ガンダムSEED NEOラウの『兄弟』地球連合の変態仮面ネオ少佐は娘を愛でたい 作:トキノ アユム
オリ主のネオさんというふざけた設定ですが、ゆっくりしていってね!
灼熱の地獄の中に少年はいた。
辺り一面に火の手があがり、住み慣れた屋敷を無残に焼き尽くしていく。
それを為すすべなく、眺めていた。
「げほごほ!」
煙を吸い込みすぎたのか、咳が止まらない。
立っていられずに、倒れそうになる。
「え?」
と、不意に誰かに身体を支えられた。
「……やっと見つけた」
『誰か』は隣から少年の脇の下に腕を通すと、彼を支え歩き出した。
「きついだろうが、出口は近い。後少し頑張れムウ」
名を呼ばれ、朦朧としかけていた少年の意識が少し戻る。
「君……は?」
顔は上半分が火傷で覆われているため、分かりづらいが、多分自分と同い年ぐらいの少年だろう。
少年は少しだけ悩むと、やがて答えた。
「ネオ・ロアノーク」
それがムウ・ラ・フラガとネオ・ロアノーク。
やがて地球連合軍のエースとなる二人のファーストコンタクトであった。
「君がステラ・ルーシェかな?」
「?」
病衣のような粗末な服を着た少女に仮面の男が話しかけた。
とある地球連合軍の施設。
決して表には出せない非人道的な行いを行っているその施設で、その男は歪な存在であった。
顔に仮面をつけた長身の男だ。この施設でそれなりの期間、生活をしてきたステラであったが、こんな男の事は知らない。
「誰?」
「ネオ・ロアノーク」
「……ネオ」
何となく名前を呟いてみたが、やっぱり覚えはない。
いや、そもそもここの職員の名前なんてほとんど覚えていない事に、ステラはぼんやりとした頭で考えた。
「それでよろしいのですか少佐?」
仮面の男の隣にいた中年の男性職員がそう言った。
「それ……はないだろう」
まるで棚に並べられた商品を紹介するような男に、ネオは不満があるようだ。
「この子は今日から俺のパートナーになるかもしれない子だぞ?」
「……失礼ですが、あまりおすすめはできませんね。それの性能はとてもいいとは言えません」
人を人として見ていない発言を躊躇いなく行いながら、男は手元の紙のリストに目を向けた。
「薬の投与は初期段階ですので、薬の依存度は軽度というのは利点ですが、そのせいで戦闘能力、判断能力、共に生体CPUの中では並以下……とてもあなたと同じモビルスーツに乗る事なんて出来ませんよ」
「この子では、俺のパートナーは不可能だと?」
「データ上はそうですね。予定では別の強化実験を近い内に使う予定になっています……正直、現時点ではただの出来損ないです」
「なら、決まりだ」
中年の職員の言葉を聞いたネオは、むしろ好ましいと言わんばかりに、満足そうに頷いた。
「この子だ。この子を俺のパートナーにする」
「……話をお聞きにならなかったのですか?」
「聞いていたさ……だからだよ」
にやりと不敵に笑うと、ネオは職員が持っていたリストをひったくった。
「俺は不可能を可能にする男だからな。無理って言われた事をやる方が燃えるんだよ」
「……ふざけないで頂きたい」
それを聞いた男は、眉を吊り上げる。
「ああ、やっぱりそう思うか? 今のは俺の親友の口癖なんだけど、ふざけているよな? 俺も初めて聞いた時はあんたと同じことを――」
「真剣にやっていただきたい!!」
男が怒鳴り声をあげた。
「ここでの研究はあの忌まわしきコーディネーター共を根絶やしにする為に行っている崇高ものです! それを――」
尚を激情をまき散らそうとする男。
「黙れ」
「!」
それをネオは一言で黙らせた。
「俺は生まれてから一度たりとも、手を抜いたことはない」
手元のリストを手で何度も引き裂きながらネオは男に向き直る。
「今回の事もそうだ。ブルーコスモスからの俺への命令は、この施設で生体CPUを一つ選び、それを育成し一つの『兵士』として作りあげろ……だ」
「は、はい。それは勿論承知していますが……」
気圧されながら、男は何とか頷く。
「楽しみだな? 俺が育て上げた『兵士』とあんた達の作り上げた『兵器』どちらかが優秀かは結果が教えてくれる」
「……」
仮面の男の視線には殺気すら混じっていた。
「だからいいだろう? この崇高な非人道的研究施設の『所長』さん?」
「は、はい」
所長は頷いた。すると、ネオはようやく発していた殺気を収めると、ぼんやりとした瞳で自分達のやり取りを見ているステラに近付いた。
「さて、それじゃ改めて自己紹介だ」
口元で笑みを作ると、仮面の男は手に持っていた引き裂いたリストを宙に投げた。
ほんの数秒の間、その場にはまるで雪のように紙屑が空から落ちる。
「俺はネオ・ロアノーク。今日から君の教官で上司で――」
それらの景色をバックに仮面の男は少女に手を差し伸べた。
「お義父さんだ」
これが後に連合のエースとなるネオ・ロアノークと、彼の義娘であり、地球連合軍最年少エースとなるステラ・ロアノークの出会いであった。
今回の変態仮面の被害者
所長さん「親切心から使えない失敗作だと忠告したのに、殺気飛ばされて、ちびりそうになった」