ガンダムSEED NEOラウの『兄弟』地球連合の変態仮面ネオ少佐は娘を愛でたい 作:トキノ アユム
べ、別にクロスレイズしまくってて執筆出来なかったわけじゃないんだからね!(滝汗)
フェイズ2はキラ君とネオさんの回ですので、どうぞ。
責任
燃える。
何もかも。
人も物も等しく全て。
燃えて、壊れて、消えていく。
そしてその中心には──『俺』がいた。
目覚めてすぐに感じたのは、いつも感じる重さがないこいうこと。
そして──誰かが俺の手を握っているということ。
「ネオ……」
「……ステラか」
この世でただ一人の愛しい娘の声に、ネオの意識が完全に覚醒する。
「そんな顔をしてどうした?」
上体を起こし、枕元に置いてあった仮面をつけると、ネオは涙が流れる娘の頬に触れる。
「何か怖い思いでも──」
「ネオ!」
「うおっと!」
泣きながら抱きついてくるステラにネオは押し倒される。
「よかった! ネオ、落ちたら返事しなくて! ステラ、ステラ……!!」
「あー、とりあえず落ち着けステラ。何が起きたのかまるで意味が分からんぞ」
「ネオ! ネオ……!!」
「……駄目か」
自分の胸で泣きじゃくるステラの髪を優しく透いてやりながら、ネオは大体の事情を察した。
戦士として教育したステラが、ここまでパニック状態に陥ってしまうのは1つしかない。
(俺が負傷したか)
ネオの教育により、卓越した戦闘技術を手に入れたステラだが、1つだけ大きな問題を抱えてしまった。
それが親であるネオが傷つくと、過剰なまでに反応し、パニックを起こしてしまう事だ。
これはネオにとって唯一の誤算であった。教育を始めた時点で過去の記憶がないステラがある一時的に依存状態になることは予想できたが、依存は解消される所か、共に過ごす時間が長くなる毎に、強く大きくなっていっている。
自分と一緒でなければ、一人で眠ることも出来ないまでに悪化してしまったステラの依存を解消するのは、現在のネオの教育の最も大きな課題であった。
(しかしこれでは何も分からんな)
自体は切迫しているのは間違いない。せめて状況の把握だけでもしたい所だが──
「あ」
「ん?」
部屋に一人の来客が訪れた。
「よかった! 目を覚ましたんですねネオさん」
「キラ君か」
部屋の中に入って来たのはヘリオポリスであった少年──キラ・ヤマトであった。
「無事だったか」
「はい。おかげさまで」
そう答えるキラであったが助かったというのに、その顔はあまり晴れないものであった。
「……何かあったか?」
「えっと、何かっていうか──その、色々……」
歯切れの悪い言い方に、ネオは腹筋に力を籠めると、ステラに抱き着かれながらも、上体を無理やり起こした。
「すまないが何があったか教えてくれないか? 見ての通り、うちの娘はこんな状態でね」
「あ、はい。でも落ち着いたみたいで良かったです」
「やっぱり俺が負傷して、パニックになってたか?」
「……はい。人が変わったみたいに」
「……その件も含めてよろしく頼む」
「はい」
キラは頷くと、何があったのかをネオに話しだした。
「ネオ!! ネオ!!」
「君、落ち着いて!!」
ザフトとの戦闘が一時的に終了したキラ達はマリューの指示の下、戦闘中に突然現れた戦艦アークエンジェルに入っていた。勿論、マシントラブルで動かなくなった漆黒のジンも一緒にだ。
戦艦に上がる前にマリューが簡単に容態を見たが、目立った外傷はないため、強い衝撃を受けた事により、気絶。命に別状はないという事であった。
「ネオが! 死ぬの! ステラが守らないといけないのに!!」
むしろ問題なのはネオと一緒に搭乗していたステラという少女の方だろう。
トール達がコクピットから降ろしたネオに縋りつき、一向に離れようとしない。
「……困ったわね」
どうしたものかと溜息をマリューがついていると、
「ラミアス大尉!」
聞きなれた声に、マリューははっと、顔を上げた。
「ご無事でなによりでありました!」
「バジルール少尉! あなた達こそ、よくアークエンジェルを。おかげで助かりました」
見知った部下との再会に、マリューの心中に安堵が訪れる。
「大尉。これは一体どういう事でしょうか?」
ナタルが気絶したネオを始め、ストライク、そしてヘリオポリスの少年達に目を向け、尋ねて来る。
「そうね……どこから説明したらいいものかしら」
「ネオ! 大丈夫かよおい!!」
脇から大声を発し、見知らないパイロットスーツの長身の男が血相を変えながら、倒れたネオに向かう。
