ガンダムSEED NEOラウの『兄弟』地球連合の変態仮面ネオ少佐は娘を愛でたい   作:トキノ アユム

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変態仮面VS変態仮面前編

変態仮面ファイト! レディー ゴー!!


交戦

 空中でぶつかり合う2機のモビルスーツ。

 互いの在り方を象徴するように、相反する白と黒の機体はお互いの得物をぶつけ合い、鍔迫り合いを演じる。

 だが均衡は一瞬で互いに距離を取った。

『会いたかったぞネオ』

 愉悦に満ちた声を発しながら、ラウは歌うように告げる

『今日こそつけるかね? 決着を!』

「俺は正直会いたくなかったな」

 対するネオは苦々しい顔で溜め息をついた。

「ただでさえ新型を4機奪われているのに、ここで最後の一機まで破壊されたら、俺の立つ瀬がない」

『ああ。あれか……』

 言われて今気がついたと言わんばかりに、シグーが地上にいるストライクを一瞬だけ見る。

「白々しいな。あれを破壊するためにここに来たんだろう?」

 会話をしながら、俺はラウの乗るシグーを観察する。

 武装は

 つまり──武器という点ではこちらの圧倒的不利というわけだ。

 そもそも今ジンが装備しているのは『ブリッツパック』その用途は隠密強襲用だ。

 今ジンが着込んでいる追加アーマーは見た目は堅牢な鎧を纏っているように見えるであろう。

 だがその実はその逆でこの追加アーマーは機体全体の防御力を上げる所か、逆に下げている。

 レーダーに熱源としてうつるのを防ぐためのフィルターの役割をしている。

 その為、隠密強襲用の機体案としてテストを行われたまではよかった。

 しかしブリッツに搭載された新技術である『ミラージュコロイド』には勝てず、失敗作の烙印を押され、この排熱フィルター追加アーマーは廃棄されるのが確定していた。

 それを主体とした隠密強襲機体が、ネオの現在の専用機の姿であった。

 しかし──

(破滅的に相性が悪すぎる!)

 他の相手なら機体のステルス性を生かした立ち回りも可能であった。

 しかしラウ・ル・クルーゼは駄目なのだ。ネオ・ロアノークはラウ・ル・クルーゼに決して不意打ちは出来ない。

 何故なら二人は互いの位置を感じられるからだ。ここまでの近距離であれば、正確な位置さえも把握できる。

 その為、ラウを相手にするのにこの『ブリッツパック』の相性は最悪なのである。

 いくらレーダーから消えても、それ以外の手段で正確な位置を知られるのだ。それは最悪の一言に尽きる。

(まともにやりあえば、勝ち目はないな)

 排熱を抑えるため、こちらには火器が搭載されていない。あるのは接近戦用のアーマーシュナイダーが2本と、重刀が一本のみ。

 誰がどう見ても絶望的だ。

 しかし──

(やれないことはない)

 ネオはラウとの通信の音声マイクを切り、一時的にこちらの会話を聞こえないようにすると、別の通信回線を開いた。

「聞こえるかムウ」

『ネオ! 悪い! 外は俺以外は全滅だ!』

「……だろうな」

 ここまで大規模な戦闘を仕掛けられたのだ。こちらの戦力では太刀打ち出来ルはずがない。

『本当にすまない。外を守れなかったばかりか、あの変態野郎も止められなかった!』

「……いや、謝る必要はない」

 ネオはむしろムウを称賛したかった。

 絶望的な戦力差でありながら、よく生き残ってくれたと。あの変態仮面を相手にしながら、よくここまで辿り着いてくれたと。

「ガンバレルは全滅しているようだが、レールガンの方はどうだ?」

『問題なく撃てる!』

「……そうか」

 それを聞いたネオは、不敵な笑みを浮かべた。

「助かったぞムウ。お前のお陰で勝てる」

『?』

「悪いが、今から俺の指示通りに動いてくれ」

 この絶望的な盤面をひっくり返す策を、ネオはムウに伝えた。

『難しい事を言ってくれるなお前ー』

 思いも寄らないネオの提案に、ムウは呆れと驚きを同居させた顔で溜め息を吐いた。

『俺がちょっとでもタイミングをミスれば、ステラ共々お陀仏だぜ?』

「だからこそお前に任せるんだ。『エンデュミオンの鷹』のお前にな」

『へいへい。うちのファントム様は人使いが荒いぜ』

 だがまあと、ムウもまた不敵な笑みを浮かべた。

『不可能を可能にする男だからな俺は……やってやるよ』

「……行くぞムウ」

『りょーかい!』

 方針が決まったネオは、ムウとの通信を切ると、ラウとの通信の音声をONにして言う。

 

