【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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24話 疑念と助言と発覚 2/3

 

外人さんって遠慮ないよね。

ただの文化の違いだし、実際現地だとその方がお互いに楽って知ってるから別に良いけど。

 

そんなわけで「君は女の子だよね?」って聞かれたわけだ。

結構聞きにくいこともずばずば言ってくる感じはまさに外国人。

 

……ただの年のせいかもだけど。

 

そういうのを今までほとんど聞かれたことなかったのって、髪の毛と服装とで女の子だって一目瞭然だからだろう。

もちろん違和感を無くすため意図的に男っぽくとか女の子っぽい服装にしてるんだけどね。

 

で、今はやっぱり女の子って見えるらしい。

 

帽子してるって言ってもいつもみたいにパーカーで隠してないし、そもそも今は取ってて髪の毛全部下ろしてるしだから顔も隠れていないし。

 

ズボンとシャツだけど登山なら普通だしな。

 

そうなるといくら「僕」って一人称を使って普通に話していても男だって思ってもらえなくなるってことで、つまりは男らしさが失われているってことだからしょうがないんだ。

 

でもそれは男だった僕にとってはとても悲しいこと。

 

楽だから良いしもういい加減に慣れてはいるけど……せめてスカートじゃないときは男って見て欲しいもんなぁ。

 

でもそれを魔法さんが許さないんだ。

ほんと、どうしてか。

 

そう考えてみると今初めて男か女か聞かれたっていうのは僕のアイデンティティ的にはものすごくいいことかもね。

 

だって僕の中から幼女と化した僕の中から男が染み出ているってことになるんだし。

ほら「女の子っぽいけど男っぽくもあるし……どっち?」って聞かれたわけだからさ。

 

「男の子なら……坊や」

 

なんか坊やって言う人レアだよね。

 

「……とは今は言わないのか……坊ちゃんかのう?」

 

うーん、どうかなぁ。

「ぼく」とかかな?

 

うん、僕の主観から見て年下の大学生くらいの女の子に「ぼく?」って子供に対する感じで話しかけられるのってなんかぞくぞくするし。

 

男じゃ別になんとも思わないのに……なんなんだろうね、あれ。

 

「いやそれも……ううむ、言葉というのは難しい。 とにかくだ、君は男性であって先ほどから呼んでいたように『お嬢さん』……レディー、つまりは女性なのではないのかと思ってな。 いやなに、さっきからずっとそのように呼んでしまっていたけれども間違えていたら申し訳ないと思ってね」

「いえ、合っているので構いません」

 

肉体的にはなにひとつな。

もう特段のこだわりもないし。

 

そんなのは着せ替え人形で記憶を飛ばしてるあいだにどっか行ったから。

 

あの子は本当になぁ……。

 

「ふむ、よかった。 いや失礼した、話しているとどうもそう感じたのでね。 儂らの故郷でも、その自分の流行りだったのだろうが髪が長い男子は多かったのでな」

 

あー、外国ってそういうイメージあるかも。

 

まぁ何十カ国の寄せ集めのイメージなんだけどね。

「いわゆる海外」ってやつだ。

 

「この国でも近年は一見してどちらか判別できないような子供もよく見かけるようになっている。 もはや見た目ではわからんし名前を聞いても分からんことが多い」

「お気になさらず」

 

うん、確かにな。

 

「ははっ、おいおいお前、そのお嬢さんに気を遣われてしまっているぞ? 何十も下の子に」

「おっと、これは済まなかった」

「お気になさらず」

 

スマホで何やらしていたおばあさんが会話に戻ってきてしまうらしい。

 

「ずず」

 

お茶をすすりつつ思う。

 

そういえば最近は本当、ごく自然に男とか女とかそこまで気にしなくなっていたなって。

 

初めのころはあれだけモヤモヤしていたのに、今では特になにも思わないことのほうが多い……かも?

 

着ている服装次第でどっちに見えるのかコントロールできているのが大きいのかな?

