていうのはわかっているけど、でもそれでもさすがにそこまでは私たちではムリだわ……」

 

「……たち?」

 

「うっさい! あんただってムリでしょ!?」

「まーね」

 

「……………………………………………………」

 

ふたりの隙間から出口のほうを伺う。

 

これでも話の合間にさりげなーくずりずりと移動を重ねて外まで見える位置にたどり着いたんだ。

あとはもう帰るっていうのをどうにかしてうまく言い出せば。

 

すうっと息を吸う。

 

………………………………よし、言うか。

 

「………………………………」

 

息を吸って溜めたところで気がつく。

 

……ん?

 

通路の先にまたしても女の子がいる。

 

分厚い本を抱えるようにして歩いているメガネの子がふらふらと儚げだ。

あの子もこの子たちと同じ制服らしい。

 

珍しいものもあるもんだって思ったけど今日は登校日だって言っていたしな、他の子がいたって不思議じゃない。

 

ゆりかたちの学校、この辺から通っている子が多いんだな。

いやまあたったの3人だけどさ。

 

この本屋はこの近くでいちばん大きいんだし、定期券で来られるんだったりしたら来ることもあるか?

 

「…………あら、友池さんじゃない! 珍しいわね、こっちまで来るなんて!」

 

耳の上を大声が通過してびっくりした。

いや、そこまでの声じゃないんだけど、ちょっとぼーっとしていたから。

 

その文学少女的で友池さん的な子も僕と同時にびくっとしてたし「ぴゃっ」みたいな発声も確認できたから一瞬で僕の同族認定だ。

 

僕たちみたいな存在はそれだけで分かり合えるんだ。

 

「およ、りさりんが元気」

「そっか、今日はどこのクラスも同じタイミングで下校だったものね。 部活とかなかったら同じ電車に乗るわよねっ」

 

「……………………………………………………」

 

しまった。

 

びっくりして固まる僕を追い越すようにして……つまりはせっかく総員2名の人垣から抜け出しかけていた僕がりさりんさんに塞がれる形になって、その先にはメガネさんがいて後ろにはゆりかがいる。

 

僕よりも背の高いJC3人に囲まれたんだ。

 

……状況が悪化している。

 

僕はもう駄目だ。

 

 


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