【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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20話 下条かがり(1) 3/6

「…………………………………………」

 

重い。

 

暗い。

 

甘い匂い。

 

目の前の重圧感だ。

 

僕は下敷き。

 

背も高くってばいんばいんで大人でも通用する体に乗ってる中学生らしい顔つきでばいんばいんがせり出している。

 

それに対するは小学校低学年な肉体の僕。

 

差は歴然としている。

 

「…………………………………………」

 

僕はびっくりすると猫みたいに目をまん丸にして固まるらしい。

そういう僕自身が知覚できる程度には止まっていた時間。

 

天井の光が下条さんの髪の毛だけを照らしていて彼女の顔は……光っている目以外は暗くなっている。

 

蛍光灯がまぶしい。

 

……あー、女の子が「電気は消して……」って言うのの真相が分かった気がする。

 

あくまで資料による情報だけども。

 

くつろいだ姿勢だったところにすすすっと来られたから猫どころかライオンに近づかれてしまっていたネズミのような心地な僕。

 

重力が働いている地上において上下って言うのは致命的なアドバンテージとディスアドバンテージ。

それは虫けらから鳥から動物から人間様から変わらない。

 

つまり僕はもうおしまいってことだ。

 

「響ちゃんはやっぱり変わってるわね」

 

そう?

 

君には負けるよ?

 

「複雑になっている人間関係がおもしろいってみんな言うのに」

 

「?」

 

…………………………………………ああ、さっきの漫画の話?

 

相変わらずのマイペースっぷりだね。

 

この体勢になって言う台詞じゃないでしょって思うくらいに場違いなことを抜かすくるんさん。

 

「あ! ならこっちの恋愛ものとかはどうかしら? 響ちゃんがおもしろいって思うのかどうか前から気になっていたのよ!」

 

うん、漫画に夢中でこの状況をしでかしたって思っちゃいない。

 

この子大丈夫……?

 

危機感なさすぎじゃない……?

 

「むぐ」

「あらごめんなさい」

 

……自分の体重を僕に乗っけてるって自覚してるじゃん。

 

僕の両方の肩に重力が加わって視界が服という布で遮られる。

 

というか2個のお胸がちょうど両目を包むように乗っかってきているのって、これぜったいにわざと……なわけないよなこの子だし。

 

うん、絶対だ。

 

そういう積み重ねた信頼がある。

 

大丈夫、この子が何かを意図的にするって言うのは不可能だ。

そういう意味での安心感が凄まじい。

 

でもおっぱいがあったかくて重い。

 

「かがり」

 

ようやく声が出始めた。

 

「僕を台代わりにしないでくれ」

「だってちょうどいいところにいるんですもの」

 

何が「だって」なんだろう……。

 

「響ちゃんの肩と頭で支えてもらったらちょうどいい場所にあるのよ、取ろうとしてるの」

 

彼女の思考パターン的には何らおかしくない反論だけど世間一般的にはおかしい反論。

 

本当に良くも悪くも距離感が無いんだなぁこの子……。

 

と、まぶたからこめかみに感じていた弾力とぬくもりが離れていく感覚。

目を開けてみるとものすごく近いところに彼女の両目があってもう1回びっくり。

 

「…………………………………………」

「…………………………………………」

 

くるんヘアがこしょばゆい。

彼女の前髪が僕のおでこをくすぐる程度の距離感。

 

いやいや近いでしょ……これはさすがに女の子同士の距離感……なのかもしれない。

 

最近そう思うようになって来たけど……いやいややっぱり近すぎるよね?

