【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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27話 回想・又は過去・ 2/4

「けど、今日のは長いなぁ」

 

半ば強制的って感じに昔の記憶をたどらされている今の状況。

走馬灯って言葉がいつもみたくぽろっと出てきちゃったけど気にしないことにしたい。

 

……そんなわけない。

 

そんなわけないよね?

 

まさか本当に死にかけてるとかないよね?

 

まぁ考えても目が覚めるか覚めないかの2択だからどうしようもないんだけども。

 

……こういう起きる寸前の夢の中でのあいまいな意識でもってさらに考え込むのってどう表現するんだろ。

 

よくわからないけど、ともかく目の前は大学時代へと切り替わっていたらしい。

高校よりもずっとひどかった大学生活へ。

 

……………………思い出すのもこっばずかしい。

思い出させれるのはもっとこっぱずかしい。

 

このあとにはのたうち回りたくなる記憶が待っているはずなんだ。

 

止まってくれない……?

 

「………………止まれっ」

 

……いろんな授業……講義とか大学特有の独特の懐かしい表現だよね……それを受けていた記憶がやって来ている。

 

なんかダメそう。

諦めるしかない。

 

黒歴史って言っても僕がしでかしたこと。

 

なぁに、他人との関わりがほとんどなかったから他の人よりは恥ずかしいことなんてないはず。

そんな悲しい気の紛らわせ方をしてみる。

 

……とうとうまともな生活っていうものを放棄しだしたころのことだから、大学へは行ったり行かなかったりして単位もぽろぽろと落として、留年っていう子どものころにはダメな大人の代名詞だったのにいざしてみたら拍子抜けだった烙印をいくつか手にしたりしていた。

 

理由は単純この上なくって、ただがんばるっていう気持ち……気力とかMP的なものがなくなって、家を出ることすら……もっといえば起きてから目を開けるまでにも時間がかかるくらいにおっくうになるっていう、めんどくささの頂点に来ていた頃なんだ。

 

一時期はどうにか呼吸すらしなくてすむ方法がないかとかわりと真剣に考えていたくらいだしな。

 

座禅とか瞑想とか本当にはまったよなぁ……今から思い出してみても相当にやばい気がするし

、変な方向にねじ切れなくって良かった。

 

食べるのもめんどくさい時期まであったし、病気になったりしなくってほんとうによかったな。

ほんとうに。

 

だってヒトに限らず生き物の根幹のなにかをしようとする力、なにかをするっていう意思そのものがなくなっていたからんだから。

 

まぁこういうのって神妙に相談したら精神科に連れて行かれるんだろうけどな。

 

人ってこういう時期あるじゃん?

 

大二病って言葉もあるらしいし誰だってきっと1回は通り過ぎる道なんだ。

だから人生を台無しにしないで無事に終えられたことを誇るべきなんだ。

 

でもまぁ普通の人はちょこっとで終わるんだろうけど。

 

大学って、出るのは簡単なもんだからそんな感じだったのに卒業できちゃって、とうとう最後の砦を自分で破壊しちゃったわけで。

 

慣れないスーツで卒業証書を持って帰ってきた僕に残っていたすべきことは、もうなくなっていた。

 

だからひきこもった。

 

別に理由なんてない。

ただただひきこもったんだ。

 

何ヶ月か卒業証書をテーブルに置きっぱなしで埃が被る程度には自堕落になっていた。

 

お金とか財産の権利とかも勝手に持って行かれたりなんかはしなくってみんなきちんとされていたし、巻き上げられたりすることもなくちゃんと僕のものになっていた。

 

父さんも母さんも会社員の働き盛りだったからだろうし事故の影響が大きかったからなんだろう、ちゃんと働きながらなら万が一でも大丈夫な金額が手元にあったんだ。

 

いろいろといっぱいたくさんの紙に名前書かされたりしたりしたし、そもそも叔父さんが有能な善人だったっていうのもあるかもだけど。

 

あらためていい人過ぎる叔父さん。

元の体に戻ったら会いに行こうって思う。

 

「……戻れるのかなぁ」

 

夢の中でも幼児になってる辺り状況は深刻で、いつ戻れるかは分からないけどね。

 

そんな感じに中途半端に足りないものが無い状態だった僕は、僕自身ががんばらないとやばいっていう動機がないし、誰かのために……親のために立派になるって気持ちも無くなってたから、がんばろうっていう意欲も生まれようがないわけで。

 

住み慣れた家があってお金もあって男ひとりで生きていくのに何一つ困らなくって、唯一の悩みどころの叔父さんとかの親戚とかご近所とかお隣さんも、ときどきどこかで働くフリをしてがんばっている感じを醸し出しさえすれば、そこまでとやかくは言ってこない。

 

「体が優れないので……」とか「同僚と合わなかったので……」とか言えば求職期間ってことで「またのインターバルを……」って感じのループ。

 

「響くんは響くんだから自分のペースで良いんだよ」って言われるたびに心がちくちくしてたっけ。

多分そういうの親から直接言われた方が効くんだろうなぁ。

 

体はモヤシだけど健康で特に病気をする兆しもない20代。

家の敷地からゴミ捨て場までの往復以外じゃ、やろうってすればスマホひとつで食べものから娯楽までほとんどすべてのものが手に入る。

 

改めて便利すぎる弊害がここに出た感じ。

めんどくさがりには素敵すぎて堕落する時代なんだ。

 

だから僕はたいした理由もなく、特別のトラウマとか不幸があって……ってわけでもなく、ごく一般的な、誰にでも起こりえる範囲のちっちゃなきっかけのせいで、ただ、すべてを投げ出したんだ。