 

普段は男として地味な感じのシャツとズボンで、かがりがだだをこねるときや気分が乗ったときは女としてスカートにしたり髪の毛を少し出したりしてるもんな。

 

女装……いや、女の子としての格好。

 

スカートを履いて外に出ていてもそこまで恥ずかしくないもんな。

 

知り合いさえいなければ別になんということはないって感じ。

周囲にはそこそこ溶け込めているみたいだし。

 

まぁ、もう半年だ。

これだけ時間が経ったら……慣れるよな、そりゃ。

 

女の子扱いにも女の子として見られることにも、抵抗感なんてもはや皆無だ。

 

……慣れきっているのが怖いって言えば怖いんだけど、もう今さらだし。

どうせ成長したとしたらどんな格好をしようと女の子扱いなんだろうし。

 

比較にはならないけどこのおばさんの胸も体格に見合ったものだしな。

 

せめて冬くらいは隠せるくらいの体型止まりならいいな。

メロンさんみたいなのやりさりんさんみたいになるとたぶんムリだろうからもうちょいちっちゃい感じで。

 

大きいのは見た目としてはすごくいいんだけど、僕的には大歓迎なんだけど……肩凝るらしいし。

あとはうつ伏せでごろごろしにくくなるしな。

 

やっぱレモンさんくらい止まりでいいや。

 

「ああお嬢さん。 コレが君を男に見えるだなんて失礼なことを言ってしまった。 申し訳ないね」

「慣れていますから」

 

夫のことを「コレ」呼ばわりの男よりも漢らしいおばあさん。

かかあ天下はどこでも変わらないらしい。

 

「だとしても、だ。 『お前は男か』などレディーにするような話ではないだろう馬鹿。 なぁ?」

「ぐぬ……」

「許してくれ、男というものは無遠慮で鈍感な生き物なんだよ。 お嬢さんもその内に嫌という程分かる」

 

けちょんけちょんなおじいさん。

女性特有の言葉での攻撃で何にも言えなくなってる。

 

かがりとかも拗ねたりするとよくやるんだけど、いちいちちくちく来るんだよなー。

 

女性って怖い。

男の方がずっと穏やかって感じる。

 

「話を変えようか。 こういうときは全く違うものがいいかな?」

 

いえ、そろそろお暇したいですけど?

 

「そうだな、それなら……これもまたぶしつけになって悪いが、君から見て私たちはどう見えるかね?」

「………………………………えっと?」

 

感性の違いからか投げてくるボールが物理法則を無視してる感じ。

 

「お前こそいきなり過ぎやしないか? ほれ、お嬢さんも困っている。 物事はもっとシンプルにじゃぞ?」

「お前に言われたくないな」

 

「で、だ……お嬢さん。 別に難しいことではないんだ、ただ普通の……小学生かね? そうかね……である君の目から見て、明らかに外国人である儂らがどう映るのか気になっていてね」

「………………………………」

 

小学生って言われるのはもう諦めた。

園児よりかはずっとマシだもん。

 

「儂らがその辺を歩いているとな? 儂らのどちらも君くらいの子どもからはどうも遠巻きにされることが多くてな。 子どもが好きな儂らにとっては悲しいことこの上ないのだよ」

 

顔が怖いからです。

なんなら体から威圧感がほとばしってるからです。

 

なーんて初対面の人相手にどこまで言ってもいいのやら。

 

「………………………………」

「………………………………」

 

でも子供の話し相手がいないのかとっても聞きたさそう。

 

じゃ、じゃあ遠慮なく……。

 

「……おふたりは背も高いですし、体格もとてもいい、ので、その。 …………特にあなたのほうはプロレスラーでもおかしくないように見えますし、威圧感……ありますね?」

「むう」

 

できる限りニュアンスを柔らかくって意識して言ってみてあげる。

 

「それは、私も……だな?」

「えっと、はい」

 

むしろお胸の威圧感でおばあさんの方がぶっちゃけ怖いです。

 

「分かっているとも、泣いて逃げられたことがあるんだ。 ……君よりも大きな子に」

 

しょげている初老夫婦。

 

「……僕たちが想像するような、女の人……とは、その、イメージというか受ける印象が、その」

「いや、わかった。 それ以上はいいよ。 ありがとう……」

 

特におばあさんがしょぼんとしている。

 

しょぼんとしていても肩周りのごつさとか大きすぎて圧力しか感じないお胸とか腰周りとか、ついでにって言うか怖い元凶な顔の……派手な傷跡とか。

 

傷跡。

 

グロくはないけどやっぱり怖いよね、そういうのって。

 

切った張ったの世界の人みたいじゃない?

