【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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27話 回想・又は過去・ 4/4

「は――……」

 

他人の幸せを見るとため息が出るって言うのは女の人の特徴かって思ってたけど違ったらしい。

いやまあ今の僕も肉体は女なんだし否定はできないけど他分別の理由。

 

心から望んでいるのが目の前で見えていると……こう、ため息しか出ないんだ。

「いいなー」ってうらやましさと「ずるいなー」っていう妬ましさがブレンドされた感じ。

 

でも完全に現実とは違う展開をしているのを見せつけられるから「お隣さんたちにお世話されているあっちの僕」と「そうじゃなかったこっちの僕」とを別人として見るようにもなってきている。

 

まぁ夢だし。

夢って都合良いものだし。

 

それでもって夢ってのはおかしいのにおかしくないもんだし……って思ったんだけど。

 

「……えっ」

 

今までのは……ちょっと思うところはあったりはするものの、けどただの仮想的な展開だって考えていつも見ている映画とかみたいにぼーっと見ていられたんだけど……なんだか様子がおかしなことになってきている。

 

夢の内容がおかしな方向へと転がりはじめてきているっていう感触。

 

だって今までは「今までのこっちの僕」が経験したようなできごとを「あっちの僕だったとしたら?」って感じにIFな空想として再現していた感じしかしなかったのに、なんだか…………そう。

 

なんだか、この夏休みを終えたような時点から夢の中の展開がひとり立ちしちゃっているかのようで。

 

だって僕の目の前のスクリーンにはすでに紅葉を迎えた山からの景色が広がっていて。

 

ということは季節は今を……残暑を通り越して秋になっているはずで。

それもそこそこに標高の高い山の風景だからつまりは11月くらいにはなっているはずで。

 

だからだから今の僕からしてみたら「2か月は先を進んでいるかのようなありえない未来」へと突き進んでいることになる。

 

まぁ夢だし、明晰夢でもこうして意識ははっきりとあったとしてもつじつまが合わないっていうのもありえるんだろうけど……だけど今までが今までだったし、なんだかこう、もしゃもしゃする。

 

たとえるなら楽しもうとしていた作品のネタバレを不意打ちで食らっちゃったときみたいな?

 

それともちょっとだけわくわくしながら引いていたクジが紙の感触とかで「あ、3等くらいの微妙なやつが当たっちゃってるみたいだな……」って分かっちゃったときみたいな、そんな感じ。

 

そうして…………この感じは温泉かなにか。

あるいは火山の麓とかよりも上の観光地。

 

そういうところによくある日帰り温泉っぽいところの更衣室。

 

僕がひん剥かれている光景。

もちろん当然ながら全裸だ。

 

思わず目を背けたくなるような幼い女の子な体の上に銀色の髪の毛が腰を通り越した辺りまでさらさらと囲んでいて、周りの女の人たち……ほとんどおばちゃんとかだけど……がガン見してる。

 

そんな光景を「誰かの目から見ているような」そんな違和感。

 

その僕は珍しく羞恥心を感じているらしく……当たり前か、周りは肌をさらした女性ばかりだもんな……脚のあいだだけを隠して、指摘されてもう片手で胸も隠すっていうのを教わるようにしている場面だ。

 

どうしようかって戸惑っているらしい僕が貝の上にいるような格好をしてから少ししてようやく……文学少女さんがタオルを手渡してくれている。

 

あ、お風呂でもメガネするんだ。

まぁ僕もそうだったし見えないもんな……じゃなくて、その……彼女たちも、いるんだ。

 

既に下着姿になっちゃってるからどうしても視界に入っちゃって居心地悪い。

僕、こんな妄想するほどの男じゃなかったんだけどなぁ……罪悪感が。

 

あ、りさりんの大きい。

あ、眼鏡さんのも中々。

 

あ、メロンさんのがぶるんってなってる。

あ、レモンさんのは……揺れない安心感。

 

「……………………………………………………」

 

頭を全力で打ち付けたい衝動に駆られたけど体が動かないから起きたら自戒しておこう。

 

……なんで僕はこんなの見てるんだろう。

 

髪の毛がすごいって裸なのにもみくちゃにされていて、どうしようもないあっちの僕。

さらに傍にいたさつきさんまでが下着姿で、手がそれに掛かってゆっくりとあぁぁぁ目がそらせない。

 

あの子たちならまだしも……それでも充分に悪いけど、いくらなんでも小さな頃を知ってる知人の娘さんの裸を例え妄想だとしても見るなんて後味が悪すぎる。

 

