【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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27話 回想・又は過去・ 1/4

 

僕は昔から、なんだか調子が悪かったりどっかを痛めたりヤなことがあったりすると必ずといっていいほど夢を見る。

 

普段夢なんか見ないのにね。

見たとしても普段なら朝ごはん食べる前に忘れるのにね。

 

夢ってのはストレスのせいで見るものらしい。

少なくとも僕のものは。

 

夢。

 

悪夢。

 

10年も前の、その日のこと。

 

思い出さないようにって普段からがんばり続けてようやくほとんど思い出さなくなっていたのに、思い出すとしても「かつてそういうことがあった」っていう程度の興味しか引かない程度なのに。

 

そのくらいは忘れきることができていたあの日のこと。

 

つまりは僕にとっての悪夢である、その日から始まった「それ」。

 

僕が僕になった日のことだ。

 

――僕はいつのまにか中学生になっていた。

 

今の幼女って意味じゃなくて、本当に元の体で精神年齢はそれよりももうちょっと低めっていうどこにでもいるような内気で静かなのが好きな、かつての僕。

 

もう顔も思い出せなくなって短い髪の毛に大きめの制服を着込んでいたってだけ思い出す。

当時から眼鏡かけてたからイメージ通りのインドア派で根暗でじめじめした男子中学生。

 

その僕が、その日のその場面にいる。

 

そしていつもどおりにその場面をスキップすることも目をそらすことも閉じることも耳をふさぐことだってさせてくれないんだ。

 

ただただ見せつけられるだけ。

 

僕の中のなにかが完璧に壊れた、その瞬間を。

 

『2年――組の――響くん。 至急荷物をまとめて教員室に――』

 

それでもその日その電話を学校で聞いた前後の2年くらいのことは、ほんの一部しか……それも断片的にしか覚えていない。

 

つまりは中学に入る頃から高校に入ってしばらくするくらいまでのそれなりの期間がどっかに行っちゃっているんだ。

 

覚えていないのか、それとも記憶に留まらなかったのか。

たぶん両方だとは思うけど、とにかく薄い記憶しかない。

 

こうして夢の中でさえすべてがモノクロになって、すり切れはじめたビデオテープを古いブラウン管で再生しているみたいな、そしてそれを映画館のスクリーンで上映しているようなそんな具合だ。

 

……ビデオとかブラウン管とか、小さい頃家にあったのを見たくらいなのにね。

多分あの子たちにとっては映画やドラマや漫画みたいな創作物でしか見ることのないものだ。

 

もちろん観客はいつも僕ひとりだけ。

きっと上映しているのも僕ひとりだけ。

 

その日のその瞬間からしばらくしてから……そのときの先生や叔父さんに心配されて無理やりに連れて行かれて、彼らが満足するまでのそこそこの期間をかけて何十回と受けたカウンセリングとやらによると……僕はいわゆるPTSDとかいうやつだったらしい。

 

僕は「違う」って思っていたんだけど、行くのがめんどくさかったしで何度もそう主張したんだけど「そうなっている人はみんなそう言うんだよ」なんてらしい言葉で言いくるめられてそういう病歴を抱えることになったわけだ。

 

まぁ中学生が大人たちに「そうだ」って言われて「そうじゃないんですけど」って言い張れるほど度胸も知識も経験もないもんな。

 

僕自身は特段にふさぎ込んだりしなかったんだし、むしろ僕自身のあまりの普通さにびっくりしながらもそこそこにはまともに生活できていたんだから平気だったのにね。

 

本当に大変な目に遭った、心に傷を負った他の人たちと比べちゃいけないって思っているんだけど……ともかく公式な見立てではそういうものだったことになっていた。

 

こういう風に周りが、僕が受けるはずだった衝撃を大げさに、さも彼ら自身が苦しんでいるかのごとくに受け取ってごろごろしている様を見ていたから僕は余計にそれほど苦しむことはなかったわけだし。

 

その日のその瞬間――教員室から校長室に連れて行かれた先で聞いた、その電話。

 

「父さんと母さんが死んじゃった」っていう連絡。

 

あぁいうのってどんだけオブラートに包んだ言い回しとかしたって結局はショックは受けるものなんだからさっさと言ってもらったほうがいいのにな。

 

僕ならそう思う。

当時からずっとそう思っているのは変わらない。

 

僕みたいなのは薄情なんだろうか。

 

普通の人は違うんだろうか。

 

もっと情緒豊かなんだろうか。

 

パニックになったり泣きわめいたりするんだろうか。

気を失ったり吐いたりしちゃうんだろうか。

 

僕はそういうのがまったくなかったから分からない。

少なくとも僕みたいな思考回路している人ならきっとこう思うはずなんだけどなぁって思うだけ。

 

――その日もいつものようにだらだらと受けていた授業の合間に「ちょっと……」って呼び出されて、そのまま先生の車とか呼んでもらったタクシー……とかじゃなくって、荷物をまとめたらすぐに来たらしいパトカーに乗せられて。

 

かみ切れないあんちくしょうを歯のあいだに残したままみたいな言い回しでまくし立てられ、なんだか悪いことをした気持ちを抱えつつ結構離れたところのばかでかい病院へと連行された。

