【改稿中】銀髪幼女にTSしたニートな僕が過ごした1年間   作:あずももも

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32話 クリスマスと騒動と 1/3

「ひぃぃぃ……」

 

寒すぎるのって声出ちゃうよね……暑すぎるときもだけど。

 

前、あったかい季節に旅行へ行ったときにロープウェーで山の上とかに一気に行ったらこうなった覚えがある。

 

肺まで冷たいって感じるレベルになると抑えきれないらしい。

 

そのくらいに外がすっごく寒い。

それはもう、家の中とは比べられないくらいには。

 

だって、雪、そこそこに積もっているっていうのにまだまだ降っているしなぁ……。

僕の記憶にある限りこんな気温は生きてきた中で何日かないくらいだし。

 

寒さのあまりに思わずで雪道をのろのろ通り過ぎようとしていたタクシーを捕まえちゃったのは……不可抗力だ、うん。

 

家を出てからたった10分そこらっていうのは……まぁ薄着しか持っていないっていう事情が事情だし……?

 

あと体力も筋力もその他もろもろのすべてが落ちているんだろうし大事を取ったんだ、うん。

 

……お風呂でそれなりにあったまってから出たんだけど、本物の寒さには勝てなかったらしい。

一応今の僕に合う服を重ね着したりカイロ持ったりもしてみたんだけど……10分もたないとはなぁ。

 

普通寒い日なら相応の格好をするのに今の僕のベースが秋物……それもまだ寒くない秋物でその上にぶかぶかの男物を羽織る形だからそこまであったかくないんだ。

 

……無理にでも買いに行くしかなかったみたい。

 

ずっと寝ていた影響なのか、体、ちょっと歩いただけでものすごーくだるーくなったし今日じゃなくてもとは思う。

 

体がまるごと重くなったこの感じは風邪とかで寝込んだときに近いものだし、きっと痩せているのとおんなじ原因で体力も削られているんだろう。

 

だって冬眠だもんなぁ……家の中をうろうろするくらいじゃたいして気にも留めなかったんだけど、こうやって少し歩くと体力ってはっきり分かるよね。

 

時間が飛んでいてびっくりしたり生ゴミ未満のナニカを片づけたりって忙しかったし、そういうのに気がつくヒマがなかったというか余裕がなかったというか……だからタクシーに乗るっていうぜいたくをしちゃったのもしょうがないんだ、きっと。

 

こうしてタクシーに乗るのもまた相当ぶりな気がするし、たまにはいいだろう。

 

けどタクシーなんていつ以来だろ。

 

……たぶんお葬式のときとかかな。

つまりは、これまた10年ぶりってことで昔のこと。

 

10年に1度なら贅沢とも言えないな。

それにこれはしょうがないことなんだからしょうがない。

 

よし、自己肯定完了。

 

で。

 

タクシーの中……シートベルトが顔にかかりそうで手で押さえなきゃならなくってそればっかり考えていたけど、乗った印象としては……なんだかこぎれいになったというか高級感があるっていうか、そんな感じ?

 

なんで目の前のモニターで延々と広告を聞かされなきゃならないのかは分からなかったけどまだ寒くて震えてたから気にならなかったけども、タクシーだなんて……前の僕のときにはそもそもモヤシだとしても男だったわけで、その男としての体力と脚力があったもんだから使うだなんていう発想もなかったものだ。

 

旅行先とかでタクシー以外じゃ30分くらい歩かなきゃならないところとかだって、ぼーっとして歩いていればすぐ着いちゃうもんだから気にしないで歩いていたしなぁ。

 

今思えばそれってものすごく良いものだったんだ。

 

ただ若いってだけで素晴らしいんだ。

若いを通り越して幼くなった僕は良く分かる。

 

そう言えばこんな子供が乗ってきたらやっぱり何か言われるからまた魔法さんのお世話になろうかなって思いながら乗ってみたらなんにも言われなくて……特段の反応もされなかったから拍子抜けだな。

 

ミラーでときどき見られてはいるけど、これくらいは普通の範囲……なのかな?