つい最近に知り合った子たちの裸を見てしまうのといやそれもそれで困ったことなんだけど、それと小さい頃から知っている子の裸を見てしまうのとではやっぱり違うでしょ。

 

まずいでしょ……いろいろと。

 

でも僕はこんなことを考えるはずがないのに。

 

◆◆ 

 

   ◆

 

だって僕は、◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆なんだから。

 

◆◆       ◆

 

              ◆         ◆ ◆

 

……それに、視界がかなり違う。

 

さっきまでとは違ってはっきりとしている。

しかもこの目で「今」見ているみたいにフルカラーで、やけに鮮明で。

 

さっきとは違って声はぼんやりとしか聞こえていないけど、でもさっきよりも解像度的なものが上がっているようで。

 

「あ」

 

…………………………………………見えちゃった。

 

その……3人とも、ちらちらと、そしてはっきりと。

 

だってタオル……してないんだもん。

いや、タオルを体に当てては居るけど横から見えちゃうみたいな感じで。

 

いくら女の子同士だからってもうちょっと隠したら…………あ、男でもぜんぜん隠さない人多いからもしかして普通なのかな。

 

いつの間にか僕自身の視点になってるけど、僕の視点だからこそ上も下も至近距離で、動くものだから……目がぱっと、本能的に、その……見ちゃうことになるわけで。

 

――僕とは違ってきちんと女の子らしくなっている彼女たちを。

 

ひとりひとり違う体つきの……かがりとゆりかなんかはぜんぜん違うんだけど。

 

けどこれは目の劇薬だ。

えぐり取ってしまいたいほどの罪悪感だ。

 

目が覚めたら全力で忘れて、忘れられなかったら日帰りで一般人に座禅させてくれるお寺行ってあの木の棒で叩いてもらおう。

 

幼女だろうと煩悩があれば打ち付けてくれるだろう。

 

控えめに言って死にたい。

このまま突然死したくなってきた。

 

死んだ後のことなんてもうどうでもいいし。

 

もう思考をしたくない。

だってこの子たちと次に会うときが苦痛この上ないんだから。

 

ひとまわりも年下の子たちの裸を……夢とはいえ意図的じゃないにしても妄想しちゃったなんて……それも細かく隅々まで。

 

いくら幼女な僕の肉体とか興味本位で眺めてみたそういうのから妄想したとは言っても、女の子の見ちゃ行けないところを至近距離でじっくり見させられるってのは行けないんだ。

 

冒涜だ。

 

……もし忘れられなかったら、せめてもの気持ちとして彼女たちの言うことを何でも聞こう。

 

ゆりかには頼まれていた24時間耐久の映画とかアニメの鑑賞で、かがりには好きなだけの着せ替え人形、りさりんさんはグチに付き合うのと、さよは一緒に読書。

 

さつきさんは……こっちの僕は現実ではまだこの体で会っていないけど、きっとその内に。

 

「…………………………?」

 

いや、でも……少し変だな。

 

だって僕は僕以外の……幼女だとは言ってもぎりぎり女の子な僕自身の体以外に女の子の裸なんて直接目にしたことがないのに、どうしてここまではっきり……?

 

「っ!?」

 

唐突に視界がぶれて目の前が砂嵐みたいになる。

 

白黒になったり虹色になったりひとつの色しか見えなくなったりモザイクになったりして、まるでこ◆う◆い◆う◆も◆の◆ばっかりになって。

 

そしうてかろうじて見えていたみんなの裸体が完全に消えてほっとしたと思ったら、今度は空の中のなにかに吸い込まれるようにふわふわと引っ張られるような感覚で包まれて。

 

なにか白い/黒い球体?

 

それとも放射線状のなにか?

 

あるいはうずまき。

 

…………………………。

 

そういうものが無数にどこを見ても上も下も前も後ろも泡だらけな炭酸の中にいるような感じになっていって、ぱちぱちとしていて、そういうのがいきなりぶわっと襲いかかってくるような感じがしたから動かない体を動かそうとしていきなり動けて、それでぎゅっと体を丸めて目をつぶってしゃがみこんで。

 

ぷつぷつぷちぷちという音が――――――唐突に消えた。

 

 

 

 

「◆…………………………?」

 

光と音と五感がまとめて刺激されているような不快なような心地良いようなわけのわからない感覚が僕の中を通過することしばらく。

 

まだ何かあるのかもって思って少しばかりじーっとしていたけど、どうやらその気配はない。

 

というよりは何もない……みたい?

