ガンダムSEED NEOラウの『兄弟』地球連合の変態仮面ネオ少佐は娘を愛でたい   作:トキノ アユム

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ザフトの仮面は愉悦に笑う

 ヘリオポリスから少し離れた宙域。

 そこにある小惑星の陰に二隻の戦艦が存在していた。

 ザフトのナスカ級戦闘艦『ヴェサリウス』とローラシア級戦闘艦『ガモフ』である。

 その内の『ヴェサリウス』の艦長であり、優秀な部下でもあるフレデリック・アデスに風変わりな銀色の仮面を着けた男──ラウ・ル・クルーゼは苦笑した。

「そう難しい顔をするな。アデス」

 眉間に皺を寄せる傍らの男とは裏腹に、ラウは落ち着き払った様子だ。

「は……しかし評議会からの返答を待ってからでも、遅くはないのでは?」

 これから行う作戦はそれほどまでに大事になってしまうのだ。ならばこそ、慎重に動くべきだとアデスはラウに進言する。

「遅いな」

 だがそれをラウは一蹴した。

「私の勘が告げている。ここで見過ごさば、その対価いずれ我らの命で支払わねばならなくなるぞ」

 手にしていた写真をラウは指で弾く。

 それを受け取ったアデスは何も言えなくなる。

 写真は不鮮明な画像だ。

 しかしそこには確かに写っているのだ。

 人型の巨大兵器の装甲の一部が。

「……それに」

 仮面の隠されていない口元を笑みに歪める。

「どうやら私の『宿敵』もいるようなのでな」

「――ネオ・ロアノーク……『ファントム』ですか?」

「他に誰がいる?」

 答える声は、はっきりと分かる程に上機嫌であった。

 それを聞いたアデスはまたかと、心中で溜め息をついた。

 彼の上官であるラウ・ル・クルーゼは誰もが認める優秀な軍人だ。

 常に冷静沈着で容赦のない戦いぶりから、部下からも軍の上層部からも信頼は厚い。

 だがそんな彼にもたった一つだけ『悪癖』が存在していた。

 地球連合軍エースパイロット ネオ・ロアノーク。

 地球連合で鹵獲したザフトのジンを操り、鬼神の如き活躍を見せる唯一のモビルスーツのエースパイロットであるネオ・ロアノークに対してラウは異常な執着を見せる。

 自らを『ファントム』の宿敵と称し、彼がいると分かればモビルスーツに乗ると、嬉々として戦いに赴く。

 副官であるアデスの心労を意に介さず……だ。

「新型兵器と共に、ヘリオポリスにある奴の新しい機体──それを我が軍が手に入れるのは、我が軍にとっても多大な利益になるのではないかね?」

「……そうですね」

 きりきりと痛む胃を感じながらも、アデスは首を縦に振った。

 こうなった自分の上司を止める術がない事を、誰よりも知っているからである。

 

 

「──地球軍新型兵器、並びに『ファントム』の専用機、あそこから運び出される前に奪取する」

 

 

 




今回の変態仮面の被害者
アデス「隊長がファントム好きすぎて胃が痛い」

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