 

ただただめんどくさかったんだ。

 

――そうして1回投げ出して気がついたらもうあっという間に数年。

きっかけから換算すると実に10年。

 

10年っていう生まれたばかりの赤ん坊が今の僕と同じくらいにまで成長するっていう、途方もない貴重な時間を僕は無駄に過ごしてきた。

 

ちょうどあの子たちが産まれた頃から今までの時間。

生まれたての命が人らしく育つ時間に僕がしてたのは、ただ学校をそれらしく過ごしてお酒を覚えただけ。

 

「…………もしかして、だから僕はこの姿に……?」

 

ちょっとシリアスになってみたけど無い無い。

そんな偶然なんてありえっこないもん。

 

すべては魔法さんのごきげんだしな。

きっと魔法さんは銀髪幼女趣味なんだ。

 

だいたいその10年っていうのが原因だったら中学生くらいの姿にはなるわけで、間違ってもこんな幼女チックな幼女にはならないはずだしな。

 

魔法さんが意志を持ってるのかなんて相変わらずに分かんないし、誰かの呪いとかだったとしてなんで僕って感じだし……どうせ分かることもないんだろうしな。

 

……そんなことを考えていたら場面が一気に変わってた。

 

ダメダメな僕でも「これじゃダメだよね」って思ってちょっと動くってのは何度かあって、「あ、これは本当にやばい」ってなったのは引きこもって少ししてから。

 

その原因は単純に自律神経失調症ってやつで、しかも自分のせいって自覚があったから。

 

……人間って毎日規則正しく体を動かして外に出ないとだんだんとおかしくなってくるらしい。

 

僕は起きたいときに起きて眠くなってきたら寝るっていう子供のころに夢にまで見ていた生活を始めて、昼夜逆転さえまったく気にしないような生活を続けていた。

 

ものすごく快適そうに過ごしている僕。

だって本能に従って生きるだけだもんね。

 

でもそんな生きながらの天国に近い生活長続きしないんだ。

 

実際こうして見てみると不健康そうにしか見えないし幸せそうじゃない。

 

「なんとなく体調が変……?」っていうのから始まって、動悸とか頭痛とか階段を上るだけで息が切れるとかが出て来てびっくりしてる。

 

さらには眠いのに寝付けなくなってお酒とか薬とかに頼ってもまともに眠れない不眠とかになって、音とか光にはもともと敏感だったけどちょっとした音とか肌触りでもダメになったり、感情が僕のものじゃないみたいに四六時中ずーっと勝手気ままに動いて手がつけられなくなって……ひと言で言うと神経がささくれ立った感じになってどうしようもなくなってる。

 

気がついたらもうどうしようもなくなっていて、ただ生きるだけっていうの自体が難しくなる始末僕が放心してる。

 

あー、大変だったよねぇ。

 

多分僕の人生で1番辛い時期だったんだろう。

中学生のときよりもだからよっぽどだもん。

 

人は健康こそが幸せってのがよく分かったんだ。

 

このおかげで、人っていうのは適度なストレスっていうのがないとただ楽しくて楽なことばっかりしていたらダメってことが分かったんだよねぇ。

 

けど原因がわかれば話は早いもので、早寝早起きに毎日最低30分は外に出て散歩とか軽い運動するだけでちょっとずつ良くなった。

 

目の前で幼女なのに成人男性なリピートさせられてる僕の姿もとても大変そうだけど実際大変だった。

体力ってほんと毎日の積み重ねだよね……この体になってもう1回身に染みて理解してるけど。

 

あの辛さを知っているからこそ、どんだけめんどくさくなったりしても「あれほどの生活に戻ろう」って気にはならなくって、つまりはちょっとだらしない程度の生活を維持できるようになったのは、きっと良い薬ってやつになったんだろう。

 

人って痛い目見ないとわかんないもんだからなぁ。

後でわかるから後悔っていうんだし。

 

ひーひー言いながら朝早く起きて動いて……ってしてる少し前の僕を眺めてたら改めてそう思う。

 

その後は「完全なニートも良くないかも」って思って、やる気のある期間だけ適当に楽そうなバイトをして社会人もどきをしてみて普通の人にちょっとだけ近づいてみたりしてたらしい。

 

ひきこもり明けで体力が戻りきっていなかったのもあって、力仕事でもなく拘束時間も短めで僕が持っている唯一って感じの勉強……まぁつい最近まで失うことになっていたんだけど、それを使っての学習塾とかでのバイトが1番続いてたっぽい。

 

勉強とかいっても、熱心じゃ無くってただぼーっとしてただけなのになんか特定の子に懐かれやすいからか、ほとんどがそういう子の子守みたいな感じでいることが多かった様子。

 

その内に子守にも飽きたから適当な理由をつけて止めて、もういっかいニートに戻ってからは生活リズムだけ守って、でも好きなことを適当にするっていうそこそこに充実した生活を送って、ひとりぼっちにしてはこれまたずいぶんと満ち足りた時間っていうものを過ごして。

 

――――――そうしてあの朝になって「なんじゃこりゃあ!?」ってなってる場面まで追いついてる。

 

脳みそってすごいね。

 

どう考えても僕自身は体の中に居たはずなのに、こうして記憶の中では僕を外から眺めているようにできるんだもん。

 

しかも前の僕も今の僕テイストで。

 

まぁ男見てるよりは目に優しいしいくらか悲壮感が紛れてる気がするからいいや。

 

やっぱり人って見た目だよね。

 

元の体に戻ったら見た目にはちゃんと気を配ろうっと。

 

 


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