 

たぶんきっとそうだろう。

だってなんにも言ってこないしな、運転手さん。

 

信号待ちでもどこかと連絡とかしていないみたいだし……通報とかされないなら良いや。

 

まぁ楽なぶんには文句はない。

今の時代なら子供でも乗るんだろう、きっと。

 

そうして結局駅前までたったの千円くらいで……歩いたらタダだったんだけど貧乏性が抜けないし……いつもの駅前に到着して、さっと適当に服を手に入れて着替えてきて、もこもこしながらロビーでくつろいでいる次第。

 

もちろんすみっこのほうで。

 

「ふ――……」

 

缶コーヒーであったまってきて人心地が付いたのか、もの思いから戻って来たらしい。

 

……考え込むクセは治らなさそうだなぁ。

 

駅前もどこもかしこも人だらけだ。

しかもみんな長靴と傘で動くもんだから大変なことになっている。

 

……タクシー使って良かった。

 

クリスマスっていうイベントの前っていうのもあって平日なのにごみごみしていてうざったいけど今日ばかりはしょうがない。

 

「…………あれ」

 

デジャヴ。

既視感。

 

知らないはずなのに知っていたりする……ような脳みその錯覚が起きているらしい。

まるでおんなじようなことが前にもあった感じがして……って思ったら、ああそうか。

 

ここはちょうど、僕が「アイドルやらない?」って絡まれた場所で――。

 

「……まさか」

 

イヤな予感がした僕は必死になって、髪の毛がほっぺたをぱしぱしと叩いてうざったいくらいに頭をぐるぐると目に見えるひとりひとりを見てみたけど……ただの杞憂だったらしく萩村さんも悪魔さんの姿も見当たらない。

 

デジャヴじゃなかった。

ただ警戒しすぎただけだったらしい。

 

まぁ、さすがにそうだよね……あんなことはそうそう無いよね。

今はちゃんと髪の毛も顔も隠してるから大丈夫みたいだ。

 

 

 

 

少し休んだら楽にはなったし、服も最低限のものを揃えたしで安心した僕。

 

こうしてセーターとか着てみるとさっきの服装がどれだけ無謀な冒険だったのかがわかるけど、あぁいった非常時はしょうがないしなぁ。

 

……荷物増えちゃったから帰りもまたタクシーかな……無駄遣いはしたくないけど体力的に心許ないし、雪道で倒れたら大変だから今日ばかりは贅沢をしておこう。

 

なぁに、3ヶ月分の生活費がかなり浮いたって思えば安い。

 

クセでぶらぶらしちゃっていた脚を落ち着けたら、さっきまで着ていた服が入った紙袋にがさっと当たった。

 

雪が冷たかったから靴まで買っちゃったけど……しばらくは雪かきもしなきゃだし長靴も必要だしな。

 

長靴とかほとんど履いたことないけど……雨の日とかに履けるから使えるし?

 

おかげで今の僕は下着以外みんながみんな新品に包まれている。

 

でも身長的に子供っぽいデザインのしか合わなかったから……余計に子どもらしくなっちゃった気がするけど何回か着ているうちに馴染んでくるだろう、きっと。

 

……長靴にふかふかの子供用コート……ボンボンの付いた帽子も被ってる僕はどこから見ても子供でしかない。

やっぱりアイデンティティーにずきずき来るけどしょうがないことなんだからしょうがないんだ。

 

店員の人のあしらい方とかも身についた僕は無敵だ。

 

あの人たちって子供と見るやにじり寄ってくるもんだから、先にアクション考えておかないとずるずる引きずられることになるんだ。

 

『どうしたの?』

『おかあさんは?』

 

こういうセリフが発せられる前にわかるようになったくらいだしな。

 

「おかあさん? もう居ません……」とか言ったら悪いしなぁ……事実なんだけど。

 

母さんはあの天国みたいなところで待っているだけだろう。

なぜかみんな聞いてあげない父さんも一緒に、きっと。

 

ちなみに輪廻転生を考えるととっくにナニカに生まれ変わっている。

 

天国で待つとか次の人生に生まれ変わってるとか……大人になるまでは散々考えてたけど今は割とどうでもいい。

 

特に今は幼女から逃れられないことだけだしな。

 

ちなみに服装も子供用のだけどカラーリングは男に見えるのにしておいた。

というか単純に無難なのってだけ……ほら、女児用乗ってピンクだから。

 

髪の毛を隠せば男でもおかしくない色合いで、帽子とパーカーで必死に隠していた夏までよりも楽ですらあるのが新鮮だ。

 

周りの女性……に限らず小さな子、それこそ今の僕くらいの子でもスカートとスパッツとかタイツとかスカートの代わりに短いズボン、ホットパンツっていうらしいんだけど……そういうとんでもない格好とかも勧められたけど、僕にはそこまで張り切る根性もないしズボンで済むのならそれに越したことはないし。

 

肉体こそ女の子だけどスカートとか脚をふとももまで出すって格好にはやっぱり抵抗あるもんなぁ。

それを思うと女の子ってすごいよね……真冬でふともも出すんだから。

 

でも服の種類もサイズも1回目の試着でばっちりだったし、色合い……コーディネートも無難だけど怒られるほどじゃない感じになったし、今年の流行とかも意識したし。

 

これで立派な女の子として、……。

 

……僕、また意識が……女の子として見られることに傾いていない?