 

まぶたの裏から見る限りには明るさも常識的で、耳から手を少しだけ離してもそれなりに静かみたいで。

だから僕は、開いたとたんにまぶしいのがまた光ってきたりしないかってゆーっくりと目を開いていって。

 

 

◆◆ ◆ ◆

 

 

――――――そうして、次に目に映ったのは。

 

……くるくると飛んでいる白い鳥たちとその奥のもくもくとした雲と、そのはるか先の水色に近い青空。

 

それがみんな水平線に乗っかっていて。

 

その1本の線の下の浜まではみんな、透き通って緑がかった……エメラルドグリーンっていうんだっけ、そんな海の水で埋め尽くされていて。

 

空からは鳥たちの声とたまに吹く風の音、遠くからの波の鈍い音やなんだか分からないけど大きいなにかの音、近くからは規則的に波が砂を薄く覆ってから少しだけ引っ張りながら引いていく音。

 

つまりはどこかの海の砂浜の光景の中に僕はひとりでしゃがんでうずくまっていた、……らしい。

 

「…………………………」

 

振り向いてみれば見たこともない、けどひと目で南国だってわかるような植物がわんさかと生えていて。

 

そのもっと奥のほうには低いながらもいくつかの山がそびえていて。

ということはここは少なくとも南の島……かどうかわからないけどそんな雰囲気のところで。

 

「ぴっ!?」

 

不意打ちで足に冷たい感覚が来て口から漏れた僕の声が空まで響く。

 

どうやら波打ち際よりも少しだけ海の方にいたらしい。

あわてて何歩か下がる。

 

たしたし、と砂を踏みしめる音。

 

…………………………あれ、はだしだ。

 

けっこうに熱い砂の感触が、濡れちゃったからか指のあいだに張り付いている砂の感触が、さっきの冷たい海の感触が、指の股に残っている。

 

「…………………………」

 

さっきまでと違って今度は体の感覚があって動かせて、視点も感覚もは完全に僕自身。

さっきみたいに近いところにあるスクリーンから僕とそのまわりを見ていたようなのとは別物だ。

 

それにびっくりすると今みたいな情けない声が出るのっていつもの僕だしな。

 

「……???」

 

ぼーっとしていてもなにも起こらないみたいだからちょっとだけさくさくと砂を歩いて、さっきまで立って……うずくまっていたところへ戻ってちょっとだけ水を触ってみる。

 

…………………………冷たい。

 

「……しょっぱっ」

 

あまりのしょっぱさで何度かぺっぺっと吐き出してなんとかツバで中和された感じの口の中は、まるで夢じゃないみたいに現実感がある。

 

ちょっとじゃりじゃりするし。

砂が入っちゃったらしい。

 

やだなぁ……。

 

もういっかいしょっぱくなりながら口の中をすすいで立ち上がると、脚からおしり、背中、髪の毛へと重力を感じる。

 

一緒に視界も砂浜すれすれから地上1メートルへと上がり。

 

「…………………………」

 

……明晰夢って、こんなにはっきりするものなんだろうか。

 

さっきまでのでも充分以上にクリアだったっていうか現実とさほど変わらない感じだったのに、これじゃまるで完全に現実じゃないか。

 

……なるほど、そりゃあ明晰夢に躍起になる人がいるわけだ。

 

これだけ五感があって好きに動けるってことは、その……訓練次第でお望みのシチュエーションを作り出せればいくらでも好き放題できるし。

 

もしどんな場面でも作り出せるってなれば、普通の人ならいろんな欲望があるわけだから。

 

さく、さく。

 

もやもやとしているまま突っ立っていたらしい僕の後ろの方から、なにか……いや、人の足音が近づいてきて。

 

でもそれを前もって分かってたらしい僕は別に怖かったりしなくって。

 

「…………………………ありゃ? あなた、もしかして」

 

振り向いた先には……腰までの長い髪の毛を僕と同じようにだらんと流すようにしていて、不思議な感じの幾何学模様の入った服を着ていて、背が高くって、でも……服のせいもあるんだろうけど……でも、胸と腰回りからスレンダーって感じで。

 

……まるで「今の僕を色違いにしてからをそのまま成長させたような女の子」が、けど今の僕とは違ってくりくりっとした感じの濃い色の目を向けている、……中学生くらいの女の子がいて。

 

遠い南の島の砂浜に僕みたいにぽつんとふたりきりになっていて。

 

「もしかして…………『響』……なの……?」

「……さぁ?」

 

そんな彼女も僕も、おんなじようにかしげた頭からさらさらと髪の毛が風に吹かれるのに任せて立っていた。


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