【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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20話 下条かがり(1) 2/6

さて。

 

成人男性っていうのは法律的にも条例的にも世間的にも危険な存在だ。

しかも相手が女の子、さらには中学生とあっては正当な理由無しに近づいちゃいけないってことになっている。

 

そんな僕が……親戚とか親との知り合いとか家庭教師とかその他公的な理由無しに、他人でJCな下条さんの家にお邪魔するのは犯罪行為とされる事案に該当するもの。

 

例え僕が手を出すはずが無くって下条さんの方から来て欲しいってお願いされていても絶対に密室にふたりっきりって言うのはダメ。

 

何も無くたって「何かあったでしょ」って言われてお縄に着くことになる。

 

理不尽だけど男って危険な存在だからしょうがないよね。

僕みたいに何もしないからこそ安全な存在ってレアだもん。

 

でも今の僕は幼女だから完璧に平気。

このときだけはこの体に感謝だな。

 

今は危険なことすることさえ物理的にできないんだから問題は一切に無いんだって思うと僕の気が休まる。

 

なんなら僕の方が危険なまであるんだしって思えばもう気兼ねは無いんだ。

 

僕はなぜか偽乳っていう組織的詐欺に思いを馳せてからきちんと身だしなみを整えていつもどおりの手順でリュックに服を詰めて家を出て、すっかり慣れたトイレでの着替えを経てもういちどきちんと身だしなみを整えて……約束させられていた彼女と会うことになっていた。

 

……そこまでは普段通りだから良かったんだけども、その辺に居るかもしれない女子中学生……小学生……やっぱり中学生らしき格好に変装していた僕は、いつも通りに人混みを苦労して抜けた先の待ち合わせの場所で衝撃的なことを抜かされた。

 

目が点になるって言うのは多分ここ数年でなかったんじゃないかな。

 

「お待たせ響ちゃん! あら、それも似合っているけど、この前の特別におしゃれなお洋服は」

「今日は買い物じゃなくて勉強するだけなんだからジャマなだけだろう……」

 

そう言うなりぷくっとほっぺたをその下のでっかいのみたいに膨らませる。

 

不満そうな年齢詐欺(高)さん。

でも今日は負けない自信がある。

 

「でも私、あれをてっきり着て来てくれると思ってわくわくして待っていたのよ?」

「そうか。 嫌なら今日はお開きだね。 もともと今回僕は乗り気じゃない」

 

そうだ。

これまでとは違って今日は僕に拒否権があるんだ。

 

拒否権。

 

素晴らしい言葉。

 

「ま、待ってちょうだい響ちゃん! ごめんなさいわがまま言ったわ! だからお願いっ!」

「…………おしゃべりじゃなくて、勉強を監督するだけ。 それだけを分かってくれればいい」

 

ふふんと鼻息も荒くなるって言うものだ。

 

ああ……すごい。

 

はっきりと拒絶の意を表することができて嬉しい。

こんなに嬉しいことは滅多に無い。

 

「……………………………………………………?」

「響ちゃん?」

 

っていうか……僕がメロンさんにここまで強気で出たの……もしかして初めて……?

 

僕が?

 

年下のくるんさんに対して?

 

「………………………………」

「響ちゃーん」

 

……いやだって普段なら人目もあるし腕力ではもちろん敵わないし唐突な低い声も怖いし……。

 

「……………………………………」

「また考えごとしているのねぇ」

 

……今は僕が彼女の頼みを聞いているっていう上位にいるからだけども普段からこうだっていうわけじゃない。

 

元・成人の男のはずなのに僕はどうしてここまでこの子に対しては……?

 

「………………………………」

「でもこういうときの響ちゃんって見続けても怒らないから好きよー?」

 

人は見た目がすべて。

 

見た目幼女、盛って小学生。

 

言い張って中学生な僕に逆らえる余地などないんだ。

ましてやこの子はガワだけならもう大人なんだししょうがないんだ。

 

うん、きっとそうだ。

 

そういうことにしておこう。

そういうことにしておかないと僕の何かが壊れちゃいそうだし。

 

それにあれだ、泣く子には勝てないっていう感じだからいつものはしかたがないんだ、うん。

年上として年下にわざと負けてあげているって感じだし。

 

そうそう、僕はこの子の面倒を見ているんだ。

 

「………………………………」

「あら、良いことあったのかしら?」

 

