グロムリン・フォズィルに対する作戦会議、全てのパイロットにコア・ネットワークを経由して情報の共有を行っているが、その中には亡国機業のMS部隊もブリーフィングルームにて情報が共有されていく。
戦場に出るかは不明だが保守派に所属するパイロットたちは元より核戦争を未然に防ぐという目的の為に所属している、己の利益を求める革新派とは元より反りが合わないのだ。
「まず敵の巨大モビルアーマーの名称はグロムリン・フォズィル。元となったのは決戦用重モビルアーマーであるグロムリンだ。グロムリンは主に対艦攻撃を目的として設計され、機体各所に大量の武装が装備されている。そんなグロムリンの巡航形態に外付けの武装ユニットを装備して強化したのがグロムリン・フォズィルだ」
そんな中でグロムリン・フォズィルの情報を説明するのはオレだ、そもそもオレ以外にあの機体を詳しく知る人間が存在しないからな。
「モビルアーマー、って何だ?」
「モビルスーツと同じ機動兵器で、モビルスーツと違って人型をしていない物を指す。特性としては戦闘機とかの延長のような機体が多いが、基本的に人型してなければモビルアーマーで良い」
その途中で一夏からモビルアーマーという聞き慣れない単語への質問にもサラッと答えていく、この辺りはあまり考えなくてもいい情報だ。
「話を戻すが、グロムリン・フォズィルは先程の交戦で見たと通り強大な力を持っている。機体上部の有線ヘッドビームの他、迎撃ウェポン・ユニットによって多数のビーム砲とミサイルを搭載して近距離での防空能力にも隙がない。そして脚部ユニットに強力なIフィールドジェネレーターを装備することでIフィールドによる力場を形成、ビーム等の光学兵器は無効化される。そして其れ等を掻い潜って損傷を与えてもDG細胞による自己修復能力を保有している」
これが一番厄介な点だな、その巨体故に装甲は厚い、だが威力に優れるビーム兵器が通用しない。
唯一の登場作品であるゲームでならやたらと強かったファンネル等のオールレンジ攻撃は防げないというシステムだったからそこまで気にならなかったが、それはあくまでゲームでの話、今は現実でIフィールドバリアは全周を守るように張られているだろう。
「攻略としては脚部ユニットのIフィールドジェネレーターを破壊してネェル・アーガマやアークエンジェルの艦砲射撃でダメージを狙うのが良いだろう。再生するが、再生前に攻撃を続けて防御を抜くしかない。もしくは一秋の白式による零落白夜でIフィールドを形成してる力場を破壊するかだな。それでパイロットであるクイーンを排除するのが唯一の攻略法だろう」
DG細胞もといアルティメット細胞はパイロットの精神と結びつくことで効果を発揮する為、パイロットが排除されれば能力を維持出来なくなる、この辺りはかつて臨海学校の時にデビルガンダム軍団との戦闘で理解しやすい。
「そこで良い情報を一つあげるわ。グロムリンのDG細胞だけど調整は完璧じゃない、何しろ完成前に引っ張り出して来たのだもの。大きな欠点を抱えているわ」
そこにスコールが割り込んで来る、恐らく革新派へスパイを送り込んでいたのだろうが、良い情報という点で期待が持てる。
「DG細胞は精神的な力に影響力を受ける特性を持つ。本来ならパイロットだけと結び付く筈のそれが、まだ調整不足で外部からの干渉による影響も受けるのよ。とはいえどうやって精神的な干渉を与えるか具体策が無かったのだけれど、貴方なら出来るのじゃない、紫藤康太?」
「確かに、オレなら出来るだろうな」
サイコミュを使いオレのニュータイプ能力を高めて攻撃すればスコールの言う条件は達成できるだろう、何より今挙げられた欠点というのはグロムリン・フォズィルがゲーム内で抱えていた唯一の弱点でもある。
劇中でもその弱点によって各主人公が必殺技を放つことでアルティメット細胞にエラーを起こし再生能力を封じるという演出だった、それをオレにもやれということだ。
問題は敵のパイロットであるクイーンの敵意が全てオレに向いていることだな、囮としてなら良いが決め手とするには警戒されているのはあまりよろしくない。