 

 

「勝負だラウ」

 

 

 

『勝負だラウ』

 その言葉を聞いた瞬間、ラウの全身の毛が逆立った。

 身体が愉悦に震え、笑みが止まらない。

(いや、駄目だ抑えろ。今はまだ行くべきではない)

 宿敵からの誘いに乗りたい所だが、ラウは動かなかった。

 何故ならネオのその挑発こそが、自分を陥れる為に彼が仕掛けた罠である事を見抜いていたからだ。

 ネオと自分の実力は互角。だがしかし、モビルスーツの操縦技術ではこちらの方が一枚上手だ。

 これは互いの技量ではなく、環境が大きい。

 ラウがモビルスーツを戦線に積極的に投入しているザフト軍であるのに対し、ネオはモビルスーツの運用に関しては素人同然の地球連合軍。

 必然的にその環境には差が出てくる。

 特に代表的なのはモビルスーツを動かすOSの差だ。

 ラウは独自の情報網でネオの情報を幾度もなく入手していた。

 その中で、彼の乗る機体のOSを見た時は同情すらした。

 はっきり言って粗末の一言に尽きる代物であった。モビルスーツと呼ばれる巨大な機械を動かす歯車にしては、あまりにも無能すぎる。

 だが、それでもネオはラウにくらいついてきた。

 機体の操作の殆どをマニュアルで行うという奇想天外な発想によって。

 モビルスーツというのは、幾つかの決められた動作を自動的に行うように事前にインプットされている。パイロットがサーベルを握ろうとすれば、インプットされた動作の中で適切かつ迅速なものを、コンピューターが選出し、実行するのだ。

 だが、その選定をするOSにハンデがあることを悟ったネオはオートとマニュアルを織り混ぜた独自の操作技術と『生体CPU』という存在で補った。

(確か、ステラ……と言ったか)

 ネオ・ロアノークの機体の『パーツ』の一部である少女の名は。

 表向きは養子にし、その実少女は『ファントム』を機能させるための歯車の1つに過ぎない。

(やはり貴様は私だよネオ)

 そして自分は奴なのだとラウは笑みを深める。

 だからこそ、ラウには分かるのだ。

 ネオが何かを仕掛けるつもりであることが。

 なのでやはり迂闊に動くことは出来ない。かといってこのまま睨み合うのも面白くない。

 さてどうしたものかと、ラウが考えたその時、思いも寄らない事態が起きた。

 突如として、コロニーの中に対して、外から2本のビームが貫通したのである。

「!?」

 ザフトからの攻撃──ではない。自分はそのような命令を下していない。

 破壊された隔壁。その爆発によって発生した爆煙より現れたのは、巨大な白い戦艦であった。

「地球軍の新型……仕留め損ねたか」

 それはラウがヘリオポリスを襲撃するように判断した要因の1つであった。

 部下に命じ、停泊する港に爆弾を仕掛けさせ、爆破したが、流石は地球軍の新型と言うべきか。目立った損傷は見受けられない。

(しかし思いきった事をする……)

 あらかたの避難を終えているとはいえ、ここはコロニーの中だ。戦艦を用いた戦闘となれば、周囲に与える被害も甚大なものになるのは免れない。

(だが同時に正しい判断であるとも言える)

 しかしコロニーの外を制圧されている現状では最もベストな選択でもあった。

 仕留められなかったことは残念だが、今の自分にとっては好都合だと思うと、案の定連合の戦艦はラウに対して攻撃を仕掛けてきた。

 戦艦のミサイル発射口から誘導ミサイルが放たれ、一斉にラウのシグーに殺到する。

(やはりそうくるか)