にしてもこうして堂々と言い返せると嬉しいもの。

つい口元も緩みそうになる。

 

……いつもこうなるために、できるだけかがりの「お願い」っていうものを聞いてやろう。

その度に少しずつ、少しずつ時間をかけて立場を築いていく。

 

上下関係を確立するんだ。

 

そして僕が断ることを恐れるようにして、きちんと武力を用いて交渉というものをできるようにならないといけない。

 

長期的なプランが必要だな。

帰ったら検討してみよう。

 

「かがり」

「あら、良いかしら? じゃあこっちよ! 歩いて15分くらいなの。 途中でお菓子とか買っていきましょ? おいしいケーキ屋さんがあるのよっ」

 

「?」

 

くるんさんは今日もくるんさんだ。

勉強ってことでエラーを起こしているんだろうか。

 

「かがり、それだと繁華街から離れてしまうよ?」

 

普段と逆の方へ歩き出そうとしていたメロンさんを引き留める。

 

「あら? そうよ? だって私の家だもの?」

「ん? なぜだ?」

 

「え? だってお勉強でしょう?」

「ん? だからいつもみたいにするんだろう?」

 

「え? だってお勉強会っていつも誰かのお家でしているもの。 そういうものでしょう?」

 

「ん?」

「え?」

 

「……………………………………………………」

「?」

 

……お互いのはてなを投げつけ続けてようやく分かってきた。

 

「……かがり。  勉強会、いつものファミレスとかでするんじゃ……」

「それは勉強会ではないって思うの」

 

何言ってるんだこの子。

 

「……………………………………………………」

「あら? もしかして響ちゃん」

 

いつも通りだと油断していたから確認を怠ったせい。

つまりは僕のせいで開催地は変更らしい。

 

彼女たち学生の常識とニートな僕の常識は違う。

女子学生と孤独なニート男子の生態は違うんだ。

 

……最近そういうのがすっぽりと抜けてるなぁ……。

気づけば2日に1回は外で誰かと会ってるもんなぁ……。

 

「あ――……僕は他人の家が苦手なんだけど」

「そうなの? でも勉強道具はぜんぶ置いて来てしまったわ?」

 

「くるん?」って擬音で平然と言ってのけるくるんさん。

 

「……取りに行ってくれたりは」

「今から? でも……取りに帰っても往復で30分くらい掛かるしもったいないじゃない。 それに、せっかくがんばってお掃除とかしたのよ?」

 

「お菓子も買ってあるのよ?」

 

いや、お掃除とかお菓子とかはどうでもいいんだけど……?

 

「……………………………………………………」

 

でも困った。

 

「……………………………………………………」

「?」

 

……この子がそこまで考えて敢えて手ぶらで来たとも思えないもんなぁ……天然だもんなぁこの子……。

 

「……はぁ――……」

「それならこっちよ!」

 

僕のため息イコール了承の合図。

最近はいつもこうだ。

 

もはや反論するのさえめんどくさいもんだから、勝手に握られた手を振りほどくのもまためんどくさいもんだから……僕はなすがままにされる。

 

どうせ力じゃ敵わないんだ。

 

「響ちゃんを招待できるって思ったら嬉しくって、昨日の夜もなかなか……」

「そうか」

 

どうせどうでもいいことしか言ってないだろうから僕は思考を放棄しながら手を引かれつつ閑静な住宅街へと招かれることにした。

 

……まぁ万が一にも間違いの起き得ない幼女な肉体だし、少なくとも外見的にはなんら問題はないはずだし?

 

気まずい思いもせずに済むんだし、彼女の家に親御さんがいたとしたって不審がられるどころかきっとかわいがられてしまうに違いないし問題ないだろう。

 

だってくるんメロンさんの親御さんだしな。

女の子はお母さんに似るって言うし、この子の母親もでっかいこの子に違いない。

 

……この子でさえ歩くだけでゆっさゆっさ揺れるんだ、何カップ行くんだろうな。

 

でもよく考えてみれば、バイトで学生に勉強を教えていたときにもこの子くらいの子の家の、それも自室とかで教えていたりしたからそこまで不自然なことじゃないのか?