 

車内では乗っていた人がいろいろと気を遣ってくれたのは覚えているけど、それが却ってうざったかったことのほうが印象に残っている。

 

「早く帰りたいなぁ」って、そればっかりがぐるぐるしてて。

 

そうして病院に着いて物々しい雰囲気で、おんなじように連れて来られた人たちがたくさんいて、泣いたり怒ったりしながらそれはもうすさまじいことになっていた。

 

「阿鼻叫喚ってこういうことを言うんだなぁ」って、「まるで映画みたいだなぁ」って思っていた気がする。

 

僕が入った両隣の病室では大騒ぎになっていたこともあって、僕と僕を連れてきてくれた警察の人と病室にいたお医者さんと空のベッドしかない部屋は、とさらに静かな感じだった。

 

「ご両親のことは残念でした。 手は尽くしたのですが、ここにいらしたときにはすでに、その……」

 

僕と目を合わせない……きっと合わせられなかったんだろうお医者さんらしき人が告げる。

 

「いえ、仕方なかったんですよね。 事故ですから」

 

そういう事実があったんだって認識はできていた僕。

 

ニュースっていう画面とか紙越しでしか知らなかった人の「死」ってのはこうもいきなりくるんだなーって思ってた。

 

そんな風なことが他人ごとのようにループしていた。

心の準備なんかできるはずなんかないものな。

 

……いろんな映画とか本とかマンガとかで知ってはいた。

 

けどいざこうして見ると、本当にいろんな気持ちがぐっちゃぐちゃになるんだってそのときに知った。

 

僕はそんな感じで妙に頭が冴えていて冷静で、朝まで顔を合わせていた父さんと母さんにはもう会えなくなったことをただの事実として認識しただけだった。

 

比喩表現である、胸がぽっかり空いたようなっていう感覚。

本当に胸が冷たくなってお腹の奥も冷たくなって、なんでか奥歯とか腰が痛かった気がする。

 

ものすごーく、ことさらにやんわりと。

 

僕の目の前でお医者さんがもごもごと言っていたのから多分、まだ中学生だった僕にそれを見せるのは酷なことだってくらいにはひどい事故だったんだろう。

 

ドラマとかで遺族の人とかにする「酷だとは思いますが本人確認を……」っていうの、無かったし。

あのときは気づかなかったけど、多分そういうのは全部後見人の叔父さんがしてくれたんだろうな。

 

だからだったのかはわからないけどそれからずーっと、僕が聞いてもどうしようもない事故の細かい経緯とか現状とか、これからの僕のこととか学校のこととかお金のこととか……そういう、僕にとっては本題でもないようなどうでもいいことばっかりを何時間もかけて、いろんな人が入れ替わり立ち替わり口を開きっぱなしでとにかく忙しかったことだけを覚えている始末だ。

 

まるでお葬式してるみたいに忙しかったんだ。

 

でも、そのときの僕が思ったのは……駆けつけてくれた叔父さんをはじめとした親戚の人たちがほとんどやってくれたはずの父さんたちをお墓にしまうという作業に比べて、名前を書いたりハンコを押したりしなきゃならない書類のほうがずっと大変で、肉体よりも情報のほうが大切なんだなって、そういう感想だった。

 

人ってのはしょせんはただの情報。

死んだら写真と戒名と書類だけになるんだ。

 

実際今はそうなっているもんな。

 

 

 

 

その事故のことは、僕が忙しかった……といってもほとんど人任せで、僕は父さんたちの相続人っていう法律上の立場からどうしてもしなきゃならないことしかしなかったんだけど、ともかく僕基準で忙しかったひと月くらいのあいだずっとそれはもう大変な話題だったらしい。

 

今思えば周りの大人たちに……叔父さんとかお隣さんとかにテレビとか新聞とか見ないように仕向けられていた。

多分適当な理由でスマホさえ取り上げられていたんだろう。

 

それで特にニュースに興味を持ったりもしていないただの中学生男子だったから、気がついたら事故の報道とかはとっくに終わってたんだ。

 

だからそのあとの学校で気を遣われながら、でも好奇心に負けているって感じでそろそろと父さんたちのことを聞かれたときも、むしろ僕がぜんぜん知らないからみんなびっくりしていたくらい。

 

まぁまだ高校生になる前だったのもあって学校の外の人が押し寄せるとかはなかったあたり僕は恵まれてたんだろうな。

 

ともかく、父さんと母さんは死んだ。

 

生物は死んだら死んだままで生き返ることは無い。

エントロピーは失われたら失われたままなんだ。

 

それが魂って言うものかどうかはさておいて、もう会えないところへ行ってしまったんだ。

 

ということはそれ以上のことを考える必要はなかったわけで、だから僕にとってその経緯とかはそれこそどうでもいい情報だった。

 

おかげで今でも単なる偶然で起きた事故で、しいて言えば玉突き事故みたいにぜんぶがいちどに起きたわけじゃなくって、誰かの故意とか過失とかそういう悪意とかがあってのものじゃなくって本当に偶然で、ただの不運としかいいようのないもので……何回振っても1しか出ないような、そんなサイコロみたいなもので。