 ラウは自分を狙うミサイルが接近してきているというのに、笑みを浮かべていた。

 誘導ミサイルによる攻撃を、ラウは読んでいた。コロニーのシャフトにダメージを与えずに、尚且つ有効な攻撃手段と言えば、それぐらいだ。

 だからこそラウの動きは既に決まっていた。

 反転し、急降下。ネオに背中を見せるなどと言う事は、本来であれば自殺行為であるが、今回ばかりは例外であった。

 何故なら戦艦から撃たれた誘導ミサイルが、彼の動きを阻害するからである。

 それはほんの一瞬の阻害ではあるが、ラウにとってはそれだけで十分だ。

「歯痒いだろうなネオ」

 コクピットで悔しそうに唇を噛むネオの顔が目に浮かぶ。

 互いの実力が同等である以上、一手の遅れが致命的となる。

 そして援軍であるはずの戦艦の登場で、先手をとったのは皮肉にも敵であるラウであった。

 遅れながらこちらに向かってくる漆黒のジン。

「使わせてもらうぞ」

 ラウはその進撃に対して、シグーの盾に内臓されたガトリングを連射した。

 ネオに対して撃ったのではない。ラウに対して殺到していた誘導ミサイルに対してだ。

 神がかった射撃で、ラウは誘導ミサイルを全て余裕で撃ち落とす。

『ちぃ!』

 誘導ミサイルの爆発によってネオの動きが再び阻害される。

 ラウはほくそ笑みながら、地上に向かって機体を走らせる。

『! お前!!』

 それだけでネオはラウの狙いに気付いたようだが、遅い。

 既にラウは地上にいる標的に対して、照準を定めている。

「フェイズシフト……これならどうかな?」

 ラウのシグー重機関銃が火を吹く。

 そこに装填された強化APS弾は通常のモビルスーツ相手なら確実に撃破が出来るほどの、協力な弾丸だ。

「ほう?」

 しかしフェイズシフト装甲はそれらを完璧に防いで見せた。

(地球軍のモビルスーツは化け物だな)

 改めてその性能の高さを思い知らされる。

 だがそれでいい。むしろ撃破されたら困る所であった。

 今は地球軍の新型モビルスーツには、そこにいてもらわなければ。

『ラウ!』

 既にネオが後ろから迫ってきている。

 それを感覚で知覚していたラウは、機体に大きく回避行動を取らせた。

 ネオからの攻撃ではない。奴はまだ攻撃をしていない。

(攻撃を行うのは──)

 

 

 地上にいる連合の新型のモビルスーツだ。

 

 

「じょ……冗談じゃない!」

 キラはコクピットの中で叫んでいた。

 ザフトのモビルスーツがこちらに向かってくる。

 それだけでも恐ろしいというのに、相手は既に一度こちらを撃ってきていた。

 機体にダメージはない。

(みんなは違う!)

 そう。自分は助かっても近くにいる友人達は違う。彼等は生身。流れ弾に当たっただけでも死んでしまうだろう。

 先程は何とか庇うことが出き、誰も怪我はないが、おそらく次はない。

(僕がやるしかないんだ!)

 あの仮面の少佐は間に合わない。

 ならば今皆を守れるのは自分しかいないのだ。

 キラはストライクに装備された武器を腰だめに構えさせると、手探りするように照準スコープを引き出した。

 画面には敵機の機体が写り、ロックオンの表示が出ている。

(やれる!!)

 キラは引き金に指をかける。

 

 

 その瞬間──

 

 

『撃つなストライク!!』

 

 

「……え」

 聞き覚えのない男性の声が聞こえたのと、キラが引き金を引いたのは同時であった。

 そしてストライクの構えた砲から凄まじいエネルギーが放たれる。一瞬視界が真っ白に覆われるほどの圧倒的なパワー。

 放たれた太い光条。

 しかしそれを敵のモビルスーツは難なくかわして見せた。

 まるで事前にこちらが撃つのを予見していたかのように。

 だが悪夢はそれだけではなかった。

 敵機が避けたその先に──

 

 

 あの人の──ネオ・ロアノークの漆黒のジンの姿があった。

 

 




原作ラウ
アグニを撃たれて片腕をもぎ取られ、撤退。

変態仮面ラウ
余裕で回避し、逆に利用して、キラにネオをフレンドリーファイアさせる。


キラ君のトラウマに1つ追加確定ですね
((((;゜Д゜)))

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