「ムウ!! ネオが、ネオが!」
面識があるのか、ネオ以外の認識を拒むように彼のみに意識を向けていたステラが、その男の方を向いた。
「落ち着けステラ! おいあんた! こいつの容態はどうなんだ?」
「あ、いえ、細かい検査は必要ですが、気を失っているだけで、命に別状はないかと……」
「本当か? ……って、今は他に確かめようがないか」
大きなため息を吐くと、ムウと呼ばれた男は、ひとまず安心したのか、落ち着きを取り戻すと泣きはらすステラの肩に手を置く。
「大丈夫だステラ。ネオは気を失っているだけだ」
「でも! でも!!」
「勿論ステラが心配なのは分かる。だが、このままこんな床が固い所で寝かせてても、ネオ辛いだろう?」
「……そう、かも」
「だからベットの上に運んでやろうぜ。その方がネオの奴も楽だろう?」
「うん」
ステラと面識があるのか、あれほど激しかったステラのパニックが一時的に収まる。
あまりの出来事に呆気に取られる面々に、ようやく男は顔を向ける。
「悪い。自己紹介が遅れたな」
端整な顔にやや軽薄そうな笑みを浮かべた。
「地球軍第七起動艦隊所属ムウ・ラ・フラガ大尉だ、よろしく……で、そこで気絶している奴がネオ・ロアノーク少佐。そしてそいつから離れようとしないお嬢ちゃんが、その娘で同じく特別遊撃部隊所属のステラ・ロアノーク少尉だ」
「エンディミオンの鷹に、ファントム……」
士官の誰かが、信じられないという面持ちで呟いた。
それもそのはず、ムウもネオも地球連合に所属する士官なら知る人ぞ知るエースパイロットの二人だからだ。
「地球軍第二宙域第五特務師団所属、マリュー・ラミアス大尉です」
「乗船許可を貰いたいんだが。この艦の責任者は?」
重い口調でそれに答えたのは、マリューではなく、ナタルであった。
「艦長はじめ、主だった士官はみな戦死されました……よってラミアス大尉がその任にあるかと
「え……!?」
信じられない衝撃の事実に、マリューが凍り付く。
「なんてこった……ああ、とにかく許可をくれよラミアス大尉。俺達が乗って来た船も墜とされちまってね」
「あ、はい。許可いたします」
慣れない様子でマリューが許可を出すと、ムウは「で」と自分達のやりとりを眺めている少年達に──否、黒髪の少年に目を向けた。
「ストライクから降りたあれは?」
「ご覧の通り民間人の少年です。襲撃を受けた時、何故か工場区にいて、私がGに乗せました。キラ・ヤマトと言います」
「ふーん」
何やら含むものがあるように頷くと、ムウは何を考えているのかが読めない笑みを浮かべた。
「彼のおかげで先にもジン一機を撃退し、あれだけは守る事が出来ました」
「ジンを撃退した? あの子供が?」
ナタルを始めとした地球軍の士官達が顔を見合わせる。
いくら新型のモビルスーツの力があったにせよ、まだ若い少年がジンを撃退した。
それはザフトの、コーディネーター達の力を知る地球軍の人間にとって驚くべき事であるからだ。
「……俺は例のあれのパイロットになるひよっこ達とその教官であるネオの奴の護衛で来たんだがね。連中は?」
「ちょうど指令ブースで艦長へ着任挨拶をしている時に爆破されましたので、共に……」
「……そうか」
沈痛な面持ちで答えるナタルに、一瞬ムウも重々しく表情を引き締めると、キラに歩み寄って行った。
「な、なんですか?」
「……君、コーディネーターだろ?」
ムウの問いに、その場の空気が一瞬で凍り付くのをキラは確かに感じた。
「あ、うん。もうそこまでで大丈夫だ」
「え、そう──ですか」
「ああ。そこからは大体予想がつく」
重々しいため息を吐くと、ネオは仮面の額部分を手で抑えた。
「大方、その後士官達に銃を向けられそうになったが、ラミアス大尉がそれを制止……んで、ムウのバカが騒ぎにして悪かったな。とかなんとかほざいて、そんな事よりザフトの奴らが攻めて来るから、こんな所で時間を食っている場合じゃないと思うぜ? とかなんとか言って、その場はとりあえず流れて、俺はステラと一緒に医務室に運ばれた……って所だろう?」
「す、すごいです。なんで分かるんですか?」
「それぐらい分かるさ。地球軍の士官の取る行動と、ムウの馬鹿が言いそうな事ぐらいは……」
「ネオさんも、僕がコーディネーターって事は知ってたんですか?」
「……まあな」
「そう……ですか」
キラの表情の陰が増す。それを見ると「だが」とネオは続けた。
「俺が君にモビルスーツを任せたのは、君がコーディネーターだからではない」