 

「…………?」

 

なんで君が不思議そうな顔してるのかな。

 

あ、けど、こうして近すぎる距離で見てみると、たぶん15センチくらいだと顔の印象はなんだか普段と少し違うように感じる。

 

なんて言うか、なんだか普段の幸せそうもといふんわかしているのとはちょっと違うような。

目元が厳しいというかなんというか野性みを感じるって言うか。

 

気のせいだろうか。

気のせいだろうな。

 

「それによ? それに響ちゃんって普段スキンシップしようとしてもすーぐに逃げちゃうし。 まるで人に懐かない猫さんみたい」

 

僕は今の意識外からのにじり寄り方とか飛びかかり方の方がよっぽど猫っぽいと思うけど。

猫というよりはネコ科のナニカだけど。

 

ついでに僕は袋のネズミだ。

 

「お手々だって、最近は少しだけ前より長く繋いでくれるようになってきたけど、でもやっぱりすぐに離されちゃうし。 私さみしいわ!」

 

なんでこの子ってここまで人と近いんだろうな。

 

あー、そう言えば母さんも幼い僕が恥ずかしいって思う程度にはくっついて来てた気がする。

 

……つまり、これが母性?

 

いや違うな。

この子に限ってそれだけはない。

 

「僕はそういうの苦手だって」

「だけどもうちょっとくらい良いでしょう? これくらいは友だちとして普通よ?」

 

そうなの?

 

サンプルがこの子とゆりかしかいないから分からないけどもしそうなら慣れないといけなくなる。

 

JCはあと2人知り合いになっちゃったけどあの子たちとは初対面のまんまだし今井さんたちは大人だから関係ないしな。

 

……僕たちの位置関係に変更は無い。

 

僕が違和感を覚えさせないように溶け込もうとしている対象、その女の子のひとりのちょっと……いや、かなり……だいぶアレな子なこの子に「女の子としての普通」について口にされてしまうと、ぐうとも言えないんだ。

 

女の子同士の距離感って本当はどれくらいなんだろうね。

現実世界じゃこの子とゆりかしか知らないから分からない。

 

「だからさっきは珍しく響ちゃんが無防備な感じになっていて警戒、いつもみたいにしていないみたいだったからつい近づいてしまったのよ」

 

良く分からない論理で弁論するくるんさん。

 

「ね? 近づくと引っかいてくる猫さんだって落ちついているときならおとなしく撫でられてくれるのよ」

 

つまり君は猫を撫でようとすると逃げられるって自覚してるんだね。

 

「僕は猫じゃないよ?」

「あら、似合っているわよ? 猫さんな響ちゃん」

「そういうことじゃない」

 

この微妙どころじゃなく歯車がずれてる感じ。

 

「いいじゃない! 似合っているのだし。 眠そうな猫さんってかわいいわー」

 

うーん、その論理の飛躍が良く分からない。

 

……まぁ髪の毛とか目の色とか珍しいしな。

 

ペルシャ猫みたいな感じがしなくもないっていうのは初めの頃この姿を見て思わなくもなかったけど……でも。

 

やわらかかった。

あったかかった。

 

…………おっぱいというふたつの物質は想像以上。

 

普段抱きつかれるとその重量を、クーパー靱帯を守って形を維持するための構造上硬度があって痛いなぁって思ってた案外に頑丈なブラジャーとその下の脂肪のかたまり。

 

今みたいにゆっくりくっつけられるとその弾力性が布越しに分かる。

 

……人生初めての嬉しいはずの感覚が……よりにもよって10歳も下の子のものなんてな。

 

僕の胸に乗ってるのはおっぱいにはまだなれていない骨と皮なあばらだからノーカウントだし、あまり嬉しくない初体験。

 

それに顔に当てられても嬉しくない。

 

ぱふぱふで喜ぶのって本当なの……?

 

男って馬鹿じゃないの……?

 

性欲って悲しいね。

 

それの無い僕は気まずいだけだ。

 

この子はなんとも思っていないみたいだけど僕としてはとても気まずいだけ。

 

「…………………………………………」

「…………………………………………」

 

時計の針の音。

 

エアコンの音。

 

外で車が走る音。

 

どこかで子供が叫んでいる声。

 

静かな空間って意外にうるさいよね。

 

ふたりしてくっついているこの変な状況。

 

よつんばいになっていて、くるんが下がっていてメロンもまた重力に負けていて、しなった腰の先にあるらしいおしりがそびえている。

 

ネコ科が狩りをするときの姿そのものが後光じゃなくて電灯に照らされている。

 

あいかわらずに珍しく目線の高さが合っている下条さんの目が近い。

 

瞳孔が開いている瞳。

虹彩までがはっきりと。

 

……ここまで近くなったことなかったけど目元は意外とすっきりとしている気がする。

 

お、この感じ、眉とかちょっと変えた?