 

勉強を教えるって謎の信頼があるよね。

 

良く知らない大の男を自分たちの娘の部屋に時間単位で滞在させて平気なわけ無いのにね、普通なら。

 

でも現実って案外そういうものだし平気だな、きっと。

不本意だけど問題は何一つない様子だった。

 

 

 

 

くるんさんの家は少し大きめだけど……まぁどこにでもあるふつうの戸建てだった。

家の内装も彼女の部屋もよくある感じ。

 

あと親御さんはいなかったからちょっと拍子抜け。

 

「どうぞっ!」

「……………………………………………………」

 

ふだんの調子だからてっきり自室にはファンシーな人形が敷き詰められていたりピンクピンクしている壁紙だったりするんじゃないかって思い込んでいたんだけど、実際に入ってみるとちょっと小物が目立つほかは意外とシンプルな感じだった。

 

ものすごく意外。

 

どうやらこの子のメルヘンチックな雰囲気の由来は幸せそうな頭の中から来ているらしい。

 

「……今日は勉強だろう」

「そのための準備よ?」

 

着いて早々にいそいそとジュースやお菓子を広げておもてなししようとしてきたから勢いよく断る。

 

口の中がじゃりじゃりするからいつもの通りに僕のぶんのケーキも食べてもらう。

 

僕はちっこいからフォークで一切れ。

それで充分なんだ。

 

「……で、でも、まずはちょっとお話ししましょう?」

「ケーキを2個も食べたんだ、糖分は充分だな。 さぁ、宿題を出すんだ」

 

気を抜くとすぐこれだもんな。

どれだけおしゃべりしたい存在なんだろう。

 

でも「嫌なら帰る」ってはっきりと強気で勝ち誇って言えるのはすごく……すごく心強い。

 

至高のひとときだ。

 

「……で、でも、なにをすればいいのか分からないわ?」

 

何が「でも」なのか分からない。

そのために僕を呼んだんでしょ?

 

「それならまずは送ってもらったプリントの写真。 あとは要らない紙」

「……響ちゃんが冷たいわ――……」

 

おしゃべりに持っていこうとしてもそうはいかない。

 

「……………………………………………………」

「響ちゃんの字って男の子みたいねぇ」

 

さらさらと宿題を一覧に分かりやすく書き直してやる。

さらにはおおざっぱだけど掛かりそうな目安も難易度も書き出してやる。

 

こういうのには慣れているんだ。

 

「ほぁ――……」

 

……口と目を開けっ放しにして思考が止まっているらしいくるんさんがかわいそうだから、せめて監督くらいはしてあげよう……。

 

「……ほら、今日の予定表と時刻表も作ったから」

「へ?」

 

一時停止していた彼女にぺしぺしお手製のそれを叩いて見せてあげて良い感じのところに立て掛けておく。

 

「この通りにやってみようか」

 

こうすれば何か言いだしても黙ってこれを指させばいいって思いついたんだ。

 

「……響ちゃんってすごいわねぇ」

「君の方がそうだと思うけどね」

 

そのぽわぽわ感はきっと誰にも真似できないって思うよ。

 

 

 

 

そこからは楽な時間だ。

 

絶対にすぐに飽きてくるだろう確信があるから細かく科目とかを分けてあって。

持って来たタイマーで時間を区切ってあげて。

 

……部屋の真ん中に机を出して勉強し出そうとした彼女を諫めてあげて、本来の机に向かわせてやって。

 

そうして僕は部屋の反対側に良い感じのクッションを引きずっていって座る。

 

完璧だな。

 

この子との距離感はこれで適切なんだ。

 

「これでは寂しいわ!」

 

不服らしいくるんさん。

 

「勉強なんだから満ち足りていては駄目だろう……」

「むー!」

 

イヤイヤ期に入ろうとしていたかがりも僕の断固とした姿勢に屈したのか、少しずつ口数が少なくなっていく。

 

そうは言ってもくるんさんだ。

 

ところどころ詰まったりお腹がぐうって鳴ったりして集中力が切れるたびにさっきみたいにだだをこねてきたりする。

 

でも聞き分けは良いからおおむねきちんとやっている様子だ。

 

良きかな良きかな。

 

これで僕も静かに本が読める。

……本棚にいっぱいの漫画から引っ張り出した少女漫画でも暇つぶしにはなるしな。

 

「……響ちゃん、またここも分からないの」

「む。 …………これはここのページの……」

 

中学の範囲の勉強はつい最近終わったばかりだから僕の敵じゃないし、僕がこの子に勝っているのは精神年齢と知識と経験だけだからここぞとばかりに年上ぶってみる。

 