気のせいじゃなくて?

 

「…………………………」

 

……知ってはいたけど習慣っておっそろしい。

 

みんなと会ったときにダメ出しされたり、そのまま買い物に行かされるハメになったりするっていう恐怖もあるんだけど、それにしても自然に考えてるのはまずい。

 

帰ったら男用のファッション雑誌も読んで自尊心を取り戻そう。

 

髪の毛を触りつつ顔を上げて目の前にそびえているクリスマスツリーでも見てみる。

 

吹き抜けのロビーを3階くらいまで突き抜けているツリー。

イルミネーションがまぶしいほどに、これでもかってくらいに張り巡らされている。

 

もちろんてっぺんには巨大なお星さまだ。

 

そして下のほうでは自撮りしている人多数。

周りを見てみればどこもかしこもクリスマス一色。

 

うん、心動かされない。

男だもん。

 

こんなことどうでもいいからそれより家でごろごろしていたいって心底思う。

 

うむ、完璧なる男の心だ。

 

「よしっ」

 

心の安寧を取り戻したところで、改めて時差ボケのような変な感覚を思い出す。

 

――寒くて暗くて静かで雪が降って積もった白と、クリスマスの赤と緑。

 

それに対するは僕の主観で昨日まで感じていたはずの、残暑の熱い日差しやセミの声と湯だったアスファルトときついくらいの緑と、高い空の水色とオレンジ色。

 

……半年飛んだっていう感覚が染みてくる。

 

未だに「これもまた夢なんじゃない?」って思いもするけど……次に目が醒めるまではここが現実ってことで。

 

あの夢の中でも今みたいに好き勝手に動けたんだし五感もおんなじくらいあったから、ここがまだ夢の中だとしても否定できる要素はないけども。

 

せいぜいが知っている世界だってことくらいかな?

なんだか時間軸はちょっと……いや、相当にずれてはいるけども。

 

 

 

 

人混みは苦手だ。

 

というわけでまだ体力が戻りきっていない僕は、いつだか来た覚えのある喫茶店の奥のほうの席を確保してなんとなくで選んだハーブティーを飲んでいる。

 

かがりがどこかで飲んでいた香りだけど……あったかい。

 

ほっとするけどまだお昼前でこの混みようだし、ちょっと休んだらさっさと帰ったほうがよさそうだ。

 

だってほとんどクリスマスだもんな。

 

夏にかけていろいろと連れ出されたせいで耐性ができているからもう少しなら大丈夫そうだけど……今は冬眠後っていう状況がなぁ。

 

寝過ぎたせいで体もだるいしあんな夢とこんな現実とで精神も不安定だし、なるべく家でぐだっとしていたい。

 

というか本当に冬眠していたんだとしたら栄養とかもすっからかんだろうし、事実痩せているわけでて高カロリーなチョコとかで補給してしばらくは安静にして肥え太らないと本気で病気にかかっちゃいそう。

 

この体で病気になったらとってもめんどくさいから気をつけないと。

いや、魔法さんのあれでどうとでもなりはするんだろうけどさ……。

 

「……む」

 

家を出るときにはまだ起動すらできなかったスマホを思い出す僕。

 

3ヶ月のせいでバッテリー、空になってたから結構掛かったなぁ……。

電源ボタンを押してしばらく。

 

……起動が長い。

 

あの子たちのことをふと思い出したけど……あれ、もしかしてやばい?

 

だってみんなからしてみれば夏休みが明けたばっかりのあのタイミングで僕との連絡がいきなりつかなくなって……「気が向いたときだけ」って言ってあるにしても1日に何回か返していたメッセージとかも返って来なくなって既読すらつかなくなったってことになっていて?

 

「よっぽどのことがなければかけて来ないで?」って言っておいてある、教えただけの電話番号にかけてみてもスマホの電源がないもんだから留守電にすらならない。

 

ケチって留守電つけてないんだ……ほら、今って1個1個でプラス料金になって、僕が通話する時間なんて年に何分だから……。

 

どれだけチャットしても見られなくって、電話しても「電源が入っていません」っていうあのメッセージが流れるわけで……つまりはいきなり音信不通になっちゃった……ということになるわけで。

 

……どういいわけしよう。

 

「ごめん、ちょっと3ヶ月くらい寝てた」なんてまず信じてもらえないだろうし……。

 

前から病弱ってことにしてたし、なにかあったってことくらいは察してくれるだろうけど、それだけに今から説明するってなると気が重いなぁ。

 

……けど、僕は決めたんだ。

 

みんなに嘘を――どうしても言えない部分以外はちゃんと言おうって。

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