 

「………………………………」

 

「?」

 

…………なんでこんなことに気がついてしまうんだ、僕は……。

 

このあいだの雑誌に眉の整え方とかあったからか。

 

女子力の向上に懸念を覚え始める。

男子力的なものが低下してきてる気がするんだ。

 

「……だから言っているだろう」

 

早くどいて?

 

重いの。

 

「僕はそういうのが……近すぎる距離感も肌の触れ合いも苦手なんだよ」

「響ちゃん……」

 

猫でも人懐っこくなかったり苦手な人相手だとふしゃーってなるでしょ?

 

「………それは病院でずーっとひとりだったから…………でしょ?」

 

くるん?ってなる。

 

くるん?じゃないよ?

 

たまたまなんだろうけど前髪とか横髪のくるんくるんが彼女の意志に沿って動いている気がする。

 

それだけ近いんだ。

 

と思ったらもっと、ずずいっとさらに近くなって来てさっき食べていたケーキの甘い匂いがぶわっとくる。

 

……唇、やけにぷるんとしているな。

僕みたいにめんどくさくてリップ塗らないとかないんだろうし、努力の結果だ。

 

そんなことを思うくらいに近い。

 

唇が切れたりしたりかさぶたみたいになったりしたりしたら女の子失格。

いつしか説かれた下条さんの言葉が思い出される。

 

………………………………柔らかそう。

 

ぷるぷるしてる。

 

僕みたいに鶏がらじゃなくってしっかりと女の子らしい女の子な彼女の唇はぷっくりしていてうらやましい限り。

 

でも、さらなる脅威を感じて後ずさろうとするも背中はクッションにぎゅうぎゅう押されていてこれ以上は下がれない。

 

というか、のしかからないで?

 

体重差考えて?

 

それくらいの思考力は……あるって信じたい。

 

いろいろと圧がすごい。

いろいろと。

 

「かがり。 ……まだ根に持っているのか、それ」

「だって響ちゃん。 …………ゆりかちゃんには」

 

どうやらゆりかに説明していたぎりぎり嘘じゃない説明を自分が聞いてなかったのが気に入らない様子で声が低くなる。

 

いきなりだからこわいって。

 

どうして女の子ってそうなの?

 

「…………………………………………」

 

……嫉妬には気をつけよう。

 

女の子同士の人間関係って暗黙のなにかでどろどろしているらしいしな。

 

完全に平等じゃないとこうなるらしい。

 

ハーレムって大変そう。

僕はそういうのいいや。

 

女の子が好きで好きでしょうがない人だけが堪能すれば良い世界なんだ。

 

情報の伝達未遂は社会人でも致命傷らしいし、僕の小さい肝にもしっかりと留めておいて……とか変な方向に思考が飛んだりする程度の時間が経つ。

 

「あの子」

 

ぽそりと話し出すけど、それはゼロ距離での……まるで恋人同士の会話のようで。

 

「響ちゃんの。 他の。 仲の良いお友だち。 関澤さん。 ゆりかちゃん」

 

こわい。

 

「私とおなじような時間に、おんなじように仲良くしていたゆりかちゃん。 『小さいもの同士』って……かわいい子よね?」

 

「かわいい」に含まれてるニュアンスが普段とはちがう感じがしてなんかこわい。

 

こわい。

 

誰か助けて。

 

「あの子には教えていたのに。 響ちゃんの病気のこと。 私には……私にはひとことも言わなかったじゃない」

 

だってその設定あのとき考えたんだもんなんて言える雰囲気じゃない。

 

「私、ちょっとだけど嫉妬しちゃったわ」

 

着せ替えのお人形さんを友だちに取られた的なやつ?