多分怪我とかなんだろうけど。

 

そういう身体的特徴って面と向かって言いにくいものだし。

多分それは外国の方が言いにくいんじゃないかなって思う。

 

そんなもんだからナチュラルな迫力がある。

必ず侮られる僕としてはちょっぴりうらやましいかも。

 

「まぁ、これは仕方がないことなんだがな? 改めてそう言われてしまうとな。 いや、はっきりと言ってもらえるととても助かるんだが。 ……これでも現役のころに比べてだいぶ薄くなったし、減量もずいぶんしているんだけどな。 いくら体重を落とそうと、肩周りと脚はなかなか細くならなくてな……」

 

顔はともかくその体格は大の大人でも威圧されるもん。

 

骨格から違うしなぁ。

 

僕もこの体になったばかりのころは、眉毛のあいだから鼻までの飛び出した感じとか細すぎる脚とか違和感しかなかったし。

 

脚って骨格とか筋肉量とかがはっきり出ちゃうよなぁ。

 

「な? 儂が言ったとおりだっただろう?」

 

なんか元気になってたらしいおじいさん。

 

あ、奥さんが凹んでると元気になるのも全国共通なんだ……。

 

「知己に聞いたっていつものように勝手に遠慮されてごまかされているだけだと。 善意のウソは見抜く以前に気がつかないものだからなぁ」

「通りで子どもと向き合って笑顔なぞしても逆効果だったわけだ……」

 

あ、うん……多分それは。

 

「端から見ると筋肉からすごまれたとしか映っていなかっただろうな、ははっ!」

 

そうじゃないんだけどそういうことにしておいてあげよう。

 

「無論それは儂もなのだしな。 そうだろう、お嬢さん?」

「えーっと…………」

 

僕の反応で分かったのか、苦笑しながら笑うおじいさん。

 

「あなたたちは子供でなくても怖いんです」って誰か言ってあげて……?

みんなも怖いんでしょ……?

 

「……ありがとう、お嬢さん。 もう少し……まずは服装からだな、試してみることにするよ。 さすがに近づいただけで泣かれるのはこりごりなんだ。 君くらいだよ、逃げたり泣いたりしなかったのは。 君は肝が据わっているね」

「そうですか」

 

だって僕大人だからね。

こういうときに自尊心が養われるんだ。

 

人は歳を取るほどにおんなじような話をするようになり、それが女の人だとさらに倍増する。

 

公園とかで話しかけてくるお年寄りとかだいたい前に聞いた話のアレンジしかしないし、かがりやゆりかたちと会っているときも似たような話題……まぁさすがに「なんかこの前も話したよねー」とは言うけど、それでも話題はループする。

 

かがりの恋バナとかな。

 

む、恋バナ。

そういえば、あるときからぴたっと恋について聞いてこなくなったのは……飽きたんだろうな。

 

くるんさんだもんな。

ゆりかのは多分ただの興味だったんだろうし……聞かれないからどうでもいっか。

 

「で、だ。 お嬢さん、しつこくて済まないが頼みたい。 ――他にも『何か』無いかね?」

「何か、ですか?」

 

しつこいけど凄みがあるから「しつこいのでうざったいです帰ってください」って言えない僕。

 

「うむ、ついでだしな。 他にも何か、子どもに怖がられそうな要素があったら遠慮なく言ってほしい。 家族や仲間からは『特に気にしなくていい』の一点張りで教えてくれないのだよ。 こちらは答えを問うている立場だから、何でもいい。 まだ気がつくことがあれば是非言ってくれないか? この話し方なども、これでも随分気をつけてはおるのだがまだ硬い印象だろうしの。 ああ、もちろん怒ったりはしないさ。 もし良ければ頼みたいのだよ」

 

この食い下がりよう……普段よっぽど気兼ねなく言い合える対等な相手が居ないと見た。

 

まぁふたりの話しっぷりから会社とかのトップだった感じだもんね。

それで子供とか居なければ……話をする相手も限られるか。

 

でも良いや、これで怒るんだったら帰るし、そうじゃなくってもそろそろお尻が疲れてきたし。

 

……そう言えば結構経つけどなんで誰も来ないんだろ?

 

登ってくるときは結構な頻度で人を見かけたからちょくちょくここにも来るはずなのにね。

やっぱりレストランとか閉まってるからみんな引き返しちゃうのかな?

 

「遠慮がいらないのなら、もうひとつお伝えしたほうがよさそうなことが」

 

時間をかけて、リュックの中にぐしゃっと詰めていた紙を広げて元のようにお弁当を詰め始める。

 

帰ってからのお楽しみ。

 

あ、帰りに漬物買ってくの忘れないようにしないとね。

 

「その、大人でもだと思いますけど……子供にとっておふたりの目つきは少し、きつすぎます。 いえ、正確には目つきと顔つきの両方ですけど」

 

彫りが深いっていうのとは別に なんだか目つきが……ふつうの人がチワワだとするとハスキーくらいには鋭いってジャブを入れてみる。

 

「………………………………」

「………………………………」

 

特段怒る気配はないけど……なんか観察されてる?