「そうなると康太くんを全員で援護する形が良さそうね。役割としては、そうね…………斬込み役として吶喊し敵の武装を破壊しに掛かるチーム、敵からのミサイル攻撃を迎撃して康太くんを護衛するチーム、いざという時の為に康太くんの盾となるチームの三つかしら?」
大まかな作戦の概要が見えてきたところでオレ以外の役割について更識会長が纏める。
「まず斬込み役は箒ちゃん、鈴ちゃん、一秋くん、一夏くんね。近接戦闘に強いメンバーを選んだわ。そして迎撃役はセシリアちゃん、シャルロットちゃん、ラウラちゃんの三人。射撃が上手くて対応力の高いメンバーよ。そして康太くんの直掩に当たるメンバーだけど、クロエちゃんにリナちゃん、そして私よ。ラビットフット社の人間で特に康太くんと付き合いの長い人を選んだわ。私が入ってるのは動くまで一歩退いた位置で戦況を見ながら指示出しもあるわ。それに、康太くん達の機体に使われているサイコフレーム、数が多ければ力を増すのなら傍に居た方が良いでしょう?」
割り振られた人選は妥当なところだろう、サイコフレームの共振に関しては一夏もいるが斬込み役でグロムリン・フォズィルの近くに居るなら効果はあるだろう。
これでIS学園側の配置は完了した、残るは亡国機業の動きだ。
「ワタシ達のMS部隊は援護に留めるわ。先程の役割分担で行くならハーレクインは斬込み役に参加、ワタシ自身は迎撃役になるわね。MS部隊はミサイル装備で後方待機、タイミングを合わせて艦からの攻撃と飽和攻撃を行う。それで行きましょう」
まず保守派であるジョーカー率いるトランプの動きだ、基本はオレ達と同じでISよりは防御力と火力に劣るMS部隊は支援のみ、装備のデータが表示されるがいわゆるジンのD装備と呼ばれるM66キャニス短距離誘導弾発射筒だ。
「残るは私達ね。私達モノクローム・アバターはIS三機が参加。けど先程の役割のどれにも該当しない、単独で行動させて貰うわ」
そして亡国機業の中立派というかトリックスターな印象のあるスコール達の部隊は別行動となる、その言葉に会長が怪訝な表情を浮かべるがオレは何となく彼女たちが何をやろうとしているのか想像がついた。
「勘違いしないで欲しいのだけれど、何も協力しないという訳ではないわよ。アークエンジェルはネェル・アーガマに同行させるし、革新派が目障りなのは同感。けど、敵はグロムリン・フォズィルだけではない。つまり何が言いたいのかというとね、IS学園所属の貴方たちは、
要するにスコール達のやろうとしていることは対人戦、それもISを相手にするのではなく、IS以外のMSなどをはじめとした戦力だ。
グロムリン・フォズィルにばかり目が行くがあの基地には他にも革新派の戦力は居る、オレが交戦したソキウスシリーズの他にもMS部隊がいない訳がない。
「それは……」
「無理しなくて良いのよ。貴方たちの中で躊躇いなくやれるのは軍人だったラウラ・ボーデヴィッヒか、非正規戦に慣れている紫藤康太くらいでしょう?つまり汚れ仕事を引き受けてあげるって言っているのよ」
かつてMSが世に出始めた時、オレは学園の授業で対MS戦のことを話したことがあるが、その時に語らなかった問題点がコレだ。
ISを相手にする時なら相手にも絶対防御があるから敵パイロットであっても殺してしまう可能性は限りなく低い、一秋の零落白夜が絶対防御ごと斬ってしまう危険性があるくらいだ。
故にIS学園ではスポーツとしての運用しか教えていない、それが最強の兵器とされる物でありながら、IS相手の戦闘しか考えていなかったことから教育内容がチグハグなのだ。
そしてこの世界でのMSは人間大のパワードスーツとして完成している、これを不殺を貫いて無力化しようとするなら武装のみを狙って破壊するしかない、まだ頭部や手足といったコックピット以外を狙えば良いフリーダムより高難易度なことを要求されるし、武装だけを破壊しても徒手空拳で殴り掛かってくる可能性もあるからな。
それを考えればスコール達が引き受けてくれるのは有難い、亡国機業内の勢力争いだとしても、一夏とか表側に居る他の人間が此方に来る必要は無い。
「まあ、亡国機業側の動きも決まったのなら良いわね。皆もあまり気負わないように、人の生き死には亡国機業側の問題、私達はただグロムリン・フォズィルだけを見据えていけばいいわ。それじゃあ作戦開始は一時間後、それまでに各自準備を整えること。良いわね?」