「響ちゃんの教え方って優しいし分かりやすいわー」

「分からないところがあったら呼んでくれ。 それ以外では呼ばないでくれ」

「響ちゃんって結構冷たいわよねぇ……」

 

そんなことはない。

 

でも……ふむ。

 

やっぱりこの子、別に頭は悪くないじゃないか。

むしろ良い方だって思うし、分からないところだって知らないだけか忘れてるかみたいだから1回言えば分かる。

 

なのにどうしてこの子は……本当にどうして普段から……。

 

「はぁ――……」

 

くるんさんのくるんくるん……何でも美容院でパーマとやらをかけているらしいその髪の毛を見ながら思う。

 

この子は多分、単純に経験が足りていないだけなんだろうなって。

 

中学生から急に「自分で期限とか決めてがんばってね?」っていう教育システムにはまった典型例。

 

放っておいても、そのうちできるようになるんじゃないかなって思うけど……せっかく頼まれたんだしな、知り合いの子供の面倒を見ると思って付き合ってやろう。

 

それに思ってたよりも楽だし暇つぶしもあるし。

 

取りかかる範囲とか順番とかかける時間を分かりやすく書いてあげたからか、ぐずることはあるにしてもなんだかんだもくもくと進めているかがり。

 

まぁ苦手な科目だと露骨に集中力が切れるわ口を閉じようとしないわなのはどうしようもないけども。

 

「……………………………………………………」

「……………………………………………………」

 

かりかりかちかち。

 

下条さんが存在する空間にしては異例な沈黙のほうが長いっていう事態は僕にとってものすごく居心地がよくってしあわせ。

 

いつもこんなだったらいいのになぁ……。

無理だろうなぁ、くるんさんだもんなぁ……。

 

「……………………………………………………」

「……………………………………………………」

 

にしてもこの子の本棚の漫画がすごいことになっている。

 

こういうところだけは几帳面なのか、それとも親御さんがしょうがなくしているのかは分からないけどもタイトルごとにきちんと整頓されているしどれもほとんど新品。

 

案外に綺麗な読み方をするらしい。

 

僕はそういう人が好き。

 

僕自身が本屋さんで折れたり引っかいた跡がない綺麗な本を買うのが好きだし、それをほとんどそのままの状態で読み終えてそのままの状態で本棚に並べて行ってたまに読み返すのが好きだから。

 

それに、漫画って言うのは……長く続いてるのは世代を超える。

 

だから懐かしいと思っていたタイトルが置いてあるもんだから「懐かしいなー」って思って読み始めたりすると、昔読んだときには読み飛ばしたり分からないでいたところまでに気がつけたりして意外と楽しいものがあるって気づいた。

 

今度漫画がたくさん置いてある温泉とかに行って1日読みふけって……そうか、僕幼女だから駄目だったか。

 

早く戻らないかなぁ、僕の体。

 

あ、少女漫画はなんか少女の域を超えてどろどろしてきてたからお帰り願った。

 

女性向けの本ってなんであんなにどろっどろしてるんだろうね。

 

 

 

 

「ぴぴぴぴぴ」

 

「っ」

「!」

 

毛穴がみんなぶわっとなる。

 

タイマーの音でびっくりした……よく考えたら僕がセットしたのにすっかり忘れていたから心臓に悪い。

 

こういうの嫌い。

 

もう嫌だ。

 

「おしまいね!」

「ただの休憩だよ」

 

試験期間が終わった瞬間みたいな表情だから釘を刺しておこう。

 

「あ――――……疲れたわっ もうこんなにがんばった……、えっ……まだたったの2時間……?」

「休憩を除いたら90分だな。 けれど君にしては随分がんばっているね」

 

ものすごい重労働したような態度だったくるんさんが固まる。

 

そこそこ早い朝に待ち合わせして寄り道しないで来てすぐに始めたんだからまだお昼にもなっていないのにな。

 

でも嫌々する勉強ってそういうものだよね。

 

君は学生なんだからがんばって?

 

僕は学生終わったから好きにしてるね。

社会って言うのはそういうものなんだ。

 

「…………まだそんなに……? まだお昼にも……? ……もう丸1日勉強したみたいな感じよ……」

 

ぼふんっとベッドに飛び込んだ彼女はさっきまでの僕みたいにだるっとしている。

 

「……………………………………………………」

 

…………その衝撃で上がった風で、彼女の脚が。

 

スカートの裾が。

 

ふとももが。

 

太いところまで。

 

……白いのまで見えてるし……平気なの、この子……?