「え? なんでですか?」
「君がいい奴だからだ」
「僕が──ですか?」
「ああ。友達を守る為に、自分の危険を省みない……そんな筋金入りのお人好しじゃないと、自衛のためとはいえ、素人にモビルスーツなんて任せられない。まあ、だからこそ──」
そこまで言うと、ネオは改めてキラに頭を下げた。
「本当にすまないキラ君」
「ネ、ネオさん? 頭を上げて下さい!」
「そういう訳にもいかん」
だがネオは決して頭を上げようとはしなかった。
「君達に迷惑をかけただけでなく、君には辛い思いをさせてしまった」
「い、いえ! 迷惑をかけたのは僕の方です。戦闘には参加するなって言われていたのに、僕は勝手に行動して──」
話しながらその時の光景を思い出したのか、キラは顔を俯けた。
「ヘリオポリスに穴をあけたばかりか、危うくネオさんを殺しかけました」
「だからこそだよ」
「え?」
俯いていた顔を上げるキラに、尚もネオは頭を下げ、続ける。
「戦場で味方の誤射が当たるなんてことはよくあることだ。それを避けられなかったのは俺の未熟が原因だ。君は何も悪くない」
「ネオさん……」
「そして何より、俺は君に自分の住むヘリオポリスを撃たせてしまった。今でもその時の感覚が忘れられないんじゃないか?」
「……はい」
キラの乗るストライクの射撃武器アグニが放ったビームはヘリオポリスの壁を貫き、穴をあけた。
その時の操縦桿を握る感触と恐怖は、あれから時間が経った今でもキラははっきりと覚えている。
「そうか……なら余計に頭は上げられないな。自分達の住むコロニーを撃つ。その辛さは想像を絶する程に大きく強いだろう。軍人としてではなく、君に武器を持たせてしまった者の責任としても、俺は君に頭を下げなくてはならない」
「……」
キラは驚いたように何度も瞬きをした。
何かを言いかけて迷って、やがて意を決したように口を開いた。
「ネオさんって、本当に軍人ですか?」
「……俺、なんか変な事言ったかな?」
キラの問いは予想していなかったのか、やや困惑したようなネオにキラは慌てて答えた。
「いや、あのすいません! ただ、その、なんて言えばいいのかな……軍人の人って、戦争で勝つのが第一って考えているっていうか、もっと厳しい人たちっていうか、冷たいっていうか──そんなイメージが……」
「あー、うん。そう思われても仕方ないな」
中立のヘリオポリスで新型のモビルスーツを作っていたのだ。そのようなイメージを持たれても無理はない。
「でもネオさんはその、なんか違う感じがします」
「うん。まあ、自分でもちょっと変わり者だっていう自覚はある」
「……ちょっとですかね?」
「むぅ。それもよく言われるな」
肩の力が抜けたかのように、キラの口調は緊張で張り詰めたものから柔らかいものになっていた。
「……頭、上げて下さい」
「キラ君?」
「正直、なんで自分がこんな事をってずっと思ってましたし、ヘリオポリスを撃った時はモビルスーツに乗りたくて乗ったわけじゃない、僕は悪くないっていう気持ちもありました……」
「でも」とキラは続けた。
「子供の僕に対してでも頭を下げて、自分の責任を果たそうとしているネオさんを見ていて思いました。僕にも責任はあるんだなって」
「キラ君……」
自分の罪を認めるように、キラは尚も続ける。
「武器を持たせたのはネオさんかもしれませんが、それを撃ったのは僕です……だから、その──」
言いよどみながらも、少年は言葉を続ける。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
そう言うとキラもまたネオに対し、頭を下げた。
「……」
「……」
互いに頭を下げたまま、奇妙な沈黙がその場に訪れた。
「──ステラも」
その沈黙を破ったのは、意外にも今まで黙って二人のやり取りを見ていたステラであった。
「ステラも頭を下げた方がいい?」
少女のあまりに的外れな天然発言。
だがそれを聞いた二人は噴き出すと、
「頭、上げようか」
「はい!」
同時に頭を上げた。
「さて、ブリッジに行く前に君の友人達にお礼を言いたいんだが、案内頼めるかなキラ君?」
「はいネオさん!」
二人の声は明るく、そして前向きであった。
「?」
どうして二人が笑ったのか分からないステラは、その理由を考えたが──
「──ぎゅう」
結局分からず、ネオの胸に顔を埋めるのであった。
順調にキラ君の好感度を稼ぐ変態仮面ネオさん。
女性より男性にモてる系主人公ですはい。