 

「……かがり。 そもそも君と知り合ったのだってたったの数ヶ月前だろう。 たいして変わらないよ。 言う機会もなかったし」

 

「言うつもりもなかったけど」っていうのはすんでのところでお口の中に収納。

 

だって深く突っ込まれるとぼろがぽろっと出ちゃいそうだし。

この子だったら入院についてとか無限に聞いてきそうだし。

 

入院生活のことなんてドラマとかでしか知らないことだしなぁ……さらなる嘘はご遠慮したいところ。

これ以上設定が積み重なっていくと僕の頭が追いつかないんだ。

 

とりあえず重い。

 

あったかいって言うか熱い。

 

甘い感じの匂いで頭とお腹が変になりそう。

なんでお腹なのかは良く分からないけど……お腹からふわふわしてくるんだ。

 

なんでだろうね。

 

「…………………………………………」

 

でもなんだかこの変な感覚を深く知ったら行けなさそうって思った僕は思い切って体を横に移動して……くしゃみをされたらごっつんしそうなところまで来ていた彼女から距離を取ることに成功する。

 

けど後ろをちらっと見てみたらあんまりスペースはなくって本棚と壁のすき間に入っちゃってるって分かった。

 

…………退路、自分で完全に断っちゃった……?

 

ここからさらに逃げようとしたら、なんとか言いくるめる以外にはもう頭突きくらいしかなくなってしまった僕。

 

でも頭突きって痛そうだからやだな。

 

「響ちゃん。 私はね?」

 

ローテンションのかがりはウルトラレアだ。

 

「もう何回も……ううん、もう10回は超えているわよね? それだけ一緒にお出かけをしておはなしして」

 

「連れ出した」の言い間違いだよね?

 

「とっくに……お着替えを手伝ってあげたあのときからずーっと、私からは響ちゃんのことお友だちだと思っていたのに。 響ちゃんからはお友だちって見てくれていなかったのね……?」

 

不思議な論理で怒っているらしいかがり。

 

あれは君がしたいからしていたんだよね?

 

僕は望んじゃいなかったよ?

 

そんな反論をしようと思っていたら僕の口が動く前にさらにじりっと迫られる。

 

こわい。

 

猫は猫でもサバンナにいるネコ科なくるんさんだ。

 

「む――――――……」

 

……ほっぺたを膨らませて怒ってるアピールをしているらしい。

 

そういうところが子供っぽいんだぞ?

 

「…………君の友だち認定は、僕にはちょっと早すぎる。 世の中には僕みたいにじっくりと距離を縮めたいタイプの人間もいるんだよ。 僕は君みたいに早く仲良くなりたい子相手だとどうしても引いてしまうんだ。 分かってくれ」

 

「それは、…………分かってはいるのだけど」

 

分かってるの?

 

ほんとう……?

 

「あと、かがり」

 

今度は僕のほうからじっと見返してみる。

 

……お、こんなことは滅多にないから猫だまし食らったみたいな表情になってる。

ちょっと気の抜けた顔を見ることができてけっこう嬉しい。

 

「……なにかしら」

 

「重いぞ。 もうちょっと甘いものは控えたほうがいいよ」

「ひどいわ!?」

 

いや、だって本当に重いし。

 

肩こりそう。

 

いい匂いが離れて行く。

 

僕のようなエセ幼女じゃなくって本物の女の子なかがりは女の子らしい匂いを放っている。

 

なんというか健康的な匂い。

どう表現すればいいのかは分からないけど、男とは違う匂い。

 

シャンプーとお菓子と甘味と紅茶と肌の、…………とにかく甘い匂い。

 

それがようやく離れてくれてくらくらしてた頭がすっきりしてきた。

でもなんか顔真っ赤にして怒ってるっぽいから、なだめないと。

 

「君が特別に太っているというわけじゃないよ?」

「…………………………………………」

 

「けど体格差を考えてくれ。 僕は特別に小さくて君は大き……成長が早いんだ。 体重だって身長に比例しているんだから太っているとかじゃなくて」

 

「……私は太ってもいないし重くもないわ!! きちんと適正体重のぎりぎりをがんばっているんだから!!」

 

適正体重からぎりぎりはみ出しちゃっていると見た。

 

けど実際には小太りなくらいがちょうど良いらしいからそこまで気にしなくても良いって思うよ?