 

平気だよね、知ってた。

 

というか白なのか、ぱんつ。

普段は僕にピンク色とか黒とか勧めてくるクセにさ。

 

でも知人の年下の無警戒のふとももとそのあいだにある布っていう……目と心の毒が見えた罪悪感が半端じゃない。

 

僕は良識的過ぎるんだ。

 

……僕が背の低い女の子に見えるから同性だっていう安心感からか、かがりもゆりかもとにかく無防備になることが多い気がする。

 

僕に合わせてかがんできたり僕に触ろうとしてきたりすると自然な感じで胸元が見えるし、歩いていて話しかけられて上の方を向くと袖からわきの下が見えちゃうこともある。

 

座るときにはふわっとした瞬間にふとももの奥が今みたいに見えることもあるし。

 

なんならスカート慣れしていない僕でさえぱんつは見えないようにって膝をくっつけるようになっているっていうのに……ふたりとも開いちゃってチラって見えてるときがあるしな。

 

ほんものの女の子がはしたない。

これがJCっていうもののスタンダードなんだろうか?

 

「……………………………………………………」

 

共学のはずだったよな、確か。

 

「………………………………」

 

……早いうちに指摘しておかないといろいろとまずいかも。

 

ゆりかならまだしもこのかがりっていう子は。

だってほら……この子の体はこの子の精神に反して大人びてるから。

 

「……お疲れ。 どこまで進んだ?」

「響ちゃんのスケジュール通りよっ! がんばったわっ!!」

 

お返事は元気だけども完全に脱力して開いた脚を閉じようともしないくるんさん。

 

もー、はしたない……。

 

普段からこうだったら大変だな。

多分こうなんだろうけど。

 

クラスの男子諸君は大丈夫なんだろうか?

多分大丈夫じゃないんだろうけど。

 

「……………………………………………………かがり」

「どうしたの? 休憩はまだ」

 

 

「かがり。 …………脚を開いてはしたないぞ」

「あら。 女の子同士なんだしいいじゃない?」

 

「いやまぁ確かに…………………………、ん?」

 

「響ちゃんが気にしすぎなのよ。 ふだんの動きが男の子っぽいというか大胆なところあるくせに私には厳しいんだからっ」

 

なんかぷんすか始めたから追求は止めておこう。

 

「………………………………」

 

……女の子同士って言われて違和感を覚えるのに一瞬のラグがあったのはまずい気がする。

 

でもこの子が言うってことは僕も気が抜けると見えちゃったりしてるんだろう。

 

そういう自覚もそう言えばあるような気もするし……気をつけよう。

男は悲しい存在だから白い布で理性を破壊されるからな。

 

それがたとえ幼い少女のものでも。

男って言うのはそういうものだ。

 

「あら。 その漫画……響ちゃんも好きなの?」

「うん? ああ、うん。 読ませて貰っているよ」

 

君がひぃひぃ言ってるあいだに満喫してたよ?

 

「おもしろいわよね! 私ももう何回も読み直しちゃったわ! いろんな要素があっていいわよね! 技のネーミングだとか主人公とライバルの因縁とかちょっと大変なことになっている恋模様とかっ!」

 

急にエンジンかかってきたくるんさんがくるんっと飛び起きて駆け寄ってくる。

 

動きが素早い。

目が追いつかない。

 

「響ちゃんは響ちゃんは!?」

「僕はどちらかというと話の展開に興味があるからそこまでは」

「そうなの! 人によって読み方って違うわよね!」

 

さっきまでは僕みたいにぐでーってしていたのに急に元気になったかって思ったらよつんばいでにじり寄って来ているメロンさんがいる。

 

「……………………………………………………」

 

重力の力を借りるとそこまで形が変わるのか……でかいな。

 

じゃなくって……近くない?

こっちへ来ないで?

 

「かがり」

 

嫌な予感がして懸命に後ずさるけどすぐ後ろは本棚。

 

「かがり」

 

逃げられない。

 

そう思った数秒後には――僕の上にはかがりの肉付きのいい体の重さが乗っかっていた。

 

「むぐ」

 

重い。

 

柔らかい。

 

……温かい。

 

「……………………………………………………」

 

………………最近慣れてきた、女の子のいい匂い。

 

嗅ぎ慣れたかがりの匂いが濃くなった。

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