ガンダムSEED NEOラウの『兄弟』地球連合の変態仮面ネオ少佐は娘を愛でたい   作:トキノ アユム

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相対

「こちらX105ストライク! 地球軍応答して下さい! 

 こちらX105ストライク! 地球軍応答して下さい!」

 何度かそれを続けると、キラは溜め息をつき、近くでこちらを見ているネオに顔を向けた。

「通信、繋がりません」

「そうか。やはりまだザフトの奴等の電波干渉が残ってるか」

 そこまで言うと、ネオはストライクのコクピットから身を乗り出した。

「ステラ! そっちはどうだ?」

 向かいあう形で膝をついた漆黒のジンのコクピットには、ステラが乗っており、キラと同様通信を試みていた。

「ダメ! 誰も出ない!」

「了解。悪いがもう少し続けてくれ!」

「うん!」

 トール達がトレーラーを取りに行ったように、キラもまたネオの指示に従い、ストライクのコクピットでコロニー内に生き残っているであろう地球軍に通信を行っていた。

「すまないが、君ももう少し続けてくれ」

「はい。あの──ネオ少佐」

「すいませんでした。さっき僕──」

「さっき? ああ、そう言えば頼んだ時に今にも噛みついてきそうな怖い顔をしていたな」

「いや、その──」

 あの機体に乗ってくれ……と言われたら時、確かに自分はネオに険しい顔を見せてしまった。

「戦わされるとでも思ったか?」

 見透かすように尋ねてきたネオにキラは頷く。

「……すいません。僕は勝手に誤解してロアノーク少佐に──」

「謝る必要はない。一度こいつで戦闘をしたんだ。なら二度目も出来るだろうと言われると思うのは、当然の反応だ。後、ネオでいい。少佐もいらない。君は軍人ではないのだから」

「えと、じゃあネオさんで?」

「ああ。それでよろしく頼むキラ・ヤマト君」

「僕もキラでいいです。フルネームで呼ばれるの落ち着かないんで」

「分かった……じゃあキラ様でいいかな?」

「いや、なんでそうなるんですか?」

 生まれてこのかた、そんな風に呼ばれたことはない。

「分からんぞ。未来ってのは何が起こるか分からんものだ。もしかしたら君は将来、何処かで色々な人からキラ様、キラ様と呼ばれるかもしれない」

「……からかってます?」

「ばれたか?」

 頼りがいのあるしっかりした人という印象であったが、実は結構悪戯好きな性格なのかもしれない。

「あのジン。ネオさんの機体なんですよね?」

 このまま弄られ続けるのも面白くないと思ったキラは、強引に話題を変えることにした。

 ちょうど向かい側に話題になるものもあった為、それを選んだ。

「ん、まあな」

 そんなキラの意図を察したのか、くすりと笑うとネオもまた漆黒のジンに目を向けた。

「変わってるだろう?」

「はい」

 先程交戦したジンにはなかった角と、漆黒の機体カラーは勿論のこと、全体的な特徴も違う。

 イメージであれば、通常のジンに鎧を着せたような感じだ。

「今はあんな格好だが、本当はもっとスマートなやつなんだぞ?」

「そうなんですか?」

「ああ。まあ、このストライクには負けるけどな」

 こんこんと近くの機械を小突くネオ。

「変と言えば、コクピットも変わってますよね?」

 外だけでなく、中も特徴的であった。

 ストライクよりも若干広いコクピットは二つの座席が前後に設置されている。

「二人乗りですか?」

「そうだ。可愛い娘と常に一緒にいたいから、特注で作らせたんだ」

「……」

「冗談だぞ?」

「そ、そうですよね!」

 一瞬この人ならやりかねないと思ったキラは慌てて頭を横に振った。

「あれは地球連合軍の失敗作の集大成みたいな機体でな」

「え?」

「ザフトから滷獲したジンに、地球連合軍がGに採用せずに、廃棄される予定だった試作武装を全部積めるような機体になってる。装備を換装する点ではこのストライクと同系統の機体だな」

「い、いいんですか? そんな事僕に話して」

 それも所謂機密というやつなのでは……

「いいんだよ。ザフトに知られた所で不利益な事はない。あっても乗ってる奴の正気を疑われるたけだ」

「……」

 確かにそうかもしれない。なんせ話を聞いた民間人のキラでさえそう思ったのだから。

「安心しろ。これでも一応エースパイロットだからな。乗りこなしてみせ──」

 そこまで言うと、クラクションの音が聞こえた。

「どうやら君の友達が帰ってきたみたいだな」

「はい!」

 コクピットから出たネオはこちらに来るトレーラーに目を向け、しかしすぐに空を仰ぎ見た。

「ネオさん?」

「ち。予想よりもはやく来やがったか。あの変態仮面!」

「へ、変態仮面?」

 一体何の事を言って──

「キラ君!」

「は、はい!」

 突然名で呼ばれ、キラは何とか返事を返す。

「すぐにトレーラーにあるストライカーパックを装備してくれ。事前に話した通り、装備とパックは一体になっている。そのまま装備してくれ」

 言いながら時間が惜しいとばかりに、ネオはコクピットから飛び降り、自らのジンへ向かった。

「その後はフェイズシフトを起動し、君の友達とラミアス大尉を守る楯になれ! 敵が来るぞ!」

「敵!?」

 そんなもの何処にもいない。

「上から来るぞ! 急げ!! 君は絶対に戦闘に参加するな! 仲間を守ることだけを考えろ!!」

「わ、分かりました!」

 疑問は残るが、キラはネオの指示通りに動く。

 トール達が運んでくれたトレーラーに近付くと、そのパックを事前にネオに教えてもらった手順で装備していく。

 そして装備が完了した瞬間──

 

 

 ネオの言葉通り、シャフトを破壊し、敵がコロニーに侵入してきた。

 1つは戦闘機。そしてもう1つはモビルスーツだが──

(白いジン? いや……)

 ジンとは少し形状が違う。

 

 

 

 

『くくく、ふははははははは!!!!』

 

 

 

「!?」

 通信機から聞こえた笑い声にキラはぎょっとした。

 ただの笑い声ではない。狂笑と呼ぶに相応しい狂いに狂った狂気を感じさせる笑い声だ。

「あの機体から?」

 オープンチャンネルの通信はあの白い単眼の機体から発せられている。

 

 

『来たぞ!』

『……来たか』

 

 

 狂喜する声に応えるように、起動したネオの自分もまたオープンチャンネルで、辟易としたように溜め息を吐くと、

 

 

 

『ネオ!!』

『ラウ!!』

 

 

 白と黒の機体は空中でぶつかり合った。




ついに次回変態仮面VS変態仮面です

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