 

なんだろ。

まぁいっか。

 

「さらに言ってしまいますと、そもそも笑い方も表情も声もその全てが怖いです。 たぶん、力が入りすぎなんだと思います」

 

緊張すると顔ってこわばるよね。

 

この人たちが緊張でそうなってるって思えないから多分会社とかで厳しい命令してたときの表情がくっついたままなんだ。

 

手で毎日うにうにって解せばそれなりに動くようになるって思うよ?

それで僕もびっくりするくらいかわいい笑顔できるようになったし。

 

うにうにって、うにうにって。

 

「………………………………ふははは!」

 

悪役みたいな笑い方するおじいさん。

 

「そうだな、儂たちはいささか故郷……吹雪の吹きすさぶ寒い故郷の表情が染みついてしまいすぎているようだな! ふははははっ」

 

言い回しが古い。

まるで俳優さんだ。

 

「太陽のせいもあるか……? 私たちにとってはこの国の日の光は少し強すぎるからな。 しかしこの国の人たちはサングラスをしているともっと避けてしまうしな……ううむ」

 

あー、サングラスって外国は普通だけどここじゃ普通じゃないよね。

花粉症とかのマスクは平気なのに不思議だね。

 

これが異文化ってやつ。

 

「いや、こういうのは本当に……一切の遠慮が無い、知り合いでない他人にこそ聞いてみるものだな! 数年来の懸念があっという間だ!」

 

がははと笑っているおじいさん。

 

その笑い方も怖いんです。

声量が違うもんね。

 

「特に、家のものたちは皆無駄な遠慮をしてばかりいて困る」

 

だからぼそっと怖いこと言うのもまた怖いんだって。

 

いそいそとリュックに詰めてしまったものをぜんぶ出して、お弁当を下敷きにぎゅうぎゅうと詰めていく作業中。

 

「親しい者に、君のような幼……失礼、若者が、大人でないのがいないから助かるよ。 他にもないかのう? 話し方や仕草などささいなことからなんでもだ! もう……20年はこちらの人たちと暮らしておるし、だから合わせ慣れているつもりではあるのだが。 君から見て何か……アドバイスはないだろうか。 これも縁というやつだ、是非聞かせてもらいたい」

 

なんか仲良くなったって勝手に思ってずけずけ言ってくる人って多いよね……僕そういうの苦手。

 

でもそういう人たちって割とひどいこと言われても平気な気がするし……なんかイラって来たから言っちゃえ。

 

「ええと、強いて言えば、その」

「はっきり言ってもらって構わないよ。 どうせ知人に当たっても君ほど気軽に教えてはくれないだろうからね。 なにを言われても怒ったりしない。 約束するよ」

 

なんだかおばあさんのほうも乗り気だし。

 

でも「怒らないから言ってごらん?」って怒る前フリじゃない?

 

そうじゃないよね?

信じるよ?

 

「…………身体的特徴なので言いにくかったのですけど。 それは仕方ないとは言っても、子供と触れ合いたいのなら……その。 『そちらがつけている真っ黒でごつごつした眼帯』は遠くからでもはっきりと目立ちますし、近くだと威圧感があります」

 

「――――――――――――――――ほう? 『眼帯』とな」

 

怒ってないよね?

 

あ、背中に汗垂れてきた。

 

「……それでそちらは、目からほっぺたにかけての大きな傷跡。 ……せめて髪の毛とかお化粧とかマスクとかで隠したほうが……いいと、思います」

 

「――――――――――――――――そんなに大きいかね?」

「え? あ、はい。 ぱっと見て分かる程度には」

 

でも言いかけたことだから言っちゃう。

言えって言われたんだから言っても良いよね?

 

「………………………………………………………………」

「………………………………………………………………」

 

どうして?

 

怒らないって言ったのに。

 

怒らないって言ったじゃん?

怒らないって言ったじゃん!

 

ああいや、この人たちときどき変なタイミングで黙りこくる癖があるみたいだからもしかしたら怒っていないのかもしれないけど……なんというか、あれだ。

 

怖いものは怖い。

 

ただでさえ生物的な本能で体格差に圧迫されている僕になんてことするんだこの人たち。

 

……お年寄りだからって思わないで「僕、バスの時間あるんで……」ってさっさと下りちゃえば良かったなぁ。

 

「ずず」

 

しょうがないから限りなくゼロに近づいて来たお茶をちびっとすする。

 

……あ、怖いからって漏らさないようにしっかり締めておかないと。

 

何か男のときより難しいけど、こう……きゅってね、きゅって。

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