 

誰にも何にも責任はなくって、無駄にそこにいるお巡りさんとか自衛隊の人とかに食ってかかる理由も無ければ泣きわめいて同情を買う必要も無くって……ただ「僕の両親だったもの」を含めて20に近い人がこの世をほぼ同時刻に去ったっていうだけの不幸に襲われた、ただそれだけで。

 

……そりゃあ今にして思えば、まだ中学生って言う子供だった僕……いや、今はもういっかい子どもになっちゃっているけど……心までが子どもだった僕にとって父さんと母さんがいなくなったっていうのは相当なストレスだったって、今ならわかっている。

 

多分みんなで相談して母さんたちだったものを僕に見せないままホネにしてくれたおかげなんだろう。

それが子供に対する大人の優しさなんだって今なら理解できる。

 

ともかくそのストレスのせいでその後どころかその前のことでさえ……少なくとも中学に入ってから高校を卒業するまで周りが一切気にならなかったんだろうな。

 

だから一応でなんとなくやっていたはずの部活もあれ以降はやった覚えがないし、学校だってだんだんと行かなくなっていった。

 

家のこととかひっくるめてぜんぶを世話してくれた、後見人を買って出てくれた叔父さんがいなかったら中退までありえたかもな。

 

だって僕だしな。

 

適当にぷらぷら……いや今でもニートしてるけどそれ以上に、その日暮らしで放浪するとかそういう人生にエントリーしていたかもしれない。

 

ひょっとしたら半年前にホームレス幼女が爆誕していた可能性だってあるんだ。

 

でも外からせっつかれてようやく動く僕だから、そうしてお世話を焼かれないとダメだったのかもしれないとも思う。

 

だからそうして、これまで……今までも残っている記憶といえばぼんやりとしていてふわふわしていてつかみどころがなくって、とぎれとぎれで力が入らない感じの「僕が僕ではなかったような」そんな思い出未満の何かだけだ。

 

……ないものはない。

 

よっていくら踏ん張ってみても出ないものは出ないんだ。

 

そういうわけで僕自身のことはよく思い出せないしそのころの僕の周りのことを思い出してみることにしよう。

 

というより経験上、この悪夢はひととおり思い出して見させられてストレス抱え込まされないと目、覚まさせてくれないしなぁ。

 

悲しい経験知だ。

 

悪夢なんてなんで見るんだろうな。

しかもまいっかいおんなじように。

 

「…………………………………………」

 

どうにかして入ったんだろう高校ではたいしたことはしていない。

 

本気でのろのろやってた勉強ぐらいしかないんだ。

それはもう悲しいくらいに。

 

休みの日なんかは本当にぼけーっとして気がついたら寝る準備してたとか言うレベルで。

 

……人の噂って、どうやってか広まるもの。

 

だから気がつけば同級生……っていうよりはたぶん先生たち主導だろうな、みんなそろって僕の親のことを知っていて、けど口にはしない程度に優しい子が多かったんだろう、それでイヤな思いっていうのはほとんどしないままだった。

 

僕は本当に周りの人たちに恵まれていたんだろう。

 

僕は神様とか信じないけどそういうのには感謝してる。

 

でも当時の僕は、もともと人よりも精神年齢が低いっていう自覚があった高校生になりたての僕にとっては、そういう、初対面のはずなのに「両親を失った気の毒でかわいそうな子」って感じにものすごく遠慮がちに接してこられるのがたまらなくって、ほとんどの時間は図書館とかに逃げていた気がする。

 

なるべく話しかけられないようにって。

まぁそれでも話しかけてくる子はそれなりにいたけど。

 

あのときよりもずっと小さくなっちゃったけど、あのときよりは大人になった今だからわかるけど、あれはすべてに恵まれていないと実現しない環境だったんだ。

 

だけどそのときの同級生たちや先生たちなりの優しさっていうものは、そのときの僕にとってはただただうっとうしいものでしかなかった様子。

 

なんでこんなことぐりぐりとねじ込まれるんだか。

 

それも自分自身に。

正確には僕の無意識に。

 

心が痛い気がする。

夢だからあたりまえか。

 

「…………………………………………んぅ?」

 

と、ここで。

 

普段の僕なら夢の中でこんなにじっくりと思い出すことも考えることもないっていうのをやっと自覚できた。

 

「……………………………………………………………………こっわ」

 

頭の中でつぶやく声は聞き慣れた幼女のもの。

 

こういう精神異常系って怖いよな。

だって「おかしいのをおかしいって自覚できない」んだもん。

 

ようやく意識を……自我を取り戻した僕の目の前に、ちらちらと通っていた校舎とか近くの席の子とか先生とかそういうのがぱらぱらと回っていく。

 

昔のことが断片的に駆け抜けるように流れていくこれって……まさか、走馬灯?

 

「いや……ない。 ないない」

 

ないないって声が耳から聞こえてる感じがある限り僕は生きてるらしい。

 

まぁ死んだ覚えないもんな。

ただの夢だ、気楽に行こう。

 

起きたらトイレに直行しないと危ない膀胱と栓になっちゃってるんだから。

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