 

中学生だから学校で体も動かしてるだろうし、別におへその横もぷにっとしてないから安心して良いよ。

 

「ほら響ちゃん! ねぇ響ちゃん!! もういっかい乗ってあげるからしっかりと確認してちょうだい!! 私は太っていないから重くはないの!!」

 

その理屈はおかしくない……?

 

「ま、まて…………わぷ」

 

今度は思いっ切りのしかかられた。

 

どうやら体重の話は地雷だったらしい。

女性に体重は禁句だったということを忘れていた。

 

この子も一応は女性だもんなぁ……分類上は。

 

メロンさんに飛びかかられるようにして押し倒されて上からぎゅーっと抱きしめられることで、僕はそのメロンも体の柔らかさも全身で、息ができなくなるまでずーっと味わわされることになった。

 

目の前が砂嵐になって行く。

 

酸欠。

 

……口は災いの元。

 

そう思った僕は真っ暗になった。

 

 

 

 

もしゃもしゃもしゃと買ったばかりのお菓子を平らげつつある下条さんはすっかり元通り。

 

こうして餌を与えておけばおとなしくなるネコ科のちっちゃいやつにしか見えなくなったかがり。

こうして静かにしていてくれるなら毎日でもやぶさかでは……やっぱりめんどくさいからイヤだな。

 

「……それでね? このへんのはクラスの男の子にでも人気があるらしいの。 恋愛要素ばっかりじゃないし、これなら響ちゃんも楽しめそうだから1度読んでみたらどうかしら」

 

すっかりご機嫌で本棚を眺めるくるんさん。

 

「タイトルは耳にした覚えがあるな」

 

たしかアニメになっていたから表紙の子たちの特徴的な顔と髪の毛だけには見覚えがある漫画に思いを馳せる。

 

この子、本当に漫画が好きだな。

 

でもよっぽどにこれを薦めたいんだって察知した僕は先手を打つ。

それくらいはできるようになってきた。

 

そうじゃないとまたのしかかられるもんな。

首絞められた鳥みたいな声出ちゃうし。

 

「食わず嫌いはもったいないし、君がそこまで言うのなら読んでみようか。 これを終えたらだけど」

 

でも読みかけを途中で放り投げるのが大嫌いだから後回し。

 

「いいけれど……でもそれはあと20巻くらいあるのよ。 今響ちゃんが読んでいるのはまだまだ中盤よ?」

 

長寿漫画って長いよね。

暇つぶしに最適だ。

 

「ここで読むだけだと何日も掛かる量よ? 帰りに残りの巻、貸してもいいのよ?」

「持って帰ると重い。 僕の腕力は知っているだろう?」

 

「お迎えの人に車で来てもらえば良いじゃない」

「……こんなことでいちいち呼びたくはないよ」

 

僕にはセバスチャンもじいやもいないんだ。

 

あと、綺麗に読んでるから遠慮しちゃう。

持ち歩くとカバーの端っこ折ったりしちゃいそうだし……。

 

「それにどうせ。 また何回かはこうして勉強をと言うつもりなんだろう? 近いうちに読み切れるよ」

 

だってこの子、絶対ひとりじゃやらないでしょ。

 

そう思ったら来ざるを得なくなる。

 

「よかったわ! どうやってお願いしようかって思っていたのよ!」

 

どうせストレートに言うつもりだったんでしょ……それくらいは分かるよ……僕がどれだけ苦労してるって思ってるの……思ってないよねぇ……。

 

夏休みの宿題って言う中学2年生にとっては嫌なことこの上ないものを片づける機会……って言うよりは単純に彼女にとっての友だちな僕と自室で一緒に居られるのが楽しいんだろう。

 

そんな彼女はとっても嬉しそうだった。

 

ああ、子守って大変。

 

僕は独り身で良いや。


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