『了解!』
次の戦いでは死人が出る、そのことが気にかかるのは仕方ないことだが、どちらにしろグロムリン・フォズィルという特大の脅威を放置するわけにはいかないのだ。
力による支配を目指す革新派があのような怪物を手にしたのだ、まだ不完全な内に破壊しなければ世界にどのような影響が出るか分からないし、それは極めて私的な理由として宇宙開発の邪魔だ、だから此処で仕留める。
「なに、モビルドール搭載の通常版グロムリンやニュータイプ部隊が前座に来る訳じゃないんだ。レウルーラが居ないが二隻でも勝ち目はあるさ」
思えばオレ達のネェル・アーガマと亡国機業のアークエンジェル、これに加えてレウルーラがゲーム本編ではグロムリン・フォズィルを倒す為に立ち向かっていたのを思えば、運命というのも分からないものだな。
誰にも聞こえないようそう独りごちて、オレもまた準備の為にネェル・アーガマの格納庫へと戻るのだった。
◆
格納庫での整備はあまり時間が掛からなかった、そもそもキャノンボール・ファストでの戦闘での損傷が少ないことから部品交換だけで完全に修理が完了したのもあり、今は細かなステータスの調整だけを行っている。
「それで、これがお前の新しい機体なのか、織斑マドカ」
「ああ、そうだ。プロヴィデンスはお前達に破壊されてしまったからな。コア自体は数日前に組み込んで慣らしも終わっている」
そんな中でメンテナンスベッドに置かれているオレのガンダムデルタカイの隣に置かれているのはアークエンジェルからわざわざ此方に来た織斑マドカの機体だ。
プロヴィデンスを使っていたから後継機のレジェンドになるかと思ったが、それともまた別の機体だった。
「ストライクフリーダム、お前の出自を考えれば運命的なものを感じるな」
「私としても、何かしっくりと来るものを感じたからな。それと、お前から見てこの機体の評価はどうなんだ、紫藤康太」
「原型機であるフリーダムに比べて扱い難い点が増えたな。腰のレールガンはライフルを懸架してる時に使えなかったり、そもそも被弾しないことを前提とした尖った機体だ。当然、それを扱うパイロットに求められる技量も生半可なものではない。難しい機体だぞ?」
劇中で一度も損傷をしなかったが、そもそもシミュレーション時点では被弾ゼロに抑えられずに居たがパイロットであるキラ・ヤマトの腕で一切被弾しないといったレベルで機動性に特化させた機体だ、データを見る限りだが通常のISコアでデルタカイに喰らいつける程の機動性を持たせているのは驚くべき点だな。
「とはいえ元のストライクフリーダムで採用されていたフェイズシフト装甲が無いから装甲とフレーム強度に不安が残るな。全力でぶん回せば即座に自壊する。オレのデルタカイ以上に無茶苦茶な機体だな」
「そうだな、機体性能が全てとは言わないが私もその点が不満だ。いずれお前との決着をつける為にも、強化は必須だろう」
「本来ならテロリストであるお前に協力する訳にもいかないからな………………ちょっとだけなら良いか?」
とはいえその機動性も全力では長く保たない、オレのデルタカイはコア三つ分の出力があるのとサイコフレームの剛性による物が大きいから、いざマドカと戦うとなるとこれでも性能不足になる。
せめてフレーム強度だけでも、同じサイコフレームを積めばフレーム強度とか確保出来そうだし、上手く合わせればドラグーンの制御にも応用が効きそうだよな。
「良いわけないだろう、これまでの潜入なら兎も角、テロリストに何を協力しようとしているのだ、お前は!」
「ズゴックッ!?」
ライバルであるマドカの機体の強化に、今ならグロムリン・フォズィルを倒す為という名目で行けないかと考えていると背後から出席簿ではなく手刀が頭に叩き込まれた。
この一撃も久し振りな気がするが、痛みを堪えつつ背後を振り返ればやはりそこに居るのは織斑教諭だ。
「姉さん……!?」
「フゥ……お前がマドカか。こうして顔を合わせるのは初めてだな」
最強のISパイロット、ブリュンヒルデ、織斑千冬とそんな彼女を超えることを目指すマドカの初対面は、こうして決戦の前に始まるのだった。